前回のこの項でも書いたように、よい酒を造る蔵がいっそう「酒つくりの原点」に立ち返ろうとしていることを、最近強く感じる。
「出羽桜」の仲野社長が最初に話し始めたのは「米の精米」についてであった。酒の原点の一つが米にあることは当然のことであるが、その米をいかに大事に扱いながら「よい酒造り」に持っていくかに、大変な努力をされている。
その始まりが「磨き」である。精米歩合○○%と言うが、「千粒重」(米1000粒の重さ)で正確に測ると、35%といっても40%近いこともあり、40%といっても43や44%のこともある。従って「先ず自分の手で精米するしかない」ということを強調していた。そのため、かなりの投資をして精米機を備えた、と大きな精米所を見せてくれた。
米は80や90%の精米には大して時間もかからないが、30%や40%に精米するには70時間前後の時間を要する。それを急ぐと米は熱を持ち砕ける。米が割れては使い物にならないので、言うなれば騙しだまし時間をかけて精米する。精米した米の熱を冷ますため乾燥させる(枯らしという)時間により、次ぎの米洗いで水を吸収する時間が異なる。だから「枯らし」には相当に注意しているという。こうして米の状態を最高の状態にもって行きながら「外硬内軟」な蒸し米を作れば、麹菌が中まで食い込む強い米麹(はぜ込み麹)ができる。
この、精米―枯らし―浸漬(吸水)―蒸し・・・という過程を熱心に説いて、その上で麹造り、もろみ造りの現場を見せてくれた。いい酒つくりをしているなあ・・・とつくづく思った。因みに「出羽桜雄町」は、昨年暮れに行なわれた「純米酒大賞制定委員会」で全国87蔵、137銘柄の酒の中から見事選ばれて大賞を勝ち取った(詳細は09年12月29日付本ブログ参照)。「原点に立ち返った酒造り」が生み出した成果であることを学ぶことが出来た。
その夜、天童ホテルの宴会で「出羽桜一路」をたっぷりと味わった。