● 4月27日 ⇒ ◆「根づいたら 水やり我慢」 家庭菜園では、野菜の水やりについて誤解している人がいる。典型はこれから始まる夏野菜の世話の仕方。ひんぱんに水を与えると、葉や茎が伸びて勢い良さそうな姿になる。肥料が多いとさらに太る。しかし、このように育った作物は、根が広く張らず病弱だ。畑の野菜は水を控えてこそ、丈夫でおいしい野菜になる。
夏野菜の苗の植え付けは、温かい環境にするのが活着を良くする秘訣(ひ・けつ)。私の場合、前日の昼に、畑にたっぷりと水やりをしておく。水を1回でたくさん注いでも、多くが土のすき間から下に抜けるので、数分でよいから時間を空け、数回に分けて水をかける。
植える直前の植穴への水は、土の温度を下げてしまうから要注意。植える当日の朝は、苗のポットごと30分ほど水につけてから、数時間放置して鉢土を安定させ、気温の上がった昼間に苗を植える。植えたら根と土を密着させるためにコップ1~2杯の水を株元にさっとかける。
いったん植えたら、わずかにしおれるくらいまで、水やりを我慢する。作物の根は、土に水分が少ないと水を求めて活発に伸びる。最初は貧弱だが、いずれ、水ぶくれした株を追い越すことを信じて欲しい。
露地栽培では活着後、よほどの晴天続きは別にして、目立ってしおれなければ水やりはしない。苗を植える前後は注意深く接し、根が着いたらあとはどっしりと構える。栽培は子育てにも似ているし、野菜の姿は世話をする人の性格を映し出している。
●4月6日 ⇒ ◆こだわりトマトに挑戦
夏野菜の代表格の一つはトマトだ。
無農薬でトマトを作ることができれば他の野菜は簡単だが、もともと乾燥した南米高原地帯原産の作物だから、日本の高温多雨な気候は不向きで、数年たつと病気に悩む人が多い。連作障害があるので、ナス科の作物を3~4年栽培していない場所を選ぶ。
菜園でトマトが作りにくくなったら、袋培地で栽培を試みてはどうだろう。病原の土から離すために、肥料袋などに新しい土を入れ、畑の土の上に逆さにし、上部に穴を開けて苗を植える。レジ袋で試したことがある。乾燥するから水やりもいるが、トマトの味を良くし、耐病性も増す。
トマトも最近は多品種が出回っている。新たな品種を作るのも楽しい挑戦だ。ミニトマトは作りやすいが、私は好きではないので放任栽培していた。が、数年前、抜群においしいプチトマトに出会ってから、3本仕立てにしてまじめに世話をしている。
夏野菜はどれも基本的に接ぎ木苗をすすめている。値段が100円高くても、必ず元はとれる。ただし、接ぎ木部分に土が来ると、病気に強い台木に接いだ意味がなくなるから、注意が必要だ。
最後に今話題の食用ほおずき、「ストロベリートマト」の紹介。枝周り直径1・5メートル以上になり、霜が降りるまで実が100個以上付く。その味わいはとりこになる。
ともかく、安全、安心、美味にこだわる農法はセカンドライフに向くし、実は、新しい農業の一つのスタイルでもあると思う。
●2月15日 ⇒ ◆除草に革命 「紙マルチ」
かつて米作り農家の風物詩といえば、手作業の田植えと四つんばいになっての草取りだった。暑い時期の過酷な労働で腰を痛めることもあって嫌われた。
私は子ども時代から経験した。成人して自分の意思で有機農業を始めた時も、やはり手押しの除草機と四つんばいの草取りだった。
私は、小道具を自作して正確に1尺角に苗を植え、手押し除草機が縦と横に通れるようにした。その後、動力付き除草機を導入し、格段に楽になった。それでも、稲株の周りは手で除草しなければならなかった。
時代は進み、再生紙で作った「紙マルチ」を水田の表面に広げながら苗を植えていく専用田植え機が開発された。約10年前に田植え機を友人らと共同で購入して使っている。何と楽チンなこと。いったん田植えをすませたら、欠株や異物、草があっても紙が破れるから田に入らない。田植えの後、草取りは夏のほんの補助的作業になった。
この農法は田植え機がなくてもできる。
紙マルチは幅160センチ、長さ100メートル、重さ約25キロのロールなので、2人で紙の左右を持って水田に広げ、両側から手で苗を植えれば良い。バックして紙を広げつつ植えることもできる。切って幅や長さを変えても使える。変形水田にも有効だ。無農薬稲作に挑んだり、グループで楽しんだりもでき、教材向きといえる。現在では紙マルチに種もみを着けて直まきする方法まである。
この紙マルチは畑でも使える。
私は6月中旬に田植えをする予定だが、4月から5月にする地域もあるので、今年からぜひ試してもらえるように早めに紹介させてもらった。
次回は、桜の咲く頃に植えるヤマイモの簡易栽培のことに触れたい。
●1月21日 ⇒ ◆「作付け計画 連作避けて」
私には年賀のあいさつをする習慣がない。それでも年明け早々には、その年をどう過ごすかを考える。
畑や農作業をするにも、冬の間に年間の野菜の作付け計画をイメージしたい。そこで注意すべき基本は、同じ仲間の野菜を同じ場所で続けて作らないこと。同種の野菜を続けて作ると連作障害があるからだ。
1年間は空けた方がいいのはキュウリ、インゲン、カブなど、5年間程度は空けた方がいいのはトマト、ナス、スイカ、エンドウなど。面白いことに、数年間なら続けた方が良く、連作の害が出にくい種類もある。サツマイモ、カボチャ、ニンジン、タマネギ、ダイコンなどだ。
輪作といって、野菜の連作障害を積極的に回避するなどの目的で、特定の組み合わせや順序を選んで作ることもある。何種類かを混ぜて作る混作や間作という方法もある。ただし、野菜の組み合わせには相性があり、中にはマイナスの組み合わせもある。
これらの情報は広く出ているから、本やインターネットで調べるとか、種苗店で聞くなどもプチ農家の仕事の一つ。トマトなどの病気に敏感な作物でも、連作障害を避ける裏技的な栽培方法もあるから、春の植え付け前に紹介したい。
この連載で土作りのことを書いたら、「畑でいつも何か作っていてできない」と話してきた人がいた。輪作にしても、連作障害対策にしても、土作りでも、十分な土地がある場合を除けば、何年かかけて自分のイメージで好ましい状況に持っていくのが作付け計画。もちろん計画通りにいかないのも常で、臨機応変も現場の楽しみの一つだ。
次は、地球温暖化に伴う作付け時期の修正について触れたい。 |