「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

鮭の日 Long Good-bye 2023・11・11

2023-11-11 05:21:00 | Weblog

 

  鮭の日の 、今日の「 お気に入り 」は 、平松洋子さんのエッセイ

 「 なつかしいひと 」から「 ほとびる 」と題した小文の一節 。

  備忘のため 、抜き書き 。

  引用はじめ 。

 「 箸でつまんだ梅干しをひとつ 、湯呑みのなかに入れて熱い湯を

  注ぐ 。しばらく待っていると 、硬く身を閉ざしていた梅干しが

  伸びをするかのように 、しだいにやわらかくなってくる 。だん

  だんふくらんで 、ほとびている

   ほとびる 。水を吸って膨れたりふやけたりするさまのこと 。す

  っかり使われなくなってしまったけれど 、ことばの情景は 、じ

  つはとても親しい 。水に漬けた豆がほとびる 。コーヒーに浸し

  たパンの耳がほとびる 。ことこと煮た蛸の皮がほとびる 。しゃ

  もじにへばりついて乾いた飯が盥のなかでほとびる ―― ただや

  わらかくなるのではない 、水分がしだいに浸潤しながら緩やかに

  ほどけ開いてゆくのである 。

   森鷗外『 山椒大夫 』の一節も忘れられない 。

 

   その時干した貝が水にほとびるように 、両方の目に潤いが

   出た 。女は目が開 ( あ ) いた 。

   『 厨子王 』という叫が女の口から出た 。

 

   なにかこう粛然としてしまう 。厨子王の母の目から『 干した貝

  が水にほとびるように 』つたった涙 。しずくのなかに時間の堆積

  がこもっている

   似ていても 、やっぱり ほかのことばでは 言いあらわせない 。て

  んぷらそばのかき揚げが 、熱いだしのなかで ぐずりと なっている 。

  それは 、ふやけているのとも違う 。崩れているのでもない 。やっ

  ぱり 、ほとびていると言うのがぴたりとくる 。すこし情けなくて 、

  おぼろげで 、頼りない感じ 。ことばじたいが恥ずかしそうに なり

  を潜めたがっている気配 もあり 、だからよけいに 、こちらのから

  だの感覚のすみずみまで捉えられてしまう 。そのぶん 、じんと

  く 。 ( 後 略 )  

   引用おわり 。

 

   ( ´_ゝ`)

 

   語彙豊富 、小気味よい文章 。こんな日本語もあったなあ 、と

  感じ入る 。

 

   ( ´_ゝ`)

 

  ( ついでながらの

    筆者註:木へんに土をふたつ重ねると 桂 、人 ( にん ) べんに

       土をふたつ重ねると 佳 、魚へんに土をふたつ重ねると 鮭 。

       「 『 鮭 』という漢字のつくりの『 圭 』を分解すると

        『 十一 十一 』になることから 、11月11日は『 鮭の

        日 』とされています 。」

             ( 圭 と言えば 小室圭さん の 圭 、如何におわす「 うちのマコさま 」、「 となりのカコさま 」)

         自分の姓名に使われている漢字を 、電話や口頭で

       ひとに説明するのは難しい 。気に染まない 、ん? 、意に

       染まない 説明はしたくないのに 、せざるを得ないことも

       ある ・・・ 。

        市場 ( いちば ) の( いち ) 藤沢市の 座頭市の

        居 ( い ) るの ( い ) 住居の 皇居の居 

        藤田嗣治の ( つぐ ) の字 の下に一冊、二冊の

        書いて ( ただし 横棒は左右に出っぱってない ) 、

        その横 〈 つくり 〉 に ( つかさ ) と書いて( ああ めんどくさ )

             明治の( じ ) 政治の 治ちゃんの ( おさむ or はる  ) 

        ふじたつぐはる とちがい 、いちいつぐはる ではなく 、

        いちいつぐじ です 。 」

         筆者の発音が悪いせいか 、聞き取りにくいせいか 、

         ” Tsuguji Ichii ” も 内外で わかってもらえた ためし が

        ない ( のは 遺憾である )  。)

 

コメント
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