豊島JT杯覇者が藤井竜王を破り連覇達成! 第42回将棋日本シリーズ

2021年11月22日 12時43分54秒 | 社会・文化・政治・経済

11/22(月) 12:11配信

マイナビニュース

公開対局の壇上で雌雄を決する豊島JT杯覇者(左)と藤井竜王(写真:相崎修司)

攻防手の封じ手から、一気に藤井玉を攻め倒す

第42回将棋日本シリーズJTプロ公式戦(協賛・日本たばこ産業株式会社)の決勝、▲豊島将之JT杯覇者―△藤井聡太竜王戦が11月21日に千葉県千葉市の「幕張メッセ」で行われました。結果は95手で豊島JT杯覇者が勝ち、昨年に続く2連覇を達成しました。

本局は豊島JT杯覇者の先手番で角換わりに。早指しの公開対局ではありますが、お互いがテンポよく指し進め、早い段階で戦いが始まります。将棋日本シリーズには封じ手がありますが、豊島JT杯覇者が53手目を封じました。藤井竜王の決断よい踏み込みに対して、先手がどのような順で応じるかという局面です。

■攻防の封じ手

開封された封じ手は▲6五角。先手陣を直射する後手の飛車を牽制しつつ、後手陣にもにらみを利かせる攻防手です。以下△7一飛▲7二歩と豊島JT杯覇者は後手の飛車を押さえ込みにかかりました。対して△同飛は▲8三角成と味よく角を成り込めます。藤井竜王は△3一飛と逃がしました。単に飛車をかわすだけではなく、角ににらまれている3二の金を補強する一手です。代えて△2一飛と2筋を守るように逃がす順も局後に両者の間で検討されましたが、比較は難しいようです。

■厳しい取り込みでペースを握る

手番を握った豊島JT杯覇者は攻め続けます。藤井竜王の反撃手である△8八歩を見向きもしない▲4四歩が厳しい取り込みで、ここで藤井竜王は自身の劣勢を意識しました。△8九歩成と、と金を作ることには成功しましたが、まだ先手玉にはそれほどの響きがなく、▲4三銀と玉の直上から一気に攻め込まれる順が激痛です。豊島JT杯覇者は75手目▲3三竜の局面を「後手玉が詰めろなので、ここで読み抜けがなければ勝ちと思いました」と振り返っています。

■一矢報いる優勝

こうなれば藤井竜王は先手玉を詰ますしかありません。豊富な持ち駒に物を言わせて先手玉へ王手王手の連続で迫ります。藤井竜王の王手ラッシュを正しくかわせる人間がどれだけいるか。いや、正しくかわしてもひょっとしたら詰まされるかもしれません。しかしさすがは豊島JT杯覇者、きちんと自玉の安全を見切って逃げ切りました。豊島JT杯覇者は2連覇達成。通算では3度目の日本シリーズ優勝です。今年は叡王戦、王位戦、竜王戦と藤井竜王を相手の苦闘が連続しましたが、ここで一矢報いた格好です。「藤井竜王との差を埋めるためにも、実力をつけていかねばいけない。いい形で終わることが出来たので、今後につなげていければ思います。あきらめない姿勢を示すことが出来たのはよかったです」と終局後の記者会見で語りました。

2021年における両者の対戦はこれで最後となります。1年を通してトータルでは17局ありました。来年は果たしてどれだけ両者の対戦が行われるのでしょうか。

相崎修司(将棋情報局)

 

【関連記事】


物語 パリの歴史

2021年11月22日 12時28分13秒 | 社会・文化・政治・経済

高遠 弘美  (著)

どの街角を歩いても歴史に出会う街、パリ。その尽きせぬ魅力を物語風に活写する。第1部はパリの誕生から現在まで、2000年以上にわたるその歴史を30の章に分けて紹介。

内容(「BOOK」データベースより)

旅行ガイドにもおすすめ!どの街角でも歴史に出会う街。つきせぬ魅力を描いた30章+1。
 
著者について
高遠弘美(たかとおひろみ)
1952年長野県生まれ。早稲田大学大学院フランス文学専攻博士課程修了。現在、明治大学商学部教授。
専門はフランス文学。2年間の滞在の他、パリ訪問は十数回にのぼる。
著書に『プルースト研究 言葉の森の中へ』(駿河台出版社)、『乳いろの花の庭から』(ふらんす堂)、『七世竹本住大夫 限りなき藝の道』(講談社)が、訳書に『完訳Oの物語』(ポーリーヌ・レアージュ著・学習研究社)、『でぶ大全』(ロミ&ジャン・フェクサス著・作品社)などがある。また現在、光文社古典新訳文庫にてマルセル・プルースト『失われた時を求めて』の翻訳を刊行中。
 
 
今度パリへ行く時のために読んでおこうと思って買ったのだが、正直、やや期待外れだった。著者が歴史家でないせいか、肝心の歴史の部分が一般教養向けフランスの歴史本をなぞっているだけの内容だし、それこそ高校の世界史の教科書レベルとそれほどかわらない部分もある。生真面目に、そして丁寧に書かれてはいるが、「ですます」調である割には文章がこなれてなくて、鹿島茂さんあたりのエスプリのきいた文章と比べるとやや生硬感が否めなかった。
 百歩譲って、この本はガイドブックを兼ねた歴史本だからというのなら、そもそもこんな題名をつけるべきでないし、そのガイドブックの部分も付け足し感があって、とても実用にはたえない。
パリの歴史とパリ案内が混然一体となって溶け合った内容を期待したのだが、ないものネダリだったか。
 それと、この本の内容を補うためか、あるいは権威付けのためか、巻末にやたらフランス語の参考文献が出てくるが、そんないかにも学者的なことはやめて、堂々と中身で勝負してほしかった。
ついでに言えば、フランス革命のところに出て来る、「朕は国家なり」とか、「陛下。暴動ではございません。革命でございます」とかいうセリフは、何れも、オーストリアの作家、S・ツヴァイクの『マリー・アントワネット』で人口に膾炙された言葉だと思うのだが、違ったか。たとえ、著者の専門がフランス文学であったとしても、パリを愛したそのツヴァイクの名が、本文にも参考文献にも一言も登場しないのにはいささか違和感を感じる。
 辛口の批評になって申し訳ないが、とても期待して買ったので、こんなレビューになってしまった。改版時には、パリへ行く時の旅行カバンには必ずこの一冊を、というレベルの本になっていてほしい。

第2部は、パリの様々な横顔を連想風につづる。旅行ガイドにもおすすめ!

 

Verified Purchase
別の定評ある新書から出版されたパリを言う題名の本を買って、パリという一般的な名前の本で
ありながら、内容は学者である著者の専門の、極めて狭い領域に関する記載が
大半であるという本があった。一方、この本は題名に忠実であり、パリの歴史を時系列に
包括的に取り上げている。パリの多様な、長い歴史を一冊の本にまとめることは著者が
指摘するように不可能であるが、本書において、満遍なく取り上げようとする姿勢自体
貴重であり、またよく書かれていると感じた。
情報量は非常に多く、著者がパリに関する知識が多く、経験が豊富であることが
反映されているからだろう。パリに関する本は多いが、エッセイ的なものが大半で、
フランス史を含めた歴史的記述を含めたパリ史の本で、このような小著は大変貴重だ。
駅の名前や通りの名前が頻出するが、地図を参考にしなければわからないことが多い。
一度はパリに行って、最低限の地理感覚を理解していないと、本書を読み進めることは
困難であると思う。パリの都市改革はオスマン知事によるものが有名であるが、それに
先立つ改革があることなど興味深いし、またその意義を理解するには、最低限のパリの
地理理解が必要だ。これはやむを得ないことながら、最初に古代ローマの見慣れない
人名、地名が羅列されるところは面食らうところだろう。
題名だけを見ると、中公新書の本かと思うが、中身を見ずAmazonで発注したので
多少の心配はあったが、表題に偽りなく、邦書でパリを知るにはとても有益な本だった。
追記>わたしは評する本は当然のこととして、読んだうえでReviewを書いているが、
本当に読んでいるのか極めて怪しいものも見受けられる。

 

『完訳Oの物語』『でぶ大全』『うんち大全』『お風呂の歴史』『乳房の神話学』『おなら大全』『悪食大全』などの輝かしい訳業で知られ、最近ではプルーストの『失われた時を求めて』の新訳者として活躍中の著者(もちろん男性)による『物語 パリの歴史』である。
といっても、でぶも、うんちも、お風呂も、おならも、O嬢も活躍しない(悪食は151頁、乳房は61頁164頁に登場するが)普通のパリ史、どちらかというと、上品なパリ史の本である。
第一部がパリ史(古代ローマ~21世紀)で、約210頁、第二部がパリ(歴史)散歩で、約45頁。
ただし、歴史散歩の主要な部分は、第一部の歴史の著述の中に現在の写真や説明を織り込むという形式になっていて、第二部はその残りプラスαの感じ。
私的感想
〇当たり前だが、日本人向けに書かれたパリ史である。この点、コンボー『新版 パリの歴史』(文庫クセジュ)と比べてみると、扱っている歴史事実に大きな違いはないのだが、取捨選択がかなり違ってくる部分がある。
コンボーはパリに焦点を絞っていて、パリ市民の動きには敏感だが、いわゆるフランス史的事項はあっさり、または、なしで済ませている。ジャンヌ・ダルクも出てこない。
一方、本書は「ジャンヌの主たる活躍の舞台はパリではありませんが」と予防線を張った上で、ジャンヌ・ダルクについて4頁も費やしている。ナポレオン1世もコンボーでは出番は少ない(コンボー「ナポレオンはパリに多くは居住しない。ジュール・べルトーは十年の治世で九五五日のパリ滞在という数字を示している」)が、本書ではその戦争と業績に6頁以上費やしている。
〇第一部については、日本人向けのパリ史としてはごく一般的な本で、内容自体の個性、趣味感は乏しいように思う。しかし、語り口のうまさ、展開のうまさはさすがベテランで、最後まで、まったく退屈せず、面白く読めてしまう。
私的結論
たぶん、現実のパリに行く人には有用な本ではないか思う。しかし、部屋から一歩も出ないで、過去のパリに行きたい人にとってはどうだろうか???
 
通史としても、旅行ガイドとしても中途半端、といった論評が多いですが、通史としては、それなりに楽しく読めます。

旅行ガイドとしては、相当注意深く読み、それこそ、パリの地図のある、旅行ガイドブックと照らし合わせながら読まなければなりません。

紀元後52年のローマ帝国の時代から、2015年、2016年の、イスラム過激派のテロまでカバーしていますので、ざっと読むには手ごろだと思います。
 
 
 

第三の場所・サードプレイス 居心地の良い場所

2021年11月22日 12時23分22秒 | 社会・文化・政治・経済

 

 

サードプレイスとは、家庭(第1の場)でも職場(第2の場)でもない第3のとびきり居心地の良い場所です。

ストレスの多い現代社会においてリラックスできる居心地の良い場所、その場所をサードプレイスと呼びます。

アメリカの社会学者レイ・オルデンバーグは、その著書『ザ・グレート・グッド・プレイス』(The Great Good Place)で、サード・プレイスが、現代社会において重要であること、その場所に対する特別な思いなどを論じている。

オルデンバーグは、“ファースト・プレイス”をその人の自宅で生活を営む場所、“セカンド・プレイス”は職場、おそらくその人が最も長く時間を過ごす場所。

そして、“サード・プレイス”はコミュニティライフの“アンカー”ともなるべきところで、より創造的な交流が生まれる場所。

あらゆる社会は既に非公式の出会いの場所を備えていて、意図的に、現在の社会的ニーズに重要なそれらを追及している。 オルデンバーグは、以下のような場所を真のサード・プレイスの特徴を備えているという。

無料あるいは安い

食事や飲料が提供されている
アクセスがしやすい、歩いていけるような場所
習慣的に集まってくる
フレンドリーで心地良い
古い友人も新しい友人も見つかるようなところ
サード・プレイスの特徴
オルデンバーグが定義する“サード・プレイス”の8つの特徴

中立領域
サード・プレイスは特定の個人や団体、政治組織や宗教組織に属していない場でなければならない。

また、その構成者は義務感からそこにいるのではない。彼らは、経済的、政治的、法的に縛られること無く、喜んでやってくる。
平等主義
サード・プレイスは、個人の社会における地位に重きをおかない。経済的・社会的地位は意味がなく、ありふれていることが許容される。

サード・プレイスでは参加するために、何も必要条件や要求がない。
会話が主たる活動
遊びココロや楽しい会話がサード・プレイスの活動のメインフォーカスである。会話のトーンは気軽で、ユーモア、ウィットがあり、優しい遊びココロは高く評価される。
アクセスしやすさと設備
サード・プレイスはオープンで、みなが訪れやすい環境。柔軟で親切で、集まる人のニーズにこたえるところ。
常連・会員
サード・プレイスは、常連がいて、空間やトーンを形成する。その場所らしさを彼らがつくる。新たな訪問者を惹きつけて、新参者にも優しいところ。
控えめな態度・姿勢
サード・プレイスは、健全である。その中には無駄遣いや派手さはなく、家庭的な感じ。偉ぶったり、排他的であってはいけない。いかなる個人、あらゆる階層の人を受け入れる。
機嫌がよくなる
サード・プレイスでの会話のトーンは、けっして緊張や憎悪を生んではいけない。その代わり、陽気でウイットに富んだ会話、気さくな冗談は歓迎される。
第2の家
サード・プレイスにいる人たちは、しばしばあったかい感情を共有する。あたかも同じ家に暮らす者同士のように。この場所に根ざしている感情を持ち、精神的に生まれ変わることを得る。

サードプレイスとは?
「第三の場所」を意味するサードプレイスは、自宅や学校、職場とは別の居心地のいい居場所の事だ。アメリカの都市社会学者レイ・オルデンバーグが、その重要性を説いた。

第一の場所(ファーストプレイス):ファーストプレイスである自宅は、生活の基本となる部分だ。寝起きをして、食事をとり入浴するといった、人間としての生命や健康を維持するために必要な場所であり、家族が共に生活をする場所でもある。ここには、家族に対する義務や責任も存在する。

第二の場所(セカンドプレイス):職場、あるいは学校といった自宅以外に普段自分が長い時間を過ごす場所だ。ここでは、経済活動や学習を行う。これも、人間としての生活の糧を得るために欠かせないものである。裏を返せば、ファーストプレイスとセカンドプレイスの環境さえよければ、人の生活は維持できる。しかし、任務や収益のために行動することから、本来の自分になりきれていない人も多い。

この二つの場所を行ったり来たりするだけの生活で、本当に良いのだろうか。そんな考えのもと、サードプレイスという言葉が提唱されるようになった。

第三の場所(サードプレイス):サードプレイスは、義務や必要性に縛られるのではなく、自らの心に従い、進んで向かう場所だ。趣味をしたり、息抜きをしたりできる、心安らぐところで、その場所は人により千差万別である。たとえば、一人で通うお気に入りの静かなカフェ、音楽の趣味を共有できる仲間たち、一緒に体を動かすグループなどもそうだ。

ヨガグループ

一人の人間そして社会全体も健全に
サードプレイスは、自分らしさを体現し、ストレスや精神的不安を軽減する効果があるとされ、人の生活に潤いを与えると言われている。共通の関心を持つ仲間に囲まれ、心を通わせることで、疎外感や孤独感を感じにくくなるのだ。このようなグループが形成されることで、市民活動が活発になり、社会全体としても文化や心の豊かさを育む。

現代社会は、コミュニティが疎遠になっているといわれている。とりわけ都市部では、人口が増加し集合住宅に多くの人が住み、近隣住民の顔や名前を知らない人も多い。満員電車で見知らぬ人のうねりと格闘しながら職場に通い、業務に従事し、また帰宅していく。そしてまた朝になれば、職場に向かう。心が殺伐としてしまう人がいるのも不思議ではない。

生活のために行かなくてはいけない場所でなく、自らの第三の居場所であるサードプレイスは、市民社会にとって、なくてはならないものだといえる。

サードプレイスは心の拠り所。第3の居場所を見つける方法
2021年6月16日 更新

終活
サードプレイスは心の拠り所。第3の居場所を見つける方法      
サードプレイスとは、自宅やオフィス、学校とは異なる第3の居場所のこと。義務や必要性に縛られず、心のままに自分らしい時間を過ごせる場所であり、都市生活者には特に必要な場所として注目されています。この記事では、これからの生活を豊かにしてくれるサードプレイスの基礎知識やメリット、探し方などを詳しく解説します。
目次

 サードプレイスの基礎知識
 サードプレイスのメリット
 第3の居場所に求められる条件と特徴
 サードプレイスの見つけ方
 オンラインでもサードプレイスは見つけられる
 前向きな生活に役立つサードプレイス
サードプレイスの基礎知識
カフェで会話する女性
都市で生活する人にとって大切な場所と言われる、サードプレイス。ここでは、サードプレイスとはどのような場所なのか、ファーストプレイス、セカンドプレイスを交えて紹介します。
サードプレイスとは第3の居場所のこと
サードプレイスとは、アメリカの都市社会学者であるレイ・オルデンバーグの著書で提唱された言葉です。家やオフィス、学校とは離れた第3番目の場所で、特に、都市で生活を送る人たちの心の支えになるものとして捉えられています。
人は、日常生活の中でさまざまなプレッシャーを背負ってしまうものです。やらなければならないことや地位、役職にとらわれず気楽に会話を楽しみ、心の負担から逃れるための場所こそ、サードプレイスと言えます。
具体的なサードプレイスの例
サードプレイスとして捉えられる場所はバーや居酒屋やカフェなどが一般的ですが、その国の文化によっても異なります。日本においては、お店以外に習い事やボランティアといった人と交流する集まりも、サードプレイスとしての役目を果たしています。
第1の居場所と第2の居場所
ファーストプレイスは、生活の基盤となる自宅のことで、第1の居場所とも呼ばれます。人として健全な生活を続けるために必要であり、自分だけの時間を過ごせるスペースです。ただし、その一方で生活をともにする家族に対する義務や責任が生じます。
次に、セカンドプレイス、いわゆる第2の居場所はオフィスや学校などが該当します。セカンドプレイスは、人と交流しながら1日の大半を過ごすのが特徴です。仕事や勉強の目標を達成するため、責任や義務を持っており、ときには本来の自分とは異なる存在のように振る舞わなければならないことも。
このように、家やオフィス、学校とは離れた第3の居場所であるサードプレイスは、第1、第2の居場所とは違う特質を備えています。
サードプレイスが注目されている理由
現在さまざまな分野で活用されているサードプレイスは、1989年に同名書籍が発売された頃から広まりました。近年、改めてサードプレイスが注目されているのは、現代人がたくさんの心労に悩まされているのが理由のひとつです。
日本では、毎年多くの人が自ら命を断つことが問題視されています。孤立や無趣味による心労の積み重ねが自殺の原因と考えられることから、心の安息を得られるサードプレイスの重要性が見直されるようになりました。
前述したファーストプレイスとセカンドプレイスだけでも生活は保てますが、「同じ場所の往復で本当に良いのだろうか」と感じる人は多いものです。もっと自分らしく生きたいとき、サードプレイスの存在が大切になるとされています。
サードプレイスのメリット
笑顔でティーカップを持つ女性
気持ちのリフレッシュや新たな刺激、自分とは異なる価値観との出合いなど、さまざまな良い点が挙げられるサードプレイス。ここでは、サードプレイスが生み出すメリットについて解説します。
自由な空間が心を癒しリフレッシュできる
自由に足を運べ、社会で担う立場や地位、上下関係を気にせず交流できる場であることがサードプレイスの価値です。

そこに集う人たちの肩書きや生活の様子などを知らないからこそ、素の自分でいられると考えられます。
また、日常の忙しさや仕事の重圧から離れ、物事を柔軟に捉えられる自由な空間は、人生において大切なものです。お互いを思いやることで心が癒され、自然と笑顔が溢れ出ることも。

サードプレイスは、リフレッシュできる場所として「再び行きたい」と思えるところに魅力があります。
新しい出会いによって新たな学びや刺激が受けられる
サードプレイスには、訪れるための条件がないことがほとんど。職業や性別、出身を問わず、さまざまな人が集まります。

そのため、サードプレイスでしか出会えない人とのつながりができることも珍しくありません。
仕事や学校、家族と関係ない人とは、先入観を持つことなく会話でき、新たな学びや刺激を得られます。どのような人でも平等に交流できるからこそ、見聞が広がり、意義のある時間を過ごせるのがサードプレイスのメリットです。
価値観が変化するとその後の生き方に変化が表れる
サードプレイスにおける人付き合いや会話を通じて、自分の価値観が変わることがあります。新しい考え方や選択肢が増え、今後の生き方に変化をもたらすことも。既存の価値観にとらわれたくないとき、サードプレイスは大切な場所になると考えられます。
第3の居場所に求められる条件と特徴
笑いながら食卓で会話をする女性
自分にとって大切な第3の居場所はどこでも良いのではなく、一定の条件を満たすことが必要です。ここでは、サードプレイスに求められる条件と特徴を紹介します。
楽しく会話ができる場所であること
サードプレイスにおいて、息が詰まるような論議は求められていません。心を許せる雰囲気の中、冗談を含めた会話を楽しむのがサードプレイスの醍醐味です。
どのような人でも自由に参加し、気軽に会話できる場所にするには、否定を軸とした言動ではなく、相手の話を受け入れる謙虚な姿勢が不可欠。さまざまな環境の人が集まることを心に留め、話に耳を傾ける環境作りが必要です。
気軽に立ち寄れる場所であること
最寄駅からアクセスしやすいなど、気軽に立ち寄れる場所であることや、自然と人が集える開放的な雰囲気を備えていることも重要です。

多くのサードプレイスには常連客や会員がいて、新たな参加者を快く受け入れる環境が整えられています。そこには、集った人々により生み出される、温かい空間が広がっているでしょう。
家庭的な存在であること
サードプレイスは温かい雰囲気と居心地の良さから「第2の家」と呼ばれることも。いろいろな人が集まる公的な場所でありながら、喜びや幸せを共有する家庭的なつながりを持てます。
サードプレイスの見つけ方
笑顔で散歩をする人々
少し行動するだけで、自分に適したサードプレイスが見つかるかもしれません。ここでは、新しい居場所の見つけ方を2つ紹介します。
近所を散策してみる
新たな居場所を見つけるためには、オフィスから自宅への帰り道や、散歩コースで回り道をするのがおすすめです。普段とは異なる道を歩くことで、新たな発見があるかもしれません。知らないカフェや公園に入ってみることで、居心地の良い場所が見つかる可能性も考えられます。
趣味や興味のあることを始める・追求してみる
趣味を極めたり、興味のあることを追求したり、掘り下げて学ぶと、新たな仲間との出会いや成長につながります。

何かの賞を取ったり、人に教えられるほど技術が磨かれたりすれば、趣味を生かしたライフワークになるかもしれません。今後の人生を変えるきっかけになる場合もあるでしょう。
オンラインでもサードプレイスは見つけられる
パソコンを操作する女性
密集・密接・密閉の回避が求められるコロナ禍では、オンラインサロンやSNS、チャットなど、ネット上のサードプレイスが注目されています。ここでは、オンラインならではのメリットと注意点を紹介します。
オンラインだからこそ感じられるメリット
サードプレイスを見つけるには、自分に合うか否か試すための時間や習い事の受講費に加えて、その場所に通うための時間と交通費などの移動コストがかかります。一方、オンラインはだいぶ手軽です。家から出ずに探せる上、チャットをはじめとしたツールのコミュニティなら「空いた時間に場の雰囲気を覗く」といった気軽な参加も可能です。
また、多くのコミュニティは参加費のみ、オンラインサロンは月額利用料で入れる場合がほとんど。そのため、リアル体験よりも、サードプレイス探しの時間やコストが抑えられます。
オンラインならではの注意点
オンライン上のサードプレイスは、上記のような理由でリアル空間よりもハードルが低い分、いろいろな人が参加しています。予め参加条件などを確認していても思ったものと違うこともあるでしょう。

自分にとって本当に居心地が良い場所でなければ深入りせずに撤退するのがいいかもしれません。
前向きな生活に役立つサードプレイス
笑顔を浮かべる3人の女性
サードプレイスは、自宅とオフィスなどの往復で殺伐となりがちな現代社会で、ストレスの解消につながるかもしれない大切な場所です。仲間と幸せや喜びを共有できれば、癒しの空間にもなりえます。

無理に頑張って探す必要はありませんが、自分らしくいられるサードプレイスは前向きな日々を連れてきてくれそうです。


ぽてんしゃる。 糸井 重里

2021年11月22日 11時43分10秒 | 社会・文化・政治・経済

糸井 重里  (著), ほし よりこ  (イラスト)

コピーライターとして
たくさんのユニークな広告に関わり、
作詞やゲーム開発、執筆、テレビ出演など、
多岐に渡るジャンルで活躍していた糸井重里は、
1998年6月6日にインターネット上のメディア、
「ほぼ日刊イトイ新聞(「ほぼ日」)」を創刊。
以後、活動の中心を「ほぼ日」に置き、
同サイトを一日も休まず更新しています。

「ほぼ日刊イトイ新聞」のトップページには
毎日、糸井重里の日替わりの原稿が掲載されています。
つまり、一年365日、糸井重里は、
一日も休むことなく原稿を書き続けているのです。
この、糸井重里の日替わりコラム
(「今日のダーリン」と呼ばれています)には、
一日も休まず更新されるということのほかに、
もうひとつ、大きな特徴があります。
それは、過去のアーカイブを残さないということです。
つまり、その日一日しか読むことができないのです。

創刊当初には、毎日購読する動機を促すため、
もしくは、より自由に日々の表現をするため、
といった狙いがあったのかもしれませんが、
創刊から15年を経て、アーカイブを残さない意図は
かなり曖昧になっています。
しかし、糸井重里自身は、
その曖昧さをむしろおもしろがるように、
「休まず、残さず」という状態を継続しています。

以前、外国のインターネットコンテンツの専門家から
「なぜ、コラムのアーカイブを残さないのか?」
と質問されたとき、糸井重里は
「そうしたかったから」と答えています。

そういうわけで、いまも、「ほぼ日」には
糸井重里の原稿が一日も休まず掲載され、
それは基本的にその日一日しか読むことができません。

2007年、その、毎日書かれる膨大な原稿から、
「心に残るフレーズ」を切り取って編集し、
『小さいことばを歌う場所』という
1冊の本がつくられました。
以来、同じコンセプトで1年に1冊ずつ、
糸井重里のことばから、本がつくられています。
最初の本のタイトルを取って、それらの本は
「小さいことば」シリーズと呼ばれています。

前置きが長くなりました。
この『ぽてんしゃる。』は、
「小さいことばシリーズ」の7冊目。
シリーズから派生した文庫本、
『ボールのようなことば。』をいれると
8冊目の本ということになります。

糸井重里が2012年に書いたすべての原稿と
すべてのツイートから、
心に残る小さいことばを厳選してつくりました。
また、糸井重里自身が撮影し更新している
「気まぐれカメら」からも
たくさんの写真を選んで掲載しました。

著者について

糸井 重里 いとい・しげさと
1948年、群馬県出身。
コピーライター。ほぼ日刊イトイ新聞、主宰。
作詞、ゲーム制作など、多岐にわたり活動。
1998年6月に毎日更新のウェブサイト
「ほぼ日刊イトイ新聞」を立ち上げてからは
同サイトでの活動に全力を傾けている。
 
 
とても易しい言葉で表現されているので
素直に心にす・・・っと入ってきます。
気が付くと癒されていて、前向きな気持ちになれます。
様々な年齢や立場の方々にもその時々に
求めていた答えがきっと見つかると思います。
シリーズで持っていたくなるほど、
素敵な言葉が沢山詰まっている本です。
 
 
この本が発売された当初、
本屋さんで見つけてパラパラとめくってみた。
読みものとして期待していた僕は、
詩集のような、そうでないような、
なんだかよくわからない内容に少しガッカリして本を閉じた。

それからしばらくして、
どんどん「ほぼ日」と糸井重里さんにハマっていき、
「小さいことばシリーズ」の魅力に気づくことができ、
あらためてこの本を購入した。

いいことを言おうとするのでなく、
糸井さんが日常の中で考えたことをそのまま伝える。
それをうけて自分も考える。
本を読みながら、時には開いたままじっと
考えこんだりできる本はなかなかない。

貴重な存在です。
 
 
紙質や装丁、肌触りが良い。
ほんわかできる。
ブイヨンの写真もほんわかです。
時々
眺めたい本になりました。
 
 
糸井重里さん、単行本の最新刊。
ブックオフで半値以下で売っていたので購入しました。

今回は写真とことばが載っているものもありますが、
それがより心を和ませてくれます。
勇気もくれる、そんな気がする言葉集でした。
ありがたい言葉、今回も頂きました。

 


伊能忠敬見事なり、二度の人生―わが国自然科学の父

2021年11月22日 11時33分52秒 | 社会・文化・政治・経済

 川村 優  (著)

内容(「MARC」データベースより)

50歳を過ぎて日本地図作成に挑んだ男・伊能忠敬。生誕250年を機に、伊能研究の第一人者が、その壮絶な人生と偉業を忠実に描く。
 
 

伊能忠敬翁の肖像画
▲ 伊能忠敬翁

 江戸時代、日本国中を測量してまわり、初めて実測による日本地図を完成させた人です。

 忠敬は、延享2年(1745年)現在の千葉県九十九里町で生まれ、横芝光町で青年時代を過ごし、17歳で伊能家当主となり、佐原で家業のほか村のため名主や村方後見として活躍します。

 その後、家督を譲り隠居して勘解由と名乗り50歳で江戸に出て、55歳(寛政12年、1800年)から71歳(文化13年、1816年)まで10回にわたり測量を行いました。その結果完成した地図は、極めて精度の高いもので、ヨーロッパにおいて高く評価され、明治以降国内の基本図の一翼を担いました。

伊能忠敬の旧宅

伊能忠敬旧宅の写真
▲ 伊能忠敬旧宅

 伊能家は、代々名主を務める家柄で佐原でも最も有力な商人でした。

 忠敬は、17歳で伊能家10代目当主として婿養子で迎えられます。家業は主に酒造業を営んでおり、当時の屋敷絵図には、酒蔵がいくつも並び盛んであったことがわかります。

 現在は、店舗・正門・書院・土蔵が国指定史跡(昭和5年4月25日指定)に指定されています。

 また旧宅敷地内には、江戸時代につくられた農業用水路の一部が残っています。かつてここを流れた水が小野川に流れ落ちジャージャーと音がしたことから、樋橋のことを通称ジャージャー橋と呼ばれています。現在は、当時の様子を復元して、30分ごとに水が流れるようになっています。

家訓書碑の写真
▲ 家訓書碑(旧宅内)

旧宅内にある家訓書碑。
第一 仮にも偽をせず、孝悌忠信 にして正直なるべし
第二 身の上の人ハ勿論、身下の人 にても教訓意見あらば急度相用堅く守べし
第三 篤敬謙譲にて言語進退を寛裕ニ諸事謙り敬ミ、少も人と争論など成べからず

土蔵の写真
▲ 土蔵(旧宅内)

文政4年(1821年)の修理銘が残る、佐原でも現存する土蔵では、最も古い時期の建物です。扉は観音開きが普及する以前の土の引戸です。

伊能忠敬(1745–1818)


このシリーズの一人目は「伊能忠敬いのうただたか」です。この人は江戸時代に、日本で初めて「日本の地図」を作った人です。
今の時代では、宇宙うちゅうにある衛星えいせい(サテライト)から、地図を見ることが出来ますよね。

そのようなものが無い時代に、40,000Kmを、17年をかけて地図を作ったのが「伊能忠敬」です。著作権ちょさくけん(Copyright)の関係で、ここで見せられないのですがGoogleなどで、「伊能忠敬 日本地図」で検索してみてください。

見てもらうと、今の日本地図と、ほとんど変わらないことが、わかると思います。このような正確せいかくな地図を、コンピューターもない時代に、どのようにして書いたのでしょうか。

伊能忠敬のおいたち

伊能忠敬は東京のとなり、千葉県で生まれ、もともとはモノを売る仕事をしていました。50才になったとき、数学すうがくを勉強しようと決めて、 いろいろなことに興味きょうみをもった伊能忠敬は「地球の大きさは、どのくらいなのだろう」と考えるようになりました。これが地図を作る「はじまり」になりました。

日本地図ができるまで

伊能忠敬は仲間たちと協力をして日本中を歩き回り、ぼうやヒモで、歩きながら長さをはかり、また太陽や星の位置を見ながら、地図を作りました。
実は、はじめてから17年が過ぎて、地図ができるまえに、伊能忠敬はくなってしまいました。そのあと、伊能忠敬の夢をかなえるために、仲間たちが完成させ、当時の人たちをおどろかせました。

そのころ、日本には「地図」がありましたが、どれも正しいものではありませんでした。伊能忠敬と仲間たちが作った「日本地図」はとても有名になり、あまりの正確さに、外国の人たちも「ほしい」とお願いをしてきたそうです。

まわりが海でかこまれている日本は、他の国が、日本に攻撃こうげきしてきたときに、役にたつ地図がなかったので、日本政府せいふはこの地図に大変驚きました。そして伊能忠敬が知りたかった「地球の大きさ」についても、大きな計算の間違いはなく、約40,000㎞であると答えを出していたのです。

まとめ

伊能忠敬は55才から地図を作り始め、結果40,000Kmを歩き続けました。これは地球を一周する長さです。日本では「50才を超えて歩き続けたこと」「50才を超えて勉強を始め、自分のわからないことを知ろうと努力したこと」このことが「すごい人!」といわれている理由です。

これからもたくさんのすごい人!を紹介していきたいと思います。

 


西村内閣府特命担当大臣・「選択する未来2.0」翁座長共同記者会見要旨 令和3年6月4日

2021年11月22日 11時19分43秒 | 社会・文化・政治・経済

内閣府

(令和3年6月4日(金) 18:58~19:49  於:中央合同庁舎8号館1階S101・103会見室)

1.発言要旨

(翁座長)それではただいまから、「選択する未来2.0」の報告につきまして、私の方から初めに少し御説明させていただきたいと思います。
 まず、私どもは去年の7月に中間報告を出しております。
御存知の方もいらっしゃるかと思いますが、元々、「選択する未来」では、2015年に少子化の流れを変える、付加価値・生産性向上を経済の最重要課題として挙げる。
そして、各地域が稼げる豊かな地域に転換して、東京一極集中をだんだん減少させていくとことが大きな課題として掲げられておりました。
これを検証いたしましたところ、2020年までをジャンプスタートと考えておりましたが、必ずしもそれが実現できていないということで、中間報告で指摘させていただきました。
 ただ、その頃は7月で、緊急事態宣言の第1回目が終わったところであり、私ども、3月から議論を始めておりましたので、ちょうど新型コロナウイルス感染症の危機の第1回目の波を乗り越えたという時期でございました。
そして、この時点で、内閣府でアンケートを取りまして、ワーク・ライフ・バランスについての考え方・働き方についての考え方やデジタル化の必要性といったことについて多くの意識の改革があるということを確認できました。
 その意味で、この危機を社会変革の契機と捉えて、日本社会を10年分前進する変革を一気に進める。
そして、今こそが選択の時であり、こういった機会はもうないと考えて、危機感を持って変革を進めていくべきだというように提言いたしました。
 そして、特にここ数年の取組として大事なこととして、教育の改革、それから少子化について、特に男性育休も最近動きが出てきております。
企業や社会の仕組みや慣行を変えて、年功序列を変えて、若い人たちも活躍できるようにしていくといったことが非常に重要であるということや、デジタル化の遅れが非常に明らかになりましたので、これを一気に推進していくこと。
それから、今、厳しい状況にある企業も多いわけですが、特に人的投資をはじめとして無形資産への投資を拡大していくことの重要性。それから、コロナで大きな問題が出そうな時期でしたので、インクルーシブな、包摂的な支援で格差の拡大を防止していくといったことの重要性について指摘させていただきました。
 私たちとしては、人々の生活や働き方、それから経済、そして地域活性化、いずれも様々な提案をさせていただいたのですが、そのキーワードは多様性であると指摘させていただきました。
多様性を尊重するというよりは、多様性にこそ価値があるということだと、私どもは指摘しております。
多様性があるということがイノベーションを生みますし、多様性があることで、いわゆるレジリエンス、変化への対応力、しなやかな強靱性といったものが高まるということで、今まで硬直的であった制度や慣行を変えて、多様な生き方や働き方を尊重するといった社会にしていく必要があるということを指摘いたしました。
 その後、加速した改革もありますが、新型感染症の拡大がずっと続いており、これによる影響がどうかということを確認しようといたしました。
大きく2つ書いておりますが、まず失業など雇用状況が悪化しているということ。
それから、最も深刻に受け止めております少子化の懸念でございます。特に女子の非正規雇用労働者の数が減少しているということで、シングルマザーをはじめとする格差の拡大が懸念されているということで、対応が急がれると書いております。
 一方で、デジタル庁が新設されることになりましたし、また、リモートワークも徐々に進んでおります。
そして、地方への人や企業への関心の高まりといった新しい動きも見られているということを指摘しております。
 少子化については、2021年に80万人を下回る見込みということになっております。中位予測から大きく外れ、70万人台になる、80万人を切るというのはずっと先と考えられていましたが、非常に深刻な現状として受け止めなければいけないと思っております。
 それから、若年層についても、完全失業率は少し高い状況で推移しております。
それから雇用者数の状況を見ますと、やはり非正規雇用、特に女性の非正規雇用が大きな影響を受けているということが見て取れるわけでございます。
 一方で地方への関心は高まっているということでございますが、最新の「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によれば、東京圏の在住者の33.2%が地方の移住の関心がございます。
20代は40%となります。それから23区ですと、約5割の方が地方への関心を持っているということになっており、非常に地方移住への関心が高まっているということが言えると思います。
 それから、人口についても、やはり地方都市が増えており、2020年は東京が減っている。
それから地価につきましても、札幌とか福岡、仙台といった都市の地価上昇が見られるということで、こういった都市について少し関心が高まり、人の流れに変化が見られているということが分かります。
 私どもは、長い間議論をしてまいりましたが、中間報告でも、特に人への投資が大事であることを指摘していました。SDGsなど様々なことも議論してきましたが、グリーンとかデジタル化についてはかなり様々な政策も実現してきているということだ。
本報告では、やはり人々が安心して豊かに生きられる未来を選択するには、社会全体として人に対して大胆な投資をしていく、そして、きめ細かい支援を行っていく必要があるということを、私どもの提言としております。
 これから、まさに多様性を重視して、多様な人たちがそれぞれ能力とやりがいを高めながら活躍する場を選択できるようにする。
それから、今、苦しい立場にある方、厳しい立場にある方にも、しっかりとしたセーフティネットを構築し直して、学び直しの仕組みを入れて、人々を社会全体で支えるということが大事だということを提言しています。
 特に私どもが強調したいことは、若者がより自信と安心を持てる社会にしていくということ。
この若者というのは、常に新しい時代を創っていく存在であるので、若者が思い切り力を発揮できる社会にしていく必要があるということ。
それから、女性も今まで潜在的な力を発揮できなかった方たちが多くいます。
この女性の能力を一層発揮しやすい社会にしていく。働きやすい、子育てや家庭と両立しやすいといった社会にしていく。そういったことが本当に重要であると思っております。
 この少子化の問題については、中間報告では様々なことを指摘いたしました。男性育休や保育の充実といったことも提言しておりますが、何においても若い人たちが自信を持って安心を持って希望を持てる社会にしていくということにしなければ、希望出生率1.8以上という実現には届かないので、まず若い人たちを最大限支援していくということが非常に重要であり、少子化の流れを変えるための大前提と考えております。
特に、これから行うべきHOWの部分について、緑の字で様々なことを書いておりますが、大きく3層からなる人への投資、人への直接支援を提言しております。
 まず、1つ目、これは人材が活躍できるように、素晴らしい人材が次々と出てくるように、特に今回の危機を経験して課題設定・解決力、それから創造性といったことが教育の上でますます大事になってきていますので、これを重視した学びと、こうした人材が活躍できる人材活用システムを見直していく。
こういったことを通じて経済を活性化していくことが大事だということ。
 2つ目、多くの人々に関係するところであるが、人生100年時代で様々な人生の選択ができるようになっていく必要があります。
転職や起業を行いやすい仕組みを構築していく、様々な人生の選択を試みることができる制度・社会を作っていくことが大事だということ。
それから、3つ目、特に今厳しい状況に置かれている方々に対して、個別最適化されたセーフティネットを拡充し、安心を確保していくことが大事だということ。
 まず、初等中等教育の個別最適化は、中間報告でも特に強調したことですが、やはり非常に重要であるということを指摘しております。
それから、教育制度の抜本見直しについては、もっと実務家などが教員として教えられるような仕組みに抜本見直しをしていく必要があるということを提言しております。
 それからデジタル教育の徹底。私どもの会議には、東京大学の松尾豊教授も参加していらっしゃいますが、これは強調してもし過ぎることはないということで、とにかく中等教育や高等教育を通じて、全てにおいてデジタル教育を徹底していくということ。
 それから、大学入試の抜本見直しにつきましては、これからお示ししますが、STEAM人材を育てていくためには、入試の前に文系・理系と分けるということも含めて見直して、もっと考え方を柔軟にした入試の見直しも進めていく必要がある。
 それから、何においても、新卒一括採用から複線的・多様な通年採用にしていくこと。新卒一括採用が、やはり年功序列を作っている元になっているようにも考えられます。
こういったことから抜け出すためにも、様々な人たちが中途採用で入ってきたり、通年で採用できるといった仕組みに企業が変わっていくことが大事である。
それから、政府が率先して、まさに省庁から年功序列を見直すことが大事だということも言っております。
 それから、ソーシャルブリッジ型の能力開発・就業支援が大事ということを言っております。
 就職しても転職をしたり、起業できる、それから独立できる。それから、今までの方たちはずっと1つの企業に勤め続けていましたが、40歳代前ぐらいに棚卸しをして、人生どう生きていくかということを考えるチャンスを持ってもらう。
そして、大企業に埋もれてしまわず、兼業したり副業したりといったことができるようにしていくということが必要ではないかと考えています。
そこにセーフティネットが張ってありますので、例えば、失業やそれに近い状況になってしまったり、働きながらでも新しいことをやりたいという人であっても、求職者支援制度などのセーフティネットを通じて次の仕事に行けるというような仕組みにしていく。
こういったソーシャルブリッジ型の社会を創っていくということが大事だということを言っております。
 あとは、リカレント教育の重要性を指摘しているほか、理工系人材の育成強化、デジタル化が速い状況の中で学び直しを強力に推進していくこと。
それから副業・兼業や起業を通して、大企業の人材の流動性を向上していくこと。
フリーランスなどの柔軟な働き方に合った労働法制整備。それから、これも非常に大事ですが、男女が家庭生活と両立できる就業環境整備。
これは、少子化を考えても、女性の活躍を考えても、極めて重要なことだと思っております。
 それから、地域間で比較可能なジェンダーギャップ指数を作成して公表していくということも提言しております。
 それから、今、厳しい立場にいらっしゃる方々に対しては、しっかりとしたセーフティネットを構築していく。
特に、求職者支援制度や生活困窮者自立支援制度のソーシャルブリッジ機能を強化していくということで、新しい仕事に就けて自立できるような支援を行っていくということの重要性や、学び直しの機会をどんな人にでも提供していくということ。それから、デジタルを活用してリアルタイムに、シングルマザーなど、困っている方たちに支援できるような制度を作っていくこと。
住宅支援や生活保護も使いやすい制度にしていく。
 そして、こうしたことの財源については、将来世代の責任を果たして格差を是正するために、どういう財源が良いかということもしっかり検討していくことが必要だと指摘しております。
 先ほど御説明しましたが、課題設定・解決力や創造性があって、リベラルアーツとともに理系の素養を持つ人たちを育てていくといった教育の仕組みにすることが非常に重要である。
そして、異能や異才の人たちも力を発揮できるように個別最適化を図る。こういった教育の制度をしっかりと構築していく。教育制度と学び直し、生涯をかけてこういった人材を育てていく仕組み・社会を作っていくということが大事だということを言っております。
 教員の制度が課題だと申し上げましたが、日本のOECD諸国の中でのICT活用指導力は大変に低い状況でございます。やはりデジタル教育と言っても、こういった状況でございますので、実務家などを教員として活用していくことが大事だと思います。
 リカレント教育につきましては、これでご覧いただきますとおりニーズに合っていない、効果が出ていない。
それから柔軟性に乏しいといったOECDの中でも厳しい評価になっております。こういったことを徹底的に見直して強化していく必要があると思います。
 それから若者は、今の状況ですので安定を求める人たちもいますが、実は副業を求めている人たちが20代・30代にこんなにいらっしゃる。7割ぐらいの方が関心を持っているということです。
副業できない企業が多くありますが、できるようにして活躍できる場を作っていくことは非常に大事だと思っております。
 それから女性に関しては、文系・理系を全部合わせたものですが、高等教育の経済リターンの男女格差が大変大きいという状況になっております。こういった状況ですので女性がなかなか活躍できない。
こういったリターンを上げていくということが必要だと思っております。
 これは地域間で比較可能なジェンダーギャップ指数の指標例ということで、各県で競い合う形で、例えば、企業の管理職に占める女性の割合や、4年制大学進学率の男女比率、女性議員がどのぐらいいるか、待機児童がどのぐらいいない状況になっているかということを示しています。
例えば、この中では鳥取県などが非常に良いパフォーマンスですが、女性の活躍とか働きやすさ、暮らしやすさの見える化をしていくということも非常に重要だと思っております。
 それから、「第2のセーフティネット」が大事です。緑の所で生活困窮者自立支援制度や求職者支援制度、この第2の部分が非常に薄いということです。2020年になってここが充実できていますが、やはり生活保護と、正規社員の方々の雇用保険が圧倒的に大きいので、第2の部分を厚くしていくことによって、失業になっても労働移動ができる。
また、新しいチャレンジができるといった社会にしていくことが大事だと思います。
そして、正規雇用から正規雇用になる方は多いですが、特に非正規雇用から正規雇用にある方は少ないので、非正規雇用の労働者の方を正規雇用にしていくということも非常に重要だと思っております。
 これが最後のページになりますが、私ども懇談会としては、多様な人材の育成と活躍を社会全体で支援するということが大事だと思います。
今まで人材と言うと、厚生労働省や文部科学省、経済産業省などが、ばらばらで取り組んでいた部分があると思いますが、こういったことを政府全体として、人材をどうやって育成して活躍できるかということを考えていただきたいと思っております。
 厳しい立場の方には十分な支援をすると同時に、未来を見据えた思い切った制度改革を追求する。そして、若者の活躍を幅広く支援するとともに、いくつになっても学び直し・やり直しができるシステムを構築していく。技術革新、産業構造転換、これからグリーン化などが次々と起こりますから、学び直しを可能にして対応できるようにしていくことが大事だと思います。
そして、希望のある未来を選択するということです。
 日本にとって一番大事なのは、変革の力を生み出すことができる「人」でございます。人材でございます。
したがって、男女・世代・地域の区別を越えて、多様な人材の能力・発想を引き出して未来につなげる。そして、人々が安心と自信を持ち、幸せと豊かさを感じられる未来を選択していくということが大事だと思っております。
 懇談会としては、政府に対して、今申し上げたような政策の実現を要望したいと思います。また、今後の改革の進捗過程をベンチマークで確認してフォローアップしていくとともに、データを活用した政策の検証・EBPMの実現も是非大臣を通じてお願いしたいと思っております。
 また、中間報告でも提言いたしました全体像を再掲しております。創造力を持ち合わせた多様な人材が次々とイノベーションを起こせる、自由かつ柔軟性に富んだ変化を取り入れて、失敗への許容力が高い社会を創っていく。そして、個人が自由度の高い働き方や暮らしができ、ワーク・ライフ・バランスを実現して豊かさを感じられる。デジタルリカレントをみんなが享受できる。
性別にかかわらず人への投資を行う。そして、十分にインクルーシブな社会を作っていく。地域社会やコミュニティーにおいて必要な人との交流やつながり、支え合いの環境を大切にする。そして、グローバルにもしっかりと役割を果たしていくということを考えております。
 ベンチマークとしては、デジタル化の広範な利活用、付加価値生産性の拡大、労働市場の柔軟性・流動性、若者や女性の活躍、所得向上、そして、貧困の解消といったことに向けてベンチマークを設定して政府として政策を実現していただきたいと考えております。
以上で私の説明を終わらせていただきます。
(西村大臣)翁座長、ありがとうございました。1年以上前からこの「選択する未来2.0」の議論を進めていただき、昨年夏に中間報告をまとめていただいて、その後、提言した内容をいくつかもう実現してきています。さらに、今、翁座長からお話がありましたように、デジタルやグリーンという部分は、菅政権になりかなり前進いたしましたので、中間報告以降は、私が申し上げた3つのニューディールの1つである「ヒューマン・ニューディール」、人材への投資の部分に特に焦点を当てて議論していただきました。
 報告書の最後のページに掲載されていますが、見ていただくと分かるとおり、若干政権に批判的な方も含めて様々な観点から地域あるいは歴史、雇用、それから人材、気候変動も一部ありました。それから私が大学の教養課程の最初の授業で教わった村上陽一郎先生、かなりお年を召されましたが現役でポストコロナというものをにらんで議論をされておりますし、異能のお一人だと思いますが松岡正剛さん。
また、今年に入っても、酒井教授は、著書「雇用のセーフティネット」で様々な賞を取られておられます。それから、若手の学者で川口大司先生、あるいは経団連、あるいは格差の問題について阿部彩先生など、非常に多彩な人材、ゲストスピーカーからお話を聞いて取りまとめていただきました。
 この間、緊急事態宣言が何度かありましたので、全て出席しているというわけではないですが、私も、議事録も全部読んだ上で、翁座長と様々な議論をさせていただいて、このような報告をまとめていただきました。本当に感謝を申し上げたいと思います。
 今、御指摘のあった点、多様な人材を社会全体で育てていくというところは、私も共有しております。
頂いた内容を、しっかり受け止めて、来週以降に本文が示される予定になっている骨太方針を今月中には取りまとめますので、その中にしっかりと位置付け、盛り込んで、対応していきたいと考えております。
 実はこの骨太方針に向けて、中心的な根っこになる人材の投資というところも議論していただいた会議は、「選択する未来2.0」と、あと2つあります。
 一つは、「企業組織の変革に関する研究会」。これは冨山和彦会長や、ドワンゴの夏野剛CEOに出席いただいています。まさに企業をどう変えていくのか、組織をどう変えていくのか。コーポレートガバナンス・コードや、今日の報告の中に入っている若者や女性をどう登用しているのかについて、企業組織の観点から議論を進めていただいた研究会でございます。これも論点をまとめていただいております。
 そして、もう一つの「若者円卓会議」では、取りまとめ役は東京大学の柳川範之教授にお願いしましたが、その他は20代・30代の人だけに入っていただいて、基本的に若い人の視点から、今日お話があったところの例えば理系の女性をもっと増やしていく。
どうすれば増えるのかといったところも含めて、来週取りまとめの報告を提示できる予定になっております。
 この3つの検討会を重ねてきておりまして、それぞれの報告を頂いて、一部スタートアップや成長戦略に関わる部分は成長戦略実行会議に既に盛り込んでおりますが、それぞれのエッセンスや方向性をしっかりと骨太方針に反映させていければと考えております。
 いずれにしても、報告をまとめることが一定の目的ということではなく、これを実現することが私どもの仕事でありますので、しっかりと取り組んでいきたいと思いますし、またフォローアップもしていただければと思います。
 「選択する未来2.0」の報告について、翁座長の御説明と重なる部分は少し省きながら、私なりにポイントとなる点を少し申し上げます。
 一つは、経済全体の成長率について。生産性が伸びていないということです。安倍政権になって、先ほどのお話にあった「選択する未来」委員会がまとめた2014年の報告以降も、生産性の伸びは1%程度でありますから、生産性の水準は現在もそれほど高くはないという状況であります。
 報告書に記載されていますが、生産性の伸びは、実は、日本は2012年から2019年の各国の平均の中で高い位置にあって、アベノミクスの下で非常に高い生産性の伸びを維持してきました。しかし、生産性の水準で見ると、欧米の国に比べて日本は低い位置であります。
このことをグラフにすると、米英独仏平均とOECD平均が日本より高い位置にあり、過去の平均からすると、それぞれ今後も1%ぐらいずつは伸びていきます。日本の生産性を、これから10年経たないうちに、OECD平均に追い付き、そして世界のトップになることを目指す。
三村会長に座長をお願いしていた1.0に当たる「選択する未来」委員会の時は、2020年代にジャンプスタートをして追い付くということを目指した。まさに、今、生産性は諸外国に比べて高い伸びとなっており、これを2%上回る伸びで続ければ実現できる。2%は難しいじゃないかと言われますが、過去30年間の平均を取ると、全く無理な数字ではないです。
バブルの崩壊や、アベノミクスがあったり、様々なことがあった中で可能なところでありますので、これを実現するということで進めていきたいと思います。
 次に、成長戦略会議の方で対応しましたが、ベンチャーキャピタル、スタートアップに対する投資額がアメリカに比べて桁違いに少ないとか、ユニコーン企業が中国に比べても、ヨーロッパに比べても格段に少ないといったイノベーションの課題があり、そのための人材育成が必要だということです。
 次に、先ほども御説明がありましたが、東京から移住する20代が約40%というお話。また、札仙広福、特に福岡と札幌の地価上昇率が非常に高く、東京23区は地価が下がって、周辺の千葉や川崎で上がっているという状況であります。
 次に、少子化の関係で言うと、やはりコロナの影響で「新たな出会いが減った」という人が3割ぐらいいるという状況であります。今日発表しました「第3回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」で紹介されております。これも大事な点でありまして、今後の大きな課題だと思っています。
 次に、先ほども御説明がありましたが、やはりコロナを機に、昨年から本年にかけて、女性そして非正規雇用の方が、非常に厳しい雇用状況にあります。
44歳以下の若者の失業率については、2020年は全体としては年平均で2.8%と先進国で最も低い数字に抑えていますが、やはり若者や女性にしわ寄せが寄っているという状況であります。
 次に、ジニ係数については、再配分後に良くなってきている。最近も横ばい程度で若干良くなっている。ジニ係数は高ければ高いほど格差拡大を示しますが、去年1年間について少し試算してみたところ、実は格差の拡大は見られておりません。月収28万円程度の第1分位から、最も高い月収100万程度の第5分位の5つの区分に分けて、それぞれの所得の変化を見ると、それぞれ黄色の特別収入が非常に大きいです。昨年のお一人10万円の特別定額給付金がかなり効果を持っていまして、最も低い所得の層では大きなウェートを示しています。所得が高いとウェートは低くなりますが、やはり効いています。それから、緑色の世帯主の配偶者の収入について、同一労働同一賃金が昨年から大企業でスタートしましたので、これがそれぞれの層で効いてきています。
それから、社会保障給付も当然あるわけです。また、所得が高くなってきますと、世帯主の賞与・ボーナスとかの臨時収入が落ちたとか、残業が減ったという定期収入の減少がありますが、全体で見れば、それぞれの所得階層で、所得は全てプラスの方向に働いております。平均の実収入で前年比4%増という部分ですが、それなりに高くなっています。
簡易な計算でジニ係数を出してみますと、2019年が0.224、2020年は0.217ということで、特別定額給付金をはじめとして様々な施策が効果を持ってきたものと思っておりまして、マクロで見ると大きな所得格差は見られないと言えると思います。
 ただ、先ほどの報告にもありましたし、データにもありますとおり、やはり女性や非正規雇用の方々に、どうしてもしわ寄せが寄っていますので、厳しい状態にある方にはしっかりと目配りをして、支援策を講じていかなければいけないということであります。
 次に、生活保護世帯の数が全世帯で見ると、前年同月比で若干の上昇傾向にあるということでありますし、高齢者世帯はそうでもないですが、むしろ母子世帯が上がってきていて、その他の世帯も上がってきています。これはしっかりと目配りをして、対応しなければいけないということであります。
 先ほど御説明がありましたリカレント教育を年代別・様々な人材ごとに少し整理してみますと、最も厳しい状況にある非正規の方や就職氷河期、引きこもりの方なども含めて、社会で活躍できるように。
あるいは、自分の能力を発揮できるように、さらに良い待遇になるようにということで、まさにキャリアアップの仕組みで、デジタルが得意な方もいると思いますので、それを更に伸ばしていく。それから、先ほどからお話にある「第2のセーフティネット」と呼ばれる求職者支援制度。働いていても訓練が受けられて、かつ10万円の給付もある。あるいは資格を取る。また、高等職業訓練促進給付金。こういったことで、まさに雇用保険に入っていなくとも、訓練を受けながら給付も受けられる仕組みを拡充し、こうした方々が正規雇用に移っていくことも大事であります。
 それから、正規社員の方々も、先ほど翁座長から御説明ありましたように、兼業・副業を行ったり、様々な訓練を受ける中で、あるいは40歳の棚卸しをやる中で、より実務的なプログラミングや人事・労務、語学を学んでいく。
1つの会社だけで通用するというよりは、市場全体・社会全体で通用するようなスキルを磨いてもらって、高度人材を目指していく。あるいは、40歳のところで棚卸しをやる中で,独立していく、あるいは地方の別の企業での活躍といったことを含めてやっていく。これは、大学での教育などで、40歳以降、更に訓練を受けるということも考えられます。
高度人材を増やしていくという過程では、博士号持つ方を増やしていこう。経営人材も、MBAなどを国内外で取得して、国際的にも通用する人材を育てていこう。20代・30代でそういった様々な経験を活かしてもらって、40歳以後で起業していく。様々な他の企業に移っていく。あるいは、研究者として道を究めていく。様々なキャリアのルート、それぞれのニーズに応じたリカレント教育を整備していくこと。これは専門学校が担う部分もあるでしょう。あるいは大学が担う部分もある。
大学院が担う部分もある。こういった仕組みをしっかりと作っていくということが大事だと思っています。
 次に、先ほど御説明がありましたが、就職した後、様々転職したり、学び直しがあったり、留学したり、起業したり、独立したり、様々なルートで複線化する中で、自分自身をキャリアアップしていく。万が一の時は、雇用保険のセーフティネットがある。あるいは、雇用保険に入っていない方々でも、休職者支援制度などが「第2のセーフティネット」。
最後は、生活保護があるわけですが、そうなる前に様々なチャンスがある。リカレント教育や兼業・副業といったことの中で、多様な人材が年功序列を打破しながら、何度でも挑戦し、そしてキャリアアップできる柔軟な労働市場を作っていこうということであります。これを「ソーシャルブリッジ型」と呼んでいるわけです。
 次に、先ほども御紹介がありましたが、学校で指導できる資格である特別免許状や、特別非常勤講師として一時的に教員になれる仕組みもあります。慶應義塾大学名誉教授の竹中先生が、自分はハーバード大学では教えられるが、資格がないから日本の公立中学校では教えられないということをよく言われます。
特別免許状授与件数は少しずつ増えていますが、また、特別非常勤講師の件数は実はそれほど増えていないです。だから、もっと社会の実務で活躍している方から、中学生や小学生が聞いて、いろいろ触発される機会を作っていく。単なる知識の詰め込みは、もうスマホもあり、人工知能がやってくれるわけです。先ほど御説明した教育の仕組みの中でも一番下には基礎学力が必要ですが、様々な人の話を聞くチャンスを、実務家の外部人材に免許を与えることで積極的にもっと活用しようということであります。
 そして、博士人材。最初のイノベーションのところに関わってきますが、世界で比較すると、1万人当たりの博士号の取得者が、日本は欧米の国々と比べると非常に低い。韓国と比べても低い。
中国は、データがはっきりしないところもありますが、人口が桁違いに多いため低い数字になっています。欧米と比べて圧倒的に低い日本は、自然科学が少ないというだけではなく、人文科学や社会科学も少ない。
MBAを取っている人も少ない。国際的に通用する人材、そして、イノベーションを担う人材を是非育てていきたいということです。日本の博士号取得者の伸びは横ばい程度ですが、ポスドクの話も含めて、人材支援の枠組みもできていますので、その中で博士号取得者を増やしていこうということであります。
 次に、大企業における役員の最終歴について、大学院を修了している人は11.5%しかいません。欧米は遥かに多いということであります。
 次に、兼業・副業については、先ほども御説明がありましたが、20代・30代の7割以上関心を持っているということです。
 今朝も申し上げましたが、企業を選ぶ時に、転職する時にも、テレワークがしやすいとか、育児休業がしやすいなど、視点が変わってきています。
単に経営が安定しているとか、給料が高いとか、成長するということだけではなく、こういった視点で若い人たちは見始めている。SDGsもあります。テレワークあるいはオンラインで、買い物や教育、医療ができるということも、地方移住の関心が高まった大きな理由であります。
 次に、男女の賃金格差。先ほども御説明がありましたが、高等教育の経済的リターンということで、高等教育を受けたことによる生涯所得の増加分から高等教育の費用を引いた額は、OECDの中で比べても、男女で大きな差があります。
男性のレベルはOECDの平均並みでありますが、女性が圧倒的に低い。そもそも高等教育で博士号を取る人が女性は少ないと思いますが、更に受けたとしても、生涯の所得がこれだけ男性と差がある。これを何としても変えなければいけないということだと思います。
 次に、何度も申し上げていますが、M字カーブは解消されてきました。結婚・子育ての時期の女性も、働くチャンスが増えてきたということだと思いますが、非正規雇用が多い状況です。
正規雇用比率のL字カーブはほとんど解消されていません。結婚と出産とともに正規雇用率が落ちます。
能力がある女性、やる気のある女性が正規で雇われていないというこの実態を、絶対に変えなければいけない。
 次に、1年以内に離職した人がどう変わったかということについて、正規雇用から正規雇用に転職した人の割合は、男性は女性に比べて高い。女性も2020年は上がっていますが、それでも男性に比べると低い。
しかも非正規雇用の方が正規雇用になれる割合も、女性は男性に比べて低い。女性が活躍できるようにもっと正規・非正規をなくしていく環境を作って、女性の所得を上げていくことが非常に重要です。
 貧困問題の大きな理由の一つは、女性のパートタイム労働者、非正規雇用の方の割合が高くなっているということであります。
 次に、「第2のセーフティネット」。昨年度予算は充実していましたが、実は、対象のうち利用されている人が非常に少ないということであります。
高等職業訓練促進給付金の方が分かりやすいかもしれません。最大4年間で毎月10万円をもらって資格を取る。働きながらできる。この仕組みで看護師の資格を取った人が、約1,200人います。保育士の資格を取った人が約160人います。
美容師とか歯科衛生士、様々な資格を取って、次のステップに行かれている方がたくさんいると思います。他方、対象となるひとり親の方、児童扶養手当の受給対象となる人が実は90万人もいる中、このうち、この仕組みを利用した人は、数年間、年間だいたい約7,000人で0.8%に過ぎません。知られていません。
もっと利用してもらいたいと思います。最終的に資格を取った人は2,000人で利用者の更に3分の1か4分の1で、90万人に対して言えば0.2%強です。
 したがって、厳しい家庭の方々はたくさんおられますが、こういった仕組みをもっと充実させていって、活用してもらうことが、何より重要だと思います。
 こういうことで、翁座長から報告をいただいたこの報告書をしっかりと受け止めて、私の立場で今申し上げたような視点を大事にしながら、骨太方針の中にしっかりと盛り込んでいければと考えております。

2.質疑応答

(問)今日の報告の中で、所得再分配、格差是正のところで、高所得者への金融課税の強化をはじめ所得に応じた適正な税負担を検討していくべきであるという御提言がありましたが、この金融所得課税については、政府与党で様々な考えの方がいらっしゃると思います。
この提言について大臣はどう受け止められているのかということと、こういう金融所得課税について骨太方針に反映していくような可能性はあるのか。それとも、もう少し中長期的に議論していくべき話なのか、この辺りのお考えをお願いします。
(答)まず、先ほど御講演いただいた有識者の方を御紹介しましたが、報告書の45ページに懇談会のメンバー表もございます。社会保障の専門家、あるいは格差、労働生産性などを研究しておられる方々、様々な視点から御議論いただいて、人への投資というものを増やしていく。
特に厳しい世帯にある方々、あるいは本来は能力があったり、潜在的な力があるにもかかわらず、なかなか活かせていない方々。やはり日本では最後は人材が全てでありますので、人材への投資を増やしていくべき。これは皆さん共通した認識であります。
 しかし懇談会として、無責任に増やしていけということではなく、財源もしっかり手当てするべきだという御議論もあり、そうした中で今の金融課税のようなお話が盛り込まれています。
 この点については政府与党内で様々な議論がありますので、なかなか短期間で議論を決着させることというのは非常に難しいと思いますが、私個人的には、やはり中長期的に人材への投資を厚くしていく中で、諸外国でも議論されております、富裕層への課税の強化が重要。
そうした中でも、特に金融所得課税が総合課税になっていませんので、20%ということでこれまで強化されてきましたが、そういったものも今後の検討課題の一つだという認識しております。
 諸外国の税制なども様々参考にしながら、それこそ「選択する未来」委員会のとき、三村会長の頃に議論した中で、私も当時話題になったフランスのピケティ教授との公開の討論会が新聞社の主催で行われました。そういったこともありましたので、その後も折に触れて、ピケティ教授のあの分厚い本を読み直したりしています。
 いずれにしても、去年1年間で見れば格差は大きくは広がっていませんが、世界全体で見ると格差の課題はあります。日本でもやはりマクロではなくミクロで見ると、格差の課題があります。
 そして人材への投資を増やしていくという中で、中長期的な課題として、私自身は引き続き念頭に置きながら、検討を深めていきたいと考えております。
(問)今回の報告の中で、リカレント教育の必要性や、多層的なセーフティネットも必要ということで、人への投資という側面から様々な提言があったと思います。
今、まさに骨太方針は最終的な取りまとめ段階ですが、今年の骨太方針に取り入れて、来年度予算や法改正など、早急に対応しなければいけない部分はどの辺りであると大臣はお考えでしょうか。
(答)人材への投資の部分について、来週には「若者円卓会議」の提言も出てきますので、それも踏まえて、例えば、先ほどの博士号を取得する人をどう増やしていくか。
あるいは女性の所得を上げていく中で、例えば理系に進学する女性をどう増やしていくか。それから「第2のセーフティネット」をどう周知して、皆さんに知っていただいて、どう活用してもらうか。様々取り組める課題はあります。
 あるいは、テレワークを機会として、地方移住を進めたいという若者がこれだけいるわけですので、まさに東京一極集中是正を見直す大きなチャンスです。今日も全国知事会の飯泉会長に申し上げましたが、地方の企業が積極的にテレワークを行っていることを情報開示してくれることによって、東京にいる若者の目に届くわけです。
就職企業などにも情報提供していきますので、多くの若者が地方に行きたい、移住したいと考えている中で、もちろん転職なしにテレワークを認めてくれる企業もたくさんあると思いますが、是非この機会に一極集中是正を変えていく。
そして、地方の活力につなげていく大きなチャンスだと思います。
 そういった面も含めて、ここに指摘されたような様々な施策を、できる限り今回の骨太方針の中に盛り込みながら、もちろん各省との関係もありますし、与党との関係もありますので、100%全てを今回の骨太方針の中に盛り込めるかどうかは、これからまだ議論しなければいけませんが、大事な視点をたくさん頂󠄀いたと思っておりますので、しっかりと受け止めて対応していきたいと考えております。
 ありがとうございました。

(以上)


LIFESPAN(ライフスパン): 老いなき世界

2021年11月22日 11時15分26秒 | 社会・文化・政治・経済

【人類が迎える衝撃の未来!】
人生100年時代とも言われるように、人類はかつてないほど長生きするようになった。
だが、より良く生きるようになったかといえば、そうとはいえない。
私たちは不自由な体を抱え、さまざまな病気に苦しめられながら晩年を過ごし、死んでいく。
だが、もし若く健康でいられる時期を長くできたらどうだろうか?
いくつになっても、若い体や心のままで生きることができて、刻々と過ぎる時間を気に病まずに、何度でも再挑戦できるとしたら、あなたの人生はどう変わるだろうか?

ハーバード大学医学大学院で遺伝学の教授を務め、長寿研究の第一人者である著者は、そのような世界がすぐそこまで迫っていることを示す。
本書で著者は、なぜ老化という現象が生物に備わったのかを、「老化の情報理論」で説明し、なぜ、どのようにして老化を治療すべきなのかを、最先端の科学的知見をもとに鮮やかに提示してみせる。
私たちは寿命を延ばすとともに、元気でいられる期間を長くすることもできる。
老化遺伝子が存在しないように、老化は避けて通れないと定めた生物学の法則など存在しないのだ。
生活習慣を変えることで長寿遺伝子を働かせたり、長寿効果をもたらす薬を摂取することで老化を遅らせ、さらには山中伸弥教授が突き止めた老化のリセット・スイッチを利用して、若返ることさえも可能となるだろう。

では、健康寿命が延びた世界を、私たちはどう生きるべきなのだろうか?
著者によれば、寿命が延びても、人口は急激に増加しない。また、人口が増加しても、科学技術の発達によって、人類は地球環境を破壊せずに、さらなる発展を目指すことができるという。

いつまでも若く健康で生きられれば、年齢という壁は消えてなくなる。
孫の孫にも会える時代となれば、私たちは次の世代により責任を感じることになる。

変えられない未来などない。
私たちは今、革命(レボリューション)の幕開けだけでなく、人類の新たな進化(エボリューション)の始まりを目撃しようとしているのだ。

■世界を代表する知識人が称賛!
鋭い洞察に満ちた刺激的な書だ。広く深く読まれるべき傑作といえる」
――シッダールタ・ムカジー(科学者。ピュリッツァー賞受賞作家。『遺伝子――親密なる人類史』、『がん――4000年の歴史』著者)

知的好奇心を掻き立ててやまない一冊。じつに興味深い洞察を提供してくれる
――アンドリュー・スコット(ロンドン・ビジネススクールの経済学教授、『LIFE SHIFT(ライフシフト)――100年時代の人生戦略』著者)

内容(「BOOK」データベースより)

人類の若さを左右する長寿遺伝子とは?いつまでも若く健康でいるために今すぐできることとは?山中伸弥教授の発見が、なぜ若返りを可能にするのか?「病なき老い、老いなき世界」における人生戦略とは?誰もが人生120年時代を若く生きられる!ついに、最先端科学とテクノロジーが老化のメカニズムを解明。ハーバード大学の世界的権威が描く衝撃の未来。

著者について

デビッド・A・シンクレア
世界的に有名な科学者、起業家。老化の原因と若返りの方法に関する研究で知られる。とくに、サーチュイン遺伝子、レスベラトロール、NADの前駆体など、老化を遅らせる遺伝子や低分子の研究で注目を浴びている。
ハーバード大学医学大学院で、遺伝学の教授として終身在職権を得ており、同大学院のブラヴァトニク研究所に所属している。
ほかにも、ハーバード大学ポール・F・グレン老化生物学研究センターの共同所長、ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア・シドニー)の兼任教授および老化研究室責任者、ならびにシドニー大学名誉教授を務める。これまでに170本あまりの科学論文を発表し、50件あまりの特許を共同発明。
老化、ワクチン、糖尿病、生殖能力、がん、生物兵器防衛などの分野で、14社のバイオテクノロジー企業を共同創業している。国防関係機関やNASAとも共同研究を行なうほか、これまでに35の賞や栄誉を授与されている。『タイム』誌による「世界で最も影響力のある100人」の1人に選出され(2014年)、「医療におけるトップ50人」の1人にも選出されている(2018年)。
 
 
一見あやしい本に見えるかもしれない。しかし読めばすぐに、この本がいかに超硬派かがわかるだろう。本文は491ページ。さらに巻末には登場した科学者の紹介(日本人では今井眞一郎氏や山中伸弥氏の名前もある)、用語集、引用された論文の数々のリストが98ページもある。

だからと言って難解すぎることはなく、普段ビジネス書と小説ばかり読んでいて理系方面に疎い私だが、まるで壮大な科学の軌跡を辿る物語を読むかのように没頭できた。

著者はハーバード大のシンクレア教授。私は彼のことを知らなかったが、調べると、不老研究の第一人者で、数々の歴史的論文を発表している。一方で、彼がその研究をビジネス的成功に繋げようとしている姿勢が、科学者を聖職と考える人から批判を受けているようだ。

だが、この本を読むと、不老研究に投資することが社会全体にとって莫大な利をもたらす可能性を確かに感じ取れる。読んでいて高揚した。

まだこの本を読んでいない方へ。
賛否両論あるのは頷ける。不老長寿自体が人類にとって有益か疑問を持つ人もいるかもしれない。だが、少なくとも科学がなぜ、どうやって現在地までたどり着いたのかを知ることは社会にとって有益だろう。

より多くの人がこの本を読み、現実に起きるかもしれない人類の進化と、それがもたらす世界の変革を真剣に考えることを心から望む。
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Reviewed in Japan on September 21, 2020
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この本を読もうか悩んでいる人は絶対読んでみてください。とおすすめできる1冊です。

たった1冊の書籍を読むことで長生きできる可能性が上がるとしたら、書籍代2,600円ぐらい安いものとは思いませんでしょうか。

今回この書籍を読んでわかりましたが、長寿というジャンルは先端の研究者と我々一般の人間との知識量の乖離が非常に大きいです。

著者は「ハーバード大学医学大学院遺伝学の教授として終身在職権を得ています。
また14社のバイオテクノロジー企業を共同創業している。」と説明にあります。
研究費を引っ張るために培った技術と起業での経験からか非常に文章がうまい。
人をワクワクさせる文章を書きます。

長寿に興味がなくとも、この文章を読むだけで2600円の価値はあります。
お金を引っ張ってくる必要がある研究者、起業家、新規事業立ち上げの担当者などが読んでも参考になる一冊です。

リチャード・ファインマンなど優れた科学者というのは文章がうまい人間が多いですが、この著者も間違いなくその一人です。
長寿に関する情報はもちろん、優れた文章の語り口を楽しむという観点からも楽しめる一つです。

例えば、著者の長寿に関しての見解が以下です。
----------------------------------
これから見事にグライダーを飛ばして、ノースカロライナ州キティホークの砂地に着陸させるのだ。
世界は変わろうとしている。
初飛行が成功する1903年12月17日までがそうだったように、現在も人類の大多数はその変化に気づいていない。
かつては、「制御された動力飛行」というもの自体が想像の外だった。
そんな発想を組み立てられるような材料がどこにもなかったからである。
だから、空を飛ぶなど夢物語か魔法であって、空想小説に出てくる絵空事だとみなされていた。

そのとき、1機の飛行機が地面を離れた。
そして世界は一変したのである。
私たちは今、同じような歴史の転換点に立っている。
これまで魔法と思われていたことが現実になるのだ。人類には何ができて何ができないのか。
その線を引き直し、避けて通れないと信じられていたものに終止符を打つ時がきた。
----------------------------------

どうです、ワクワクしませんか。
もちろん、著者は長寿になるという方向に対し、人生を大きくベットしているので期待感を煽るような文章を書いています。
しかし、これほどまでに人を楽しませられるワクワクできる文章を楽しむというだけでも、この一冊は間違いなく価値があります。

著者のように新しい挑戦をすると必ず反対意見が出てきます。
プライベートではほっていけばいいですが仕事となると反対してくる人間を説得する必要があると思います。

今回のコロナでも感じますが、アメリカという国の中で保守派の人は非常に意見を変えません。
例えば、マスクをつけるつけないでも、日本人の感覚で言えば損しないなら、
さっさとつければ良いのにと多くの人が感じると思います。
保守の人から見ると見ると神から与えられた呼吸を奪うのかなどの意見もあります。

さて、このような人たちに対して寿命が長くなると知ったらどのようなリアクションをするでしょうか?
マスクの比ではない、猛烈な反対意見が出てくるのは容易に想像できます。
長寿は自然ではない、死は生物連鎖の発明という意見も出てきます。

こういった問いかけにも。著者は論理的に多くの人が納得するような意見を持ってきます。

この本で感じたのは何か新しいことをしようとするときに、多くの人が反対意見をぶつけられるはずです。
恐らく我々がやることは、この著者の研究内容よりも些細なことのはずです。
だとしたら、この本の中で書かれてる反対意見に対する意見の潰し方をが大いに勉強に参考になります。

また、健康寿命伸ばすため、長寿のため著者が実践している具体的な事例も書いてあります。
注意書きとして、全て人間を対象にした臨床実験が現在進行中ですが、厳密かつ長期において臨床試験がなされた老化の治療法や療法は1つも存在しないと書いてあります。

●少食
●運動
●快適とは言えない温度に身をさらす
●日中と就寝時は涼しい場所
●NMNサプリメントを摂取
(長寿を研究している研究者たちはNMNサプリメントを家族に飲ませている人が多い。
著者の父親も摂取し効果を感じた。)
などなど他にもあります。

また、この書籍を読むと多くの人がNMNサプリに興味を持つと思います。
NMNサプリの選び方なども記載されています。
(安いものは成分が薄く大体において効果が低いと思われると述べています。)

解説部分では、Newtonで使われるような図で使用されており、わかりやすいです。
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TOP 50 REVIEWER
Reviewed in Japan on September 26, 2020
 
「老化こそ病気である。
だから治療が必要だ」
…………………………………………………………
ふむふむ、しかし人間だけいつまでも若々しく
生かしておくのは不自然ではないか。
やるなら他の生体も平等でなくては。

セミは一般に7日で死ぬというがその7日間は
とてもドラマティックなものだ。
そして生き物の死にざまは感動的なものも多い。

人間だけが化け物のように生きることに固執して
生体の自然なサイクルを乱して平気なのか?

新しい産声をあげた子供のためにも古い世代は
自然消滅するのが自然の摂理。

これは保守的とか革新的の問題ではなく
道徳の問題です。
国の借金も増え続け、若者の税金負担も
重くのしかかるでしょう。

自分の頭で考えることなく、ただ新しい発見だからと
飛びつく愚か者は一定数存在する。
それは革新ではなく利己的な発想です。
 
非常に優れた傑作。健康寿命をどう科学的に伸ばすか、膨大なデータと論拠をもとに議論している。
著者はハーバードの老化生物学教授で、この分野では世界トップクラスの研究者である。ものすごく面白かったし勉強になった。

唯一懸念すべき点があるとすれば、本書を読んだ人が本書の中で提示されている物質(NMNなど)を摂取しまくる可能性だろうか。
著者も繰り返し言及している通り、本書の中で提示された物質は、まだ人間に対する検証が不足している。私自身はとても期待しているが、もしかしたら効能が否定されたり、思わぬ副作用が出る可能性もある。

本書の内容では、運動や食事など十分なエビデンスが積みあがったものを優先して実践しつつ、NMNなどの物質についてはエビデンスが積みあがるのを心待ちにしながら摂取する場合でも慎重に行うのが重要だと思う。
 
 
太古の地球の誕生の話を皮切りに小説か、と思わせる読み出しである。「細胞には、生存
本能がある」と実感するのも、マグナ・スペルステス(ラテン語で「偉大なる生き残り」
の意味)は、そのための壮大な仕掛けであったと府に落ちる。
もともと、地球上のあらゆる生命には、ほぼ同じ「長寿遺伝子」(サーチュイン:酵母の
「Sir2酵素」から命名)が格納されている。そうであれば、細胞は、アイデンティティを
持っていると捉えるのがよいのかも知れない。

そこで、注意すべきは、細胞はインナーミクロで捉えること――「DNA」は、「遺伝子」
は、「酵素」は、と話の領域層を意識することだ。それは、端的に言って、細胞は4次元
で存在し、私たちは知覚できないからだ。
中でも、「酵素」はナノ世界である。実際、1000兆分の1秒ごとに振動する直径10ナノ
メートルの「酵素」にとって、1ミリは、大陸の大きさであり、1秒は1年以上に相当する。

特に、本著では、酵母の「Sir2酵素」(「遺伝子B」の末裔)が「酵素のゲノム」と「エ
ピゲノム」(遺伝子のスイッチを調整)が安定していることによって、マグナ・スペルス
テス的生存本能(「接合型遺伝子」《「遺伝子Aの末裔」》へ帰趨する本能)を感じるこ
とができる設計となっている。

無論、細胞に酵素を生成する役割がある以上は、体内では作り出せない9つの必須のアミ
ノ酸の摂取が不可欠であるため、外部摂取の食生活とも密接に絡む。
その上で、人体組成の「タンパク質」の材料をいかに損傷せず、いかに有効活用するか、
その謎の解明は本著に記されている。
とはいえ、まずはこういう専門性の高い知見に着目するというよりも、目下の興味をひく
記述に着目したい。一例を挙げていこう。

○「間欠的断食法」の下では、「長寿遺伝子」を働かせることに刺激的である。
朝食を抜いて遅い昼食を取るもの、週に2日はカロリーを75%に減らすもの、週に2日~3
日は食物をいっさい摂らない、などある。

○生後20ヶ月(人間でいうと65歳)のマウスに、NADの濃度を高める分子を餌として与
えると、サーチュインが活性化され、ランニングマシンで3キロを超えて走り続ける暴走
を起こした。それは、65歳の人が陸上トラック7.5周分を走り続ける事を意味する。

○20歳を過ぎると病気の発生は指数関数的に増加する。別に、今回の武漢ウイルスに敏感
にならなくてもそうだ。タバコの煙に長年さらされてゲノムとエピゲノムの変化を誘発さ
れると、肺がんを発症する確率は5倍に高まる。しかも、50歳に達するだけでガンのリス
クは100倍になる。70歳になる頃には、1000倍なのである。

では、それが実感できる、生物学的に見て、体がどれだけ年老いているかを確かめる簡単
な検査がいくつかある。それを示しておこう。
腕立て伏せが何回できるかは、かなり優れた目安だ。46歳以上の場合、20回を超えられた
らたいしたものである。
他には、「座り立ちテスト(SRT)」というものがある。裸足で床に座り、両足をクロス
させる。そのまますばやく体を前に傾けて、1度で立ち上がれるかどうか試してみるとい
い。
若い人ならできる。中年になると、どちらかの手で押してやらないと起き上がれない。高
齢者ならたいていは片膝をつかなくては無理だ。
やってみることを勧めする。できないのは何故か、その原因を知りたくなる。解決策はあ
るのか。知的好奇心をそそる著作である。お勧めである。
 
 
 
 
 

創作 サラ金地獄 7)

2021年11月22日 09時07分47秒 | 創作欄

島田真治は、府中競馬での馬券が大当たりで何とかサラ金地獄を脱ることができた。
サラ金と無縁となったことで、深く眠ることもでき、幸いにも精神的な安定を取り戻したのだ。
彼は30歳を区切りに生活を一新したくなる。
では、<現実的にどうするか>と思いを巡らせた。
父親は競馬を卒業し、株に投資していた。
手堅いと電電公社の株をまず、500万円買う。
妻梅子の死亡保険金1000万円の中から投資したのだ。
株投資は、勤める三鷹農協に出入りする証券会社の営業マンの勧誘だった。
外国の株投資も勧められた。

真治は母が亡くなってから2年後、父親の伸一と外で酒を飲む機会も増えたが、姉夫婦が同居する三鷹・下連雀の実家に戻ることはなかった。
父親同様に、島田真治が日本酒を好んで飲んでいた。
「そろそろ、身を固めろ」と酒の席で言う。
父親は新宿の農協ビルの事務所に勤めていて、新宿・柏木に住む息子を三越裏の居酒屋へ誘った。
「相変わらず、彼女なしか」と父親に問われるも息子は無言でうなずくほかない。
この間、真治は5度も見合いをしていた。
取りき先の人の計らいなどであったが、ゴールには至っていない。
25歳から3年間も、勤務する会社の同僚であった佐々木佳子に翻弄された苦い思い出を酒にあおる。
彼女は昼とは全く違う<夜の顔>を持つ女だった。
佳子が、東京・六本木で身を売る女とは、真治の想定を超えていた。
「わたし、贅沢な女なの」と告げられた。
その通りに、ごく普通のOLとしては想われないブラウンド品で身を飾っていた。
父親が神戸で町工場を経営していたので、父親に金をせびっていると、真治は思い込んでいた。
だが、彼女の母親亡くなり、父親が愛人を自宅に住まわせたことで、佳子は実家とは疎遠となっていたのである。
贅沢が祟って、佳子もサラ金に手を染め、六本木で身を売る女に転落していたのだ。

 

参考

証券営業には大きく分けて、新規顧客向けと既存顧客向けの、2種類の仕事があります。

新規顧客向けの営業とは、まだ口座を開設していない方に向けて、投資を始めてもらえるように働きかける仕事です。

一方で既存顧客向けの営業とは、既に口座を有している方に向けて、継続的な取引を促す仕事です。

証券営業の多くは、自分で顧客を持ちフォローしていく「担当制」を取っています。

担当の顧客へ、継続した効果的なアプローチができるかが証券業界の営業にとって重要なポイントとなりますね。

証券会社では新規・既存顧客ともに、電話または対面(訪問か来店)での営業が中心ですね。

投資にかかる売買手数料と、コンサルティングサービスにかかる手数料の合計が、セールス社員個人の収益となります。

株式の売買だけでは目標の収益達成が困難となります。

証券会社の営業として採用されて仕事をするためには、株式投資に関する知識や情報だけでなく他の金融商品やコンサルティングサービスに対する知識や情報も身に着けなければならないんです。

ー収入目標から逆算して、売り上げの数値がミッションとして与えられる。
そして株式売買だけでなく、幅広い金融商品やコンサルティングサービスへの知見が求められるわけですね。


創作 サラ金地獄 6)

2021年11月22日 06時44分00秒 | 創作欄

島田真治は、「あんたは、勝負の女神だな」と言えば、花形ミドリが「あなたは、地獄に仏」と応じた。
実は、100万円もの祝儀に歓喜したミドリは、サラ金のレイクから30万円も借りて、四苦八苦していたのだ。
その借金は、最初に江戸川競艇にハマったことが災いした。
彼女は美容師だった。
美容室「サワ」の店主の樋口佐和子の夫が競艇選手で、隣のスナック「リード」のママの喜田川順子の夫も競艇選手選手だった。
佐和子の夫が、「江戸川競艇レースに出走するので応援に行く」と言う。
「ミドリも行く? 競艇面白いよ。リードのママも一緒に行くけど、どう?」
「競艇ね?初めてなので、着いて行くわ」好奇心から応じたのである。

その日、開設周年記念 (GI)の「全日本モーターボートグランプリ」が行われた。
時には、コース内を船が曳航し、舟券の投票の締め切り時間が延長される。
船で出来た波がおさまるまで、5分ほどレースのスタートが遅れた。
ミドリはそのような珍しい光景を観客席から眺めていた。

樋口佐和子と喜田川順子は舟券を買わずに観戦していた。
ミドリは大声を張り上げながら、競艇ファンにアピールする予想屋に興味を示す。
キャプテンという屋号の予想屋と目が合ったら「おネイサン、勝負よ」ニッコリ笑って折りたたんだ小さな予想紙を掲げる。
競艇場にはミドリのような若い女性の姿は稀だったのだ。
「いくら?」ミドリは引き込まれた。
「100円で、大当たり!勝負よ」キャプテンは上機嫌であった。
ミドリが平井駅で下車する時に買ったスポーツ紙で確認すると、7レースは1-2 1-4 1-5と予想されていた。
でも、キャプテンの予想は、2-4 2-5 2-6を教えていた。
「1番の野中は伸びてないよ」と、キャプテンは叫んでいた。
競艇は内枠有利とされていたが、「野中から1-2 1-4 1-5何て買ってどうするんだ。もし、野中がこなかったら、それを考えろ」キャプテンのテンション高くなる。
レースはキャプテンの言う通りになる。
1枠の野中選手は伸びがなく、2着はおろか最下位の6着に終わる。
レースは2-5で決まると想われた。
しかし、6番が2周半ばで伸びて2-6となる。
2-6は実に92・7倍の高配当!ミドリはその舟券を500円買っていたので、観客席で「やったー!」と小躍りした。
「ミドリ、そんなに興奮して、当てたの」と樋口佐和子はミドリが手に握る舟券に見入る。
ビギナーズラックとは言ったものだ。
それが、初心者が往々にして得る幸運なのだ。
賭け事にはまる<もと>なので、実に皮肉である。
府中市内に住むミドリは、江戸川競艇ではなく、多摩川競艇へ行くことになった。
挙句の果てが女だてらに、サラ金にまで手を染めることに。
なお、樋口佐和子の夫は、8レースで3着。喜田川順子の夫はメインレースで2着だった。
二人が夫たちに、こぶしを振り上げ応援するをミドリは舟券を買わず微笑んで観ていた。

 

参考

江戸川ボートレース場は、東京都江戸川区東小松川三丁目にあるボートレース場。
全国で唯一、河川の水面を利用した競走水面をもつ。
江戸川の名を冠してはいるが、実際にレースが行われているのは中川である。
(厳密には1931年完成の人工河川「中川放水路」の区間にあたる)。
河口近くに位置し、水質は海水である。
風の影響を受けやすく、そのために競走(レース)中止がよく発生する。


多摩川ボートレース場は、東京都府中市是政にあるボートレース場である。
多摩川土手の北(徒歩約5分)に位置する。かつて多摩川河原の砂利採取場であった場所をボートレース場に転用したものである。
開場当初の名称は府中競艇場であった。
多摩川河川敷の砂利採掘場および旧多磨村立中学校跡地を利用して造成され、1954年5月に完成。同年6月9日に初めてレースを開催した。当初は府中競艇場と呼ばれていたが、翌1955年5月9日に多摩川競艇場と改称している。