超訳「哲学用語」事典
小川仁志著
PHP文庫 648円
法学部に入学した時、「よし遊ぶぞ!」という若気の至りにブレーキをかけていただいた哲学の教授。
ギリシャ哲学からカントやウィトゲンシュタインまで、身近な事例を用いながら、かつ高尚な講義内容は、「知」の世界の扉を開きました。
今まで知らなかった世界に踏み込む冒険心、リベラルアーツの面白さのツボを刺激し、学問することを基礎づけていただいたように思います。
八幡教授、ありがとうございました。
当時、アプリオリな概念、アガペー、レゾンデートル、アウフヘーベン・・・といった難解な哲学用語を理解するのに大変苦労したことを覚えています。
図書館で哲学用語辞典を調べるものの、その解説が理解できない・・・。
教授に質問しても、この本を読んだら・・・という指示があるのみ。
哲学という学問は、まずは、部屋にこもって徹底的に読書することしかないのかも知れません。
その風潮に新しい流れが生じ始めたのは、フジテレビの「お厚いのがお好き?」。
小山薫堂氏企画の見るだけでわかる哲学の簡易解説。
この番組で、哲学ファンになさった人も多いと思います。
そして、今回の一冊は、今までの哲学業界に新風を吹かせる一冊。
日本の頑固でアタマガチガチの哲学学者の先生方は、思いっきり無視するか、バカ呼ばわりするかのどちらかだと思います。
著者の小川仁志氏は、奥付によると高専の准教授。
1970年生まれ。
京大卒業後、伊藤忠商事、4年間のフリーター、名古屋市役所へて現職。博士(人間科学・名古屋市立大学)。
なかなか哲学者的な風情がありそうな魅力ある人物像です。
この超訳本は、一言でいうと難解な哲学用語を、意訳してワンフレーズで言い切ってしまおうという試み。
全体的に、とてもバランスが取れた意訳ぶりに膝を叩きました。
たとえば、
「ルサンチマン」・・・負け惜しみ
「アガペー」・・・無償の愛
「イデア」・・・理想像
「アンガージュマン」・・・積極的なかかわり
「定言命法」・・・無条件の義務
「アンチノミー」・・・どっちも成り立つこと
「正義」・・・社会における平等のこと
といった具合です。
小川准教授は、PHP新書から「人生をやり直すための哲学」も出しています。
高尚な西洋哲学をベースに身の上相談しようという試みも新規性があり、思わず買ってしまいました。
夫婦仲が悪い場合ソクラテスならどう答えるか、仕事の成果が上がらないときヘーゲルならどう回答するか・・・という身の上相談が20テーマ掲載されています。
小川氏は、哲学カフェも主催されているようで、まさに西洋哲学の民主化の旗手と呼べると思います。
文庫本で哲学できる一冊。
お勧めです。