チェンソーアートの大御所、伴塾長主宰のチェンソーカービング塾安曇野学校に修行に行ってきた。4月から10月まで毎月シリーズで開催されているのだが、前半は入院やらいろいろあって参加できず、7月からの後期のみ受講させていただくことに。
受講生は5名、県外からの参加は私だけで他の皆さんは全員地元長野の方だった。私も含めてなぜか年配者ばかりなのはちょっと寂しい。これまではせいぜい薪かチップ燃料くらいにしかならないただの端材丸太が、あれよあれよという間に彫刻作品に生まれ変わっていくチェンソーカービング。男の趣味として(もちろん女性でもできるが体力はつける必要があるだろう)、また新しい芸術表現の手段としての可能性は大きいし、スポーツとしての爽快感もある。若い人がもっと目を向けて裾野が広がればよいのにと思う。
さて、お題はクマ。伴塾長のお手本カービング(下)を見ていると、いとも簡単に13分ほどで出来上がってしまった。時間の制約もあり、細部にこだわらないラフな彫りなのに、出来上がってみるとしっかりクマなのがすごい。
こちらは私の習作。
講師のアイバーカーさんからのアドバイス、「線で彫らず面で彫るように」
なるほど。確かにクマのアウトラインを線でとらえて彫っていたが、切りすぎたり切り足りなかったりしてバランスが悪くなってしまう気がする。二次元の絵は一次元の線で面分割して構成されるが、三次元の立体彫刻は二次元の面の組み合わせで構成される。
次回(9月)までにはもう少し練習しておこう。
講習会の後、伴さんの工房を訪問し作品を鑑賞させていただいた。
人の背丈よりも大きな太い丸太を刻んだ彫刻作品群が、倉庫に所狭しと無造作に並べられている。深遠なんだか遊び心満載なんだか、いろんなメッセージやイメージが喚起させられてきてずっと見ていても飽きない。
つい先日の日彫展出品作品は、孕んだお腹を叩いてポンポンと良い音が響くのを鑑賞してもらうのが狙いなのだそうだ。その音を出すために、直径1mはあろうかという丸太の内部をチェンソーでくりぬいて太鼓のようにしてある。風で音が出るような造形作品というのはよく見かけるが、鑑賞者が作品に触って発音するという鑑賞の仕方の狙いは何なのだろう?お腹の幼児語「ポンポン」と音の「ポンポン」をかけ、孕む母性を考えさせようという狙いなのか。そんな鑑賞の仕方も、「ポンポ」という人を食ったタイトルも、一般鑑賞者を高みから見下ろすように突き放し引きこもってしまっている現代彫刻界に、チェンソー彫刻で殴りこみをかける伴さん一流の人を食ったアイロニーと警告なのかもしれない。
ぜひ多くの方にも見て欲しい作品で写真も撮ったのだが、著作権の問題もあるだろうし写真の掲載は控えることにする。もっとも伴さんは、写真の公開などおそらく全く気にしないだろうけれど、「ポンポ」の写真での鑑賞は伴さんの本意に反する気がするので。
チェンソーアートの大会で一般的なワシなどの定番作品は、初めて見たときは衝撃を受けたが、見慣れてくるとなんとなく飽きてくるというか物足りなさを覚えてくる。その辺がクラフトとアートの違いなのかな、と思ったりもした。