旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

酒造界の新しい息吹 … 大震災による全壊から立ち上がる蔵

2012-01-28 13:32:58 | 

 

 昨年3月11日の東日本大震災は、東北の酒造界にも多大な被害を残した。多くの蔵が津波にのまれ流出し、また倒壊や浸水で、手塩にかけて育てた酒を失った。中でも蔵から倉庫に至るまで全建物を失った蔵は、再起不能ではないかと思われたが、その中のいくつかが、地元や全国支援者の支援に励まされて再建に取り組み、この冬から仕込みを始めている。
 
 陸前高田市の酔仙酒造は、酒蔵はじめ倉庫、事務所などすべての建物を流され、従業員7人が犠牲になった。しかし、同業者や地元の人々の励まし、協力の中で、その悲しみを越えて立ち上がった。同業者岩手銘醸株式会社の協力を得て、一関市にある醸造施設を借りて、早くも昨年10月看板商品「雪っこ」の仕込みを始めた。岩手県大槌町で代表銘柄「浜娘」を造ってきた赤武酒造も、内陸の盛岡市に蔵を移転して酒造りを再開した。
 一方、宮古市の菱屋酒造店(代表銘柄「千両男山」)は、津波で全壊した宮古湾近くのその地に蔵を再建、8月に着工して11月には完成して12月から仕込みを始めた。(フルネット社「Jizake Topics」137号) 何ともたくましい話である。

 これら再建の裏には、多くのメディアなどが伝えているように、地元の人々の熱烈な要望があり、全国の多くの人々の支援があり、また同業者の惜しみない協力があったのだ。いくつかの例外はあったが、従来の酒造界はとかく閉鎖的で、同業者も含めて共同協力関係の薄い社会であったように思えた。近時様々な場面で開放的、共同研究的動きがみられ、喜ばしい現象と思っていたが、この震災は、不幸ではあったが、一挙にそのような雰囲気を作り出していこうとしているのではないか?
 菱屋酒造店の辻村勝俊杜氏は酒造再開に当たり 「お客さんが喜んでくれる酒をもう1回造ってみせるよ」と言っていると報じられているし(前掲「Jizake Topics」)、酔仙酒造の金野靖彦社長は 「多くの方に応援してもらってここまできました。心を込めてお酒を仕込んでいます」言っている。(2011.10.14毎日新聞)
 この酒だけは飲みたいと思っているし、酒造界の新しい動きに期待している。


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