平成28年10月1日施行予定の商業登記規則の改正に関して,実務上,次の疑問がある。
Q 「株主リスト」の作成に際して,株主の現在住所が不明(株式会社が株主に対してする通知又は催告が長期にわたって継続して到達しない)である場合には,住所はどのように記載するのか。
この問いに対する答えは,
A 株主の現在住所が不明であったとしても,株式会社が情報として把握している住所を記載すればよい。
※ パブコメの結果44及び45参照
である。
ところで,この場合に,
Q 司法書士は,商業登記の申請代理に際して,株式会社から「株主リスト」の作成のために株主の住所の調査依頼があった場合,職務上請求用紙を使用することができるか。
という疑問が生ずるであろう。
この問いに対して答えるには,その前提として(そもそも論として),
Q 株式会社は,「株主リスト」の作成のために株主の住所の調査をすることを目的として,戸籍法等の第三者請求をすることが可能であるのか。
を検討する必要があろう。司法書士が職務上請求用紙を使用することができるのは,依頼者が戸籍法等の第三者請求をすることができる場合に限られるからである(その範囲を超えて,職務上請求をすることができる特権的地位にあるわけではない。)。
住民基本台帳法第12条の3第1項の規定によれば,次のいずれかの要件を満たす必要がある。
(1)自己の権利を行使し,又は自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある
(2)国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある
(3)前二号に掲げる者のほか、住民票の記載事項を利用する正当な理由がある
(1)について,株式会社が自己の権利を行使し,又は株式会社が株主に対する義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある場合として通常想定されるのは,株主に対して訴訟等を提起する場合である(この場合は,もちろん可である。)。
もちろん株式会社としては,株主に議決権を行使して欲しい(そうでなければ,株主総会の決議等をすることができない。)等で,株主の住所を調査したいニーズがあることも多いであろうが,訴訟等を提起して議決権の行使を求めることができない以上,これを理由として,第三者請求をすることは不可であろう。
(2)について,株主の住民票の写し等を国又は地方公共団体の機関に提出することは,通常はあり得ない。今般の「株主リスト」においても,株主の住民票の写し等の原本を提出しなければならないわけではない。
とすると,(3)の正当理由の存否が問題となるが,株式会社と株主の関係においては,通常は想定し得ない。
「株主リスト」の作成の前提としての「株主名簿」の整備の場面で,株主の住所を調査することが「住民票の記載事項を利用する正当な理由がある」場合と言えるかについては,上記のとおり,株主名簿には「株主の現在住所が不明であったとしても,株式会社が情報として把握している住所を記載すればよい。」のであるから,正当理由があるとは言えないであろう。
というわけで,
Q 株式会社は,「株主リスト」の作成のための株主の住所の調査をすることを目的として,戸籍法等の第三者請求をすることが可能であるのか。
という問いに対しては,
A 不可である。
という答えになろう。
したがって,依頼者である株式会社がそもそも戸籍法等の第三者請求をすることが不可である以上,
Q 司法書士は,商業登記の申請代理に際して,株式会社から「株主リスト」の作成のために株主の住所の調査依頼があった場合,職務上請求用紙を使用することができるか。
という問いに対しては,
A 不可である。
と解さざるを得ないものと考える。
今般の商業登記規則の改正の趣旨の一として,株式会社の実質的所有者情報の把握という点があることから,国家政策的には,株主の現在住所が記載されるのが望ましいのであろうが,戸籍法等の第三者請求の可否の観点からすれば,上記のとおり,「不可である」と考える。
Q 「株主リスト」の作成に際して,株主の現在住所が不明(株式会社が株主に対してする通知又は催告が長期にわたって継続して到達しない)である場合には,住所はどのように記載するのか。
この問いに対する答えは,
A 株主の現在住所が不明であったとしても,株式会社が情報として把握している住所を記載すればよい。
※ パブコメの結果44及び45参照
である。
ところで,この場合に,
Q 司法書士は,商業登記の申請代理に際して,株式会社から「株主リスト」の作成のために株主の住所の調査依頼があった場合,職務上請求用紙を使用することができるか。
という疑問が生ずるであろう。
この問いに対して答えるには,その前提として(そもそも論として),
Q 株式会社は,「株主リスト」の作成のために株主の住所の調査をすることを目的として,戸籍法等の第三者請求をすることが可能であるのか。
を検討する必要があろう。司法書士が職務上請求用紙を使用することができるのは,依頼者が戸籍法等の第三者請求をすることができる場合に限られるからである(その範囲を超えて,職務上請求をすることができる特権的地位にあるわけではない。)。
住民基本台帳法第12条の3第1項の規定によれば,次のいずれかの要件を満たす必要がある。
(1)自己の権利を行使し,又は自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある
(2)国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある
(3)前二号に掲げる者のほか、住民票の記載事項を利用する正当な理由がある
(1)について,株式会社が自己の権利を行使し,又は株式会社が株主に対する義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある場合として通常想定されるのは,株主に対して訴訟等を提起する場合である(この場合は,もちろん可である。)。
もちろん株式会社としては,株主に議決権を行使して欲しい(そうでなければ,株主総会の決議等をすることができない。)等で,株主の住所を調査したいニーズがあることも多いであろうが,訴訟等を提起して議決権の行使を求めることができない以上,これを理由として,第三者請求をすることは不可であろう。
(2)について,株主の住民票の写し等を国又は地方公共団体の機関に提出することは,通常はあり得ない。今般の「株主リスト」においても,株主の住民票の写し等の原本を提出しなければならないわけではない。
とすると,(3)の正当理由の存否が問題となるが,株式会社と株主の関係においては,通常は想定し得ない。
「株主リスト」の作成の前提としての「株主名簿」の整備の場面で,株主の住所を調査することが「住民票の記載事項を利用する正当な理由がある」場合と言えるかについては,上記のとおり,株主名簿には「株主の現在住所が不明であったとしても,株式会社が情報として把握している住所を記載すればよい。」のであるから,正当理由があるとは言えないであろう。
というわけで,
Q 株式会社は,「株主リスト」の作成のための株主の住所の調査をすることを目的として,戸籍法等の第三者請求をすることが可能であるのか。
という問いに対しては,
A 不可である。
という答えになろう。
したがって,依頼者である株式会社がそもそも戸籍法等の第三者請求をすることが不可である以上,
Q 司法書士は,商業登記の申請代理に際して,株式会社から「株主リスト」の作成のために株主の住所の調査依頼があった場合,職務上請求用紙を使用することができるか。
という問いに対しては,
A 不可である。
と解さざるを得ないものと考える。
今般の商業登記規則の改正の趣旨の一として,株式会社の実質的所有者情報の把握という点があることから,国家政策的には,株主の現在住所が記載されるのが望ましいのであろうが,戸籍法等の第三者請求の可否の観点からすれば,上記のとおり,「不可である」と考える。