人権は全ての人が生まれながらに持つ権利であり、そこにはなんの義務を課せられることではない。
普遍的人権に関する教育は、宗教的、民族的、文化的、国家的に少数派を含む社会の多様性への理解を促す。
そして、寛容、尊重、無差別を重んじる社会の構築につながり、人権侵害を防ぐことができる。
また、自分の人権を学び、他者の人権を尊重することを学んだ人は、問題や紛争が起きた時に、相手が誰であろうと平和的な解決策を模索する傾向が強まる。
つまり、人権教育を人生の早い時期に実施できれば、<いじめ>はじめ、さまざまな問題に対する体系的な予防措置としての役割を果たすことができる。
それは公正で平和で幸福な社会の確立に寄与するだろう。
今こそ、具体的な行動に移すことが肝要なのだ。
日本ユニセフ協会は、児童の権利条約の主な理念として「児童の最善の利益」「差別の禁止」を挙げ、児童の権利を4つに分類している。
- 生きる権利 - すべての子どもの命が守られる権利
- 育つ権利 - 教育や医療、生活への支援などを受ける権利
- 守られる権利 - 暴力や搾取、有害な労働などから守られる権利
- 参加する権利 - 意見を表現しそれが尊重される権利、自由に団体を作る権利
- 前文:本条約の理念。
- 第1条:児童の定義。
- 児童とは、18歳未満のすべての者をいう。ただし当該児童で、その者に適用される法律により早く成年に達したものを除く。
- 第2条:児童およびその父母・保護者・家族の構成員に対する差別の禁止。
- 人種・皮膚の色・言語、性別、宗教・思想信条、社会的身分や財産、心身障害などによる差別的取り扱いを禁ずる。
- 第3条:児童の最善の利益の保護。
- 締約国は児童の最善の利益のために行動しなければならないと定める。
- 第4条~第5条:締約国の義務。
- 第6条:子どもの生きる権利
- すべての児童は生命に対する固有の権利を有し、締約国は児童の生存および発達を可能な最大限において確保する。
- 第7条:氏名および国籍を得る権利、父母を知り父母から養育される権利。
- 第8条:児童が法律で認められた国籍、氏名、家族関係を含むその身元関係事項を不法に奪われない権利。
- 第9条:児童が父母の意思に反して父母から分離されない権利。
- たとえ分離されていても実の両親 (parents) と関係を保つことを定める。
- ただし児童虐待や放置、両親の別居の場合など、児童の最善の利益のため、権限のある当局が司法の審査と法手続に従って必要と決定する場合はこの限りでない。
- 第10条:第9条の児童の権利を守るための出入国に関する条項。
- 第11条:児童の不法な国外への移送および国外から帰還できない事態の防止。
- 第12条:児童の意見表明権。
- 児童は自らに影響を及ぼすすべての事項について、自由に自己の意見(原文:views、考察・考え)を表明する権利を有する。
- 自らに影響を及ぼす司法上・行政上の手続において、国内法の手続規則にのっとり聴取される機会を与えられる。
- 第13条:児童の表現の自由。
- 児童は表現の自由と、あらゆる情報や思想を求め、受け、伝える自由を持つ。
- 次の目的に限り法律による制限を課すことができる。他者の権利や信用の尊重、国の安全、公の秩序、公衆の健康、道徳の保護。
- 第13条と同様の制限、父母・保護者が児童の発達に応じた指示を与える権利と義務の尊重が付される。
- 締約国は、思想、良心及び宗教の自由についての児童の権利を尊重する。
- 児童に有益な書籍やマスメディアの普及、少数言語を用いる児童への配慮、有害な情報からの児童の保護。
- 第18条:両親の責任と育児への支援。
- 父母(原文:both parents)の責任と、締約国の親への支援(ことに働く父母への支援)を定める。
- 第19条:児童虐待、ネグレクト、児童の搾取、児童性的虐待の防止と保護義務。
- 第20条:家庭環境を奪われた児童、家庭環境が児童の最善の利益に反する児童への特別な保護と援助の義務。
- 第21条:養子縁組における児童の最善の利益の確保。
- 第22条:難民児童に対する保護と人道的援助。
- 第23条:精神的・身体的障害を有する児童の尊厳、自立促進と社会参加、医療・教育などの確保。
- 第24条:児童の病気治療と健康増進の確保。そのための環境汚染の防止と公衆衛生の向上。
- 児童の健康を害するような伝統的な慣行の廃止を含む。
- 第25条:身体または精神の保護・治療のため収容された児童の処遇状況に関する定期的な審査。
- 第26条:児童が社会保障を受ける権利と、締約国が国内法に従いその措置をとる義務。
- 第27条:身体的、精神的、道徳的及び社会的な発達のための相当な生活水準についての児童の権利。
- 第28条:児童が教育を受ける権利とその機会の平等。
- 第29条:教育内容の向上。児童の発達、人権の尊重、多様性の尊重と自由な社会における責任。
- 第30条:少数民族・原住民の児童の言語・文化・宗教の尊重。
- 第31条:児童の休息と余暇の権利、遊びとレクリエーション、文化的・芸術的活動の尊重。
- 第32条:児童の経済的搾取、危険な労働への従事の禁止。児童労働法と雇用最低年齢の制定。
- 第33条:薬物の不正使用からの児童の保護。
- 第34条:児童買春などあらゆる性的搾取、性的虐待からの児童の保護。
- わいせつ物やわいせつな演技に児童を搾取的に使用することを含む。
- 第35条:児童の誘拐、人身売買を防止するための国内および国際的な措置。
- 第36条:児童の福祉を害するあらゆる搾取から保護する。
- 第37条:児童に対する残虐な刑罰の禁止。児童の自由を不法に奪うことの禁止。
- 第38条:戦争や武力紛争からの児童の保護。15歳未満の者を軍隊に採用することを控える。
- 第39条:虐待、放置、搾取、拷問、武力紛争などの被害者となった児童の、心身の健康と尊厳の回復。
- 第40条:刑事訴追された児童の権利保護。無罪推定の原則、自白強要の禁止など。
- 第41条:除外規定
- 第42条:締約国の条約周知義務。成人および児童に対し積極的に広く知らせる。
- 第43条:「児童の権利に関する委員会」の設置と、委員会に関する細則。
- 第44条:締約国は定期的に条約締約による進歩について、第43条の委員会に報告する。
- 第45条~第54条(省略)
日本国内では、「児童」が法律用語としては主に小学生を指すため、「子ども」という枠語を使うべきだとの議論がなされたが、国会承認及び官報では「児童の権利に関する条約」の訳名で公布されており、国による正式和訳名称はこの表記を使用している。
なお、文部省は「本条約についての教育指導に当たっては、『児童』のみならず『子ども』という語を適宜使用することも考えられる」という案を示しており、マスメディア・団体・個人も「児童」を「子ども」などに置き換えることがある。その場合、主に「子どもの権利条約」と称される。