2018年6月1日 公明新聞
心身両面で長期にわたる支援を若い世代のがん患者への支援策を一層前進させる契機としたい。
国立がん研究センターは、AYA(Adolescent and Young Adult=思春期と若年成人)世代に関する、がんの実態調査を初めて行い、その結果を公表した。
同世代のがん対策を推進してきた公明党の取り組みが形になったものであり、評価できる。
同センターは、AYA世代を15~39歳とした上で、27府県の2009~11年のデータを基に全国の患者数を年間約2万1400人と推計した。
また、がんの種類についても調査し、最も多いのが、15~19歳は白血病、20代は卵巣や精巣などに生じる胚細胞腫瘍・性腺腫瘍、30代は女性の乳がんであった。
AYA世代は全患者数の約2.5%で、診療数が少ないため、医療機関が治療に関する知識や経験を蓄積しにくい。診療科間の連携強化も課題だ。
中高年や小児に比べて、5年生存率が伸びていないとの指摘もある。今回の詳細なデータを基に、診療体制の充実など的確な対策に生かしてほしい。
その上で欠かせないのが、長期にわたり患者をサポートしていく視点である。
AYA世代は、進学や就職、結婚、妊娠・出産と人生の節目を迎える大切な時期と重なる。
さらに、同じ年齢の患者であっても、家庭や就労、経済状況など取り巻く環境は千差万別だ。
世代特有の不安や孤独感を抱えながら、がんと向き合う患者を、どう支えていくのか。中高年のがんとは異なった対応が求められよう。
政府は、今年3月に決定した「第3期がん対策推進基本計画」の中で、小児(15歳未満)・AYA世代のがん対策の充実を打ち出している。
小児がん拠点病院の要件を緩和し、AYA世代への情報提供や相談支援などを手厚くする方針だ。
また、政府の委託事業として、17年度から医師や看護師など多くの職種を対象に、小児・AYA世代を長期にわたりフォローするための研修事業が実施されている。
こうした取り組みを重ね、一人一人に寄り添う支援体制づくりにつなげたい。
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若い世代のがんに支援をNHKオンライン
結婚、仕事…がんと向き合う「AYA世代」をどう支える
「AYA(あや)世代」とは、英語の「思春期と若年成人(Adolescentand Young Adult)の頭文字からつくられたことばで、10代後半から30代の人たちをさします。
今、AYA世代のがん患者は2万人以上いると推計され、この世代の患者をどう支援するかが課題になっています。
結婚後の将来の家庭に不安抱く
東京都内に住む、会社員のみち子さん(仮名・31歳)は、去年、持病のめまいを詳しく調べようと精密検査をしたところ、脳に腫瘍が見つかりました。
まだ若い自分がなぜ…と、現実を受け入れることができなかったといいます。
「あまりにもショックで病院で倒れてしまいました。これから結婚や仕事がどうなっていくのか不安がよぎりました」(みち子さん)。
みち子さんには、当時、結婚を前提に交際していた男性がいました。
家族と話し合ったうえで、その男性に腫瘍が見つかったことを伝えました。
すると翌日、「病気を理由に別れてほしい」とみち子さんのもとに連絡が入ったといいます。
みち子さんは、「病気を告げられても、彼の存在があるから私は大丈夫だと考えようとしましたが、別れてほしいと言われ身を投げてしまいたいと思いました」と辛い気持ちを打ち明けました。
今は定期的に検査を受けたり、経過を観察したりする生活を送り、職場や家族の支えで少しずつ元気を取り戻していますが、周りの女性たちと同じように結婚や幸せな家庭を持てるのか、不安は尽きないといいます。
がんと向き合い
前に進もうとするAYA世代
東京国立市に住む白石大樹さん(31歳)は、介護施設で働き、お年寄りの体力を維持する訓練をサポートしています。白石さんは27歳のときにがんの告知を受けました。
当時、白石さんは機械加工の職人になることを夢見て、工場に勤めていました。しかし働き始めて4か月、年の瀬が近づくある日のこと、持病の腹痛の治療を受けるなかで、甲状腺がんが見つかったのです。
リンパ節に転移も見られ、年明けには手術が必要だと告げられました。
治療して仕事に戻ろうと考えていた白石さんでしたが、思いがけない会社側の対応に愕然としました。
会議室に通され、目の前で自分の名前が書かれた退職願いの用紙を示されたといいます。気持ちを整理出来ないまま退職願にサインしましたが、ちょうど仕事納めの年末で、事情を知らない同僚のひと言に感情がこみあげたといいます。
「『来年もよろしくな』と言われたときに、来年、俺はいないよと思い、急に悲しくなりました。病気に対しても怖くなり、むなしさなどいろいろな思いが入り交じりました」(白石大樹さん)
手術を受け、徐々に体力も回復した白石さんは仕事を探し続けましたが、なかなか働き口が見つかりませんでした。
あきらめかけたころ、ハローワークで介護ヘルパーの仕事をすすめられ、新たな希望が見いだしました。
三鷹市のデイサービスで介護施設で働いて3年、病気の通院にも理解がある職場で、お年寄りを支える仕事に新たなやりがいを感じているといいます。
白石さんは夜は専門学校にも通い、作業療法士を目指しています。
「がんになっても自分たちの世代が持つ夢や将来を閉ざさないでほしい」というのが白石さんの願いです。
AYA世代に理解を
いまはがん医療も進歩して、多くの人が、がんと共存する形で社会生活を送っています。一方で、まだ若い世代のがんは知られていないのが現状で、専門家はこうした世代の悩みを知り、支援につなげる必要があると指摘しています。
AYA世代のがん医療に詳しい国立がん研究センター東病院の小児腫瘍科の細野亜古医長は、「AYA世代のがんは患者本人も周りの人も認識が少なく、これからのがん医療の課題になっています。周囲の理解が進み、患者さんが社会に属しいてる一員として、社会の位置を保ちながら治療を行うことが大事です」と話していました。
国立がん研究センター東病院では、AYA世代の診療やケアを行うためのホットラインを立ち上げることにしています。体調管理や治療については専門医が相談に乗り就職や働き方には社会労務士なども連携して対応するということです。
また35歳以下の患者で作る若年性がん患者団体「STAND UP!!」も、交流イベントの開催や情報誌の発行などを通じて悩みを共有し、支え合う活動をしています。
AYA世代は、まだ若く進学や就職や結婚など、人生のさまざまな転機を経て将来を歩む世代であり、治療を受けた人たちが安心して社会に復帰出来る支援策を真剣に考えていく必要があります。
心身両面で長期にわたる支援を若い世代のがん患者への支援策を一層前進させる契機としたい。
国立がん研究センターは、AYA(Adolescent and Young Adult=思春期と若年成人)世代に関する、がんの実態調査を初めて行い、その結果を公表した。
同世代のがん対策を推進してきた公明党の取り組みが形になったものであり、評価できる。
同センターは、AYA世代を15~39歳とした上で、27府県の2009~11年のデータを基に全国の患者数を年間約2万1400人と推計した。
また、がんの種類についても調査し、最も多いのが、15~19歳は白血病、20代は卵巣や精巣などに生じる胚細胞腫瘍・性腺腫瘍、30代は女性の乳がんであった。
AYA世代は全患者数の約2.5%で、診療数が少ないため、医療機関が治療に関する知識や経験を蓄積しにくい。診療科間の連携強化も課題だ。
中高年や小児に比べて、5年生存率が伸びていないとの指摘もある。今回の詳細なデータを基に、診療体制の充実など的確な対策に生かしてほしい。
その上で欠かせないのが、長期にわたり患者をサポートしていく視点である。
AYA世代は、進学や就職、結婚、妊娠・出産と人生の節目を迎える大切な時期と重なる。
さらに、同じ年齢の患者であっても、家庭や就労、経済状況など取り巻く環境は千差万別だ。
世代特有の不安や孤独感を抱えながら、がんと向き合う患者を、どう支えていくのか。中高年のがんとは異なった対応が求められよう。
政府は、今年3月に決定した「第3期がん対策推進基本計画」の中で、小児(15歳未満)・AYA世代のがん対策の充実を打ち出している。
小児がん拠点病院の要件を緩和し、AYA世代への情報提供や相談支援などを手厚くする方針だ。
また、政府の委託事業として、17年度から医師や看護師など多くの職種を対象に、小児・AYA世代を長期にわたりフォローするための研修事業が実施されている。
こうした取り組みを重ね、一人一人に寄り添う支援体制づくりにつなげたい。
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若い世代のがんに支援をNHKオンライン
結婚、仕事…がんと向き合う「AYA世代」をどう支える
「AYA(あや)世代」とは、英語の「思春期と若年成人(Adolescentand Young Adult)の頭文字からつくられたことばで、10代後半から30代の人たちをさします。
今、AYA世代のがん患者は2万人以上いると推計され、この世代の患者をどう支援するかが課題になっています。
結婚後の将来の家庭に不安抱く
東京都内に住む、会社員のみち子さん(仮名・31歳)は、去年、持病のめまいを詳しく調べようと精密検査をしたところ、脳に腫瘍が見つかりました。
まだ若い自分がなぜ…と、現実を受け入れることができなかったといいます。
「あまりにもショックで病院で倒れてしまいました。これから結婚や仕事がどうなっていくのか不安がよぎりました」(みち子さん)。
みち子さんには、当時、結婚を前提に交際していた男性がいました。
家族と話し合ったうえで、その男性に腫瘍が見つかったことを伝えました。
すると翌日、「病気を理由に別れてほしい」とみち子さんのもとに連絡が入ったといいます。
みち子さんは、「病気を告げられても、彼の存在があるから私は大丈夫だと考えようとしましたが、別れてほしいと言われ身を投げてしまいたいと思いました」と辛い気持ちを打ち明けました。
今は定期的に検査を受けたり、経過を観察したりする生活を送り、職場や家族の支えで少しずつ元気を取り戻していますが、周りの女性たちと同じように結婚や幸せな家庭を持てるのか、不安は尽きないといいます。
がんと向き合い
前に進もうとするAYA世代
東京国立市に住む白石大樹さん(31歳)は、介護施設で働き、お年寄りの体力を維持する訓練をサポートしています。白石さんは27歳のときにがんの告知を受けました。
当時、白石さんは機械加工の職人になることを夢見て、工場に勤めていました。しかし働き始めて4か月、年の瀬が近づくある日のこと、持病の腹痛の治療を受けるなかで、甲状腺がんが見つかったのです。
リンパ節に転移も見られ、年明けには手術が必要だと告げられました。
治療して仕事に戻ろうと考えていた白石さんでしたが、思いがけない会社側の対応に愕然としました。
会議室に通され、目の前で自分の名前が書かれた退職願いの用紙を示されたといいます。気持ちを整理出来ないまま退職願にサインしましたが、ちょうど仕事納めの年末で、事情を知らない同僚のひと言に感情がこみあげたといいます。
「『来年もよろしくな』と言われたときに、来年、俺はいないよと思い、急に悲しくなりました。病気に対しても怖くなり、むなしさなどいろいろな思いが入り交じりました」(白石大樹さん)
手術を受け、徐々に体力も回復した白石さんは仕事を探し続けましたが、なかなか働き口が見つかりませんでした。
あきらめかけたころ、ハローワークで介護ヘルパーの仕事をすすめられ、新たな希望が見いだしました。
三鷹市のデイサービスで介護施設で働いて3年、病気の通院にも理解がある職場で、お年寄りを支える仕事に新たなやりがいを感じているといいます。
白石さんは夜は専門学校にも通い、作業療法士を目指しています。
「がんになっても自分たちの世代が持つ夢や将来を閉ざさないでほしい」というのが白石さんの願いです。
AYA世代に理解を
いまはがん医療も進歩して、多くの人が、がんと共存する形で社会生活を送っています。一方で、まだ若い世代のがんは知られていないのが現状で、専門家はこうした世代の悩みを知り、支援につなげる必要があると指摘しています。
AYA世代のがん医療に詳しい国立がん研究センター東病院の小児腫瘍科の細野亜古医長は、「AYA世代のがんは患者本人も周りの人も認識が少なく、これからのがん医療の課題になっています。周囲の理解が進み、患者さんが社会に属しいてる一員として、社会の位置を保ちながら治療を行うことが大事です」と話していました。
国立がん研究センター東病院では、AYA世代の診療やケアを行うためのホットラインを立ち上げることにしています。体調管理や治療については専門医が相談に乗り就職や働き方には社会労務士なども連携して対応するということです。
また35歳以下の患者で作る若年性がん患者団体「STAND UP!!」も、交流イベントの開催や情報誌の発行などを通じて悩みを共有し、支え合う活動をしています。
AYA世代は、まだ若く進学や就職や結婚など、人生のさまざまな転機を経て将来を歩む世代であり、治療を受けた人たちが安心して社会に復帰出来る支援策を真剣に考えていく必要があります。