旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

山形酒蔵めぐり⑤ ・・・ 酒と食を語る「東光」小嶋社長

2010-04-17 09:24:11 | 

 

 「東光」の酒蔵は、山形県米沢市のど真ん中にある。上杉の城下町米沢に創業したのが慶長二(1597)年というから、410余年の歴史を持つ。吾妻山系から流れ落ちやがて最上川に注ぐ横川の伏流水という良水に恵まれ、米沢藩御用酒屋に始まり23代の歴史を誇る。

  
    酒と食の相性を語る小嶋社長

 その23代蔵元小嶋彌左衛門社長のお出迎えを受け、先ずは昨年開業したご自慢の酒蔵料理屋「花くれない」で昼食。社長がここで力説したのは、酒のよさもさることながら、「米沢牛など伝来の材料ともども季節の野菜、旬の材料を駆使した料理」との「酒の相性」についてであった。食中酒としての日本酒は、米の味を上手く引き出した酒の旨さと、同時に食べる料理との相性が求められる。日本人が特に好む旬の食材、季節の食べ物を美味しく食べるには、それに合う様々な酒が必要だ。だから「花くれない」では、一般的な180ml(一合)より少ない80mlのグラスを用意して、「料理に合わせて違う酒を」、「「気になる酒を少しずつ」飲めるように気を配っているという。蔵元料理屋ならではの気配りである。

 食事が終わり蔵の案内に入ると、ここでも精米の大変さ、難しさから案内が始まった。様々な酒を造るには、様々な米の性質を把握し、様々な精米歩合を生かして酒を造る。小嶋社長は、山田錦特上米の玄米をかざし、35%まで磨くには72時間もかかる苦労を力説していた。短時間で磨こうとすれば米は熱を持って砕け、使い物にならなくなる。騙し騙し時間をかけて削るのだ。このようなことは、当然、以前から知られていたことであるが、われわれが酒を飲みながら、「米を磨く人がどんなに苦労しているか」に思いを馳せて呑むことがあるだろうか? 美味しい酒の裏には多くの人の血のにじむ苦労が隠されているのだ。

       

   

 純米酒のいっそうの開花は、多様な酒の中に求められると思っている。その原点は原料(米)と製法の多様性の中にある。伝統を守りながら多様な展開を求め続ける。そこから生れる多様な酒が、多様な料理や多様な嗜好とマッチングしていく・・・、そこに小嶋社長の言う「酒と料理の相性」の本質があるのであろう。


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