昨日5月21日は、24節気の小満にあたる。小満とは難しい言葉である。暦便覧には「万物盈満(えいまん)すれば草木枝葉繁也」とあるので、まさに緑が濃くなる5月下旬から6月にかけての季節を言うのであろう。しかし、それがなぜ小満なのかは、この説明では分からない。
『日本文化いろは事典』には、「小満とは、秋に蒔いた麦などの穂がつく頃で、ほっと一安心(少し満足)するという意味」とある。これは、農民たちが麦の順調な生育に一安心する状況が浮かび、よく意味が分かる。
そう、麦秋の時節なのだ。折りしも長崎を訪ねたが、車窓に浮かぶ筑紫平野は一面にオレンジ色の麦畑であった。久しく見ることのなかった美しい光景であった。
同時にこの季節は、あゆ漁などが解禁され「若あゆ」が食卓を飾る季節である。
私はこの時節になると「獺祭」という酒を思い出す。
一つには、語源であるカワウソの祭り(カワウソが漁を始め、獲れた魚を川原の石の上に並べるという話)に、解禁されて釣り上げられる若あゆが重なるのである。カワウソが漁を始めるのは雨水(2月下旬から3月上旬)の頃というので時期的には大分ずれるが、人間の漁と重なるのである。
もう一つは「獺祭」という酒が、まさにこの若あゆにふさわしい酒であるからだ。山口県岩国市の旭酒造が造るこの酒は、香り、味、こく、のどごし、全ての点で素晴らしい酒だ。それもそのはず、この蔵は年間2500石を造るが全て純米酒、かつ全て吟醸造りだ。100%純米酒蔵と言うだけで珍しい(約20蔵)のであるが、それが全て吟醸酒という蔵は、全国千数百の蔵の中でも獺祭だけであろう。
中でも「獺祭 磨き二割三分」(山田錦を23%まで磨いて仕込んだ純米大吟醸)の素晴らしさは、言葉では表現できない。
この酒については書きたいことが山ほどあるが、別の機会に譲る。