意外に早くコンピューターの修理が終わり、たまった仕事を片付けている。たまったといえば、熊野旅行から一ヶ月が経つので、未だ書きたいことは山ほどあるが一応けりをつけておく。
旅の思い出で最後に残るのはやはり人とのふれ合いだ。三日間で3人の語り部に案内されたが、それぞれ特徴があり、何よりも豊富な知識で案内をされて勉強になった。中でも82歳の坂本勲生老は味があった。カリスマと言われているようだが頷(うなづ)ける。
熊野の人物といえば、これは会うわけにはいかなかったが、何といっても南方熊楠(1857~1941)であることを今回知った。語り部たちの解説の中でもたびたび出てきたが、彼の粘菌やキノコの研究をはじめ、植物学、民俗学、宗教学の原点はすべて熊野にあったようだ。「この世のあらゆる現象はすべて関連しあって存在する」とする彼の思考は、当然のこととして自然を守ることに通じ、既に100年前に「エコロジー」と言う言葉を使って明治政府の神社合祀に反対して鎮守の森を守ってきたという。偉いものである。われわれは100年遅れでようやく環境保護の重要性に気づき始めているのだ。
南方とまではいかないが、わがツアーメンバーも皆いい人ばかりだった。8人とこじんまりして実にさわやかな旅であった。義兄と一緒のご夫人二人はいずれも明るい元気おばさん。一人は西馬音内盆踊りの普及に努め旦那は落語を演ずるのが趣味というし、もう一方はお酒の好きな笑い上戸、とにかく元気がよくてなんにでも挑戦する。わが夫婦を含め5人がいつもつるんで楽しい旅であった。
残るお三方はいずれも男性、物静かで何となく気品があり熊野の風情に似合っていた。中でもそのうちの一人がマラソンをやる方で、フルマラソンを3時間50分台で走ると言う。聞けば65歳で定年を迎え66歳から始めてやがて4時間をきるようになり、ホノルルマラソン2回、ボストンマラソン1回、いずれも3時間50分台で走ったと言うから驚きだ。現在私と同年の74歳、とても信じがたい気持ちで話を聞いた。
こんな人がいるから世の中油断ならないのだ。同時に無類の酒好きで、今月の「純米酒フェスティバル」に何としても参加したいと言うので券を送った。再会が楽しみである。