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旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

山形酒蔵めぐり② ・・・ 「十四代」の酒造り

2010-03-26 10:46:15 | 

 

 初めて高木酒造にお邪魔して驚いたことは、第一に蔵のどこに行っても清潔さが保たれているということ(当然といえばそれまでだが、強く印象に残った)、第二に必要な設備には高価な最新鋭の設備が施されていること、第三にその中で伝統的な手法が手作りのまま生かされているということだった。

 多くを書く余裕は無いので省略するが、また他の三蔵とも共通するが、「酒つくりは、前提となる米の管理(精米、枯らし、浸漬)と、出来た酒の管理(火入れ、保管など)という原点に立ち返ってきた感を強くした。

 麹室もその後の行程も全部見せてくれたが、ここには蛇管(じゃかん、火入れする器具)の代わりに使っている最新鋭の火入れ機を掲げておく。

   

 もう一つ驚いたのは、日本に12しかないだろうといわれる焼酎を蒸留する「ポットスチル」だ。高木社長は意外にも蒸留酒が好きだとのことだが、この設備を見てそのこだわりを感じた。イングランドのスコッチウィスキーの蔵に行っている感じであった。

     

 こうして銘酒の生れる理由を学んだが、問題はその酒「十四代」を世間で飲むことが容易でないということだ、その夜の宴会に参加してくれた高木専務に私は問うた。

 「十四代はまぎれもなく日本最高水準の酒だ。しかし庶民はそれを高価で飲むことができない。高価の原因は貴方には無いが、その現象をどう思っているか?」

 それに対する彼の言葉は面白かった。

 「困ったことだと思っています。実は私も東京などで十四代が飲めないんですよ。自分の造った酒を高くて飲めないんですよ・・・」

 ただ、折りしもわれわれが蔵を訪ねた翌日の『山形新聞』が、連載「やまがた物語」に“日本酒「十四代」”を採りあげていた。そこには「インターネットのオークションなどでは、定価3千円ほどの純米吟醸が1万7千円、1万円の純米大吟醸が約8万円と、目を見張るような高値で取引され、その人気の高さが伺える。」と現状が記され、それに対する高木専務の次の言葉が引用されていた。

 「需給バランスが悪く買う人に迷惑をかけているのは心苦しい。でも一方では、ブローカーの間で取引されるような価値ある商品でありたいとも思う。価格は酒質のバロメーターであり、その価格を超える酒質を提供していきたい。」

 そこには造り手冥利と誇りが伺える。高品質の酒が生れるほど、それは庶民から遠くなる。致し方ない難しさがそこにはある。

   高木専務と


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