能率技師のメモ帳 経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

マネジメント理論、経営理論を世のため人のために役立てるために

がんばれ!日本の小売業 和製スーパーマーケットはイノベーションを起こせるのか?渥美俊一さんの世界

2014年12月22日 | 本と雑誌

小売業というのは、面白いもので、誰でも語れるジャンルと言えます。


主婦でも、学生でも、サラリーマンでも・・・お店に行くと・・・、

ファサードから店頭まで自らの足と目で確認することが出来ます。

今では、開放的な店舗レイアントでバックヤードまでも見渡すことができます。


また、自分で商品を手に取り、試し、購入することも出来るのです。

まさにオープンな世界で、模倣が可能な世界。

これが工場であれば、さまざまなセキュリティにより肝心カナメの部分を見ることはできません。

また、本社ホワイトカラーのいる本丸でさえ、その現場を実際に見ることは難しいというのが現状です。

 

そんな中、ニッポンの小売業を憂い、出された一冊。


それが、今回取り上げる本です。

著者は、今年67歳になる桜井さん。

渥美俊一さんのお弟子さんとして小売業の最前線に立たれている流通コンサルタントです。


同書によると、日本のオーバーストア状況は米国を上回るもの。大変な状況です。

坪単価、坪当たりの売上に遜色はないものの、科学的な管理法、マネジメントが米国のスーパースーパーマーケット(SSM)に大きく遅れをとっており儲けが出ない状況にあると指摘します。

つまり、日本のスーパーマーケットには、インダストリアルなマネジメントが行われていない・・・効率的なチェーンオペレーションが展開されていないということなのです。

工業技術、テクノロジーでは、米国に遜色のない日本・・・でも流通の世界では、現場のガンバリズムで持ちこたえているのです。


そういえば、日本のSM、GMS、DS、ドラッグストア、CVSなどで日本の誇るロボット技術、オートメーション技術が活用されているというケースを聞いたことがありません。

どうしたことなんでしょうかね?


日本のSMをはじめてする小売業は、支店経営。

責任を持つ店長の経験・勘・度胸で、目標の予算を達成すべく、日々ドタバタ状況にあると指摘します。

肩で風を切っている本社のバイヤーさん・・・一体どんな仕事をされているんでしょうか?

店長に、数字責任や経営責任を押し付けていいんでしょうか?


チェーンストア理論が、日本に根付かない理由が、このあたりにありそうです。

本書で著者が指摘する最大のポイントは、支店経営方式から、チェーンストア経営方式への転換です。

渥美先生の指摘もまさに、この一点。

本社主導のチェーンストアオペレーションが機能しない限り、日本の小売業は利益の出ない不毛な市場に成り下がるのです。

 

ディベロッパーや資本の戦いになっている日本の小売業界。

・・・リテールのマネジメントは本当に大変だと思います。

*

「新スーパーマーケット革命 ビッグビジネスへのチェーン化軌道」

桜井多恵子著 ダイヤモンド社 2000円+税

 

目次

第1章 日本のSM業界の現状と問題点

第2章 アメリカのSSMに学ぶ

第3章 新・SM革命の基本戦略

第4章 新・SM革命における仕組みづくり

第5章 新・SM革命における店舗づくり

 

この本は、チェーンストアエイジ誌に連載された記事を書籍化した一冊。

スーパーマーケット・コンサルタントの第一人者の一人である桜井さんの鋭い分析、指摘が凝縮されています。


同書では、日本のスーパーマーケットの規模の小ささ、店舗数の少なさ、低い営業利益率など、さまざまな指標で米国より大きな遅れをとっていると指摘。

米国で主流となりつつあるスーパースーパーマーケット(SSM)、バーティカルマーチャンダイジングと日本の流通フォーマットを数字をベースとして、その課題をあぶりだしていきます。

このあたりは、名著「失敗の本質」ではありませんが、

サイエンスとして流通をとらえる米国と、気合と根性と人海戦術で戦う日本の構図が見えてきます。


営業利益率は、特売に代表されるH&L、人件費の増大等によって大きくへこみ、今では2%台になっていること。

こうなると、地方の中小企業はひとたまりもない状況だと思います。

 

著者は、同書の中で「日本のスーパーマーケットが直ちに目指したい経営効率」を指摘しています。な

かなか大変な指標です。

 

日本のスーパーマーケットが直ちに目指したい経営効率

1.  営業利益率 売上高対比4%

2.  営業利益率・部門ごと 荒利益の20%以上

3.  総資本経常利益率 3回転以上

4.  作業効率・会社全体

 労働生産性800万円以上、次いで1000万円以上

 人時生産性5000円以上・店段階6000円以上

 労働分配率38%

 従業員一人当たり面積15坪~20坪

5.  客一人当たり一回あたり 買上げ額2700円以上 買上品目15品以上

6.  1店あたり 商圏人口2.5万人以上・売場面積600坪以上(なるべく800坪以上)

7.  標準化した店数 直営200店以上・センター4か所以上

 

わたしの住んでいる地域も、今年一店の地場スーパーマーケットが閉店しました。

大手チェーンストアの出店にともなう「白旗」。

今までは、地域の独占店として存在していたのに、とても残念です。

今こそ、チェーンストア理論をもう一度読み直し、反転し、攻勢に出る好機であるという事も言えると思います。

がんばれ、ニッポンの小売業・・・です。


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