tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

ブランクダイバー

2008-12-24 23:12:35 | プチ放浪 海沿い編

 
 
 
 

忘れられない一枚の写真がある。悲しいほどピンボケの水中写真。その片隅には、見覚えのあるウェットスーツ。

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ぼくがダイビングに夢中になってた頃の話だ。もう、20年も前。ちょうど、バブル景気時代に公開された『ホイチョイ3部作』の第2作、原田知世主演の映画『彼女が水着に着替えたら』の前の年あたりのことだったと思う。バブル経済に浮かれ、若者の海外でのリゾートダイビングは当たり前のこととなっていた。

ぼくは機材のセットを終え、そろそろ5mmのツーピースでは限界を感じてきた11月の伊豆海洋公園の石浜に座って、ダイビングツアーのメンバーとその日の一本目のダイビングを待っていた。
そのときぼくの横には、同じようにツーピースのウェットスーツを着た白髪のシニアの方がいた。その日、ぼくのバディをしてくれた方だった。当時、シニアの初心者ダイバーって珍しかった。ダイバーと言えば、ぼくのように、はでな色のウェットスーツを着たアドバンスに挑戦中の生意気な若者ダイバーか、真っ黒のプロ仕様のウェットスーツを着た年配のインストラクターかのどちらかだった。

「城ヶ崎海岸(伊豆海洋公園)は、冬がきれいだね」
とぼくに話しかけてきたその方。
「そうですね!!」
ぼくがそう応えると、こんな話を聞かせてくれた。

「私は前はそんなにダイビングに興味はなかったんだ。でもうちのカミさんが大好きでね・・・・・・伊豆の海に潜っては、サカナの写真を撮るのがとても好きだったんだ。
良く撮れたものを家に飾るんです。ある日カミさんにどうしてもと言われ、2人でここに来たんです。体験で潜るためにね。潜ってからやみつきになってね・・・・・・オープンウォーターのライセンスを取って、時には2人で海外へ潜りに行ったりしたんですよ。

でもカミさん・・・・・・(ガンで)亡くなってしまってね・・・・・・。今日は3年ぶりに潜りに来たんですよ。上手くはないんだけど、こうしてカミさんの使っていたニコノスも持ってね。良く撮れた写真を仏前に飾ってあげるつもりなんですよ」

その方は笑顔で話してたけどぼくは涙を堪えるのに必死だった。素晴らしい夫婦愛の話と、楽しそうにサカナを追っかけていたその方の笑顔は忘れられない。奥さんが隣で笑ってるように感じていた。
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そのブランクダイバーから届いた一枚のクリスマスカード。カードには、恐ろしくピンボケした水中写真と、その片隅には、見覚えのあるウェットスーツが写っていた。
当時、写真を印刷できるプリンターなどはなく、写真を使ったカードはすべて写真印刷。最低でも数十枚は注文しなければならないから、たぶん、そのピンボケ写真がベストショットだったのだろう。

片隅に写っているダイバーは、ぼくだ。あの時、海底のカサゴにちょっかいを出しに行ってたのだが、彼は、バディとしてそばについていてくれたんだ。
”クリスマスカードに水中写真なんて”と思っていたのだが、忘れられない一枚となっている。
Merry Christmas!

 


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