エネ計画、原発重視のまま
関根慎一、桜井林太郎
2018年5月18日 朝日新聞
政府が今夏の閣議決定を目指す「第5次エネルギー基本計画」の素案が16日、経済産業省の審議会に示され、了承された。前回計画から約4年がすぎ、太陽光発電などの再生可能エネルギーは着実に広がっているが、素案は相変わらず原発重視のまま。「脱原発」派のみならず、外務省からも疑問の声が出ている。
原発なお「重要な電源」踏襲 増設は「官邸への配慮」も
素案では、世界的に導入が増え、コストが下がった再生エネの「主力電源化」を目指すと初めて明記。一方で、経産省が2015年の「長期エネルギー需給見通し」で決めた30年の電源構成(原発20~22%、再生エネ22~24%など)は見直さなかった。
審議会では素案について一部委員から反対意見が出たものの、大筋了承された。
外務省は素案をめぐる非公式の省庁間折衝で、30年時点の再生エネ比率を大幅に拡充するよう経産省に要求した。
国際エネルギー機関(IEA)のリポートを元に、日本の再生エネ比率は22年に20~24%に高まる可能性が大きいとする。
30年までには40%程度に上積みが可能との見解も示した。政権内で脱原発・再生エネ推進派として知られる河野太郎外相の意向が働いているとみられる。
外務省がこう主張する背景には、地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」をめぐる交渉で、米トランプ政権とともに日本政府が批判にさらされていることへの危機感がある。
今回の素案は石炭火力を「重要なベースロード電源」と位置づけ、高効率化を条件に輸出も推進する文言が入った。
外務省はこれについて「強く留保せざるを得ない。強力な再生エネ促進策なくして、日本の将来は語れない」(幹部)と反発する。
環境省も再生エネの推進に積極的だ。30年の再生エネ比率が最大で35%に達するとの試算を公表したこともある。
市民団体の間でも、再生エネ推進を求める声は強い。
日本生活協同組合連合会は15日、再生エネ比率を「最低でも30%、さらに先進国水準の50%以上を目指すべきだ」などとする要望書を世耕弘成経産相あてに提出。
二村睦子・組織推進本部長は「現状維持では主力電源化とはとても言えない」と批判する。
それでも、経産省は電源構成の比率を見直すつもりはない。
再生エネの固定価格買い取り制度による電力料金への上乗せ分は年約2兆円にのぼることを挙げ、「さらに負担を増やすわけにいかない」(エネ庁幹部)と説明する。
再生エネの比率を引き上げる場合、原発などほかの電源の比率を下げる必要が出てくる。
原発再稼働が進まないなか、原発の比率を下げれば、再稼働の動きに影響しかねない。
経産省は今回の素案で、原発の新増設の必要性に触れなかったが、20~22%の原発比率の「実現を目指し、必要な対策を着実に進める」とあえて明記した。
別のエネ庁幹部は「エネルギー政策は経産省の仕事だ。
閣内不一致を問われるようなことには、徹底して戦わざるをえない」と話す。
省庁間の協議は今後も続くが、電源構成が見直される見通しは立っていない。(関根慎一、桜井林太郎)
関根慎一、桜井林太郎
2018年5月18日 朝日新聞
政府が今夏の閣議決定を目指す「第5次エネルギー基本計画」の素案が16日、経済産業省の審議会に示され、了承された。前回計画から約4年がすぎ、太陽光発電などの再生可能エネルギーは着実に広がっているが、素案は相変わらず原発重視のまま。「脱原発」派のみならず、外務省からも疑問の声が出ている。
原発なお「重要な電源」踏襲 増設は「官邸への配慮」も
素案では、世界的に導入が増え、コストが下がった再生エネの「主力電源化」を目指すと初めて明記。一方で、経産省が2015年の「長期エネルギー需給見通し」で決めた30年の電源構成(原発20~22%、再生エネ22~24%など)は見直さなかった。
審議会では素案について一部委員から反対意見が出たものの、大筋了承された。
外務省は素案をめぐる非公式の省庁間折衝で、30年時点の再生エネ比率を大幅に拡充するよう経産省に要求した。
国際エネルギー機関(IEA)のリポートを元に、日本の再生エネ比率は22年に20~24%に高まる可能性が大きいとする。
30年までには40%程度に上積みが可能との見解も示した。政権内で脱原発・再生エネ推進派として知られる河野太郎外相の意向が働いているとみられる。
外務省がこう主張する背景には、地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」をめぐる交渉で、米トランプ政権とともに日本政府が批判にさらされていることへの危機感がある。
今回の素案は石炭火力を「重要なベースロード電源」と位置づけ、高効率化を条件に輸出も推進する文言が入った。
外務省はこれについて「強く留保せざるを得ない。強力な再生エネ促進策なくして、日本の将来は語れない」(幹部)と反発する。
環境省も再生エネの推進に積極的だ。30年の再生エネ比率が最大で35%に達するとの試算を公表したこともある。
市民団体の間でも、再生エネ推進を求める声は強い。
日本生活協同組合連合会は15日、再生エネ比率を「最低でも30%、さらに先進国水準の50%以上を目指すべきだ」などとする要望書を世耕弘成経産相あてに提出。
二村睦子・組織推進本部長は「現状維持では主力電源化とはとても言えない」と批判する。
それでも、経産省は電源構成の比率を見直すつもりはない。
再生エネの固定価格買い取り制度による電力料金への上乗せ分は年約2兆円にのぼることを挙げ、「さらに負担を増やすわけにいかない」(エネ庁幹部)と説明する。
再生エネの比率を引き上げる場合、原発などほかの電源の比率を下げる必要が出てくる。
原発再稼働が進まないなか、原発の比率を下げれば、再稼働の動きに影響しかねない。
経産省は今回の素案で、原発の新増設の必要性に触れなかったが、20~22%の原発比率の「実現を目指し、必要な対策を着実に進める」とあえて明記した。
別のエネ庁幹部は「エネルギー政策は経産省の仕事だ。
閣内不一致を問われるようなことには、徹底して戦わざるをえない」と話す。
省庁間の協議は今後も続くが、電源構成が見直される見通しは立っていない。(関根慎一、桜井林太郎)