先日の「自動信号機102号」で久しぶりに鉄道ミステリとNゲージモデルの話を書きましたが、あれから読み返してみたらまだ取り上げられる題材が僅かながら残っていたのでいくつか紹介したいとおもいます。
今回は徳間文庫版「殺しのダイヤグラム」所収の多岐川恭作「グリーン寝台車の客」から
長崎から東京に向かう「さくら」のグリーン寝台車内で発生した殺人事件。
その顛末を「同じさくらの車内にいた十数人の乗客や職員の証言調書を羅列して行く中で最後に犯人を浮かび上がらせて行く」という形式が斬新かつ特徴的な一作です。
実はここに出てくる殺人そのものは特にどうという事のない普通の殺人(ってこの言い方自体が変)な上に読者と推理比べをするのが目的の短編でもないのでトリックらしいトリックもないのですが、それをここまでグイグイと引き込ませる構成。
証言の積み重ねだけで犯人の行動はもとよりその背景や動機までも浮き上がらせるというのは短編としては秀逸なアイデアでした。
さて、本作が上梓されたのは昭和51年。
舞台となる「さくら」も20系から14系に切り替わった前後の時期に当たります。
ブルートレインが昭和47年の寝台急行「きたぐに」の列車火災事故の影響で、出火の恐れがある(実際はきたぐにの事故ではエンジンではなく食堂車の配線の不手際の可能性が高いのだそうですが)分散電源のエンジンを廃し集中電源の24系が主流になっていた時期です。
後のブルートレインブームの折の主役は24系25型でしたが、当時の「さくら」は14系が主流でした。
というのも集中方式では途中で行き先が二方向に分かれる分割併合運用が困難(というより金がかかって面倒)なためで、長崎と佐世保のふたつの目的地を持つさくらには分散電源の14系の方が適していた事情もあります。
その14系も後に火災対策を施した14系15形にバージョンアップして比較的最近まで活躍していたのはご存じの通りです。
おそらく作中のさくらは15形になる前の最も原型に近い先頭部を持つ14系だったのではないかと私個人は勝手に推定しています。
14系のさくらはKATOが以前セットを出していた事があり、今でも時々中古を見かけます。
私もこれを買ったのですが、さくらというより同じ14系で編成されていた後期の「北星」をやりたかったから(厳密な仕様違いはこの際無視しますw)だったりします。
モデルはベッドを下した仕様で、窓からベッドの梯子類が見えるのはなかなかの細密感ですが夜だと大概の場合カーテンが下りている事も多いので人によっては余計なお世話に見えるかもしれないですね。
さて、今回本作を取り上げるきっかけとなったのは先日も紹介したTOMIXのEF65の存在があります。
実はファインサイズのEF65 500はこれまで持っておらず(KATOが1両ありましたが貨物用のFタイプ)今回の高崎機関区仕様がはじめてのモデルだったので、この機会にKATOの14系を牽かせてみようと思い立ったからです。
本当にその場の思いつきなのでヘッドマークすら付けていません。が、TOMIXの65が牽くKATOの14系というのはなかなか様になります。