■リリースのPDFおよび画像はこちらからダウンロードできます。 (ギガファイル便) https://11.gigafile.nu/1111-b26b8be23ceac57b21d3cde6a0de3374b ダウンロード期限:2021年11月11日(木) なお、本リリースでお知らせするDキャリアプラスへは 歯科衛生士以外の方も会員登録していただけます。 新規登録キャンペーンの天野教授のセミナー無料受講も 登録していただいた方には職種を問わず適用されますので、 よろしければぜひご登録ください。 ---------------------------------------------- 生涯現役宣言!歯科衛生士をもっと元気にしたい 歯科衛生士応援サイト「Dキャリアプラス」 11月8日(いい歯の日)にオープン 新規登録キャンペーン実施中 ---------------------------------------------- DSヘルスケアグループ(代表・CEO:寒竹 郁夫)の デンタルサポート株式会社(所在地:千葉県千葉市、代表取締役社長:草深 多計志)は、 歯科衛生士による歯科衛生士のための参加型コミュニティー 「Dキャリアプラス(ディーキャリアプラス)」を立ち上げ、 さまざまな情報を提供する新しいWebサイトを 2021年11月8日の「いい歯の日」にあわせて開設いたしました。 ▼歯科衛生士応援サイト「Dキャリアプラス」 https://d-career-plus.jp/ ※こちらのURLは11月8日(月)午後に有効になります。 ------------------------------------------------------------------ 新規登録キャンペーン【天野敦雄教授のセミナー無料】 ------------------------------------------------------------------ 2021年11月18日(木)18時までに歯科衛生士応援サイトDキャリアプラスに 会員登録(無料)された方全員に、 大阪大学大学院歯学研究科予防歯科学 教授 天野敦雄先生のセミナー 「う蝕と歯周病の予防・治療に必要な最新情報」を 無料で受講できるクーポンをプレゼント。 ▼会員登録はこちらから https://d-career-plus.jp/member/signup/ ※こちらのURLは11月8日(月)午後に有効になります。 ---------------------------------------------------------- Dキャリアプラスが今後開催を予定しているセミナー(一部) ---------------------------------------------------------- *特別講演会 「う蝕と歯周病の予防・治療に必要な最新情報」 講師:大阪大学大学院歯学研究科予防歯科学 教授 天野敦雄先生 *歯科衛生士のお悩み解決セミナー 全3回 講師:日本歯周病学会認定歯科衛生士 青木薫先生 *DSアカデミー 初級・中級・上級 講師:Dキャリアプラス代表 城明妙 -------------------------------------------------------- Dキャリアプラスは歯科衛生士による、歯科衛生士のためのコミュニティーです -------------------------------------------------------- 口腔の専門家としての国家資格である歯科衛生士免許保有者は 全国に約30万人いるにもかかわらず、 その半数の約15万人は現在歯科衛生士の仕事に就いていません。 大半が女性であることから、結婚・出産・育児などのライフイベントが 主な離職原因となっています。 当社は数多くの歯科医院をサポートし、また、 歯科衛生士を対象としたセミナーを開催しているなかで、 現役の歯科衛生士・復職を希望している歯科衛生士の声を多く聞いてまいりました。 そこで、当社の社員である歯科衛生士が中心となり、 もう一度資格を生かして働きたい歯科衛生士のハードルとなっている問題を解決し、 『生涯現役!』を応援するためのプロジェクトとして「Dキャリアプラス」を立ち上げました。 Dキャリアプラスは一方的な情報発信ではなく、 歯科衛生士による歯科衛生士のための参加型コミュニティーをつくり、 セミナーやイベントを通して楽しい歯科衛生士LIFEを送ることができるように 一緒に考えていきたいと思っています。 そして、歯科衛生士という職業の可能性をさらに広げ、 得意分野を生かした新しい働き方を創設していくことを目指しています。 Dキャリアプラスのミッション 生涯現役宣言!! ・歯科衛生士の資格を生かし、幅広い働き方を実現させて復職を支援します。 ・健康寿命の延伸に必要な知識を普及啓発できる歯科衛生士を育成します。 Dキャリアプラスのビジョン ・からだの健康はお口の健康から!歯科衛生士が日本の国を救います。 ・現場に則した知識と技術の研修で復職を応援し、個別の相談に対応します。 ・歯科衛生士同士が切磋琢磨しあい、元気に活躍できる環境をつくります。 ・歯科衛生士が社会で認知され、あこがれる職業になることを目指します。 ------------------------------------------------------- Dキャリアプラス 概要 ------------------------------------------------------- ■歯科衛生士応援サイト「Dキャリアプラス」が提供する主なコンテンツ Webサイトに登録(無料)していただくことで、すべてのコンテンツをご利用いただけます。 ◎セミナーの開催 実際の臨床に即した知識と技術の研修を提供します。独自の認定資格の取得も可能です。 ◎動画学習サービス 外来、訪問歯科診療のどちらでも役立つ歯科衛生士スキルを学べます。 ◎お役立ちコラム 歯科口腔保健に関する最新の動向を共有します。 ◎求人情報 転職・復職のサポートをいたします。検診、介護予防等の単発のお仕事紹介もあります。 ■Dキャリアプラス代表:城 明妙(しろ あけみ) デンタルサポート株式会社 第二事業本部 Dキャリアプラス推進室 課長 / 歯科衛生士 歯科医院勤務の後、子育て期間中から市町村保健センター、保健所等において、 母親学級、歯みがき教室 及び歯科保健相談などを行い、 その後、高齢者、要介護者の在宅、施設、病院等での訪問口腔ケアに従事。 現在はその経験を生かし、幅広い世代や企業検診実施場所および 多職種に向けた口腔ケアセミナーを行っている。 また、歯科衛生士養成学校においても口腔ケアや摂食嚥下の授業を行い、 歯科衛生士を目指す方々の教育にも携わっている。 所属学会 日本歯科衛生士会/日本口腔ケア学会(口腔ケアアンバサダー認定)/ 日本摂食嚥下リハビリテーション学会/日本歯周病学会/ 日本老年歯科医学会/日本咀嚼学会 認定資格等 認知症サポーター養成講座キャラバンメイト 資生堂ジャパン株式会社 認定資生堂化粧セラピスト 日本接遇教育協会認定医療接遇マナーファシリテーター キャリアコンサルタント・キャリアカウンセラー 執筆 プチDHのための臨床はじめてbook デンタルダイヤモンド社 へるぱる2020年 口腔ケア記事監修 世界文化社 等 ----------------------------------------------------------- 価値あるコミュニティー形成を目指します ----------------------------------------------------------- 当社ではこれまで歯科衛生士を対象に、初級から上級レベルまで幅広いセミナーの開催、 独自の認定制度などスキル習得のための支援、復職支援などを実施しており、 Dキャリアプラス立ち上げの準備段階で約1,000人の歯科衛生士コミュニティーを形成しています。 また、当社ではその他に口腔ケアの情報を提供するWebサイト 「はじめよう!やってみよう!口腔ケア(https://www.kokucare.jp/)」に 約4,000人の歯科衛生士の会員(総会員数約3万2,000人)、 採用サポート事業で約4,000人の歯科衛生士登録者がおります。 当社が提供する既存の各種サービスに登録している方の情報を Dキャリアプラスに集約することにより、よりスムーズなサービスの提供を目指します。 また、新規でDキャリアプラスにご登録いただく方もあわせて 大きなコミュニティーに育てることにより、 Dキャリアプラスから発信する情報の価値を高めていきたいと思っております。 *-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-* デンタルサポート株式会社 広報室 中山ちはる nakayama@dentalsupport.co.jp 〒261-8501 千葉県千葉市美浜区中瀬1-3 幕張テクノガーデンD棟17階 TEL 043-213-6160/FAX 043-213-6491 https://www.dentalsupport.co.jp/
羽矢 辰夫 (著)
無常も、原因があって結果があることも現代のわれわれの常識だとしたら、ゴータマ・ブッダが見つけたものはなんだったのだろうか? 初期仏教の研究者である著者がその研究成果と実体験を活かし、五蘊のうちの行の新解釈から、ゴータマ思想の全容を解明する。
著者について
ブッダが生きた世界では、輪廻転生の思想が広く知られており、「過去の行為が原因で現在の境遇がある。現在の行為が原因で来世の境涯がある」ということは自明の理であると思われる。
ブッダが伝えたかったことは「苦しみからの解放」だ。
ブッダが最初に説いた教えは「四諦説」とされる。
これは「四つの真実」という意味である。
1)苦しみという現実。
2)その苦しみは原因に縁って生じている。
3)だから原因を解決すれば苦しみは滅する。
4)そのための方法がある。
これは
1)病気
2)病気の原因
3)病気の治癒
4)処方箋とも例えられる
この中でも最も大切なのは、苦しみや病気の「原因」とは何かということだ。
ブッダは、この原因を突き止めたからこそ、その治療ができ、問題解決への処方箋を出すことができた。
なぜブッダは最初に「苦しみ」について考えたのか?
それはブッダ自身が苦しんでいたからだと思う。
シャカ族の王子であったブッダは、妻子や一族を残してまで出家の道を選んだ。
経典には「自分はなぜここに存在しているのか」「この人生に意味はあるのか」といった、いわば「実存苦」と受け取れる文言が端々に見受けられる。
ブッダは自分自身の実存苦をなんとか解決したいと、止むに止まれず探求の旅に出たのだと私は考えている。
「四諦説」の苦しみの原因は「欲望」である。
「欲望ののための苦しみが起こるのだから、欲望を滅すれば苦しみはなくなる」―たしかにそういったことが書かれている経典もある。
しかし、食欲や睡眠欲といった人間としての当たり前の欲望を滅するとどうなってしまうのか。
とても健康的とは思うないし、現実的ではない。
そういった人間を目指したいと思う人も多くないだろう。
そこで私が着目するのが、ブッダがブッダとして目覚めた時、考察したといわれる「十二因縁」である。
ここで言及される「サンカーラ(行)」が、苦しみの根源的な原因であると考える。
苦しみの原因は欲望でも、また無明でもない。
サンカーラ(行)とは「自他分離的な自己を形成する力」であり、「他者とばらばらに分離され孤立した自己を形成する力」だ。
人間の自我を形成するために欠かせない原動力だ。
一方、実はこのサンカーラ(行)から人間のさまざまな苦しみが起こっていくのだ。
サンカーラ(行)の働きによって、「自他分離的自己」が形づくられ、自分を大切に思う価値観が生じる。
そして「自分と他者」という認識が生まれ、人は社会生活を営めるようになる。
そのこと自体は健全なことだが、それと同時に、全く気付かないうちに、私たちの中で「わたし」という存在が実体化されていく。
自己中心的な欲望を「超」えていくことで、自分と他者の区別のない「超欲望」となる。
これは「無欲」ではない。
自利利他的な欲望だ。
自分のことしか考えられなかったような自分が、他者のことも自分のことのように考えられるようになる。
さらには、生きとして生けるものをわがことのように思えるようになる。
これはまさに「慈悲」というべきのだ。
また仏教には「分別」という言葉がある。
「物事を別々にして分かる」という意味で、人は、生まれ、育っていく中で、言葉を使って物事を識別し、理解しるようになる。
「分別がつく」というと、一人前の大人になったような印象を受ける。
この「分別」についてもボサツ的人間へと成長する中で、「超分別」となっていく。
この「超分別」を表現するのにふさわし言葉は「智慧」ではないだろうか。
分別が智慧へと変わると同時に慈悲も現れてくるのだと思う。
物事を批判的に考える「理性」は、人間の成長に不可失なものだ。
1)未我→2)自我→超我(我のあり方)
1)未分別→2)分別→3)智慧(知のあり方)
1)未欲→2)欲望→3)慈悲(欲のあり方)となる
1~2への成長は社会生活の中でほぼ自動的に進んでいく。
2が人間の成長の頂点であると考える人が大多数であることに問題がある。
2の先に「凡夫」を超えて成長できる3の段階があるのだ。
「エゴ」は成長のプロセスとして捉えることだ。
どんな極悪人であっても24時間地獄の世界にいるわけではない。
私たちの心は十界(じっかい)を具備している。
十界とは、迷界での地獄界・餓鬼界・畜生界・修羅界・人間界・天上界と、悟界における声聞界・縁覚界・菩薩界・仏界の称。
わずかな自分の時間を大事にするとともに、困っている人のことを優先する。
それが、無理のない喜びに満ちた実践となる(慈悲の行動)。
「わが党は、政治責任を取らなければならないのは間違った政治方針を取った場合だ。今度の選挙では、党の対応でも(野党)共闘でも政策でも、方針そのものは正解だったと確信している」共産党志位和夫委員長
つまり、<党の方針た正しいのに、国民に伝わらなかっただけ>。見ようによっては<国民が野党共闘を理解できなかっただけ>と言いたかったのか?
聞き手・小村田義之2021年8月17日 5時00分コメント
コロナ禍という異例の夏に開かれた東京五輪が幕を閉じた。初の「テレビ五輪」となった1964年は国民の多くが熱狂したが、今回は様相が違った。その要因はどこにあるのか。メディアが果たした役割は何なのか。これからの五輪はどうなっていくのか。日本のメディアの歴史を研究し続けてきた佐藤卓己さんに話を聞いた。
五輪反対社説、国民感情を楯に出したように見えた 佐藤卓己さん(京都大学大学院教授)
――コロナ禍での五輪開催には反対の声も少なくありませんでした。朝日新聞は5月、「中止の決断を首相に求める」という社説を掲載しました。
「5月下旬、信濃毎日新聞、西日本新聞、朝日新聞の順に、五輪開催に反対する社説が出ました。3紙はいずれも戦前、政府や軍部と対立した歴史がある。信濃毎日は1933年、桐生悠々が書いた軍部批判の社説『関東防空大演習を嗤(わら)ふ』で知られます。西日本の前身の福岡日日にいた菊竹六鼓は32年の五・一五事件に際して社説で軍部批判をしました。大阪朝日は18年に掲載した記事を巡り、政府と対立した『白虹事件』が起きています。こうした記憶が政府批判の社説を書く踏み切り板になるとすれば歴史はやはり重要です」
「ただ、社説が出る前から、五輪への支持率が低いことは世論調査で明らかになっていました。調査結果の報道前に書けば勇気あるオピニオン(輿論(よろん))だったと思いますが、国民感情を盾に社説を出したように見えました。世間の空気(世論(せろん))を反映しているだけだから大丈夫、という心理も働いていたように感じます」
――新聞は情緒的な世論を後追いしたように見える、と。
国民的な熱狂につながった1964年の東京五輪。実は当時も、必ずしも多くの国民が開催を望んでいたわけではありませんでした。今回の五輪と、何が違ったのでしょうか。そして、メディアが果たすべき役割とは。
「いまはひとくくりにされて…
第2回 朝日寄付講座 「ジャーナリズムの現在」
2003年4月23日(水)
プロの世界で起こっていること
鈴木規雄(朝日新聞社「報道と人権委員会」事務局長)
抄 録
いま、ジャーナリズム環境が大きく変化している。それに対応して「変えるべきもの」と同時に、「変えてはならないもの」がある。根幹は、取材し、伝えること。技術革新で仕事の方法、伝達手段は変わっても、第一発信者としての記者の基本は変わらない。揺らぐ現場から、「報道とは何か」「報道の社会的役割は何か」について、改めて考えたい。
「変わる」現場
地殻変動の要因はいくつかある。
(1)まず、高度情報通信社会の出現がある。朝日新聞は「複合メディア体」をめざしているが、IT化で現場の記者たちの仕事も変わってきた。象徴的なできごとが、広島支局での記事盗用だった。朝日新聞2000年6月8日付の主張・解説(オピニオン)面に掲載した核不拡散条約再検討会議についての解説の一部が、中国新聞の記事からの無断引用だったことがわかった。パソコンで記事を書くことで、画面上での切り張りが抵抗なくできるようになったのも原因の1つだ。たとえば、簡単なお知らせ記事を前の同じ催し記事の固有名詞など一部修正するだけで書く。うっかり修正し忘れ、 肝心の期日が昔の記事のまま、載ってしまう。事件が起きても、すぐ現場にとび出さずに、まずパソコンに向かう記者もいる。何よりも大切な現場感覚が薄れつつあるのでは、と心配している。ホームページなど電子媒体によるニュース発信が始まり、記者の仕事は24時間体制になった。通信社化により、時間をかけた深い取材や分析がしづらくなる懸念もある。
(2)読者の変質。若い世代の新聞離れが加速、無読層が増えている。情報収集の手段も多様化し、個人からの発信も可能になった。
(3)この時代、新聞企業として生き残るのための商業主義とジャーナリズム性との相克も深刻になってきた。「書きたい」から「読みたい」記事への変化は、新聞のエンターテイメント化(=インフォテイメント)を促す。アメリカで、調査報道が「金食い虫」として衰退したのも、その1例だろう。
(4)メディアと市民と公権力の位置関係も変わった。公権力による市民の「保護」「擁護」のためのメディア規制3法案は、その表れだ。市民がメディアとでなく、公権力とスクラムを組んでいる。その動きの背後には、厳しい市民のメディア不信がある。
(5)政治社会情勢の変化も、紙面づくりの質的変化につながる。国旗国家法やガイドライン関連法が相次いで成立したのに続き、テロ特措法、有事法制の議論まで、日本の針路の基軸変化の背景には、復古的ナショナリズムの動きもある。そんな中で、新聞の2極化もきわだってきた。
たとえば、藤田博司・上智大学教授のレポートからも分かるように、9.11以降の、米国の軍事行動や自衛隊の海外派遣について新聞に掲載された意見を調べると、読売は不支持の意見がゼロで産経は少数であるが、朝日、毎日は支持、不支持、中立の意見が広く紹介されていた。
「変える」改革への取り組み
これらの変化に対応して、現場が反省し、「変えるべき」点も少なくない。朝日の例で言えば、90年代はじめから、各本社の社会部デスクが集まって月に1回、「事件報道小委員会」を開き、事件報道のあり方について議論している。取材や報道の指針となる「手引き」も、その委員会の論議をもとにつくり、改訂を重ねている。容疑者呼称や、連行写真の掲載をやめるなどの見直しが行われてきた。
たとえば精神障害者に対しての匿名・実名の問題。刑法39条の「身神喪失者の行為は罰しない」に基づき、その場合は匿名報道にするが、刑事責任を問えないことがはっきりするまでは実名で、とルールを変えた。
匿名では精神障害者一般が「危険だ」との偏見を助長しかねない、という家族関係者の指摘を受けとめたものだ。池田小学校事件では、発生直後の夕刊段階では匿名にしたが、朝刊で実名報道に踏み切った。現場の意見もいろいろ分かれ、決断は大変だった。
また報道陣が事件や事故の関係者に殺到する集団的過熱取材(メディアスラム)への対応もとられるようになってきた。被害者・家族取材の基準づくりや記者たちによる勉強会も始まった。
また「紙面審議会」や「報道と人権委員会」(PRC)の取り組みもある。PRCは報道被害の迅速な救済のために新たにつくられた第3者機関だ。朝日新聞では年間300~400件のお詫び・訂正を載せている。
現場と相手側との話し合いで解決しない場合は、PRCに申し立ててもらい、社外の3人の委員が救済策などを議論している。自由な取材・報道のためには法による規制ではなく、こうした自主的な取り組みが重要だ。
「変わってはならぬ」自由な取材・報道
しかし、どんなにジャーナリズムをとりまく環境が変わっても、どのような改善策、対応策がとられようが、「変わってはならぬこと」がある。それは、自由な取材と報道である。この問題を考えるとき、私の出発点は、朝日新聞襲撃事件(116号事件)だ。
1987年5月3日に朝日新聞社阪神支局内で、小尻知博記者が散弾銃の男に射殺され、記者1人が負傷した事件である。
みなさんにとっては、遠いできごと、無関心な事件かもしれないが、116号事件から「新聞の責任」「記者の仕事」が何なのか、いま、私たちがどんな時代、歴史の流れのなかに生きているかが、見えてくる。
あの散弾銃の銃口は、つまるところ、市民一人ひとりに向けられたものだと言うことができる。言論表現の自由は民主主義の基盤である。憲法21条は表現の自由を保障しているが、それは「報道機関の自由」を意味しているわけではない。一人ひとりの市民の自由をさしている。
その市民の自由が、いまどうなっているのか。実態を追ったのが長期連載「『みる・きく・はなす』はいま」だ。この16年間、この連載にずっと関わってきたが、その仕事からも、自由な市民社会なしには、自由な報道は存在し得ない、と実感させられている。
言い換えれば、報道の社会的な責務は、自由な、民主的な市民社会の実現にこそある、そう私は確信している。記者に向けられた銃口は、そのまま、自由を、民主主義をめざす市民にこそ向けられたものなのだ。
犯行声明は「反日朝日は五十年前にかえれ」とある。半世紀前の「もの言わぬ新聞」にかえれ、という。その脅しに屈するわけにはいかない。「もの言う新聞」を、どう実現するか。それを116号事件は記者に、市民に問いかけている。そこに事件の普遍的な意味があると思う。
戦争になってしまったら、新聞は実は弱い。「戦争の最初の犠牲者は真実」という言葉もある。だからこそ、その前に、戦争を防ぐ。そこに報道の目的がある。報道の社会的な責任がある。いま、その責任を果たしているかどうか、が問われている。
「攻めのジャーナリズム」への期待を
新聞の責任を果たすために、事件報道の改善をはじめ、自省とマイナス面をなくす努力は必要だ。しかし、それだけで十分か。失った市民の信頼を回復するためには、メディアと市民の距離縮めるためには、読者と共に考え、共感し、紙面を通じて読者と対話することが必要だと考える。
それが、私の言う「共感のジャーナリズム」だ。公権力の監視、隠された不正義の発掘、平和への希求という、本来の社会的義務を果たす「攻めのジャーナリズム」が求められている。
そうした報道の有効性、プラスを積み上げることでこそ、市民の報道への信頼感を取り戻すことができる。いまも努力は続いている。情報公開請求をめぐる防衛庁リストや偽装牛肉事件の掘り起こしは、その例だ。
こうした激変の時代だからなおさら、記者としての強靭なこころがほしい。読者との双方向性に努め、テーマ性豊かなメッセージ力を持つ紙面づくりをする必要がある。そのために複眼的な思考、柔軟な発想など、記者として自分で自分を鍛えるべきだ。
企業ジャーナリストには違いないけれど、社内で自由に発言する気構えも、また。みなさんは、みんながみんな記者の仕事をめざしているわけではないだろうが、現場の実情を知り、「読む」側としての批判力をもつことが、ふつうの若い人たちにとっても大切だと考えてお話した。
同時に揺らぎ、もがきながらも、なんとか自分たちの責任を果たそうとする「記者」たちへの理解と、彼らが取り組んでいる「報道」への期待を、ぜひ持ち続けてほしい。それが、「現場」への力になると信じている。
葛西 諒子(文・新聞学科2年)
2021年11月5日 公明新聞
政策調整、選挙協力が盤石
一橋大学教授・中北浩爾氏
10月31日投開票の衆院選結果や、今後の政治課題、公明党が果たすべき役割などについて、識者に聞いた。
――衆院選の結果をどう見るか。
中北浩爾・一橋大学教授 自民、公明共に堅調で圧勝した。明確な一つの争点があったわけではなかったが、自公連立政権が信任されたといって間違いない。立憲民主党と共産党は共闘し、伸張すると言われたが、結果的に議席を減らした。政権の安定した枠組みを示せなかったことが大きな敗因だろう。
――公明党は32議席を獲得した。
中北 9小選挙区に擁立した候補全員が当選したのは大勝利だ。比例区は党を支える組織の力が如実に表れる。公明党は目標の800万票には届かなかったが、大きく近づいた。今後も700万票台を維持し伸ばしていけるかが課題だ。
――自公両党が勝利した要因は。
中北 地方議会などに根を張る自民党と、地域で強固な支持基盤を持つ公明党が選挙で協力し、相互に推薦を出すなど選挙協力の体制が盤石だ。自民党だけでは、ここまで多くの議席を得ることはできず、公明党は自民党が小選挙区を譲ってくれなければ、候補を擁立することが難しい。自公には、政治の足腰となる選挙で、互いに協力する安定した土台がある。公明党の力を議席数だけで見るのは浅い見方だ。
もう一つ、自公は平和安全法制など異論があっても議論を積み重ね、最終的に合意をつくり出す力がある。この政策調整力を備え、選挙で互いを必要としている自公の関係は強固で安定的だ。
――野党はどうか。
中北 野党は、選挙協力も政策調整もうまくできていない。候補者調整といっても全ての選挙区で行われたわけではなく、相互推薦もない。政策協定も「市民連合」を介したものにすぎない。有権者は、その点で政権を任せられるか懐疑的だったのではないか。
小さな声聴く公明が現場の要望実現を
――今後、連立政権で公明党が果たすべき役割は。
中北 岸田政権は、来年の参院選を勝利すれば、長期政権が展望できる。ただ、現段階では具体策が乏しい。公明党が「小さな声を聴く力」を発揮し、現場の要望を吸い上げ、分厚い中間層を復活させる具体策を提案して、政策の推進力となってもらいたい。
社会保障と税のあり方も、安定政権だからこそ腰を据えて取り組むことができる重要な課題だ。外交・安全保障政策では、現実主義を貫きつつ、自民党が、かじを切り過ぎないよう“バランサー”としての役割を果たしてほしい。
11/6(土) 7:32配信
現代ビジネス
「無敗の男」が敗れた
さらば、枝野… photo/gettyimages
10月31日午後10時6分。中村喜四郎の敗北が伝えられると陣営には暗い雰囲気が漂った。
【写真】メディアは報じない「選挙戦」の舞台ウラ…全国各地で本当に起きていたこと
「地域を挙げて懸命にご支援をいただいたにもかかわらず、残念ながら一敗地に塗れる結果になってしまいました。しっかりとした結果を出せなかったことは私自身の不徳の致すところと深く反省し、お詫び申し上げます」
茨城7区の中村喜四郎は支援者を前にこう語った。15回目の選挙にして初めての敗戦の弁であった。
最大の敗因は保守系無所属の立場から立憲民主党に移ったことだろう。
「『立憲民主党なら応援できない』といろんな人に言われた。それに、野党に移ってから県議は1人(息子の中村勇太県議)を除いて全員自民党になった。喜四郎さんのおかげで当選した県議すらも向こうについた。離れた票を埋められなかった」(中村陣営選対関係者)
この4年間、立憲民主党は「大きな塊を作る」として国民民主党との合流、共産党との連携で「野党候補の一本化」に努めてきた。「1対1ならば与党に勝てる」という戦略だった。
投票日の午後には「自民党単独過半数割れ」の可能性が伝えられ、一定の成果が出るかと思われた。しかし、「野党共闘」の効果は限定的だった。
立憲民主党は96議席に終わり、選挙前の109議席から13議席も減らす「惨敗」に終わった。
枝野辞任へ
辞任を表明した枝野代表
もともと立憲民主党内では「小選挙区では上手くいけば30くらい増やせるかもしれないが、比例は前回立憲と希望の党で獲得した議席から大きく減らすことは確実。立憲自体の人気がないからだ。現有議席を維持できれば良い方なのでは」(中堅議員)という冷静な見方もあった。それにしても、ここまで減らすとは想定外だっただろう。
「現有議席を下回る大変残念な結果となりました。ひとえに私の力不足です。新しい代表のもと、新しい体制を構えて来年の参院選挙、そして次の政権選択選挙に向かっていかなければならないと決断いたしました」
選挙戦を終えた枝野代表は11月2日に開いた執行役員会の冒頭で辞任を表明した。
野党共闘の効果が全くなかったわけではない。秋田2区では前回約1700票差で勝利した元法務大臣の金田勝年が、今回は立憲民主党の緑川貴士に約8000票差をつけられて敗れた。
金田の得票は前回より900票程度減らした一方、緑川は8700票近く増やした。前回共産党が獲得した1万3000票余りの多くが乗ったとみられる。
金田に野党共闘の影響はあったかと尋ねると、「猛烈にあった。共産党の票が相手に乗った」と認めた。
次ページは:立憲民主党への期待がまったく伸びなかった…
立憲民主党への期待がまったく伸びなかった…
全国を応援して回った安倍元首相
同様に野党候補が一本化して逆転勝利したのが前回は共産党に加えて社民党も候補者を出していた福島4区だ。前回約1100票差で敗れた立憲民主党の小熊慎司は「(前回8000票取っている)社民党が合流し、その票は確実に入った」としながらも、「前回も勝っている1区の金子恵美さん、3区の玄葉光一郎さんがともに票差を詰められている」と指摘した。
前回、共産党が候補者を出さなかったことも手伝って小選挙区で勝利した辻元清美(大阪10区)、川内博史(鹿児島1区)、黒岩宇洋(新潟3区)はいずれも比例復活すらできずに落選した。これは立憲民主党の党勢が全く上向かなかったことを示している(黒岩は前回無所属で当選)。
枝野代表の埼玉5区も同様に、前回も共産党が候補者を擁立しなかった。ところが前回、牧原秀樹に4万票以上つけていた差が今回は6000票差まで詰められ、日付が変わってからようやく当確が出る苦戦ぶりだった。
「立憲民主党と共産党に私たちは負けるわけにはいかないんです! この組み合わせに負けたら日本は再びあの悪夢のような時代に逆戻りしてしまいます!」
10月21日、大宮駅西口に駆けつけた安倍晋三元首相はこう叫んだ。「共産党と一緒にやっている勢力に政権を任せるわけにはいかない」という主張は安倍に限らず各地の自民党・公明党の候補者が叫んでいた。
組織力で劣勢区を次々ひっくり返した自民党
小泉進次郎は激戦区の東京23区に2日間も入り勝利に導いた
牧原の元には岸田首相や菅前首相、小泉前環境大臣ら大物が連日駆けつける攻勢で差を縮め、枝野は最終日最後の演説は大宮に戻らざるを得なかった。党勢の低迷に加え、自民党は組織力を発揮していた。
過去4回連続で比例復活当選を果たしながらも今回は初めて落選となった立憲民主党の前職・今井雅人は選挙戦をこう振り返る。
「10月10日頃の情勢調査ではこっちが3ポイントほど勝っていた。それで自民党に火がついてしまった。組織をフル回転させた引き剥がしがすごかった。県連からの引き締めが始まり、数多くいる地方議員が全力で動いた。こんなことは過去にないことだった。
ここ(岐阜4区)のような地方では町内会ごとにコミュニティができているが、その町内会単位で『共産党と組んでいる今井に入れていいのか』と訴えて回っていた。引き剥がしの口実に野党共闘が使われた面はある。その上で岸田首相や閣僚級が何人も応援に入ってきた」
岐阜4区では前回と有効投票数はほとんど変わらなかった。前回1万8000票余りを獲得した共産党は候補者を降ろしたが、今井の得票は約1000票減少した。その一方、自民党の金子俊平は3000票以上積み増し、前回約1万5000票の差が1万9000票以上に広がった。
今井の惜敗率は82%。立憲民主党には惜敗率90%以上の候補が32人もいた。自民党は終盤に重点区として30の接戦区をテコ入れした。そのほとんどを逆転した結果、「単独過半数割れ」の危機を脱することに成功した。
今井は「自民党の底力はすごい。自分が10年以上かけて一生懸命積み上げてきたものがわずかほんの2週間でひっくり返されてしまった」とうなだれる。
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有権者は「自民党に代わる選択肢」を求めていた
関東でも人気を示した日本維新の会の吉村洋文代表
では、自民党が積極的に支持されたのかというとそうではない。
「非立憲・共産」野党の勢力が伸ばしたからだ。
日本維新の会は自民党と対決した大阪15の選挙区で全勝。比例も含めて41議席と選挙前の11議席から大幅に増やした。兵庫でも多くの選挙区で「自民党に代わりうる政党」として認識され始め、兵庫6区では勝利した。
さらに、「小選挙区全員当選」を目標に掲げていた国民民主党は「厳しい」と言われていた前回比例復活の浅野哲(茨城5区)も含めて全員当選を果たした。さらに比例でも5議席を獲得し、結果的に選挙前の8を上回る11議席を獲得した。福島伸享(茨城1区)、米山隆一(新潟5区)、北神圭朗(京都4区)、仁木博文(徳島1区)、緒方林太郎(福岡9区)、吉良州司(大分1区)と過去に民進党の党籍を持っていた野党系無所属候補が当選を果たしたことも注目される。特に北神と緒方は共産党候補が出る中で自民党候補に1万5000票以上の差をつけて勝利した。これは「野党共闘」以上の期待感を有権者から得られたからだろう。
もう一つ今回の選挙で目立ったのは「世代交代」である。
投票に行かない高齢者
幹事長だった甘利明、若宮健嗣万博大臣も野党共闘の前に敗れた
立憲民主党では過去3回の厳しい選挙に勝ち抜いてきた小沢一郎(79歳)、中村喜四郎(72歳)、篠原孝(73歳)、中川正春(71歳)が敗れた。いずれも「選挙に強い政治家」として名高かった。
自民党でも野田毅(80歳)、原田義昭(77歳)、三原朝彦(74歳)、山本幸三(73歳)、甘利明(72歳)、塩谷立(71歳)、ら70代のベテラン議員が次々と敗れた。これは「現状を変えて欲しい」という有権者の強い声と見るべきだろう。
ベテラン勢は二階俊博、麻生太郎など一部の候補者以外は苦しい選挙戦となった。13選を決めた衛藤征士郎(80歳、大分2区)は公示前から「新人議員並みに選挙区を回っていた」(自民党関係者)というほどの危機感で活動していたが、それでもわずか654票差の薄氷での勝利だった。
前回の1万9000票差から大幅に詰められた衛藤はこう振り返る。
「この選挙区では浮動票はほとんど私に入らない。選挙で勝つには保守票を固めることが最重要だが、今回はコロナの影響で10回やる予定だった個人演説会が3回しか開けなかったのが痛かった。結果、投票に行かない高齢者を多く出してしまった」
強固な後援会を誇るベテラン議員ほど、後援会の高齢化やコロナ禍での活動量の低下といった影響を強く受けた面もあるようだ。
「野党がまとまれば自民党に勝てる」
今回の選挙では、野党がこの数年ずっと主張していたこの戦略の見直しを国民が迫ったものだ。
「政権交代可能な野党」はできるのか
国民民主党の玉木雄一郎代表は選挙結果を受けての記者会見で、立憲民主党との今後の関係について釘を刺した。
「我々は改革中道。自衛隊が違憲だとか日米安保がダメだとか言っているところとは政権は共にできない。そこと立憲民主党がどういう関係を再構築されるのかをよく見定める」
「野党が大きな塊を作る」という方向に進むには立憲民主党の路線変更が不可欠になった。
どういう路線で「政権交代可能な野党」を作るか。それがこれから始まる代表選の争点になる。今回示された民意を読み解き、「国民の声を聞く」ことができるのかにかかっている。
小川 匡則(週刊現代記者)
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社告
毎日新聞 2021/11/5
視覚障害者の福祉、教育などの分野で貢献した個人や団体を表彰する「第58回点字毎日文化賞」は、元盲学校教員で、一般社団法人「全日本視覚障害者協議会」元会長の藤野高明さん(82)=大阪市東淀川区=に決まりました。(4面に「ひと」)
藤野さんは福岡市出身。小学2年だった1946年の夏、不発弾の爆発で両目の視力と両手を失いました。指で点字を読む代わりに、唇で点字を読むすべを身につけ、人生を切り開きました。
71年、点字による教員採用試験に合格。母校である現大阪府立大阪北視覚支援学校の教壇に社会科教員として立ち、約30年にわたって全盲や弱視の生徒に寄り添ってきました。
全日本視覚障害者協議会では、当事者の生活と人権を守る活動の他、平和を求める運動にも精力的に取り組みました。
賞状と記念盾、副賞の中村京太郎賞(置き時計)、日本盲人福祉委員会奨励賞(30万円)を贈ります。表彰式は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため行いません。毎日新聞社
「『弟の分まで生きる』と母に約束したから」。幾多の苦境に遭いながらも人生を諦めない原動力をそう話す。
終戦翌年の1946年の夏。2歳下で当時5歳だった弟と自宅近くの小川で遊んでいた時、単4電池ほどの部品を見つけ持ち帰った。不発弾とは気づかずに、その穴にくぎを差し込んだとたん、爆発した。自身は両目の視力と両手を失った。弟は即死だった。
地元・福岡の盲学校への入学を希望したが、「両手がなければ点字の読み書きができない」と認められず、不就学を余儀なくされた。
今の若者にぜひ伝えたい。
2019/7/18 6:00
忖度が疑われる主な問題
安倍政権の発足から6年半がたち、霞が関の官僚が政権の意向を忖度(そんたく)する動きが強まっている。苦言を呈すれば左遷され、従順なら厚遇される‐。人事権を一手に握る首相官邸の思惑を先取りし、口をつぐんだり功を焦ったりする官僚たち。安倍政権の「政治主導」は政権基盤強化の一方で、政策のゆがみも生み出しつつある。
「本当はもっと強く反対すべきだったのだが…」。厚生労働省のある官僚は悔恨の念を口にする。
厚労省の毎月勤労統計で、昨年1月以降の賃金伸び率が異常に上振れした問題。上振れの主因となった作成手法の変更は、首相秘書官や麻生太郎副総理兼財務相の「問題提起」を受ける形で実行された。
厚労省は、上振れを事前に認識していたにもかかわらず、十分な説明をしないまま異常値を公表。メディアや世論の誤信を招いた。賃金の実勢が見えない状況は今も続き、専門家からは「統計が破壊された」と批判を浴びている。
作成手法の変更は省内に異論もあったというが、厚労省や総務省統計委員会が官邸に疑義を呈した形跡はない。ある厚労官僚は「官邸から『問題提起』があれば、みんな震え上がる。反対なんてできっこない」と自嘲気味に語る。
◆ ◆
政権への忖度が疑われるのは「統計破壊」にとどまらない。厚労省の裁量労働制を巡る不適切データ提供、海外派遣された陸上自衛隊の日報に関するずさんな文書管理、財務省の森友学園問題の決裁文書改ざん、加計(かけ)学園の獣医学部新設問題‐。いずれも安倍政権下で起きた不祥事だ。
指摘されるのは、安倍政権が2014年に内閣人事局を発足させ、首相官邸が中央省庁の幹部人事を一手に握った影響。国土交通省のある幹部は「今の人事はとにかく官邸の力が強い」と明かし、菅義偉官房長官の意向に反すれば「飛ばされるか辞めさせられる可能性がある」と畏怖する。
加計学園問題では「総理のご意向」と書かれた文書を認めた前川喜平元文部科学事務次官に対し、菅氏が辞職の経緯を巡り「地位に恋々としがみついていた」と激しく批判。一方、国会の追及に「記憶にない」を連発した柳瀬唯夫元首相秘書官は経済産業省を退官後、複数の民間企業の役員に就任し、霞が関で「官邸に忠誠を尽くした論功行賞」とも受け止められた。
強大な人事権を振るい、官僚組織を掌握する安倍政権。「官邸に逆らわなければ、仕事がスムーズに進む」(国交省幹部)と好意的な受け止めもあるが、政策の検討過程で「官邸のご意向」という言葉が免罪符のように使われることが珍しくなくなったという。
政治の過度な介入で、官僚が萎縮し矜恃(きょうじ)まで失ってはいないか‐。強まり続ける忖度の空気に、政官の力関係のゆがみが透ける。
西日本新聞
安倍・菅政権考
イチオシ 松倉佑輔
毎日新聞 2021/9/27 17:00(最終更新 9/27 17:00) 有料記事 5261文字
インタビューに答える元官房副長官の松井孝治氏=2021年9月15日午後3時25分、松倉佑輔撮影
安倍晋三政権、菅義偉政権は省庁人事を差配する内閣人事局を使った「官邸主導」の政治手法で霞が関を支配した。政策決定の迅速化や省庁の縦割り打破につながった一方で、官僚の萎縮を招き政策がゆがんだという弊害も指摘される。官僚出身で民主党の参院議員として行政改革に携わり、「内閣人事局の生みの親」の一人でもある松井孝治元官房副長官(慶応義塾大教授)は、自戒も込めつつ「行き過ぎた官邸主導になってしまった。見直しが必要」と指摘する。松井氏に、両政権の官邸主導であらわになった課題を聞いた。【松倉佑輔/デジタル報道センター】
菅流「恐怖政治」が残したもの
――松井さんは通商産業省の官僚時代、橋本龍太郎元首相が推進した「橋本行革」に携わり、民主党議員としても2008年の国家公務員制度改革基本法の与野党協議を担いました。菅政権の官邸主導をどう見ていましたか。
◆菅さんは内閣人事局を、恐怖政治的に使いました。役人時代の同僚は、菅さんから「後で残ってくれ」と言われると「背筋が凍った」と話していましたね。
霞が関ではみんな、実際に官邸に反発した役人の左遷と気に入られた幹部の昇進を見ているわけです。抜てきと一罰百戒の見せしめによる恐怖政治です。総理や官房長官が人事権を使うのは当然だし想定していたことですが、長官任期の長期化もあって、人事権の主導権は完全に菅長官に握られ、少々バランスが崩れました。その結果、局長レベルにとどまらず、課長や課長補佐まで「政権の意向」を模索するようになってしまった。「政権の意向にそぐわなければ、仕事ができない」という受け止めが強くなりすぎたと思います。組織コントロールとしては有効なやり方ですが、行き過ぎましたね。
――現場の官僚が萎縮することによって、政策がゆがむという指摘もありますが。
◆「政権の意向だから」ということで現場が押し黙ってしまうと、組織として政策の分析や比較衡量が困難になり、役所の組織としての基礎体力を奪っていきます。霞が関の恒常的な人員不足…
▼安倍、菅政権下で進んだ政治主導で、政策決定の主導権は完全に官邸に移った。
そこには首相の脇を固める「官邸官僚」と呼ばれる事務方の存在が欠かせなかった。
特にその力が強かったのが、安部政権時代だ。
▼「意に沿わない役人は飛ばされる」という恐怖心を植え付けた安倍政権。
官邸主導の体制は官僚の萎縮を生んだ。
中央省庁を退職した複数の若手・中堅官僚は、現場の実情を無視した官邸の指示の違和感を覚えて霞が関を去った人は少なくなかった。
▼行き過ぎた官邸主導で霞が関の政策立案能力は低下したと言われる。
コロナ禍で行き詰まりが明らかになっている日本社会の立て直しに向け、官僚たちの熱意と知恵が期待される。
11/6(土) 0:20配信
Bloomberg
(ブルームバーグ): ドイツで5日に報告された新型コロナウイルス新規感染者数は、前日に続く過去最多となった。欧州では感染第4波に見舞われ、幾つかの感染ホットスポットでは医療体制が逼迫(ひっぱく)する恐れがある。
独ロベルト・コッホ研究所(RKI)の最新データによれば、4日の新規感染者数は3万7120人。10万人当たりの感染者数は7日間で169.9人となり、春の感染第3波で記録したピークを上回った。
特に感染拡大が深刻なザクセン州のクレッチマー州首相は5日、「全ての警報が赤信号を点滅させている」とし、「直ちに対策を取る必要がある」と述べた。
ドイツでの感染再拡大は、欧州全域で見られる恐れがある。新型コロナ対策の制限措置が緩和されたほか、これからの季節は気温が低下し、人々が屋内で過ごす時間が増える。世界保健機関(WHO)当局者の1人は4日、コロナワクチンが行き渡っているにもかかわらず感染が拡大している欧州の状況は世界にとって警告となるべきだと述べた。
ドイツでのワクチン接種率はここ数カ月伸び悩んでおり、接種を完了したのは人口の67%に満たない。ワクチン接種を拒否しているドイツ人は約1600万人、このうち60歳以上は300万人に上ると、ドイツのシュパーン保健相が先週明らかにした。
原題:German Cases Hit Fresh Record as Fourth Wave Spreads in Europe
(抜粋)
(c)2021 Bloomberg L.P.
11/5(金) 19:30配信
産経新聞
立憲民主党の枝野幸男代表の辞意表明を受けて実施される次期代表選に向けた動きが5日、活発化した。枝野体制の低迷は主要な顔ぶれが旧民主党政権と変わらないことが一因で、世代交代と民主党色の刷新を求める声が強い。すでに小川淳也衆院議員(50)らが「ポスト枝野」に名乗りを上げているほか、泉健太政調会長(47)らも出馬を検討している。
【イラストでみる】衆院選 野党共闘の戦績は?
党内最大勢力の旧社会党系グループは5日、国会内で会合を開き、約20人が出席。独自候補擁立も含めてグループがまとまって代表選に対応する方針を確認した。近藤昭一衆院議員が新会長に就き、枝野氏が顧問として入会した。菅直人元首相が率いるグループも代表選対応を協議した。菅氏は会合で「フレッシュな皆さんにどんどん活躍してもらいたい」と述べた。
立民は枝野代表、福山哲郎幹事長、蓮舫代表代行ら旧民主政権でも中枢にいた面々が表看板になって衆院選に臨み、敗北した。
刷新感を打ち出す上で本命視されるのが泉氏だ。昨年9月の新立民の初代代表選では、旧希望の党・旧国民民主党出身者に担がれて立候補し、枝野氏に敗れた。党内融和のために政調会長に起用されたが「常務執行役員」との評もある。
党の存亡に関わる重要局面で意思決定に参加する「取締役」ではないという意味で、党勢回復に向け求心力を保てるかは未知数だ。枝野氏が進めた共産党との共闘については「衆院選結果を踏まえ、再検討するのは当然」とする。
保守系の中には泉氏のほか、旧民主政権で外相を務めた玄葉光一郎副代表(57)を推す声もある。
一方、真っ先に意欲を表明したのが小川氏だ。4日、国会内で記者団に、枝野氏への敬意と謝意を示した上で「次世代として何ができるか熟慮していきたい」と強調し、5日にも「腹は固まっている」と述べた。
先の衆院選では共産党幹部と共同街頭演説を行うなど共闘し、香川1区で自民党の平井卓也前デジタル相を破った。「目立ちたがり屋」と難色を示すベテランも少なくないが、昨年、自身を追ったドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」が公開され、立民支持層を中心にSNSで人気が出た。
大串博志衆院議員(56)も「仲間と相談しながら検討する」と意欲を示す。旧希望の党出身ではあるが、枝野氏に信頼されて新立民で役員室長に就任。国会演説や公約などの作成にも深く関わり「筆頭秘書官」のような役割だった。
馬淵澄夫元国土交通相(61)も立候補に意欲を見せている。
リベラル系の中で待望論があるのが元厚生労働相、長妻昭副代表(61)。4年前に枝野氏とともに旧立民を結党した最古参メンバーで、枝野氏に近い。(田中一世)
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松本博文将棋ライター
11/5(金) 22:37
(記事中の画像作成:筆者)
デビュー以来、将棋界の常識をくつがえす勢いで勝ち進む藤井聡太三冠。2021年度も勝率8割を超えています。
2021年度の成績は11月5日の対局を終えた時点で38勝7敗(勝率0.844)です。
タイトルホルダーでこの成績、この勝率は異例中の異例。とはいえ二冠を保持した2020年度も44勝8敗(勝率0.846)でした。
昨年2020年10月26日。藤井二冠(当時)は先手番で永瀬王座に敗れました。
それから1年以上経った2021年11月5日の現在まで。藤井三冠は先手番でほとんど負けることなく、なんと30勝1敗(勝率0.968)という成績を収めています。(冒頭の表を再掲)
直近1年の間、藤井三冠が先手番で負けたのは、2021年6月29日・30日におこなわれた王位戦七番勝負第1局、豊島将之挑戦者との一戦だけです。
当時の記事を振り返ってみると「8か月ぶり先手番敗戦」とあります。つまりまたそこから4か月以上負けていないわけです。
統計上、将棋はわずかに先手番が有利です。しかし藤井三冠の先手番での勝利キープ率は、将棋界の常識を超えた数字と言えそうです。
藤井三冠が次に先手番で敗れるのは、いつでしょうか。
松本博文
将棋ライター
フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『あなたに指さる将棋の言葉』(セブン&アイ出版)など。