はじめてマネジャーになったころ、
「マネジメントは正解ではなく、妥当解である」ということを、
アタマでは理解しつつ、現実的には正解の追及を行い、ずいぶん苦労したことがありました。
人のマネジメント・・・感情や好き嫌い、主義主張、日々の習慣、様々な価値観などを持つ部下、メンバーをマネジメントしていくことは、本当に大変。
マネジメントは、サイエンスではなく、アートやクラフトなのです。
今回とりあげる一冊は、社会人向けのビジネススクールを展開しているグロービスのマネジメント本。
まずは、とても装丁、デザイン、レイアウトが優れた本。最近出ている書籍の中でも秀逸です。しかも価格も安い。
社会人大学院へといざなうための戦術としては、うまく機能していると思います。
「グロービスMBA集中講義 実践マネジメント教室」
グロービス著 佐藤剛(経営大学院教授)
PHP研究所刊 1400円+税
目次
1.なぜ組織で働くのか
2.多様な組織のあり方
3.組織で働く
4.部下を持つとはどういうことか
5.マネジャーの苦労
6.組織構造を理解して組織を動かす
7.ゼネラルマネジャー
8.新しい流れ
同書は、組織とマネジメントの基本中の基本を分かりやす講義調で解説した一冊。
新任の係長やリーダークラスが読むと体系的な理解が進むと思います。
マネジメントには、様々なとらえ方がありますが、同書におけるマネジメントの定義は「人をその気にさせること」、そして、「組織のメンバーの行動変容を促すこと」。実にシンプルです。
そして、その方法として2つの手段をあげています。
1.対人コミュニケーション
2.制度設計と運営・・・人事制度、組織構造、組織文化
さらに、ここからの発展形として、リーダーシップの解説が入ります。
・リーダーシップ・・・新しいルールを作ること make a rulu
・マネジメント・・・決められたルールを守ること keep a rulu
まさに、そのとおりだと思います。
同書では、サイモンの「限定された合理性」、シュンペーターの「新結合」、レヴィンの変革モデルなどの経営の基礎理論も取り上げ、組織の持つ特に日本の組織の持つ課題、論点、問題点へのアプローチも射程に入れています。
最終章では、ワークライフバランス、ダイバーシティマネジメント、ネットワーク組織等のマネジメントの最新事情についても言及しています。
・日本の労働時間は1700時間。労働生産性は、米国60ドル、日本40ドル。
・ワークライフバランスは、マネジメントの原点。
・ダイバーシティの出発点は、採用。
・ネットワーク組織・・・心理的契約の見直し、自律的キャリアが求められる、自己充実感の追及 ・・・
いわば、新しい時代の新しいマネジメントの必要性についても易しく解説されています。
マネジメントを基礎から学んでみたい人、昭和の時代のマネジメントで石頭になっているベテラン管理職の方々にぜひ一読いただきたい一冊です。