11/8(月) 18:00配信 AERA dot.
年明けの箱根駅伝を制するチームは… (c)朝日新聞社
頭に「超」が付く戦国模様となっている今年の大学駅伝。10月10日に行われた出雲駅伝(6区間45.1km)では東京国際大が会心のレースで初優勝を飾り、11月7日の全日本大学駅伝(8区間106.8km)では次々にトップが入れ替わる大激戦の末、駒澤大がアンカー勝負を制して連覇を達成した。そして「大学3大駅伝」は、いよいよ新春(1月2、3日)に行われる箱根駅伝(10区間217.1km)を残すのみ。果たして2022年の箱根路を制すのは、どのチームになるのだろうか。
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本命は、駒澤大で間違いない。出雲駅伝では1、2年生の経験不足が響いて5位に終わり、全日本でも1区で佐藤条二(1年)が区間新の走りを見せながら2区、3区と失速し、3区が終わった時点で先頭と2分20秒差の11位に沈んだ。だが、この“誤算”がありながら、6区で安原太陽(2年)が9位から4位まで押し上げると、7区で大エース・田澤廉(3年)が一気に先頭に立ち、最後は花尾恭輔(2年)が勝負強さを見せた。ベストメンバーが揃わなかった中での優勝はチームの自信となり、今回の成功体験は必ず“次”に生きてくる。
2カ月後の箱根へ向けて、駒澤大は戦力的な上積みも見込まれる。最も大きいのが、田澤とともに1万メートル27分台の記録を持ち、前回2021年の箱根で1年生ながら山登りの5区で区間4位と好走したエース格の鈴木芽吹(2年)が、9月の故障(右大腿部の疲労骨折)から戻ってくる見込みであること。さらにトラックレースで好成績を残しながら出雲で悔しさを味わった3本柱の一人、唐澤拓海(2年)が復調できれば鬼に金棒だ。全日本を走った面々も各区間の後半に強さを見せており、距離延長は歓迎。全日本では史上最小の「8秒差」での優勝だったが、箱根では大差でゴールテープを切ることも可能。2年連続の「全日本&箱根」の2冠への期待は高い。
ただ、計算通りに進まないのが駅伝である。駒澤大は2021年箱根優勝メンバーから退部者が出たこともあって、経験値にやや不安が残る。箱根10区間の中で出雲同様に1、2年生に頼らざるを得ない区間が多く出て来れば、そこに付け入る隙がある。そして逆転の一番手となるのが、出雲、全日本ともに2位となった青山学院大だ。
昨年の青山学院大は7年ぶりの無冠に終わった。だが、箱根では往路12位から復路優勝で総合4位まで追い上げ、その復路5人中4人が今年も在籍している。その中の2人が出雲でも走り、全日本では岸本大紀(3年)が3区で日本人トップの好走、近藤幸太郎(3年)は7区で駒澤大の田澤廉(3年)に食らい付き、実力の高さを再証明した。2区で区間14位、6区で区間12位のブレーキがなければ勝てたはずで、「私の采配ミス」とは原晋監督。補欠だったメンバーにも好タイムを持つメンバーがずらりと揃っており、層の厚さは駒澤大を凌ぐものがある。箱根10区間の中で走る人数が増えれば、逆転のチャンスは増えてくる。
3番手グループの筆頭には、史上最強ランナー、イェエゴン・ヴィンセント(3年)を擁して出雲を制した東京国際大が入るだろう。全日本では3区で狙い通りにヴィンセントで先頭に立ったが、4区で区間11位、5区で区間13位。6区で日本人エースの丹所健(3年)が区間トップの走りを見せて首位に返り咲いたが、7区、8区で崩れて5位フィニッシュ。いかに強力な大砲を持っていてもブレーキ区間が複数出れば勝てないことを再認識したが、それでも大砲を持っている強みは間違いなくある。出雲と全日本の経験と課題を手に、箱根の山をうまく制することができれば、テレビ画面を長く、そして最後まで独占することは可能だ。
その他、同じく全日本のレースを振り返り、オリンピアン・三浦龍司を擁して3位に入った順天堂大、アンカー・伊地知賢造(2年)の好走で最終的に4位に食い込んだ國學院大、5区で首位に立って見せ場を作った早稲田大が上位候補。さらに10位に終わったが本来ならば上位を狙える力を持っている東洋大も、スーパールーキー・石田洸介(1年)の存在とともに、箱根では優勝争いに加わることのできる可能性を持っている。だが、現段階で箱根のダークホース的存在としては明治大を指名したい。
前回2021年の箱根で優勝候補の一角に挙げられながらも序盤の出遅れが響いて11位でシード権を逃した明治大だが、箱根の予選会では断トツで通過を果たした。主将の鈴木聖人(4年)を筆頭に力のあるランナーが多く揃っており、全日本では最終的には7位フィニッシュとなったが、4区で3位、6区から7区でも4位を走って強さの片鱗は見せた。エクスキューズは、箱根予選会から全日本までの期間が2週間だったということ。出雲を走った他の上位校と比べて調整期間が半分で疲労が残っていた中での7位は、むしろ箱根への自信を高めるものである。
近年、新興勢力の台頭が目覚ましい大学駅伝界だが、1920年の第1回箱根駅伝に出場した「オリジナル4」の1校である“古豪”明治大の復活はあるのか。「本命・駒澤大、対抗・青山学院大のデッドヒート」を予想しながらも、多くの大学が入り混じった「全日本以上の大激戦」を期待したい。