ガザ地区戦闘1年 死者は4万1000人超 戦闘はレバノンにも拡大

2025年01月11日 04時54分45秒 | その気になる言葉

パレスチナのガザ地区では、イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が始まって1年となった7日も、イスラエル軍による空爆で市民に犠牲者が出ていると伝えられています。戦闘はイスラエルの隣国レバノンにも拡大していて、中東情勢の先行きはいっそう不透明になっています。

目次

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去年10月

1年前の10月7日に行われたハマスによるイスラエルへの大規模な奇襲攻撃では、およそ1200人が殺害されたうえ、251人が人質として連れ去られ、いまも101人が捕らえられたままです。

ハマスの壊滅と人質の解放を掲げるイスラエル軍は7日も、中部デルバラハにある病院内でハマスが活動しているとして空爆を行うなど、ガザ地区の各地で攻撃を続けています。

こうした中、イスラエル軍は9月下旬までに4万以上の標的を空爆し、1000以上のロケット弾の発射拠点を破壊したほか、殺害した戦闘員は推定でおよそ1万7000人に上る可能性があると発表しました。

一方、ハマスは7日、声明でイスラエル軍が凶悪な犯罪と虐殺を繰り返し、1年間で4万1000人以上を殺害し、そのほとんどが女性と子どもだと主張しました。

そのうえで「侵略と人々の苦しみを終わらせるための努力を続ける」などと述べ、イスラエル軍が完全に撤退するまで徹底抗戦を続ける考えを強調しました。

ガザ地区での死者について、地元の保健当局はこれまでに4万1909人が死亡したとしています。

一方、イスラエル軍はハマスに連帯を示す隣国レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの戦闘も続けていて、首都ベイルートなどへの空爆を繰り返しているほか、地上侵攻に踏み切った南部でも攻勢を強めていて、中東情勢の先行きはいっそう不透明になっています。

住民は国際社会の関心の低下を懸念

レバノンでの戦闘の激化など中東でのさらなる紛争の拡大が懸念されるなか、ガザ地区の住民からは国際社会の関心の低下を懸念する声も聞かれます。

南部ハンユニスで避難生活を続ける男性は「レバノン情勢に注目が集まり、私たちガザの住民のことはあまりニュースで取り上げられなくなっていると感じる」と話していました。

さらに、別の男性は「私たちは切実に停戦を求めている。すでに疲れ果て、もう限界を迎えている」と訴えていました。

ガザ地区 食料不足は深刻 炊き出しに長い列

 

ガザ地区の人々はイスラエル軍の攻撃で住み慣れた家を追われ、転々と避難生活を繰り返し、日々、命の危険におびえながら生き抜くための食事の確保に追われています。

国連機関は、イスラエル側の規制などの影響でガザ地区の食料不足は深刻なままで、9月は140万人以上の市民が食料配給を受け取ることができなかったと明らかにしています。

NHKガザ事務所のサラーム・アブタホンカメラマンが9月26日、ガザ地区南部のハンユニスで撮影した映像は、人々が支援団体の炊き出しに長い列をつくっていて日によっては4時間以上も待たなければならないといいます。

このうち、南部ハンユニスに暮らすアブドラ・アブシャムラさんの一家は、7人の子どもを抱え、炊き出しに頼った暮らしを続けています。

一家は去年10月、イスラエル軍の空爆によって大きく破壊された自宅で暮らしています。父親のアブドラさんは自宅に手作りの釜を作り、地域で暮らす人々に代わってパンを焼くことをなりわいとしていますが、得られる収入は少なく、家族を養うには十分ではないといいます。

この日も息子のアドハム君(11)が炊き出しの列にならび、もらった食事を家族で分け合って食べました。

 

アブドラさん
毎日、早朝からパンを焼くためのまきを探しています。ただ、得られる収入では子どもたちを食べさせることはできません。野菜などは高すぎて買えません。日々の食事は炊き出しに頼らざるをえません。

イスラエル軍の攻撃で50人近い親族が殺されました。子どもたちもけがをしました。本当につらく、あまりに多く人が亡くなり泣くこともできなくなりました。1日も早く戦闘が終わってほしいです。

イスラエル国内 軍事作戦の継続を求める声 根強く

 

国際社会からの即時停戦を求める声をよそに、イスラエル国内では戦闘開始から1年がたった今も、ガザ地区での軍事作戦の継続を求める声が根強くあります。

右派や極右政党は集会をたびたび開き、このうち9月19日のエルサレムの集会には数千人の支持者が参加し、政府は停戦交渉をせずにハマスの壊滅に向けてあくまで軍事作戦を継続すべきだと訴えました。

エルサレムに住む男性は「ハマスのメンバーが1人もいない状態にならなければ、勝利とは呼べません。どれほど時間がかかっても最後までやり遂げなければいけないのです」と話していました。

また参加した女性のひとりは「1万人、5万人のテロリストを殺そうと5000人の市民を殺そうと関係ありません。軍事作戦はさらに強力に続けなければなりません。ハマスに対してより強いメッセージを伝えなければいけません」と話していました。

軍招集の命令 拒否する若者も「軍事作戦は停止すべき」

イスラエル国内では強硬論が根強い一方、激しい軍事作戦でパレスチナ住民に甚大な犠牲が出ていることへの疑問から停戦を求める声も徐々に広がっています。

マイケル・オフェルジブさん(29)は、去年10月から12月までイスラエル軍の予備役の兵士としてイスラエル南部の基地を拠点にガザ地区内に展開する部隊や無人機攻撃を支援する任務にあたっていました。

このなかでオフェルジブさんは、作戦司令室のモニターで空爆の状況を連日見るうちにガザ地区で多数のパレスチナ住民が犠牲になっている状況に疑念を感じ始めたと言います。

当時の心境の変化についてオフェルジブさんは「50%の住民が避難して空爆が行われても、残りの50%は残っているということです。これだけの犠牲者が出ていて『どれだけわれわれは正しいのだろうか』と疑問に思い始めました」と振り返ります。

その後、イスラエル軍の作戦行動中のミスが相次ぎます。去年12月には誤って人質3人を射殺し、ことし4月には食料支援にあたっていた国際NGOのスタッフ7人を誤って攻撃して死亡させるなか、オフェルジブさんはもはや軍の任務に関わりたくないと思うようになりました。

そしてことし5月、同じ考えを持った予備役の兵士の仲間およそ40人とともに軍からの再度の招集命令には従わないとする公開書簡を発表しました。

ことし6月、オフェルジブさんは軍から再び招集の命令を受け取りましたが、収監されるリスクを省みず、命令を拒否しました。オフェルジブさんは「『イスラエルの軍事作戦は非常に倫理的だ』とする主張は大きな誤りで、軍事作戦は停止すべきだ。再び招集されるくらいなら収監されたほうがましだと考えました」と話します。

現在は停戦を求める集会に参加し、停戦と人質の解放に向けてハマスと即時合意すべきだと訴えていて「暴力はさらなる暴力を生むことは明らかです。この戦争は早く終わってほしいです。人は自分が信じるように行動すべきです」と話していました。

ガザ地区での戦闘 経緯

パレスチナのガザ地区でのイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘は、去年10月7日のハマスの奇襲攻撃をきっかけに始まりました。

ハマスがイスラエルに対して大規模なロケット攻撃のほか越境攻撃を仕掛け、およそ1200人を殺害したほか、人質としておよそ250人をガザ地区に連れ去りました。

去年10月

これを受けてイスラエル軍はハマスの壊滅と人質の解放を掲げて、その日のうちにガザ地区での軍事作戦に乗り出します。

激しい空爆を行うとともにガザ地区を完全に封鎖して電力などの供給も止め、水や食料も不足する中、人道状況が急速に悪化していきます。

10月下旬にエジプトとの境界にあるラファ検問所が開放され、支援物資の搬入が始まる一方、イスラエル軍はガザ地区での地上作戦に踏み切ります。

11月にはハマスの重要な拠点になっているとして、地区最大の病院「シファ病院」に突入するなど作戦を拡大し、国際社会から人道危機への懸念が高まります。

11月下旬にカタールなどの仲介で戦闘の休止が実現し、7日間の休止期間に人質105人が解放され、イスラエル側も刑務所に収容していたパレスチナ人240人を釈放しました。

軍事作戦を再開したイスラエル軍はガザ地区の北部に続き、中部や南部で地上作戦を進め、避難者が集まる学校なども空爆の被害が相次ぎます。

イスラエル軍は、ことし5月には多くの住民が避難していた地区の最も南のラファで地上作戦を始め、エジプトの境界沿いに広がる緩衝地帯「フィラデルフィ回廊」を制圧し、支援物資の搬入の拠点となっていたラファ検問所も閉鎖されます。

こうした中、アメリカのバイデン大統領はガザ地区での停戦に向けて3段階からなる新たな提案を発表し、断続的に協議が続けられました。

しかし、イスラエル側が「フィラデルフィ回廊」などでの軍の駐留の継続を求めたのに対し、ハマス側は完全撤退を求め、協議は難航し、いまも停滞したままです。

イスラエル軍は、先月南部のラファを拠点としていたハマスの4つの大隊すべてを壊滅させたとするなど成果を強調していますが、停戦の見通しが立たない中、ガザ地区での犠牲者は4万人を超え、今も増え続けています。


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