睡眠不足が実際にどんな病気を引き起こす原因となり得るのか、病名を挙げて具体的に説明します。
寝不足があなたの寿命を縮めてしまうかもしれないことを認識し、体力任せに無理な徹夜をしたり、眠気を仮眠で誤魔化すのはやめて、健康的な生活習慣を身に付けましょう。
1. 睡眠不足と直接関係がある病気
1.1 1-1. 睡眠時無呼吸症候群
1.2 1-2. むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)
2 2. 睡眠不足による生活の乱れが影響する病気
2.1 2-1. 生活習慣病(糖尿病、脂質異常症、高血圧)
2.2 2-2. 腎臓病、肝臓病など臓器に関する病気
3 3. 神経系統に影響を及ぼす病気
3.1 3-1. うつ病
3.2 3-2. アルツハイマー型認知症
3.3 3-3. 脳の自己破壊
4 4. まとめ
まず、睡眠不足で体調を崩すことが病気の引き金となる点で、比較的直接影響を及ぼすものを紹介しましょう。
睡眠不足が続くと、睡眠中に分泌される成長ホルモンの絶対量が少なくなるため、身体の細胞を修復したり新陳代謝を促したりすることができにくくなります。つまりホルモンバランスの影響で、病気にかかりやすい身体をつくってしまうわけです。
1-1. 睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome=SAS)とは、睡眠時に喉の気道が塞がってしまうことより、10~20秒程度呼吸が止まってしまう病気です。医学的には、この無呼吸状態が、一晩の間に30回以上起きたときにSASと診断されます。大きないびきをかくのが特徴で、睡眠中に苦しくなって何度も目が覚め、睡眠の質が下がって睡眠不足をさらに増長させてしまいます。
直接の原因はホルモンの異常による肥満です。喉の回りについた脂肪が寝るときに気道を狭め、呼吸を一時的に止めてしまうのです。
スタンフォード大学医学部やコロンビア大学医学部の調査で、睡眠時間の短い人は食欲増進ホルモンであるグレリンが増加し、抑制効果のあるレプチンが減少することがわかっています。これによって脳がエネルギー不足だと判断して空腹を感じさせ、食事の量が満たされているにもかかわらず、さらに飲食を促します。
SASは特に中高年の男性に多い症状で、肥満となるリスクが高く、メタボ体型となってしまうのです。そして喉回りについた脂肪が、睡眠中に喉を締め上げ、呼吸をしにくくさせ、睡眠の質を著しく低下させます。起きたときには睡眠不足になっているので、体温が上がりにくくなります。
また睡眠中に酸素不足を起こしているために心拍数が上がり、脳や身体に負担がかかって午前中のパフォーマンスも低下します。毎日、この繰り返しになると、別の病気を引き起こす原因になってしまいます。
1-2. むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)
夜になると、足に虫がはっているような感じやかゆみがあり、気持ち悪さやイライラによって眠れなくなり、結果的に寝不足を引き起こしてしまう病気です。睡眠が影響するというよりも、この病気によって睡眠が阻害されるという点で関連があるため、多少方向性が異なりますが、この章に分類しました。
むずむず脚症候群については、いまのところはっきりとした原因はわかっていません。一応、「遺伝」「ドーパミン(神経伝達物質)の異常」「鉄分不足」などが原因なのではないかと推測されている段階です。
男性よりも女性、また若い人よりも中高年に多い傾向があります。
原因がわからないため治療も明確にはなっていませんが、基本的に規則正しい生活と睡眠、鉄分と鉄分吸収を促すビタミンCを含む、栄養バランスの整った食事、寝る際に明かりなどの刺激を避け、枕の高さや気温、湿度など、眠りに落ちやすい状況を演出することが改善方法として挙げられています。
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睡眠は人間にとって必要不可欠なものです。
必要な睡眠時間には個人差がありますが、昼間活動して夜眠る、というごく当たり前のことができなくなり、日常生活に支障をきたした状態を睡眠障害と呼びます。
睡眠障害には不眠、過眠のほかに概日リズム睡眠障害、睡眠時随伴症などがあります。
文明の発達と共に睡眠障害は増加し、現代の社会では5人に1人が不眠に悩み、20人に1人は睡眠薬を服用しているといわれています。不眠は特に高齢になるほどその割合は増すといわれていますが、日本では外国に比べると不眠に悩んでも病院へ行って相談する人の割合は低く、逆にアルコールに頼る人の割合が高いというデータもあります。
また不眠や過眠の背景にうつ病などの精神疾患やさまざまな身体疾患が隠れていることも稀ではありません。睡眠障害を正しく診断して原因となる疾患を治療し、さらには適切な生活指導や薬物療法を受けることで、睡眠の改善だけでなく、昼間の生活もより快適で豊かなものとすることが睡眠障害の治療の目標といえます。
不眠を自覚する場合、なかなか寝つけない(入眠困難)、寝てもしばらくするとすぐに目が覚めてしまう(中途覚醒)、朝いつもより早く目覚めてしまう(早朝覚醒)、さらにはぐっすり眠った感じがしない(熟眠障害)といった症状がいくつか合わさって見られることが普通です。
眠れない日が続くと次第に「また眠れないのでは」という不安感が増し、不安や緊張のため余計に眠れないという悪循環が生じます。夜眠れないのに日中も眠くならないという場合も多いのですが、逆に夜眠れない分を朝寝坊したり、日中眠くなってつい長い時間昼寝してしまい、その晩もっと眠りづらくなるということもしばしばあります。
不眠の診断は基本的には問診が中心となりますが、必要な場合には行動計でご自宅での睡眠を測定します。行動計は基本的には万歩計と一緒です。
まずは睡眠の状態に関しての詳細な問診から始めますが、不眠の原因のほとんどが加齢です。しかし、不眠の原因が精神疾患、身体疾患や薬剤使用の場合もあります(表1)、さらにカフェインの摂取、就寝前のアルコールやタバコ、床に入ったあとの読書やテレビ、考えごとなど、最近ではスマートフォンの使用などが問題になる場合もあります。
背景に精神疾患や身体疾患があると考えられた場合にはそれに対する検査を進めていくことになります。
加齢
うつ病、不安障害、統合失調症などの精神疾患
ステロイド、降圧薬、インターフェロンなどの薬剤
睡眠時無呼吸症候群
むずむず脚症候群
周期性四肢運動障害
レム睡眠行動障害
頻尿(前立腺肥大など)
かゆみ(アトピー性皮膚炎など)
痛み(がん性疼痛、整形外科的疼痛など)
寝不足があなたの寿命を縮めてしまうかもしれないことを認識し、体力任せに無理な徹夜をしたり、眠気を仮眠で誤魔化すのはやめて、健康的な生活習慣を身に付けましょう。
1. 睡眠不足と直接関係がある病気
1.1 1-1. 睡眠時無呼吸症候群
1.2 1-2. むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)
2 2. 睡眠不足による生活の乱れが影響する病気
2.1 2-1. 生活習慣病(糖尿病、脂質異常症、高血圧)
2.2 2-2. 腎臓病、肝臓病など臓器に関する病気
3 3. 神経系統に影響を及ぼす病気
3.1 3-1. うつ病
3.2 3-2. アルツハイマー型認知症
3.3 3-3. 脳の自己破壊
4 4. まとめ
まず、睡眠不足で体調を崩すことが病気の引き金となる点で、比較的直接影響を及ぼすものを紹介しましょう。
睡眠不足が続くと、睡眠中に分泌される成長ホルモンの絶対量が少なくなるため、身体の細胞を修復したり新陳代謝を促したりすることができにくくなります。つまりホルモンバランスの影響で、病気にかかりやすい身体をつくってしまうわけです。
1-1. 睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome=SAS)とは、睡眠時に喉の気道が塞がってしまうことより、10~20秒程度呼吸が止まってしまう病気です。医学的には、この無呼吸状態が、一晩の間に30回以上起きたときにSASと診断されます。大きないびきをかくのが特徴で、睡眠中に苦しくなって何度も目が覚め、睡眠の質が下がって睡眠不足をさらに増長させてしまいます。
直接の原因はホルモンの異常による肥満です。喉の回りについた脂肪が寝るときに気道を狭め、呼吸を一時的に止めてしまうのです。
スタンフォード大学医学部やコロンビア大学医学部の調査で、睡眠時間の短い人は食欲増進ホルモンであるグレリンが増加し、抑制効果のあるレプチンが減少することがわかっています。これによって脳がエネルギー不足だと判断して空腹を感じさせ、食事の量が満たされているにもかかわらず、さらに飲食を促します。
SASは特に中高年の男性に多い症状で、肥満となるリスクが高く、メタボ体型となってしまうのです。そして喉回りについた脂肪が、睡眠中に喉を締め上げ、呼吸をしにくくさせ、睡眠の質を著しく低下させます。起きたときには睡眠不足になっているので、体温が上がりにくくなります。
また睡眠中に酸素不足を起こしているために心拍数が上がり、脳や身体に負担がかかって午前中のパフォーマンスも低下します。毎日、この繰り返しになると、別の病気を引き起こす原因になってしまいます。
1-2. むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)
夜になると、足に虫がはっているような感じやかゆみがあり、気持ち悪さやイライラによって眠れなくなり、結果的に寝不足を引き起こしてしまう病気です。睡眠が影響するというよりも、この病気によって睡眠が阻害されるという点で関連があるため、多少方向性が異なりますが、この章に分類しました。
むずむず脚症候群については、いまのところはっきりとした原因はわかっていません。一応、「遺伝」「ドーパミン(神経伝達物質)の異常」「鉄分不足」などが原因なのではないかと推測されている段階です。
男性よりも女性、また若い人よりも中高年に多い傾向があります。
原因がわからないため治療も明確にはなっていませんが、基本的に規則正しい生活と睡眠、鉄分と鉄分吸収を促すビタミンCを含む、栄養バランスの整った食事、寝る際に明かりなどの刺激を避け、枕の高さや気温、湿度など、眠りに落ちやすい状況を演出することが改善方法として挙げられています。
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睡眠は人間にとって必要不可欠なものです。
必要な睡眠時間には個人差がありますが、昼間活動して夜眠る、というごく当たり前のことができなくなり、日常生活に支障をきたした状態を睡眠障害と呼びます。
睡眠障害には不眠、過眠のほかに概日リズム睡眠障害、睡眠時随伴症などがあります。
文明の発達と共に睡眠障害は増加し、現代の社会では5人に1人が不眠に悩み、20人に1人は睡眠薬を服用しているといわれています。不眠は特に高齢になるほどその割合は増すといわれていますが、日本では外国に比べると不眠に悩んでも病院へ行って相談する人の割合は低く、逆にアルコールに頼る人の割合が高いというデータもあります。
また不眠や過眠の背景にうつ病などの精神疾患やさまざまな身体疾患が隠れていることも稀ではありません。睡眠障害を正しく診断して原因となる疾患を治療し、さらには適切な生活指導や薬物療法を受けることで、睡眠の改善だけでなく、昼間の生活もより快適で豊かなものとすることが睡眠障害の治療の目標といえます。
不眠を自覚する場合、なかなか寝つけない(入眠困難)、寝てもしばらくするとすぐに目が覚めてしまう(中途覚醒)、朝いつもより早く目覚めてしまう(早朝覚醒)、さらにはぐっすり眠った感じがしない(熟眠障害)といった症状がいくつか合わさって見られることが普通です。
眠れない日が続くと次第に「また眠れないのでは」という不安感が増し、不安や緊張のため余計に眠れないという悪循環が生じます。夜眠れないのに日中も眠くならないという場合も多いのですが、逆に夜眠れない分を朝寝坊したり、日中眠くなってつい長い時間昼寝してしまい、その晩もっと眠りづらくなるということもしばしばあります。
不眠の診断は基本的には問診が中心となりますが、必要な場合には行動計でご自宅での睡眠を測定します。行動計は基本的には万歩計と一緒です。
まずは睡眠の状態に関しての詳細な問診から始めますが、不眠の原因のほとんどが加齢です。しかし、不眠の原因が精神疾患、身体疾患や薬剤使用の場合もあります(表1)、さらにカフェインの摂取、就寝前のアルコールやタバコ、床に入ったあとの読書やテレビ、考えごとなど、最近ではスマートフォンの使用などが問題になる場合もあります。
背景に精神疾患や身体疾患があると考えられた場合にはそれに対する検査を進めていくことになります。
加齢
うつ病、不安障害、統合失調症などの精神疾患
ステロイド、降圧薬、インターフェロンなどの薬剤
睡眠時無呼吸症候群
むずむず脚症候群
周期性四肢運動障害
レム睡眠行動障害
頻尿(前立腺肥大など)
かゆみ(アトピー性皮膚炎など)
痛み(がん性疼痛、整形外科的疼痛など)