株式会社の設立にあたり,Aが100%出資し,Bを唯一の取締役として経営の任にあたらせる,ということは,しばしば行われているように思われる。「所有と経営の不一致」状態である。
このような株式会社において,何らかの事情により,Bはその任にあらずとして,株主総会(=A)がBを解任することがあり得る。そして,Cを新たに唯一の取締役に選任した・・・。
新代表取締役であるCは,当然,速やかに変更の登記を申請するわけであるが,「役員全員の解任を内容とする登記申請があった場合」であるとして,登記完了までに時間がかかっているようである。
cf.
平成24年1月13日付け「乗っ取り目的で,会社登記の虚偽の変更」
やむを得ないのかもしれないが,登記が完了しないと,新代表取締役は諸々の手続に着手できない(登記申請の受理証明書で対応してくれるところもあるが。)。なんとかならないものであろうか。
なお,このようなケースの株主総会にBがノータッチである場合,「取締役・監査役を排除した全員出席総会の決議には,取り消し得べき瑕疵があると解すべきである」(江頭憲治郎「株式会社法(第4版)」308頁)という見解もあるが,この立場に立つと,株主総会の日から3か月を経過するまでは変更の登記を申請することができなくなってしまう(商業登記法第25条第1項)。
だからと言うわけでもないが,株主全員出席総会である場合には,「取締役に株主総会招集がなされず,取締役が出席していなくても原則としてその決議に瑕疵はないとするのが相当」(東京地方裁判所商事研究会編「類型別会社訴訟Ⅰ(第3版)」(判例タイムズ社)392頁以下)の立場を支持したい。
cf. 最高裁昭和46年6月24日第1小法廷判決
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=51929&hanreiKbn=02