「科学的管理法」を読むと、いつも新たな発見があります。
年に数度、意識して目を通すようにしています。
マネジメントの原点となるこの著作。
フレデリック・テーラーが生涯を奉げた思想・方法論が凝縮しています。
日本国内に普及したのは上野陽一訳の産業能率大学出版部刊行のもの、最近ではダイヤモンド社から新訳版が出版されています。
かなりの苦労人だったテーラー氏。そのバイタリティとチャレンジ精神には脱帽させられます。
小職の修士論文から、一部を紹介させていただきます。
以下 引用 南北戦争終結後、米国の工業は急速に発展、世界トップクラスの工業国の仲間入りを果たした。
これを支えたのが資本力、プロテスタント教徒としての勤勉な国民性、そして工業技術力の進化であった。
鉄鋼工場や繊維工場では、従来の成り行き管理や経験・勘・度胸に頼った現場管理に限界に達しており、これを改善するための努力が続いていた。
これを支えたのが大学で工学を修めた専門家であり、また工場現場において科学的アプローチを試みた現場社員の集団であった。
その先鞭をきったのがフレデリック・ウィンスロー・テーラー(1856~1915) 。
テーラーは、1856年に米国ペンシルバニア州の裕福な家庭に誕生した。
父親は弁護士であり、テーラー自身、ハーバード大学法科に入学した。
しかしながら、受験勉強のため目を悪くし勉学の継続が難しくなり大学を中退しています。
その後、テーラーは肉体労働者として鋳型工や機械工として働き、1878年、フィラデルフィアにある鉄鋼会社ミッドペールスティール社に入社、10年後、技師長に昇進した。
彼は勤務のかたわら大学の夜間部へ通学し、工学修士を取得。
1903年には著作「工場管理」を発表した。
彼は、生産現場の中の体験、経験、観察から、そして工学理論というアガデミックなカテゴリーから「科学的管理法」を理論構築していくことになる。テーラーシステム、テーラー主義と呼ばれる一連の管理技術である。
テーラーは、工場現場における労働者の怠業や非効率的な労働に対し、出来高払制、職長制度、計画部の設置等の改善策を打ち出し、資本家にとっても労働者にとっても最適な生産体制を構築することを目指した。
このため、生産現場における時間研究、ズク運びの研究、ショベル作業の研究、レンガ積みの研究、自転車用球の検査作業の改善、金属を削る作業の研究を実施した。
テーラーの著「科学的管理法」では、これらの研究の成果が詳細に記述されている。
基準仕事量(task)と標準的な手順を合理的、科学的な方法で決定すること、管理者のもとで計画的に活動を行うことにより、能率・生産性を最大限にすることを目指した。
当時は、現場の親方(職長)により現場仕事の監督が行われていたが、計画と執行に分離、計画部を設置し労務係・時間原価係・工程係・指図票係の四つの職長clerkを置くべきこと、また、工場長の下には準備組長boss・速度組長・検査組長・修繕組長を置くべきとした。
ただし、シカゴ大学教授ホクシーの研究によると、実際に差別的出来高払い制と職能的職長制度は、ほとんど実施されていない。
テーラーは、対労働者、対労働組合との関係性の中での葛藤に悩んだ。
科学的管理法の基礎に労使関係を位置づけ、この解決に向けての改善策を模索したのである。
生産性を低減させる怠業を指摘するとともに、生産性の向上こそが労使双方の利益になることを主張したのである。
怠業には、3つの原因があるとしている。
怠業の第一原因としての
「能率を上げると失業者ができるという誤解」、
怠業の第二原因としての「不完全な管理法は怠業を奨励する」、
怠業の第三原因としての「工員まかせは非能率のもと」である。
テーラーは、科学的管理法を展開していく中で、人間としての生産現場で働く労働者を常に意識していたのです。
テーラー、テーラーに対する「人間を機械視する」「人間性の無視」という批判は現在も続いていますすが、その主著「科学的管理法」の最終章に「人々の幸福に貢献」と記していることが無視されてはならない・・。と、思います・・・。
以上