「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

溶き辛子 Long Good-bye 2023・11・19

2023-11-19 05:55:00 | Weblog

 

 小春日和の 、今日の「 お気に入り 」は 、平松洋子さんのエッセイ

 「 なつかしいひと 」( 新潮社 刊 ) から「 辛子をぴしり 」と題した小文 。

  備忘のため 、抜き書き 。

  引用はじめ 。

 「 辛子を溶くのは久しぶりのことだ 。

  ぱかっと缶を開けてすくった黄いろの粉を小皿に入れ 、用心深く

  湯滴をちょろりとたらす 。そこへ箸を一本だけ差し入れ 、くるく

  る手早く回して溶くと 、つーんと鼻に抜けるあの鋭い香りが立ち

  昇ってくる 。

   辛子の香り! なつかしいような 、うれしいような 。でもせっか

  くまた会えたのに 、そんなに急いでどこへ消えてしまうの 。鼻先

  から脳天へ駆け抜けてゆくところへ 、声をかけたくなる 。ここで

  遭ったが百年目 、ゆめ逃すものか 。小皿を逆さにひっくり返す 。

  辛子片手に思わず前のめりになってしまうのは 、菜の花のお浸し

  のためである 。洗って切り分けた菜の花を 、湯を沸かした小鍋で

  さっとゆでる 。冷水に取るなり 、ぱきんと冴え渡る緑いろ 。掌の

  なかでやわらかく搾 ( しぼ ) ってほぐすと 、菜の花がああこれで

  ひとしきり終わったと息をつく 。だから 、おおあわてで溶き辛子 。 」

  引用おわり 。

  ( ´_ゝ`)

  つーんと鼻に抜けるあの鋭い香り 、簡便なチューブ入りにはない 。

  ( ついでながらの

    筆者註:「 ねりからしの作り方( 3~4人前 )

        ①小さめの器にヱスビーからし小さじ2 (  3g  )

         を入れ 、水 ( ぬるま湯 ) 小さじ1 ( 5ml ) を

         加えてよく練ってください 。

        ②ラップをして 、4~5分間おいてからご使用

         ください 。

         【 使用上の注意 】

          水で練った後は早めにお召し上がりください 。

           ● 開封後は吸湿・虫害・退色を防ぐため 、上ぶたを

            しっかり閉めて冷暗所に保管してください 。

           ● 上ぶたを開ける際 、缶切りは使用しないでください 。

           ● 中のアルミ箔は 、スプーンなどを使用し 、指のケガに

            注意して開けてください 。

        以上 円柱状の小さな缶の胴に書かれた「 ヱスビーからし

        の使用法 」 。)

 

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