今年のうれしい出来事の一つに、和食が世界文化遺産に登録されたことがある。その理由の一つ、「和食が四季折々の、また様々な行事に合わせて食される」という多様な性格が、私が追い求めてきた日本酒の多様性(その種類、飲まれ方)と共通するものがあるからだ。
これを機に、食中酒としての日本酒がますます多様に花咲くことを期待してやまない。
一方で相変わらず続く食品偽装にうんざりした。そしてそれは日本酒の中にも数多く現れた。こうなってくると食べ物も飲み物も、大半が偽装されていると思わざるを得ない。 毎日食べているもの、飲んでいるもののほとんどはニセモノと思った方がいいだろう。これほど悲しいことはないが。和食が文化遺産になったなどと喜んではいられない。
その様な中で、娘は「ホンモノのオペラを広めたい」と東奔西走している。記述(14日)の通り新幹線代も出ない貧乏オペラ部隊は、渥美半島の彼方にある学校での公演に、出演者が自ら運転する大型レンタカーで往復してきた。子供たちの喜んだ感想文には恐らくウソはないだろうから、それを読む限り娘たちの公演はホンモノだったのだろう。
娘とは今年、「本物のオペラ感覚を磨くためにも日本の伝統芸能を見直そう」と、歌舞伎、薪能を各1回、落語を4回観賞した。日本人にイタリアオペラを理解してもらうためには、日本の伝統文化の本髄を知る必要もあると思ったからだ。
儲け第一主義からニセモノ売りが横行する。そうならないためには、絶えずホンモノに接して感覚を磨いておく必要があろう。
ニセモノとホンモノのはざまに立つ日本文化は、まさにその岐路にある。