司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

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合併による消滅会社の電子公告による決算公告の継続について

2008-03-12 16:25:58 | 会社法(改正商法等)
 私見に基づくものであることを、予めお断りしておく。

Q.吸収合併により消滅する株式会社が、電子公告の方法による決算公告を行っている場合、吸収合併存続会社は、5年間の公告を継続すべきか?やめることは可能か?

A.継続すべきである。中断すれば、吸収合併存続会社は、自らの定款で定める公告方法により、改めて吸収合併消滅会社の決算公告を行う必要がある。



 株式会社が定款で定める公告方法として電子公告を採用している場合に、いわゆる決算公告を行うときは、定時株主総会の終結の日後5年を経過する日までの間、継続して電子公告による公告をしなければならない(会社法第940条第1項第2号)。いわゆる電磁的方法による開示制度は、5年間継続してその措置をとり続けることにより、決算公告義務を免除するものであるが、電子公告採用会社においては、5年間継続して電子公告による公告を全うすることにより、決算公告が完了することになる。言い換えれば、5年間継続しなければ、決算公告をしなかったことになるのである。

 このような電子公告採用会社が吸収合併消滅会社となって吸収合併を行う場合に、電子公告による公告の継続が問題となるが、吸収合併存続会社は、吸収合併により吸収合併消滅会社の権利義務の全部を承継する(会社法第750条第1項)のであり、5年間継続して電子公告による公告を全うしなければ吸収合併消滅会社の決算公告はなされなかったことになり、吸収合併存続会社において吸収合併消滅会社の決算公告義務(会社法第440条)を承継することとなって、過去の決算公告をやり直すことが必要となるわけであるから、当然継続すべきである。

 この場合に、従来のURLをそのまま利用できるのであれば、そのまま利用する方法もあり得る。しかし、ドメインの継続利用が不可である等の理由により、そのまま利用できない等の場合には、吸収合併存続会社の公告方法によって、次のように取扱いが分かれると考えられる。

①電子公告の場合
 吸収合併存続会社の登記されたアドレスから容易にたどり着けるようにしておけばよい。吸収合併存続会社の法定公告のサイトから吸収合併消滅会社の計算書類公開ページにたどり着けるように、わかりやすいリンクを張っておけばよいであろう。このような方法をとることによって、5年間の継続という要件は満たされると考える。
 吸収合併の効力発生日以前に、吸収合併消滅会社において、URLの変更の登記をしておく方法も考えられるところであるが、そこまでの必要はないであろう。利害関係者一般の感覚として、吸収合併存続会社のHPにアプローチすれば、吸収合併消滅会社の情報にたどり着けるであろうと考えることは容易であるからである。

②官報又は日刊新聞紙の場合
 公告中断により吸収合併消滅会社の決算公告はなされなかったことになるわけであるから、吸収合併存続会社は、自らの定款で定める公告方法によって、吸収合併消滅会社の過去の決算公告をやり直すことが必要となる。
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