●一事不再議の原則について
北海道町村会 法務支援室
(質問)
町特別職の報酬額、費用弁償額並びにその支給方法に関する条例(以下「報酬等条例」という。)について、一部改正を予定している。
しかし、議会議員の報酬改定については議員提案、その他の特別職の報酬改定については町長が提案することとなった。
本事案の場合、同一会期中に報酬等条例の一部改正に伴う議案を2本提案することになるが、一事不再議の原則に反することにならないか。
(回答)
まず、一事不再議の原則とは、地方自治法に規定されていませんが、議会において一度議決し、又は決定した事項については、その会期中再び審議の対象としないという原則で、一事とはいかなるものをいうかが問題となります。
一事不再議の「一事」とは、
(1)議決された案件と同一の形式、同一の内容である場合、
(2)議決された案件の全部を含み、それに新たな事項が加えられている場合、
(3)議決された案件の一部の事項だけを提案する場合、
(4)議決された事項を変更しようとする場合
などがあげられます(地方自治法関係実務事典1(第一法規)50・51p)。
また、「一事」の範囲として、形の上では同一でもそれを再び事件に供するに至った目的、趣旨あるいは事情というものが異なっている場合には、もはや同一の事件とは認められません。
換言すれば、前に議決された事件と後から出てくる事件とが「一事」に当たるかどうかは、その事件の題名や内容の文言という形式の面からだけで判断すべきものではなく、両者の背景をなしている目的、趣旨、事情などを種々勘案して判断すべきものと解されています(現代地方自治全集③地方議会(ぎょうせい)402・403p)。
本事案は、(1)貴町報酬等条例の一部改正条例(別表第1の改正)、(2)報酬等条例の一部改正条例(別表第1の改正)の二議案が提案されることになるとのことです。
二議案は、報酬等条例の改正であり形式は同一ですが、一議案は議員を除く委員等の報酬の改正、もう一議案は議員の報酬の改正であり、目的、趣旨あるいは事情というものが異なっている場合と考えられます。
したがって、本事案の場合は一事不再議にあたらないもので二議案が提案されることは可能と考えますが、一事不再議の原則に触れるかどうかの認定は、議会が行う(上記地方議会410p)ことになりますので、議会が最終的に判断すべきものと考えます。
●同一の定例会における同一条例の改正について
北海道町村会 法務支援室
(質問)
定例会の会期内で、当初に既存条例の一部改正案を提出し議決されたが、会期中に同一条例の別の部分を改正する一部改正条例を議案としたい場合、先に議決された「一部改正条例の一部改正条例」案とするべきか、別途、同じ表題となるが「一部改正条例」案とするべきかご教示願いたい。
(回答)
まず、ご相談の案件が、いわゆる「一事不再議」の原則に触れないかについてですが、一事不再議の原則は、地方自治法に規定されているものではありませんが、議会の議決に権威をもたせることなどを理由として確立された原則であります。
一事不再議の「一事」とは、
(1)議決された案件と同一の形式、同一の内容である場合
(2)議決された案件の全部を含み、それに新たな事項が加えられている場合
(3)議決された案件の一部の事項だけを提案する場合
(4)議決された事項を変更しようとする場合などとされているようですが、
本件のように一度議決を得た部分とは異なる部分について議案を提出されようとしている場合は、一事不再議の原則に触れないのではないかと考えます。
次にどのような形態により議案を提出するべきかについてですが、「一部改正条例の一部改正条例」として提出する場合は、一部改正条例の制定後・施行前に事情の変更を生じ、制定当初の意図した改正では目的を達成できないという場合に採用する方法であります。
本件については、議決を得た一部改正条例について、事情の変更が生じたことにより議案を提出するのではないこと(同一条例内の全く別個の箇所の改正であること)などから、新たな「○○条例の一部を改正する条例」として提出することが適当と考えます。
●<否決された補正予算案を修正して再度提出することと一事不再議の関係>
なるほど! 市町村行政運営相談室 /茨城県総務部市町村課行政グループ
○照会事項
9月議会において,公用車を購入する等の内容の補正予算案が否決された。補正予算案全体が否決されたものであるが,その主な理由としては購入予定公用車が高価過ぎるというものである。
そこで,執行部としては議会が否決した意向を踏まえ内容を変更し,再度,当該定例会に提案したいと考えているが,可能か。
○回答
内容を変更したうえで,再度,提案するということであれば可能だと考えます。
○理由・解釈等
「同一会期中に一度議決された事件について再び議決をすることはできない」とする議事運営の原則を一事不再議の原則といいます。
したがって,執行部としても同じ議案は同一会期中は提出できないことになります。
これは合議体としての議会を能率的に運営するために議会運営上慣習的に形成されたものであり,自治法上の明文の規定はありません。
標準町村会議規則15では「議会で議決された事件については同一会期中は,再び提出することはできない」と規定されていますが、仮にこの規定がなくても慣習法として一事不再議の原則は働くものと解されています。
この原則により,一度議決された議案を再び議会に提出することはできませんが,一事不再議は議会が認定するものであり,本件の場合には,議決では否決した理由までは述べられていないため,否決した議会の意向を踏まえ,内容を変更したうえで再度提案するということであれば,一事不再議の原則は適用されないことになると考えます。
なお,本件の補正予算案には当該公用車の案件の他いくつか別の案件が含まれており,議会の議決としては「否決」としか出されていないため,最初に提案された案件は全て否定されたこととなりますから,改めて他の全ての案件も併せて提案する必要があると考えます。
(照会時期:平成13年11月)
●一事不再議
一事不再議 / ウィキペディア
現在の日本国憲法や国会法、議院規則には一事不再議を定める規定はない。
また、地方議会の運営について定める地方自治法にも一事不再議に関する明文の規定はない(なお、標準都道府県議会会議規則15条には一事不再議の規定がある)。
しかし、同一案件について重ねて議決することや全く異なる議決を行うことは非能率で正常ともいえないことから、一事不再議の原則が基本的には条理上承認されていると考えられている。
・・・
一事不再議の適用の原則の例外として事情変更の原則がある。
会期が長期に及んだ場合、当初の議決の際に前提とされた事情が変更することも考えられ、その場合には議院の意思を変更することが妥当と認められることもある。
また、明らかな錯誤の結果があった場合にも再議が認められると解されている。
●一事不再議の原則(会期独立の原則)
坂出市議会/議会のあらまし(一事不再議の原則(会期独立の原則)) 掲載日:2012年1月1日更新
一事不再議の原則は,議会が一度議決した事案と同一の事案を同じ会期のなかで審議することはできないとする原則である。
これは,一度議決した事案を再び持ち出して審議することは,審議時間の浪費であり,議会の意思がなかなか決定できないことになり,それに疑問を持たせることになる。
そして,議会の議決の権威,議決の安定性を損なわしめることになる。
しかし,会期を別にすれば,議会の意思は,会期不継続の原則(会期独立の原則)により会期ごとに別個のものであるので,すでに決議した事案を再び審査することは差しつかえない。
なお,裁判において一度確定した問題については再度審理しないとする「一事不再理の原則」がある。
議会における一事不再議の原則は,会期と結びついての原則であり,すでに述べたように同一会期中においてのみ通用されるものである。
この点二つの原則には大きな相違点がある。
この一事不再議の原則の例外は「再議」制度である。
地方自治法は五つの場合に再議を認めている。
1.条例若しくは改廃又は予算に関する議決に対する再議(法第百七十六条第一~三項)
2.権限越権又は違法な議決・選挙に対する再議(同条第四~七項)
3.執行不能な収入・支出に関する議決に対する再議(法第百七十七条第一項)
4.義務費を削除又は減額した場合の再議(同条第ニ項第一号)
5.非常災害費・伝染病予防費等重要経費を削除・減額した場合の再議(同条第ニ項第ニ号)
そして,3,4,5,の場合,長は再議に付さなければならないと定められている。
この長の再議の申し立てにより議会の議決効力が停止されるが,地方議会の権能の大きな特色といわれている。
なお,国会の場合には,法案は両院で可決されれば法律となり,内閣はこれに異議を挟む権限を有しない。 (全国市議会旬報より引用)
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