二日目、目が覚めると昨日の天気がウソのような快晴・・・、「さすがに熊野権現様、ありがとう」などと言いながら勇躍して出かける。バスで今日の出発点「発心門王子」まで上り、先ずはガイド坂本勲生先生の指導で準備体操を行い出発。発心門王子にはかつて大鳥居があり、本宮大社への入り口とされていたという。とはいえここから本宮大社までは約7キロ、ただし、おおむね下り坂であり快晴の道をルンルン気分で歩く。
ガイドの坂本先生は、『るるぶ』などにも採りあげられているカリスマ的語り部だそうで、齢82歳というが矍鑠(かくしゃく)たるもので、ゆっくりと語る言葉は明瞭かつ内容は豊か。特に、山路にさしかかる前に語った言葉は重く響いた。
「熊野を歩くには五感を働かせて歩いて欲しい。五感を働かせるとは、耳から聞こえるものをよく聴き、目に映るものを良く観て、また、足から伝わるものを感じ取ることだ」
特に、足から伝わるものを感じ取れ、と言う言葉を心に刻み、石畳と木の根がからむ古道を歩いた。様々な鳥のさえずり、風のそよぐ音、杉木立の木漏れ日や棚田の緑・・・警笛と騒音うずまく都会とは、全く別の五感が働いているようであった。
しばらく舗道を歩き、「水呑王子」から山道に入る。よく晴れて遠望のきく山並みが美しい。左側に連なる山々は「果無(はてなし)山脈」という奈良県との県境をなす山脈とのこと。中央の高く飛び出た山が「なんとか富士」とのことであるが、とても富士には見えず、むしろ神の居所のように思えた。
再び舗道に出てしばらく歩くと「伏拝王子」に着く。ここの伏拝茶屋でコーヒーなど飲んで王子に参拝。京からはるばる紀伊路、中辺路を経て、ここで初めて熊野本宮大社を見ることができる。その感激で思わず本宮を伏し拝んだことから、この地が「伏拝王子」となったという。