新型コロナ死者数、500万人突破-最初の感染確認から2年足らず

2021年11月01日 21時59分13秒 | 医科・歯科・介護

11/1(月) 19:31配信

Bloomberg
(ブルームバーグ): 新型コロナウイルス感染症による死者数が世界で500万人を突破した。ワクチンが開発され、死亡率は大きく低下したが、最初の感染確認から2年も経ていない。米ジョンズ・ホプキンズ大学の集計が示した。

死者数の増加ペースは鈍化している。400万人から500万人まで死者数が増えるには110日以上かかった。200万から300万、300万から400万に増えるのに要した期間はそれぞれ90日未満だった。

それでも毎日、多数の人々が亡くなっており、ワクチン未接種の人々は数十億人に上る。ワクチンが入手できなかったり、自らの意思で接種を拒否したり、理由はさまざまだが、感染力の強いデルタ変異株が流行するなど、時間の経過とともに新型コロナの危険性は増している。

直近100万人の死者数を見ると、米国が14%を占め、国別で最も高い割合。ロシアは10%、インドネシアとブラジルがそれぞれ8%となっている。

欧州に冬の試練、共存の戦略が奏功後-コロナ時代の安全な国番付

原題:Covid Deaths Top 5 Million Even as Vaccines Slash Fatality Rate(抜粋)

(c)2021 Bloomberg L.P.

Jinshan Hong


大阪でコロナ飲み薬の治験が開始、国産ワクチンも並行開発中

2021年11月01日 21時43分16秒 | 新聞を読もう

11/1(月) 20:30配信

Lmaga.jp

「(現在)コロナ患者は少ないが、早期実用化できるよう全面的に協力したい」と話す吉村洋文知事(10月27日・大阪府庁)

大阪府において、新型コロナの治療薬(経口投与型抗ウイルス薬)の治験が「りんくう総合医療センター」(大阪府泉佐野市)で開始。10月27日の定例会見で発表された。

これまでも新型コロナ患者を積極的に受け入れてきた同センター。今回は、いわゆる「飲み薬」による新型コロナ治療薬を早期に実用化させるため、治験や臨床研究の実施などに向けて大阪府と協定を締結した。

治験の対象者は、コロナ発症から5日以内で軽症・無症状の20歳~69歳のうち協力を得られる人。国産ワクチンの開発も進める「塩野義製薬」(代表:手代木功)が研究開発する治療薬を使い、大阪市内の宿泊療養施設で治験がおこなわれる。

吉村洋文知事は、「治療薬は1日1回の2日分。プラセボ(偽薬)と本物の薬を混ぜておこなわれ、どう混ざっているかは医師にも知らされず、体温、酸素フォワード、採決、採尿、唾液採取などをする」と説明。

また、「地域のクリニックで経口治療薬が処方されれば非常に大きい。感染が減少していて、ホテル療養の患者数自体は少ないが、府としては早く飲み薬が出てほしいので最大限協力したい」と話した。

なお2020年4月に連携協定を結び、大阪大学などと進めている国産ワクチンの開発については、「ファイザー、モデルナのワクチンが非常に高い効果を示している。(国産ワクチンも)現在、容量を増やして(飲み薬と)並行して治験をおこなっているが、まだ時間がかかると思っている」と明かした。

取材・文・写真/岡田由佳子

 

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議席減の立憲民主、共産との共闘は失敗か

2021年11月01日 21時36分39秒 | 社会・文化・政治・経済

高橋浩祐国際ジャーナリスト

11/1(月) 4:43
31日に開票センターで会見に臨み、報道陣の質問に答える立憲民主党の枝野幸男代表(写真:つのだよしお/アフロ)

今回の衆議院選挙で、自民党は単独過半数に当たる233議席どころか、国会を安定的に運営するためのいわゆる「絶対安定多数」の261議席を単独で確保した。

その一方、コロナ対策の不備や不祥事連続で自公政権への強い反発が少なからずあったのに、立憲民主党はその受け皿になれず、公示前勢力を下回る議席しか獲得できなかった。公示前の109議席から96議席となり、13議席も減らした。政治は結果がすべて。立憲民主党の共産党との共闘ははたして本当に正しかったのか。失敗に終わったのではないか。

野党第一党の立憲民主党が議席を減らした一方で、日本維新の会は与党や野党共闘とは距離をおき、94選挙区に候補を擁立。選挙前の4倍近い議席を獲得し、公明を上回り、自民、立憲民主に続く第3党に躍進した。また、国民民主党は立憲民主党と違い、共産党を含む候補者調整には加わらなかったが、公示前の8議席を超える11議席を確保した。

こうした選挙結果を踏まえれば、共産党との共闘を推し進め、議席減という失敗に終わった立憲民主の枝野代表の責任が問われるだろう。

●立憲民主の外交安保政策を不安視
今回の総選挙は、総じて有権者がコロナ対策や不祥事といった内政面で自公政権に少し「お仕置き」をしたと言えよう。ただ、中国の台湾への攻勢や北朝鮮の度重なるミサイル発射をはじめ、東アジアの安全保障環境が日に日に厳しくなる中、共産と共闘した立憲民主の外交安保政策を不安視する人々は多かったはずだ。衆院選が公示された19日には、北朝鮮が日本海に向けて短距離の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射し、日本周辺の安全保障環境が厳しくなっていることが改めて浮き彫りになった。

また、立憲民主は米国との対等な関係や対米追従からの脱却を唱えていたが、それならば「自主防衛強化」も同時に言うべきだっただろう。アメリカの安全保障からの依存を減らすには、「自分の国は自分で守る」との強い気概がないとできない。そうでないと、人々は立憲民主の外交安保政策を頼りなく空虚に思うはず。多くの人々の脳裏には鳩山民主党政権の安保政策の失敗の記憶が残っており、立憲民主は今のままでは無党派層からの幅広い支持も得られないだろう。

立憲民主の参考になるのは、韓国の文在寅政権だ。文大統領は左派政権を率いながらも「自主国防」を強化しており、韓国を米軍に依存しない国にしたいとの長年の悲願を有している。立憲民主も日本の対米追従からの脱却を目指すならば、自主防衛強化がどうしても必要になる。

●外交安保は国の基盤
そもそも外交安保は、国民の生命と暮らしを守る国の基盤となっている。政治家が政争にふけっていても安保や国防がしっかりしていれば、人々は最低限の安心を感じることができる。

結局、立憲民主党は現下の東アジアの安全保障環境に対する見方が楽観的で甘すぎたのではないか。中国の海洋進出が進み、北朝鮮の核ミサイル戦力が着実に増強されてきている中、最悪の事態を想定して万全を期すなら、この時期の共産党との共闘には慎重だったはずだ。

立憲民主党が本気で政権政党を目指すのであれば、来年の参議院選に向けて、外交安保を含め、もっと中道寄りになり、無党派層をしっかりと掴まないといけないだろう。自公政権に対する「お仕置き票」中心のおこぼれでは、いつまでも政権は取れないだろう。中朝の高まる軍事的な脅威にしっかりと対峙できるような現実的な安保外交を含め、安心感のある政権ビジョンがなければ来年の参院選でも国民は野党共闘に希望を託そうとはならないだろう。安保政策を現実的なものにし、もっと中道寄りの野党連合に変えるべきではないか。

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高橋浩祐
国際ジャーナリスト
英軍事誌ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー東京特派員。ホリプロ所属。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、週刊文春、論座、東洋経済オンライン、ビジネスインサイダー、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ、軍事研究、JAPAN Forwardにも記事掲載。


辻元清美氏までも敗北 維新が大阪を中心に4倍増の躍進を果たした背景は

2021年11月01日 21時23分10秒 | 社会・文化・政治・経済

大濱崎卓真選挙コンサルタント・政治アナリスト
11/1(月) 17:30

松井代表・吉村副代表コンビの解散も近いか(写真:つのだよしお/アフロ)
与党の右傾化・野党の左傾化でぽっかり空いた中道
 衆院解散総選挙は、自民党が想定外に健闘したとはいえ、議席をやや減らす結果となりました。一方野党の立憲民主党も議席を減らしただけでなく共産党も議席を減らしたことで、厳しい結果となりました。与野党が議席を減らした中で、議席を大幅に増やしたのは、日本維新の会です。

小選挙区で16議席、比例代表で25議席の合わせて41議席を獲得し、改選前からおよそ4倍の議席を獲得しました。大阪では、立憲民主党の辻元清美氏が比例復活もせずに落選したことが話題となりましたが、それだけ日本維新の会が強かったことがわかります。

 この理由について考えてみたいと思います。自民党は岸田内閣成立の過程において総裁選が行われ、高市早苗候補のような保守系候補が誕生し、保守的な露出が増えていました。コロナ禍で滞っていた憲法改正論議をはじめ、安全保障問題などといったテーマは自民党支持者を結束する効果をもたらす結晶化効果がある反面、与党自民党右傾化をもたらすことになります。

 一方、野党は野党共闘態勢の確立により小選挙区での議席獲得を狙う戦略でしたが、これも立憲民主党と日本共産党を掛け合わせた「立憲共産党」という指摘を与党が行ったように、野党の左傾化を招く結果となりました。結果的に、与野党が右傾化・左傾化をしたことで、中道とよばれるポジションがぽっかり空いたことになります。ここのポジションを取りにいったのが、日本維新の会でした。

全国で候補者を擁立する勝負に勝つ
 日本維新の会はこの衆議院議員選挙に、小選挙区94人、比例単独2人の計96人を擁立しました。2017年の総選挙で小選挙区47人、比例単独5人の計52人を擁立したことを踏まえれば、候補者擁立が非常にアグレッシブだったことがわかります。

 候補者擁立はそれだけ費用もかかります。小選挙区では300万円、比例代表では更に300万円の供託金がかかることから、今回の総選挙では供託金だけで約6億円近い費用がかかったことになります。結果的には41議席を獲得することになったことを踏まえれば、この全国に候補者を擁立する動きは正しかったと言えますが、それだけ費用をかけた挑戦だったことがわかります。

 中道とよばれるポジションでいえば、国民民主党もこれにあたります。国民民主党は選挙区と比例区あわせて27人の候補者を擁立しましたが、これは日本維新の会の候補者数と比べれば極端に少ない数です。結果的に国民民主党も議席を伸ばすことに成功しましたが、全国的に候補者を擁立するだけの動きができていれば、あるいは「日本維新の会の躍進」は「日本維新の会・国民民主党の躍進」になっていたかもしれません。衆院選に焦点を合わせて候補者擁立という大作業を展開できた維新の作戦が見事に成功したことになります。

「大阪だけ」と言わせないための戦略
日本維新の会は「ローカルパーティー」から抜け出せるか(写真:IngramPublishing/イメージマート)
 日本維新の会は今回、はじめて大阪以外の小選挙区でも候補者を当選させることに成功しました。兵庫6区の市村浩一郎氏は、小選挙区で自民党の大串正樹氏を破り、小選挙区での当選を決めています。「大阪だけは強い」と呼ばれていた日本維新の会は、大阪の小選挙区で全勝するだけでなく、初めて(近畿ブロックとはいえ)大阪府以外の小選挙区で勝利したことは、兵庫県を全国展開の足がかりとして重点地区にしていた維新にとっては大きな意味があるでしょう。

 また、比例でも多くの議員が当選しました。各ブロックで2議席以上を獲得しましたが、そのほとんどは小選挙区の比例重複候補ですから、地元を持つことになります。これらの候補者が「議員」となって活動を行うことは、次の衆院選に向けて小選挙区で勝利するための素地づくりが行えることを意味します。ポジション取りに成功した維新は、その中道ポジションを取って議席を増やしただけでなく、全国各地に拠点を作ることも成功したわけです。

衆議院第3党の意味とこれからの展開
 衆議院では公明党の議席を上回り、第3党となりました。自公連立政権はこれからも継続されることが濃厚で、自民が大きく議席を減らさなかったことを踏まえれば、直ちに維新が自公連立政権の枠組みに参加する可能性は低いでしょう。自民・公明・維新の3党で衆議院では3分の2(310議席)を確保することから、衆議院では憲法改正発議をすることができます。一方、参議院では現時点で与党側が3分の2を確保していないことから、まずは参議院議員選挙で大幅に議席を増やすことができるかどうかが焦点でしょう。

 日本維新の会としては、今回の衆議院選挙での大勝を足がかりに、大阪以外での都道府県選挙区での議席獲得を更に増やす動きを展開することでしょう。

また、再来年春には統一地方選挙がありますが、地方議員を増やす動きが展開できれば、衆議院議員にとっては地元の足固めとなり、再選への道や小選挙区での勝利への動きも広がると思われます。

 一方、政党のリーダーシップや候補者の育成も課題です。松井代表・吉村副代表の知名度や地元関西での人気は絶大なもので、コロナ禍におけるテレビ露出などもあったことから街頭演説には多くの聴衆を集めることができる貴重な存在でした。一方、松井代表は党代表選が行われる場合には立候補せずに、来年1月の任期満了をもって退任する意向を示しています。

松井代表や吉村副代表に代わるニューリーダーが日本維新の会に誕生できるのか、新たなニューリーダーが全国知名度を手に入れるまでにどの程度の時間がかかるのかも、今後の選挙戦略では重要なポイントでしょう。また、今後も候補者を擁立していくのであれば、それだけ政治家志望の人物を集めて育成する必要があります。

政治資金の透明性など「クリーンさ」を訴えるのが日本維新の会の政策の特徴ではありますが、一方で維新の会所属議員の不祥事なども報道されることがあり、候補者の育成が課題と指摘されることが多いのも事実です。

大幅に議席が増えたことで政治家志望者が日本維新の会の門を叩くことも増えると予想されますが、候補者育成がどれだけ進むのかも、参院選や地方選、さらに次の衆院選における維新の更なる躍進の鍵となることは間違いありません。


大濱崎卓真
選挙コンサルタント・政治アナリスト
1988年生まれ。青山学院高等部卒業、青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。不偏不党の選挙コンサルタントとして衆参国政選挙や首長・地方議会議員選挙をはじめ、日本全国の選挙に政党党派問わず関わるほか、政治活動を支援するクラウド型名簿地図アプリサービスの提供や、「選挙を科学する」をテーマとした研究・講演・寄稿等を行う。『都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ』で2020年度地理情報システム学会賞(実践部門)受賞。2021年度経営情報学会代議員。


公明代表「リベンジできた」 衆院選比例700万票に手応え【21衆院選】

2021年11月01日 21時13分54秒 | 新聞を読もう

2021年11月01日16時22分

公明党の山口那津男代表=10月31日夜、東京都新宿区

公明党の山口那津男代表は1日、衆院選比例代表の総得票数で約711万票を獲得したことについて「一定のリベンジができた」と語った。国会内で記者団に答えた。公明が国政選挙で比例票700万台に達したのは、2016年参院選以来。
公明、小選挙区全勝に安堵 来夏の参院選へ弾み【21衆院選】

 山口氏は、インターネット交流サイト(SNS)の活用などが功を奏したと分析。
目標の800万票には届かなかったが、「前回を上回る献身的な努力につながり、議席増に結び付いた」と振り返った。

 


れいわ、公明に1議席譲る 比例東海、公選法規定で

2021年11月01日 21時09分03秒 | 社会・文化・政治・経済

共同通信社 - 1 時間前

れいわ新選組は衆院選比例代表の東海ブロックで、1議席を獲得する票を得たが、小選挙区との重複立候補者の復活当選に関する公選法の規定により、次点の公明党に議席が回り、本来獲得できる議席を逃した。

10月31日、テレビ局のインタビューに答えるれいわ新選組の山本代表=東京都内のホテル
10月31日、テレビ局のインタビューに答えるれいわ新選組の山本代表=東京都内のホテル
 れいわの候補2人が小選挙区で敗北して復活当選の可能性が生じたが、2人とも小選挙区の得票率が規定の10%に満たなかった。

 


直前まで大敗予想の自民党、なぜ絶対安定多数を確保できたか

2021年11月01日 20時48分02秒 | 社会・文化・政治・経済

11/1(月) 18:01配信

JBpress
投開票日の31日、自民党本部の開票センターでメディアの取材に応じる岸田文雄総裁(写真:代表撮影/AP/アフロ)

 自民党は10月31日投開票の衆院選で絶対安定多数の261議席を獲得した。この結果を予測していたメディアや有識者、永田町関係者は少なかった。なぜなら報道各社の情勢調査や当日の出口調査で、自民党の苦戦を伝える数字が出ていたからだ。

選挙戦最終日の10月30日、神奈川14区の応援に入り、候補者の赤間二郎氏と手を取り合って聴衆に向かってガッツポーズを決める岸田文雄総裁

 自民党幹部でさえ情勢をかなり悲観していた。例えば、投票日の31日昼時点で、自民党有力筋でさえも「過半数割れの可能性がある」との見方を示していた。もっと言えば同日午後8時過ぎの段階でも、フジテレビは単独過半数割れとの見通しを報じていたほか、NHKも単独過半数は「ぎりぎり」と繰り返していた。

■ 驚愕の「自民惨敗」を示す出口調査

 10月31日午後、主要報道機関の出口調査が永田町に一斉に出まわった。数字は中間報告、途中経過に過ぎなかったが、自民党が過半数の233に達しないという予測が次々に出てきた。報道機関が出口調査の詳細を公表していない以上、あくまで推測でしかないが、自民党が絶対安定多数を取る兆候は数字からは読み取れなかったようだ。自民党有力筋も当然、それらの情報をつかんでおり、自民党惨敗を感じさせる材料だらけだった。

 31日夕、千葉県のある自民候補者の陣営幹部は複数の報道関係者に問い合わせを行い、「このままでは危ない」と語り、有力支援者らに投票に行ったかどうかを確認する電話を慌てて入れ始めた。投開票日当日の選挙運動、特定候補への応援は禁じられているが、投票を呼びかけること自体は推奨行動だ。支持者を固めきり、投票に行ってもらわなければ接戦では勝てない。だから最後の5分まで、投票に行ってもらうよう呼びかける。油断して投票しない人も中にはいる――。長年政権を維持してきた自民党は、投開票日当日も手を抜かない。

 一般的に低投票率の方が与党に有利とされ、今回もそのセオリー通りの結果となったが、選挙現場ではやや様相は異なる。「自民党に入れるべき支持者が漏れなく投票に行くように積極的に働きかけている」のが実態だ。敗北への危機感と焦りが、ぎりぎりまで票を積み上げる努力に結びつく。結果的に、この陣営幹部が推す候補者は接戦を制した。筆者には「本当に危なかった」と明かした。

■ 集中的で無駄のない遊説作戦

 「150選挙区好調」「80選挙区で苦戦」「50選挙区で接戦」・・・。

 10月25日夜、自民党の選対会議での情勢分析結果だ。複数の関係者によると、会議の場は重苦しい雰囲気に包まれていたという。接戦の50選挙区のうち半分を制しても175議席。この時点では比例代表で自民党は60~65議席といわれていたため、過半数割れの可能性は否定できなかった。自民党は明らかに不利な状況にあり、惨敗の“恐怖”が党内に広がった。

 選挙に妙案はないが、自民党は終盤に向けて緻密な遊説日程を組み始めた。接戦区に岸田文雄首相や菅義偉前首相、安倍晋三元首相を優先的に投入する作戦を展開したのだ。これは菅氏の街頭での反応が非常に良いことも踏まえた判断だったという。例えば、茨城6区には終盤だけでも、岸田、菅、安倍の3氏が日替わりで現地入りしている。

 30日の選挙戦最終日の党幹部遊説は、自民党の粘りを象徴していた。埼玉、東京、神奈川の接戦区に岸田氏、菅氏、麻生太郎副総裁、河野太郎広報本部長らを集中投入し、選挙区での勝利につなげている。神奈川7区には岸田氏と麻生氏、東京23区や埼玉15区には岸田氏と菅氏、といった具合だ。いずれの選挙区も事前の情勢調査や出口調査で劣勢といわれていたところばかりで、極めて計画的だ。

 首相並びに首相経験者の応援は、圧倒的知名度はもちろん、陣営の士気を高める意味で絶大な効果がある。岸田氏自身、覇気や闘争心を前面に出すタイプではなく、安倍元首相のような盛り上がりを演出することはできないが、現職総理の応援に勝るテコ入れはない。終盤の自民党の遊説日程には無駄がなかった。接戦区、勝てそうなところのみを選んでいる。残念ながら、立憲民主党の幹部遊説日程を見る限り、そこまでの計算と計画は感じられなかった。

 投開票日翌日に共同通信が報じたところによれば、公示日から選挙戦最終日までに岸田氏が応援に入った小選挙区は68で、うち36選挙区で勝利したという。「勝率」は5割を超える。それに対して立憲の枝野幸男代表の方は、51選挙区に応援に入り、勝利したのは15選挙区。勝率は3割を下回る。

 両党首とも応援に入った26の選挙区で比較すると、選挙区で勝ったのは自民党が15人で、立憲民主党が9人。比例復活したのは自民9人、立憲8人というからいずれも接戦だった。

 自民党が接戦区を数多く制することが出来た大きな要因は、やはり経験豊富な選対の緻密な戦略によるところが大きいと言えるだろう。

■ 岸田首相は「3A」から脱却、菅前首相は復権へ

 さて261議席獲得で、自民党内はひとまず安泰のようにみえるが、小選挙区で落選した甘利明幹事長が辞任の意向を示しており、党内に動揺が広がっている。岸田首相は安倍氏、麻生氏、甘利氏のいわゆる「3A」に配慮した党運営を意識してきたが、甘利氏の求心力の低下に伴い、自らのカラーを出しやすくなるだろう。

 一方、9月の総裁選で「3A」に対抗した小泉進次郎前環境相、石破茂元幹事長、河野氏のいわゆる「小石河」は圧倒的な得票で当選した。来年の参院選に向け、さらには「ポスト岸田」を念頭に置いた動きを強めていくはずだ。

「小石河」サイドには、菅前首相が不気味に控えている。菅前首相は午後8時の投票終了直後に当選確実を出し(ゼロ当)、2カ月前の国民的不人気が嘘に思えるような強さを見せた。街頭では「1日100万回接種の体制をつくる、あえて高めの数字を公言した。そこから大変でしたが」と笑いを取る余裕もあった。首相時代には考えられないハッスルぶりは、復権への意欲満々と受け取っていいだろう。

■ 維新の将来性と立民の絶望

 日本維新の会の大躍進がニュースになっているが、2012年に57議席を獲得しており、ようやく初期ブーム時の水準に近づいたという見方が正しい。とはいえ、第3極の躍進は自民党、立憲民主党の両二大政党からみると脅威である。

 小選挙区比例代表並立制は1996年の総選挙から数えて9回目となった。理論的には二大政党に収れんしていくとされているが、日本政治においてはそうはなっていない。二大政党制を提唱してきた野党の実力者、小沢一郎氏が小選挙区で落選したことがすべてを物語っている。日本の有権者は、25年を経ても多党制志向が強い。

 立憲民主党にとっては厳しい結果となった。候補者個人の力で勝利しているケースが多く、党としての勢いは皆無に近いといってもいいだろう。岸田政権が中道寄りで一定の支持を得ている以上、立民は立ち位置を整理しなければ来年の参院選も苦しくなる。立民は絶望的ではないか。

 それに対して、第三党となった日本維新の会は、保守・中道層が求める自民党に代わる票の受け皿になる可能性が高まってきた。

 まず中道に寄せてきた自民と明確な中道路線を取る維新は政策的には十分組める。維新の連立政権入りは政策的にはすぐにでも可能だ。ただ、維新は自民党との連立を頑なに否定してきた歴史を持つため、なかなか難しい。とはいえ、国会での存在感が増し、当面維新がキャスティングボートを握ることになった。そして何より注目すべきは新鮮さを維持している点かも知れない。維新は松井一郎大阪市長が代表選への不出馬を表明し、維新人気を支えてきた吉村洋文大阪府知事も代表選への出馬を否定した。維新は新陳代謝を継続している点で将来性がある。

紀尾井 啓孟

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最終更新:
JBpress

創造は多様性なくしては考えられない

2021年11月01日 20時44分47秒 | 伝えたい言葉・受けとめる力

▼社会変革のために真に重要なのは<志>を共有した民衆の運動である。
▼苦労と訓練がないと、人間は、自分自身を完成することはできない。
幸福を勝ちとれないものだ。
▼「教育」は本源的に、「人間生命への絶対的な信頼」から出発している。
▼誰人にも尊極の生命が具わっている。
逆境や困難も乗り越える智慧と勇気を発揮する勇気を発揮する力が宿っている。
▼創造は多様性なくしては考えられない―ゲーテ
思いもよらぬ艱難からの挑戦に対し、まさに多様性を生かし合って応戦する。
そこから必ず価値が創造される。
▼人間の可能性を信ずる教育の力。
▼人々がすべての自己の価値を知ったならば、社会はきっと変化をもち進歩をもつ。


V逸阪神「日本一」への起爆剤 佐藤輝の処方箋

2021年11月01日 17時56分19秒 | 野球

10/31(日) 18:30配信

産経新聞

CSでの巻き返しに向け、再開された練習でバットを振る佐藤輝=10月29日、甲子園(中島信生撮影)

プロ野球阪神の新人、佐藤輝明内野手(22)のレギュラーシーズンは驚きとともに始まり、ため息で終わった。開幕からレギュラーに定着し、前半戦に放った本塁打はリーグ4位。新人記録の更新だけでなく、タイトル獲得の期待すら抱かせた。だが後半戦は不振に陥り、それと軌を一にするように一時は首位を独走していたチームも2位に終わった。ただ、クライマックスシリーズ(CS)で優勝チームを下し、日本一に挑む道は残されている。そのために不可欠な大型ルーキーの復調はなるだろうか。

【写真】フェニックス・リーグに出場する阪神・佐藤輝

■「清原超え」期待も

10月26日夜、首位に立つヤクルトが先に勝って優勝へのマジックナンバーを「1」とし、阪神は絶対に負けられなくなった今季最終戦の中日戦。3打数無安打で九回を迎えた佐藤輝に第4打席は回ってこないまま、阪神は0-4で敗れて優勝を逸した。

打率2割3分8厘、64打点、24本塁打。これが佐藤輝の今季の打撃成績だ。並のルーキーなら合格だが、物足りなさは否めない。それだけ、前半戦の活躍は鮮烈だった。

開幕レギュラーを勝ち取ると、5月7日にはドラフト制度以降の新人では最速となる33試合目で2桁本塁打に到達。同28日、セ・リーグの新人では昭和33年の長嶋茂雄(巨人)以来、63年ぶりとなる1試合3本塁打を放った。7月のオールスターゲームにはリーグ最多得票で出場しただけでなく、第2戦で期待通り本塁打も飛び出した。

前半戦終了時点での成績は打率2割6分7厘、52打点、20本塁打。昭和34年の桑田武(大洋=現DeNA)と61年の清原和博(西武)による新人本塁打記録31本の更新も、射程にとらえたと思われた。

■「後半戦は0点」

だが、東京五輪開催期間中の中断が明け、後半戦が始まると暗転した。

8月21日を最後に本塁打はおろか安打すら出なくなり、9月10日には2軍落ち。同23日に再昇格したが、「何かきっかけをつかんでほしい」という矢野燿大監督(52)の期待もむなしく凡退は続いた。2リーグ制となった昭和25年以降の投手も含めたセ・リーグ連続無安打記録を更新。10月5日に60打席ぶりとなる安打を放った際には「プロ野球は難しいな、とすごく思った」と素直な思いを吐露した。

今季最後のアーチを架けたのは、23号を放ってから2カ月余りが経過した同24日。今季の試合は、もはや最終戦しか残されていない段階だった。シーズンを終えた佐藤輝の自己評価は「50点」。前半戦は50点、後半戦は0点だという。

■打球の方向がカギ

不振に苦しむ佐藤輝を、阪神のコーチ陣はどう指導していたのか。井上一樹ヘッドコーチ(50)は「荒療治がいいのか、(漫画『巨人の星』の)星飛雄馬の姉ちゃんのように遠くから見守るのがいいのか。僕らも模索はしてきた」と打ち明ける。

野球評論家の田尾安志氏(67)は、不振の原因は打球の方向から分かるという。「前半戦は自分のミートポイントまで球を呼び込み、逆方向(左翼方向)に打球を飛ばしていた。だが今はバットに当てようとするあまり、十分に球を引きつけていない。だから、打球が引っ張り方向に偏っている」

その上で調子を取り戻すために、打撃マシンでの練習の際に極端なオープンスタンスで打席に立ち、体の開きをねじり戻すようにして打つようにアドバイスする。「こうすれば、球を呼び込んで打つ感覚をつかむことができる。それだけで、彼の打撃は一変する」という。

レギュラーシーズン最終戦から、11月6日開幕のCSファーストステージまでの期間は10日間。佐藤輝はその間に宮崎県で開催されている2軍の秋季教育リーグ「みやざきフェニックス・リーグ」にも参加するという。その名の通りフェニックス(不死鳥)のようによみがえった姿を、CSで見ることができるだろうか。 (上阪正人)

 

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田淵幸一氏が阪神・佐藤輝に提言 “大谷フォーム”学べ!軸ぶれず余計な体重移動ない打撃研究を

2021年11月01日 17時48分11秒 | 野球

10/29(金) 7:00配信

スポニチアネックス
左は大谷、右は佐藤輝の打撃フォーム

 阪神OBでスポニチ本紙評論家の田淵幸一氏(75)が28日、球団の新人本塁打記録を更新した阪神・佐藤輝明内野手(22)の1年目シーズンを振り返った。田淵氏は打率・238、24本塁打、64打点の後輩に及第点を与えた上で、今後の課題として「体力強化」を挙げ、エンゼルス・大谷の打撃フォームを研究するよう提言もした。

 1年目の佐藤輝には合格点を与えることができる。前半戦の彼の活躍が、阪神に勢いをつけたのは言うまでもない。チームトップの24本塁打。豪快な本塁打で16年ぶりの優勝への期待を膨らませたのも、佐藤輝の力だ。

 だが、前半が素晴らしかっただけに、後半の失速ぶりが好対照を描いた。8月以降は3カ月で本塁打は4本だけ。59打席連続無安打で新人最多三振の173三振。別人のような打撃が繰り返された。

 原因はどこにあるのか。研究してきた相手に対する対策の遅れ、技術的にはタイミングの取り方などの問題もあるが、一番の理由は別のところにある。阪神首脳陣の何人かに話を聞いた。「何が欠けているのか」と聞くと答えは共通していた。「体力です」。まずは、そこが彼の課題だ。

 大学野球とプロでのシーズンは全然違う。試合は待ってくれない。毎日のように続く。その中で体力、気力をどう維持していくか。私も1年目は体力の壁を感じた。佐藤輝も1年間でその点を痛感していると思う。きっと体重も落ちただろう。

 悔しいと思うなら、やるしかない。オフの過ごし方は大事だ。私も1年目のオフは下半身を強化し、体力をつけることに取り組んだ記憶がある。階段上りをしたり、走るのは苦手だったが坂道を走ることを自分に課した。上体の力、腕力だけでは安定した打撃は期待できない。基本は土台となる下半身。そこが安定せず、体力も落ちたから夏以降はフォームが崩れ、体重が残らず、前に突っ込んで空振りを繰り返す悪循環に陥ったと見ている。

 しっかりした下半身があれば左7分、右3分のバランスでボールを迎える形ができる。昔と違い今は動く球を多用してくる時代。足を上げて、体重移動するスタイルでは確率は悪くなる。参考になるのはエンゼルス・大谷翔平の打撃だ。デンデン太鼓(と言っても佐藤輝は分からないかもしれないが)のように、軸はぶれず、余計な体重移動はない。タイミングを右足のかかとの上げ下げだけで取り、球を呼びこむ形をキープしている。彼の打撃を研究することはムダではないはずだ。

 これまでのスタイルには、こだわりがあるはず。だが改善すべきところは改善しないと同じことを繰り返す。無安打記録や三振記録を屈辱だと思うなら、その反省を生かすしかない。遠くに飛ばすコツを理論的に伝えてくれる人、疑問に答えてくれる人との出会いも必要だ。その点は球団にも考えてほしい。

 プロは結果の世界。結果が出ないと努力したことにはならない。相手が認めてこその努力だ。ワンランク上がるためにも、やるべきことをやらないといけない。CS、その先の日本シリーズに向け、いい形で締めることに集中した上で、レベルアップに取り組んでほしい。(スポニチ本紙評論家)

 《2年目伸ばせるか》佐藤輝(神)の1年目24本塁打は新人歴代7位の記録。上位10傑入りしている過去11人のうち、翌年も数字を伸ばしたのは原辰徳のプラス11本を筆頭に3人。4人がマイナス2本以内のほぼ現状維持で、田淵幸一も翌年はマイナス1本の21本。清原和博、長嶋茂雄もここに入る。残る4人は大幅ダウンで、59年新人最多31本の桑田武は半減の16本。61年から7年連続20本塁打以上も、現役引退の70年まで1年目を上回ることはなかった。

 《30日からフェニックス・リーグ参戦》佐藤輝は30日から「みやざきフェニックス・リーグ」に参戦する。平田2軍監督は「状態を上げるも何もないでしょ。試合に来る!出に来る!それだけ」と話したが、1軍では先発落ちも増えていただけに、打席に多く立つことはCSへの格好のたたき台となるはずだ。起爆剤としての存在感はチーム屈指。負けられない戦いを前に、温暖な南国で打棒に磨きをかける。

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「4番・大山では勝てないと証明された」「黄金ルーキー佐藤輝、不振のワケ」阪神0Bエモやんが語る“歴史的V逸”タイガース「失敗の本質」

2021年11月01日 17時46分43秒 | 野球

11/1(月) 17:12配信

文春オンライン
江本孟紀氏 ©文藝春秋

 11月1日、プロ野球レギュラーシーズンの全日程が終了した。セ・リーグは前年最下位のヤクルトスワローズが“下克上優勝”を決めた一方、6月中旬には最大で2位と7ゲーム差をつけた阪神タイガースがその後“大失速”し、2位に沈んだ。なぜ阪神は16年ぶりのリーグ優勝を逃したのか。そして、来年こそ悲願を果たすために足りない要素は何なのか。野球解説者でタイガースOBの江本孟紀氏に余すことなく聞いた。(全2回の1回目/ 2回目 を読む)

最大の敗因は「打てなかったこと」
 勝負どころの9月以降の追い上げがすさまじかったヤクルト。それに追いつくことができなかった阪神。

 私が考える阪神の最大の敗因は「打てなかったこと」に尽きる。たしかに守備や走塁面でも挙げようと思えばいくらでも挙げられるかもしれないが、シーズンを通じて中軸がコンスタントに活躍しなかったことが大きいと考えている。

 たとえば4番を打つことが多かった大山悠輔の昨年と今季の打撃成績を比較してみると、

(20年)116試合出場 打率2割8分8厘、28本塁打、85打点
(21年)129試合出場 打率2割6分、21本塁打、71打点

 試合出場数が増えているにもかかわらず、昨季よりも成績が下がっている。

 終盤では大山を4番から外すようになったが、来年は開幕時点から彼を4番や中軸に据えるのは考え直したほうがいい。

 昨季は「阪神の4番としての顔」になりつつあったが、今年は前年とは打って変わって停滞する時期が長く続いた。彼は4番や中軸よりも6~7番あたりに置いてリラックスして打たせたほうがよいのではないかと私は見ている。

 大山というのは不思議な打者で、4番に置こうが、7番に置こうが、試合のなかで必ずと言っていいほど得点圏にランナーを置いて打順が回ってくる。そういう宿命にある打者とも言えるが、しかしチャンスの割に、期待通りに塁上の走者をホームに返すという場面が少なすぎる。

相手バッテリーの術中にまんまとハマっている
 また試合を見る限り、相手チームのバッテリーが大山に対して怖がっていないように見える。

 その理由は2つある。1つは「早打ちである」ということだ。

 大山は配球をじっくり読んで、追い込まれてからでも打てるというタイプの打者ではない。初球や2球目、3球目といった若いカウントからフルスイングして凡退することがたびたびあった。

 これは大山自身、「追い込まれてから打つのが嫌」なのか、「追い込まれたら三振を気にしてしまい、あまりフルスイングできない」などと思ってしまっているからだと考えている。

 相手バッテリーからすれば、早打ちしてくる打者ほど楽なものはない。初球や2球目くらいまでに手を出してくるバッターだとわかっていれば、ストレートを投げると見せかけて、手元で少しクイッと曲がるような変化球を投げてしまえば、打ち取れる公算が高いからだ。大山を見ている限り、こうした術中にまんまとハマっていることが多い。

「だったら配球をじっくり読んで、追い込まれてから打てばいいじゃないか」という声を上げるファンもいるかもしれないが、残念ながら彼はそういうタイプの打者ではない。だからこそ4番には向いていないというわけだ。

 4番打者には、仮に窮地に追い込まれたとしても、そこからどうにか状況を打開しようともがく者が向いている。ホームランでなくてもヒットを打とうと必死になって、ストライクくさいボールはファールでカットして粘る。そうしてやがて甘いボールが来たら仕留める――。これが4番の最大の役割なのだ。

 ところが大山はそうした技術が伴わないまま、4番に座ることが多かった。

入団当初から克服できていない「技術的な問題」
 そして、もう1つ相手投手が大山をあまり怖がらない理由は彼の「技術的な問題」にある。彼は打ちにいったときに軸足の重心が前に移動してしまう。こうなるとスイングした際のバットの軌道とボールとの間にずれが生じてしまい、バットの芯でボールをとらえることができなくなってしまう。残念なことに、この欠点は入団当初から克服していない。

大山の「マン振り」と現役時代の田淵幸一さんとの違い
 さらにもう1つ挙げると、彼は「遠くに飛ばそう」と考えるあまり、力んでスイングするクセがある。たしかに大山は遠くに飛ばす力を持っているが、強振、いわゆる「マン振り」をして飛ばそうとするときがある。これでは力みにつながって内野フライや空振りが多くなってしまう。

 私の現役時代に見ていた田淵幸一さんは、決してマン振りするようなスイングではなかった。スイングが小さくても遠くに飛ばす技術を兼ね備えていた。田淵さんが「ホームラン・アーティスト」と呼ばれていたのは、豪快なフルスイングではなく、ボールをとらえてから滞空時間が長く、美しい軌道を描いてスタンドインさせることに多くのファンが魅せられたからこそついた称号なのだ。

伊藤、佐藤、中野……新戦力の台頭
 何度も言うが、「4番・大山」に固執する必要はない。もっと気楽な打順で伸び伸び打たせたほうが、彼の長所を発揮できるのではないかと、私は考えている。

 最終的にはヤクルトに逆転を許したものの、今年の阪神が躍進したのは、まぎれもなく新戦力の台頭だった。投手で言えばJR東日本からドラフト2位で入団した伊藤将司、野手で言えば近畿大からドラフト1位で入団した佐藤輝明、三菱自動車岡崎からドラフト6位で入団した中野拓夢の3人のルーキーの存在が大きかった。

 とくに阪神の前半戦の大躍進の背景には、佐藤の活躍なくして語れない。東京オリンピック前の前半戦だけで20本塁打を放ったときには、多くの阪神ファンにこんな期待を抱かせた。

「1959年の大洋の桑田武と、86年の西武の清原和博の31本塁打の新人本塁打記録を抜くのは佐藤しかいない」

 だが現実は甘くなかった。東京オリンピックが閉幕して後半戦が始まると、佐藤の打撃は一転、三振と凡打の山を築き、大不振に陥った。

 極めつけは8月21日の中日戦の第4打席で放った安打以降、59打席連続無安打という、NPB野手のワースト記録に並ぶ不名誉な記録を作ったことだった。結局、後半戦の佐藤はまったくふるわず、最終的には126試合に出場して打率2割3分8厘、24本塁打、打点64、三振数173という成績に終わった。

「2年目のジンクス」が、今年の後半戦に突如としてやってきた
 私は優勝を逃した原因を佐藤にあるなどと言うつもりはない。3月下旬に開幕し、途中でオリンピックによる中断期間があったにせよ、10月下旬まで長丁場の野球を経験したことのない、プロの世界の右も左もわからない大学出のルーキーに、責任の一端を押し付けるなどというのは、酷すぎる話だからだ。

 ただし、佐藤にとっては後半戦の不振は「いい薬になった」と見ている。オープン戦から前半戦にかけて、何の苦も無く打ち続けた佐藤が、後半戦もそれまでと同様の活躍を見せていたら、「プロってこんなものか」と甘く見ていたはずだ。

 けれども、後半はプロのピッチャーに手玉にとられることがそれまで以上に多くなり、「少しでも気を許したらやられてしまう」という危機感を抱いたことは間違いない。俗に言う「2年目のジンクス」が、今年の後半戦に突如としてやってきたと思えば、佐藤にとってはいい経験となったはずだ。

オフは「甘い誘い」に乗らず、不振を謙虚に受け止めよ
 だからこそ佐藤にはあえて言いたい。今年のオフは、「なぜ前半戦はあれほどまでに本塁打を量産することができたのか」「なぜこれほどまでに三振を多く喫してしまったのか」「なぜ59打席連続無安打という不名誉な記録を作ってしまったのか」について、しっかり分析してさらなる技術の向上に励んでもらいたい。

 シーズン中は現状からいかに脱却できるかに必死で、考える暇もなかったはずだが、オフは考える時間ができる。前半戦に好成績を残したのも、後半戦に不振にあえいだのも、同じ佐藤本人の姿である。来季は他のチームからのマークがさらにきつくなることが予想される。そうした壁を乗り越え、今年以上の成績を残すことで、佐藤はさらに進化していくことができる。

 これだけ活躍したのだから、オフは甘い誘いもあるかもしれない。だが、後半戦の不振を謙虚に受け止めて、打撃を極めるつもりでいてほしい。彼は阪神のみならず、球界を代表する打者へとなるだけの素質は十分持ち合わせている。今年の成績に満足することなく、一回りも二回りも大きく成長した佐藤の姿を見たいと思っている。

( #2へつづく )

 「ベンチがアホなのが阪神の伝統」「矢野“兄貴”監督が変わらねば優勝はムリ」エモやんが古巣タイガースをぶった切り「ノムさんは矢野を“参謀向き”と見ていた…」  へ続く

江本 孟紀/Webオリジナル(特集班)

 

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100%の理解より一つの発見

2021年11月01日 11時27分52秒 | その気になる言葉

▼一瞬一瞬の選択で自分の人生は変わる。
▼偉業は平坦な道ではなく、迫害など半ば宿命づけられた中で打ち立てられる。
また偉業は一人の手ではなく、多くの無名の民衆に支持されて成就する。
▼<何でもない自分>だとしても、挑戦し続ければ、必ず新しい自分に出会える。
だから、今後、どんな自分になれるかが楽しみだ。
▼本には、人生に深みを与えてくれる視座もあれば、何年もかけて追及し得られた知識や情報、たどり着いた成果が詰めこまれている。
本を開くことで、いつもそうした英知を再生できる。
▼これまで関心がなかったものに興味を覚えることや、今まで知り得なかったことへの偶然の出会いがあるかもしれない。
本屋に行くことで未知の世界に出会えるチャンスがある。
▼100%の理解より一つの発見―何か心に残るものがあればそれでよい。
▼<欲しい> <読みたい> <関心がある>といった感情こそ大切だ。
蔵書―<積ん読>も大切だ。
自身の「関心の地図」「頭の中の延長」のようなものだ。
認識していなかった傾向性や関心事など、自分自身への気付きにもなる。
アイデアの引き出すにもなる。
そのため、決して読んでいなくても、その本が手元にあることが重要なのだ。


藤井3冠3連勝の竜王戦第3局 驚きの手に現れた両者の研究の深さ 真田圭一八段解説

2021年11月01日 11時23分27秒 | 新聞を読もう

11/1(月) 8:30配信

ENCOUNT
これまでとは異なる角換わり早繰り銀に驚きの新手が
竜王奪取に王手をかけた藤井聡太3冠【写真:ENCOUNT編集部】

 豊島将之竜王(31)に藤井聡太3冠(王位、叡王、棋聖=19)が挑戦する第34期竜王戦7番勝負第3局が30、31日、いわき湯本温泉「雨情の宿 新つた」(福島県いわき市の)で行われ、先手の藤井3冠が93手で勝利。3連勝とし竜王奪取に王手をかけた。最年少4冠が現実味を帯びてきた竜王戦第3局を振り返る。

【写真】「めちゃくちゃ可愛い」「いつか食べたい」と話題 藤井聡太3冠の竜王戦第2局1日目の午前のおやつ

 藤井3冠の2連勝で迎えた竜王戦第3局。7番勝負とはいえここで藤井勝ちとなると、豊島竜王は4連勝しか防衛の道がなくなってしまう。実質的にこの第3局が豊島竜王のカド番と言ってもいいだろう。

 藤井3冠の先手で始まり、角換わりの出だしに。相掛かりが続いていたが、藤井3冠が戦法を変えた。更に、採用率の高かった腰掛け銀ではなく急戦調の早繰り銀を選択したことで、温めていた作戦だったことが分かる。

 だが、豊島竜王も十分に研究してある想定内の展開だったのだろう。両者の研究の深さを感じさせる場面がある。まずは豊島竜王、32手目に△4四銀と守りの銀を攻めの銀にぶつけた手。数十年前からある角換わり早繰り銀という戦型ではあるが、その中で見たことのない手だ。

 これに対する藤井3冠の▲同銀△同歩▲5六銀と取った銀をすぐに手放す指し手。これも驚きだ。両者の指し手自体もそうだが、特筆すべきはその消費時間。△4四銀には8分、▲5六銀には4分しか使っていない。持ち時間は8時間、2日制の1日目の午前中の段階で、である。

 このことから推察できるのは、両者の深い研究はもちろんだが、そこに高性能の将棋ソフトが影響を与えているであろうということである。△4四銀と▲5六銀、共に従来にはない発想であり指しにくい手で、いかにも将棋ソフトの手、という感じだ。この推察が的を射ていたとすれば、両対局者が将棋ソフトの判断を高く評価していることの証左にもなる。

 新感覚も取り入れながら、1日目は藤井3冠が45手目▲3四飛と高い位置に飛車を動かした局面で封じ手となった。

藤井3冠は早くから形勢良し、と判断したか
真田圭一八段

 2日目はこの飛車を巡っての戦い。端的に言えば藤井3冠が飛車の威力でリードを奪えるかどうかだ。

 注目したのは53手目。後手からは△1九角成と香を取る手が見えているが、それには▲3三角と王手飛車で強襲する手がある。それを踏まえて、例えば▲7九玉と玉の安全度を高めておくのか、或いは▲1七香と取られそうな香をあらかじめ逃がしておくのか。

 他にもさまざまな有力手があり手の広い局面。いかにも棋士の個性が表れそうな局面で、藤井3冠の選択した手は▲4五飛。この手は一番自然な手だが、このような手を選ぶ場合、大局観が重要になる。自分の方が形勢がいいと判断し、それが正しければ自然な手の積み重ねで勝てるが、判断に誤りがあると一気に形勢を損ねかねない。

 藤井3冠は形勢は既に我に利ありと判断し、具体的には以下55手目▲2五飛、63手目▲8五飛と、飛車の威力を前面に押し出すことで手勝ちできるとの読みだ。その途中、61手目▲2二角と打ちにくい角を打つなど才能を感じさせる手も織り交ぜている点も見逃せない。

 豊島竜王から見れば不利になったのはいつの間にかなのか、それとも徐々になのか。▲8五飛の局面は△7一金と頑張っても勝ち目がないと判断せざるを得なかった。68手目△4九馬以降は、お互い一直線に相手玉に迫る長手順ながら、最終93手目▲3四香まで決められた結末に向かう作業のような流れで藤井3冠の勝利となった。

 一言で言えば、こうなるともう藤井3冠には強すぎるという言葉しかない。とにかく難解な中盤戦での指し手の精度の高さが群を抜いている。これでいよいよ竜王獲得に王手。藤井時代の本格的な幕開けが近づいている。

 

 

 

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最終更新:
ENCOUNT

<自分が存在することに意義>がある

2021年11月01日 11時17分51秒 | 新聞を読もう

▼自分は何のために生きるのか。
自分の使命とは。
想うに<自分が存在することに意義>がある。
▼自分の生命を、いったい何に「使う」のか。
大きな目的に生き抜くために、<自分は存在>するのだ、と自覚したい。
▼誰にも果たすべき<使命>があるはずだ。
▼人間は、皆、<幸福>になるために生まれてきたはずだ。
▼<心こそが大切だ>それが人生の核心!
▼皆を幸福にするために、わが生命を使いたいものだ。
▼悩み、苦しみ、悲しみが大きければ大きいほど、
より大きな幸福に変えていける―そのように前向きに生きたい。
▼悔いなき人生―。
それは、世間の評判や、他人が決めるこのではない。
全部、自分自身が決めるものだ。