昨年に引き続き、今年も「栃木の酒新酒発表会」に参加することが出来た。26蔵がブースを構え、ご自慢の酒を披露していた。栃木もいい酒が多い。昔から江戸に近接する地域として、銘酒を造り続けてきたのであろう。
昨年も書いたが、酒肴は地元宇都宮の割烹「酔心」さんの“とちぎ酒菜折詰弁当”(13品)、それに利きチョコは益子焼のぐい呑みと、地元一丸の姿勢もいい。
出品酒は純米吟醸が中心になっていたように思えた。それも「きもと」、「山廃」、または「無濾過生原酒」から「火入れ」と様々な純米吟醸、特別純米、純米酒が並び、その多様な味を提供する姿勢が見えた。参加者も味に強くなり、多様な日本酒を飲み比べながら楽しんでいた。蔵元と飲み手が直接顔を合わせ、語り合いながら酒の質を高めていくよい機会であろう。
いずれも蔵元の苦労を感じるが、その見本のような酒を池錦酒造の「大吟醸(人生我慢)」に見た。古武士の風格を漂わせる四代目蔵元池嶋英哲氏の後ろには「質素堅実」と大書してあり、この大吟醸の説明には「我慢するほど旨い酒」とある。酒造りの苦労がにじむ。
蔵元の世代も変わりつつあり楽しみだ。昨年初めて飲んだ「かねたまる」などを造る若駒酒造さんでは、昨年同様「袋つり」と「槽しぼり」を並べている。思えば昨年、この蔵は未だ「ヤブタ」を使ってないことを初めて知ったのだ。そのことを話すと「うちにはヤブタはありません」と胸を張った。そして、隣でせっせと酒を注ぐ若者を指して、「息子がデビューして、こちらは新しいですよ」と来た。名刺を頂くと「6代目蔵元 柏瀬幸裕」とある。この好青年が、古嚢(袋つりや酒槽)に新酒を盛ることを期待する。
また、純米酒フェスティバルなどでお世話になっている富川酒造店では奥様が、こちらは「娘がデビューしました」とハッピ姿の美人を紹介してくれた。農大を出て明利酒造さんで勉強し、いよいよ蔵で酒造りを始めたようだ。「貴女の自慢の酒をくれ」と言うと、迷わず「純米大吟醸・無濾過生原酒(雄町)」を注いでくれた。優しくバランスの良い酒であった。
酒造りも、趣向の多様化に応えるため、日々革新を重ねながら伝統技術を生かしていくことにかかっているのであろう。