TPPの話が具体化してきて、今までとは少し違う視点の議論があるようだ。
先日の、日本の農業生産7.2兆円、それがTPPで3兆円減となる、との予測が出された。
その影響に驚く人は少なくない。
(以前の数字より、低いとの意見もある)
一番気になること、それは内閣のウソ。
「国益を守るために交渉する」というけど、「日本の参加は早くても今年7月」といわれる中、
TPP自体は、「内容は7月までに決定される」という。
結局、日本は、何も言えないことがわかっているのに、それを隠す内閣。
安倍内閣は7月の参議院選挙で勝てば、あとは自民の安泰。
しかも、好都合にも「7月の参議院選挙」までには、
TPPの中身や日本との関係も不明だから、選挙に支障はない・・・
そんな目論見ではないか。
農業団体の反対も、実は、補償をとるための戦略とまでも。
少し、記事を拾ってみる。
●日経
「WTO交渉と同じ感覚で議員外交などに張り切っている先生方が多いが、出番は少なく、情報も入りにくいという実態にそのうち気づくはず。
そうした中で国内調整と、関係国とのギリギリの協議を迫られる。先が思いやられる」。政府関係者はこう漏らす。
交渉の性格の違いだけではない。
1993年のウルグアイ・ラウンドでコメの部分開放が決まった際、政府は総額6兆100億円の農業対策を打ち出し、農業関係団体や農家の反論をなんとか鎮めた。
だが、今回のTPP交渉に際しては、厳しい財政事情のため、そうした成功体験の再現は望み薄だ。
『現在の農林水産省予算より1兆円の上積みが精一杯ではないか』財務省幹部はこう語る
●週刊ポスト
「もっとも、財務省は「1兆円も出す余裕はない」(財務官僚)として、実際の金額交渉はこれからが山場だが、いずれにしても議論は「参加の賛否」ではなく、
『いくら払うか、いくらもらえるか』に移っている。
交渉参加に本気で反対するより、反対の“ポーズ”を取ることで多額の補助金を掠め取るほうが得―反対派の内部には、こうした本音が見え隠れする。」
●時事
「日本が交渉に参加するのは早くても7月。同月に想定される参院選までには交渉の成否は明らかになりそうになく、3野党がTPPを争点化するのは難しそうだ。」
●北海道新聞
「全体で17万3千人が失業し3万3千戸の農家が減ると算出した」
こんな中で、日刊ゲンダイが一番読みごたえがあった。(このブログ末に記録しておく)
「全体会議は7月で終わります。すでに条約は出来上がっているのも同然で、すぐにシャンシャンでおしまいになる。
日本が聖域の交渉をできる余地はないのです。
それなのに国民には何も知らせず、後発国には出る幕がない交渉に参加する。これは白紙委任状と同じです。そうまでしてなぜ、参加するのか。安倍首相のメリットしか思い当たりません」
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●参加で農業生産3兆円減、GDP3・2兆円増 政府試算
産経 2013.3.15 12:58
日本が環太平洋連携協定(TPP)に参加した場合の国内への影響に関して、農業分野の生産額が3兆円減少するとの試算を政府がまとめたことが15日分かった。一方で消費や工業製品の輸出は増加し、全体では実質国内総生産(GDP)を3兆2千億円(0・66%)押し上げる効果があるとしている。
政府はTPP交渉参加国との間で関税を全て撤廃したとの前提で試算した。農林水産業では安価な輸入品が流入して国内の生産額は減少するが、他の産業の輸出拡大や消費の増加などで補うとみている。
GDPの押し上げ効果は、輸出が2兆6千億円、消費が3兆円、投資は5千億円で計6兆1千億円のプラスの影響を見込む。一方、輸入面では価格が安い製品の流入で2兆9千億円のマイナス効果があるとみており、差し引きで3兆2千億円のGDP拡大を見込んでいる。
●TPPで道産品窮地 2010年の道試算、農業2兆円超影響
北海道 (03/16 06:35)
安倍晋三首相が環太平洋連携協定(TPP)交渉参加を正式表明したことで、農作物をはじめとする道内の1次産品は、関税が下がったり撤廃されれば、安い輸入品の攻勢にさらされる懸念が出てきた。道が2010年に試算した農業分野への影響は総額2兆円超。政府が新たな試算をまとめたため、道もTPPに参加する11カ国からの輸入を想定した試算見直しを行い、影響の深刻さを訴える構えだ。
10年の道の試算では、農業生産額や関連産業、地域経済を合わせた影響額は2兆1254億円に及ぶ。
まず農業生産額は、コメと小麦、ビート、でんぷん原料用ジャガイモ、酪農(バターなどの乳製品)、牛肉、豚肉の計7品目で6180億円減少。これは関税撤廃と、国内対策を講じないことを前提にした。
道産のコメは年間生産量が60万トンあり、全国で新潟県と一、二位を争う大産地。
農業団体も「安い外国産が入り込めば、道産も駆逐される」と主張し、10年の試算では生産額が1130億円減るとはじいた。
畑作物は、道の試算ではビート(砂糖の原料作物)492億円減、小麦418億円減、でんぷん用ジャガイモ160億円減と見込む。砂糖とでんぷんは外国産と混ぜられて流通することもあり、「品質差がつきにくく、価格だけで評価されてしまう」(道内の農業団体幹部)のが特徴だ。
関税が撤廃された場合、外国産に対する国産の価格はでんぷん、砂糖いずれも2倍以上で、販売は難しくなる。
道内にはでんぷん工場が17カ所、製糖工場は8カ所あるなど関連産業の裾野は広い。
7品目全体で関連産業への影響額は5215億円、商店や飲食店、金融など地域経済への影響は9859億円にのぼり、全体で17万3千人が失業し3万3千戸の農家が減ると算出した。<北海道新聞3月16日朝刊掲載>
●こんなに違うTPPとWTOの交渉
“成功体験”が通じず自民党と農業団体の戸惑いは必至
日経ビジネス/2013年3月19日(火)/ 安藤 毅
3月15日に安倍晋三首相が正式にTPP(環太平洋経済連携協定)交渉への参加を表明し、国内調整の焦点は関税撤廃の例外確保や農業対策予算の上積みといった条件闘争に移った。
これをにらみ、自民党の農業関係議員や全国農業協同組合中央会(JA全中)など農業関係団体が動きを強めている。
焦点は条件闘争に
「TPPはあなたの生活のさまざまな分野に影響する問題です」
今月12日付の主要大手紙の朝刊などにはJA全中によるTPP交渉参加反対の意見広告が一斉に掲載された。
同日午後にはJAグループが消費者団体と連携し都内で大規模な反対集会を開催。霞が関などをデモ行進し、気勢を上げた。それでも安倍首相はTPP交渉参加に踏み切った。振り上げたこぶしを降ろさないJA全中は15日、万歳章会長が緊急記者会見を開き、「前のめりな姿勢で参加表明に踏み切ったことは到底納得できず、強い憤りをもって抗議する」と語気を強めた。参院選での自民支援の方針変更をちらつかせ、今後の交渉への影響力確保を狙う姿勢をにじませた。
一方、自民党はこうしたJAグループなどの「参加反対」姿勢とは一線を画し、軟着陸への環境整備を急いだ。
今夏の参院選を控え、農業団体などの支持離れは避けたいものの、安倍首相の足を引っ張り、政府と党の対立を見せるのは得策でないとの判断があったためだ。
自民内の調整を担うTPP対策委員会(西川公也委員長)は13日、長時間に及ぶ協議の末にコメ、麦、乳製品など農林水産物の重要品目を関税撤廃の対象から外すことなどを求める安倍首相への提言をまとめ上げた。
自民のあるベテラン議員は「これこそが、長く政権を担った政党としての知恵やノウハウというものだ」と自賛。「今後は交渉に首を突っ込んで政府の暴走を抑えるとともに、地方のJAを黙らせるための対策費の上積みなどの実利を得る戦いだ」と腕まくりをする。
こうした自民の対応について、政府内では「党内の意見集約ができなかった民主党とはさすがに違う」(経済産業省幹部)と評価する声が挙がる。
だが、その一方でTPP交渉に関係する外務省幹部らの間では交渉の先行きを巡り、ある懸念が強まっている。
それは、自民や農業関係団体が蓄積してきた世界貿易機関(WTO)農業交渉のノウハウがTPP交渉ではあまり活かせない公算が大きく、交渉が進むにつれ、国内からの不満が爆発しかねないことだ。
前身の関税貿易一般協定(GATT)ウルグアイ・ラウンド交渉時代を含め、WTO交渉では次のようなスタイルが確立されていた。
すなわち、(1)節目には閣僚会合が開催され、政治家同士が詰めの議論をする(2)関係国間の提案や交渉の途中経過は事実上オープン(3)特に日本は国会議員団や農業関係団体幹部らが現地に赴き、情報収集のみならず、事実上交渉に関与する――などである。
「非公開」が原則のTPP交渉
これに対し、米国や豪州など11カ国で進行中のTPP交渉はどうかといえば、交渉は事務レベルで実施。各国の提案内容や、協議の途中経過をまとめた「テキスト」は原則非公開で、プレスリリースや記者会見の内容以上はほとんど表に出してはいけないとされている。
つまり、日本は交渉に参加してテキストの内容などを把握しても、WTO交渉時のように、国内向けに詳細に説明するのは難しいということになる。
「情報管理が厳しく、国会議員やJA全中関係者などがTPP交渉の開催地に押しかけようとしても、ほとんど交渉に関与できないのではないか」と、外務省幹部は予想する。
TPP交渉がこのような形で実施されている背景には、WTOの交渉が既にみたようなスタイルを続けた結果、議論の収拾がつかなくなり、交渉が暗礁に乗り上げた反省があるのだという。
交渉の速度を上げるための方策といえるが、その分、交渉にろくにタッチできない政治家などの関係者、国民の不満は高まりそうだ。米国政府も説明責任との兼ね合いで対応に苦慮しているという。
「WTO交渉と同じ感覚で議員外交などに張り切っている先生方が多いが、出番は少なく、情報も入りにくいという実態にそのうち気づくはず。そうした中で国内調整と、関係国とのギリギリの協議を迫られる。先が思いやられる」。政府関係者はこう漏らす。
交渉の性格の違いだけではない。1993年のウルグアイ・ラウンドでコメの部分開放が決まった際、政府は総額6兆100億円の農業対策を打ち出し、農業関係団体や農家の反論をなんとか鎮めた。
だが、今回のTPP交渉に際しては、厳しい財政事情のため、そうした成功体験の再現は望み薄だ。
「現在の農林水産省予算より1兆円の上積みが精一杯ではないか」。財務省幹部はこう語る。
自民やJA全中はコメ、砂糖、麦、乳製品、牛豚肉の5分野を「聖域」扱いするよう求めている。だが、高い自由化を迫られる以上、この5分野すべてを無傷でしのぐことは不可能とみられている。
限られた情報と予算制約の壁。そうした中で農業関係団体や農家、そして世論を納得させつつ、「強い農業」に向けた有効な対策を打てるのか。
TPP交渉参加で、政府、与党、農業関係団体はWTO交渉時以上に厳しい利害調整を強いられることになりそうだ。
●首相「農業は国の礎」 衆院予算委でTPP集中審議
朝日 2013年3月18日11時51分
衆院予算委員会は18日、環太平洋経済連携協定(TPP)に関する集中審議を開いた。安倍晋三首相は「農業は国の礎で日本文化そのもの。経済的損得勘定だけで切り捨てるのは間違いだ」と述べ、TPP参加で打撃を受ける国内農業を守る意向を強調した。
政権はTPPに参加した場合、10年後に国内の農林水産業の生産額が3兆円減ると試算している。農産物を関税撤廃の例外品目とすることについて、首相は「日本は米国から多くの農産物を購入する輸入大国だ。それを力に変えて交渉を進める」と強調。国内農業の保護に全力を尽くす考えを改めて示した。
TPP交渉にはすでに11カ国が参加し、交渉の出遅れも指摘されるが、「日本は経済力第3位を誇る国で、その経済力にふさわしい交渉力が備わっている」と自信を見せた。さらに「TPPには途上国もいる。そういう国々とどういう連携をしながら国益を確保するかが、多国間交渉では大きなポイントになる」とも語った。
●安倍首相攻めあぐむ3野党=TPPめぐり本格論戦-衆院予算委
時事 (2013/03/18-21:24)
安倍晋三首相の環太平洋連携協定(TPP)交渉参加表明を受けた18日の衆院予算委員会集中審議。
夏の参院選で野党第1党を堅持したい民主党と、党勢拡大を狙う日本維新の会、みんなの党が、自民党との違いを示すのに躍起となった。ただ、維新とみんなは交渉参加に賛成、民主党も野田前政権で交渉参加を探った経緯があるだけに、首相を攻めあぐむ場面が目立った。
「私どももTPPには前向きだった」。民主党で最初に質問に立った松本剛明税調会長は、交渉参加自体は問題にせず、政府の交渉戦術や、自民党の衆院選公約との整合性に攻撃の的を絞る姿勢を示したため、おのずと攻め口は限られた。
民主党の大串博志氏は、農業団体によるTPP反対集会やデモ行進を取り上げ、「この人たちの理解が得られていない。結果責任として(自民党は)公約を守っていない」と追及。しかし、首相は「聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加に反対すると言い続けてきた。前提でないということは、交渉するということだ」と一蹴した。
維新の阪口直人氏は「交渉参加を決断した点については敬意を表する」と、まずは首相の対応を評価。一方で、米側が重視する自動車分野を関税撤廃の例外として認めたとして「自動車で公正な競争条件を放棄するというとんでもない条件だ」と批判したが、首相は「ぶつかり合っているのが経済交渉だ。(交渉参加を)決断しなければどんどん不利になる」とあっさりかわした。
みんなの浅尾慶一郎政調会長もTPP交渉参加には賛成しているため、首相の判断自体は問題とせず、農政の在り方を取り上げ、「TPPに参加しようがしまいが農業所得は減っている。対策が必要だ」と主張。首相は「農業は現状でも人口が減少している。農家の所得を上げるため具体的な政策作りを行っていきたい」と応じ、論戦は深まらなかった。
日本が交渉に参加するのは早くても7月。同月に想定される参院選までには交渉の成否は明らかになりそうになく、3野党がTPPを争点化するのは難しそうだ。
●TPP参加でGDP2~3兆円底上げも農家には10兆円の補助金か
週刊ポスト2013年3月29日号 2013.03.18 16:00
アベノミクス「3本の矢」の一つ、成長戦略のため、安倍政権はついにTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加を表明したが、「日本の農業が崩壊する」と反対してきた農協は猛烈な抵抗を見せている。
だが、ここには茶番劇の臭いがプンプンと漂っている。
「TPPは震災から立ち上がろうと努力している希望を打ち砕く選択にほかならない」と農協のトップ、萬歳章・全国農業協同組合中央会(全中)会長が叫べば、「米、乳製品、砂糖、牛肉などの品目は必ず死守しなければなりません」と自民党農水族のドン、石破茂・幹事長が応じる。
3月12日に東京・日比谷で4000人を集めた反TPP集会は、農協をはじめとする反対派の強い結束を印象付けた。
では、郵政民営化の時のように、抵抗勢力と化した農協を改革に燃える安倍政権が正面突破するのかといえば、そうはならないだろう。
大規模な反対運動のウラで、政権と農協側はすでに“条件交渉”を始めているからだ。
「TPP参加は既定路線だから、あとは農協を通じた農家への補助金交渉になる。農協は、1993年にウルグアイ・ラウンドで米市場の一部自由化を決めた際には、8年間で6兆100億円という巨額の農業対策予算を引き出した。
関税撤廃品目次第では、今回は10兆円規模の減額交渉になるのではないか」(安倍ブレーン)
自民党のTPP対策委員のひとりもこういう。
「北海道庁がTPPによる道内の損失額を米1130億円、小麦418億円などトータルで2兆1254億円と試算している。委員会では農水族の議員が『北海道だけでこれだけの数字になるんだ!』といいながら、補償額について話し合っている。最低でもウルグアイ・ラウンドの6兆円は超えるはずだ」
もっとも、財務省は「1兆円も出す余裕はない」(財務官僚)として、実際の金額交渉はこれからが山場だが、いずれにしても議論は「参加の賛否」ではなく、「いくら払うか、いくらもらえるか」に移っている。
安倍政権による農協懐柔作戦はすでに始まっている。農水省は2013年度予算を前年度比5.7%増に増額し、その多くを田んぼの大規模化や水路の整備といった農業農村整備事業に充てる。
「全中の幹部から聞いた話では、自民党の財務畑の議員から『あんまり抵抗されると予算に影響しますよ』と予算カットを匂わされたという。全中の内部も、抵抗はほどほどにすべき、というムードです」(農水族議員秘書)
交渉参加に本気で反対するより、反対の“ポーズ”を取ることで多額の補助金を掠め取るほうが得―反対派の内部には、こうした本音が見え隠れする。
最大の問題は、そうした“出来レース”が国民にとってマイナスになる、ということだ。内閣府はTPP参加により年間GDPが2.4兆~3.2兆円底上げされると試算している。だが、そのために農家に10兆円規模の補助金を出すとなれば、本末転倒だ。
●【TPPの真実】本当なのか安倍首相のTPP参加のメリット 聖域や国益など守れるハズなし
日刊ゲンダイ 【政治・経済】2013年3月16日
米隷従の自民安倍政権に米国との交渉力など全くなしと専門筋
安倍首相が15日、TPP交渉参加を正式に表明したが、ぶったまげたのはその言い草だ。
自民党は先の選挙で「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、交渉参加に反対する」と明言。あたかも「TPPには慎重」の姿勢を装ってきた。6割を超える議員がTPP反対を売り物に選挙を戦い、勝ち抜いてきたのは周知の通りだ。
ところが、安倍は「TPPがアジア太平洋の世紀の幕開けとなった。後世の歴史家はそう評価するに違いありません」「その中心に日本は存在しなければなりません」「TPPへの交渉参加はまさに国家百年の計であると私は信じます」と高らかに宣言したのである。
もう筋金入りのTPP礼賛ではないか。会見では取ってつけたように「聖域」についても触れた。しかし、「守るべき項目をしっかりと胸に、強い交渉力を持って結果を出したい」と言っただけ。質疑応答で「(聖域の重要5品目の関税を)堅持できない場合、TPP交渉から離脱するのか」と突っ込まれると、「今ここで離脱するかどうかを申し上げるのは国益に反する」とゴマカした。
最初から交渉参加ありき。それがものの見事に露呈した記者会見だったのである。
東大大学院教授の鈴木宣弘氏は「民主党の公約破りをあれだけ非難してきたのに、自民党の公約破りは許されるのか。有権者に対する信じがたい背信行為だ」と言ったが、本当だ。
一事が万事で、安倍や政府が説明するTPPに関する話はことごとくデタラメだ。とにかく、米国に言われたから、TPPに参加する。国益は二の次三の次。そのために、二枚舌を弄して、国民を騙(だま)し続けてきたのが真相だ。
<国民皆保険は揺らぎ、食の安全もなし崩し>
安倍は会見で「TPPはアジア太平洋の未来の繁栄を約束する枠組みだ」「日本の国益だけでなく世界の繁栄をもたらすものと確信している」とも言った。
すべてウソッパチである。TPPについては医師会は連日、意見広告を出して反対している。JAは4000人デモ行進で反対した。未来の繁栄を約束するのであれば、なぜ、かくも反対運動が起こるのか。すべてが詭弁(きべん)だからである。前出の鈴木宣弘氏が言う。
「医師会が反対してるのはTPP参加によって、国民皆保険が揺らいでくるからです。米国は長年、日本の医療制度を攻撃し、崩そうとしてきた。国民健康保険があると、米国の保険会社は商売がやりにくいし、日本の薬価制度は米の製薬会社には参入障壁になるからです。企業にとって邪魔なものは排除する。政府が従わなければ、ISD条項で訴える。これがTPPですから、当然、国民皆保険もターゲットになる。TPPは皆保険崩壊を加速させることになるのです。
農業についても同じです。米国は乳製品と砂糖を例外品目にしようとしたが、オーストラリア、ニュージーランドの反発で、認められそうにない。聖域なき関税撤廃が前提なのですから、日本の農業の聖域が守られるはずがないのです。米国は日本の厳しい食の安全基準も問題視している。TPPに参加すれば、農業が大打撃を受けて、地域経済、コミュニティーが崩壊するだけでなく、食料自給率は低下し、食の安全基準の緩和も余儀なくされ、国民の健康不安も増大することになります」
バラ色の未来なんて、とんでもない話なのだ。
<これから参加する日本に交渉の余地なし>
安倍や政府は「各国とも聖域はある」「交渉次第だ」みたいな言い方もしているが、これも大ウソだ。
「遅れて交渉に参加したカナダやメキシコは、すでに決まっている条件については口出しできず、今後、決まることについても先に交渉に参加している国の意向が優先されることになっています。そういう念書が交わされたのですが、日本も同じですよ。つい最近、シンガポールで行われた交渉で米国の担当官は『日本は交渉する時間も権利もないんだよ』と言ったといいます。交渉次第で聖域が守られるというのはマヤカシです」(鈴木宣弘氏=前出)
そうこうしているうちに、事前協議で米国の自動車の関税維持や日本は米国車の安全基準を受け入れること、最低輸入台数の設定、学資保険の内容変更などを求められていることがバクロされた。もちろん、安倍政権はグニャグニャだろう。
自民党は先の選挙で、自動車など工業製品の数値目標は受け入れない、国民皆保険は守る、食の安全は守る、ISD条項には合意しない、など6項目の公約を掲げた。これらが守れないなら、直ちに交渉から脱退すべきなのに、安倍は言を左右にしてしまう。
国民には情報を開示しないまま、国益に反する秘密交渉が進んでいる証拠だ。いや、交渉ではなく、一方的な譲歩を迫られ、ドンドン、それに応じている。それが真相に近い。こりゃ、国民生活や日本の産業は大変なことになる。米国を筆頭に他国の草刈り場になってしまう。それがTPPの現状、惨状なのである。
<すべては安倍首相の政権維持のため>
元外交官で、あまたの国際交渉を経験してきた孫崎享氏は「TPPで日本は得るものは何もない。ひとつの例外を除いて……」と言った。
その例外こそがTPPの本質だ。
「米国の言いなりになって、政権維持をしてもらうこと。それしかメリットはありません。つまり、安倍首相のためだけのTPPです」
そうなのだ。それほど、この交渉は不可解、奇怪で、国民にはいいことがひとつもないのである。孫崎享氏が続ける。
「全体会議は7月で終わります。すでに条約は出来上がっているのも同然で、すぐにシャンシャンでおしまいになる。日本が聖域の交渉をできる余地はないのです。
日米首脳会談の合意文書には『すべてが交渉で決まる』かのような表現が出てきますが、これは『最初から聖域なし』と約束するわけではないという当たり前のことを言っただけ。交渉の余地がないのは政府も知っているはずです。それなのに国民には何も知らせず、後発国には出る幕がない交渉に参加する。これは白紙委任状と同じです。そうまでしてなぜ、参加するのか。安倍首相のメリットしか思い当たりません」
だとすれば、今後の交渉の結末も見えてくるというものだ。
これまでもウソをつき通してきたように、今後もウソとゴマカシで国民をけむに巻く。しかし、最終的には日本市場を丸ごと米国に手渡すわけだ。亡国政権の身勝手を断じて許してはいけない。 .
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