グロービス経営大学院を創業した堀さんの人生論。新装版として再登場しました。もともと理系でありながら、日本人として、地球人としての感性を持つ堀さん、同書自体の構成がMECEに組み立てられています。
6つの座標軸から、人生を俯瞰するスタンスは、とても参考になります。
「新装版 人生の座標軸 起業家の成功方程式」
堀義人著 東洋経済新報社 1600円+税
6つの座標軸とは、
①個人
②家庭人
③組織人
④日本人
⑤アジア人
⑥地球人
という6つのカテゴリー。
④から⑥は、とてもグローバルな視点、視座です。ダボス会議への参加、ハーバード大学卒業生理事としての活躍、東日本大震災への支援・・・さまざまな分野で地球的な視点が盛り込まれています。
同書を読んで興味深かったのが、著者の家庭を大切にする姿勢。奥さんと5人の男の子を育てる父親としての力点が具体的に記述されています。
経営理念ならぬファミリー理念を創り、これに基づき家庭をマネジメントしていく・・・。MBAホルダーらしい取組です。
子供を育てるにあたって奥さんと十分にすりあわせ(ここが大事ですね)、育成方針に落とし込む。MBO(目標による管理)やOJTのステップです。
①人に迷惑をかけない
②友達を大切にする
③クリエイティブに生きる
④大きな志を持ってほしい
⑤自らの言動に責任を持ってほしい
なかなか素敵な家訓です。
教育の土台は、家庭教育にあることを、堀さんも強く認識されているのだと思います。
そして、
堀さんの持つ「志」、そして日本、アジア、世界への想いへとつないでいくことを同書では順を追って説明していきます。
学校を作ることは、単純にお金儲けだけでやってはいけないと思うし、また、経済的基盤のない理念、寄付行為もまた空しいものだと思います。エンロン事件、リーマンショック以降、資本主義の寵児ともいえるMBA教育に対する疑義も投げかけられています。ミンツバーグ教授も早い時期からMBAへの懐疑をなげかけています。フレームークだけで人は動かせないし、ファイナンスやゲーム理論だけで利益を産みだすことはできないのです。
長年、廃業率が開業率を上回っている日本の産業界。大手有名企業への就職を希望する大学生。起業家がなかなか生まれにくい昨今です。
そうした中、MBA教育で日本、アジアを変えていこうという姿勢には大賛成です。
ただ、
起業してお金持ちになろう、そして余裕ができたら社会貢献しようレベルでは、堀さんのいう「志」ではないような気がします。経営のお勉強だけでは、かなりのマイオピアで頭でっかちの逆起業家となります。堀さんは、経営の厳しい現実も踏まえながら、そのバランスも教育されていると思います。
同校からも、組織や地域社会、アジア、地球を良い方向に導く卒業生が出てくることを期待しています。人々を幸せにする組織や企業、ソーシャルデザイナーやアントレプレナーをどれだけ輩出できるかが、グロービスの今後を決めるファクタだと考えています。