「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

男はつらいよ 女もつらいわ Long Good-bye 2024・04・17

2024-04-17 04:49:00 | Weblog

 

 今日の「 お気に入り 」は 、今読み進めている本の

 中から 、 備忘のため 、抜き書きした 文章 。

  引用はじめ 。

  「 老人だからといって 、独りで涙をながす
  ようなことがないわけではない 、という
  米村青淵の言葉が思いうかんだ 。老いて
  気力を喪失した滝沢主殿 。酒びたりで怠
  け放題に怠け 、しかも死ぬときには 、草
  臥(くたぶ)れはてた 、と云ったという宗巌
  寺の和尚 。みんな独りだった 。谷宗岳先
  生も 、妻子がありながらこんな田舎へ招か
  れて来て 、若い側女(そばめ)に子を産ませ 、
  つつましやかに寺子屋のような仕事に背を
  跼(かが)めているという 。だが 、実際に
  はその側女にも 、その側女の産んだ子にも
  心はつながっていないに相違ない 。女には
  家があり子供がある 、女には自分の巣があ
  る 。けれども男に巣はない 、男はいつも
  独りだ 。
  『 独りだからこそ 、男には仕事ができる 』
  と主水正は声に出して呟いた 、『 特にいま
  のおれは 、恩愛にも友情にもとらわれては
  ならない 、男にもほかの生きかたはある 、
  男としての人間らしい生きかたは数かぎり
  なくあるだろうが 、おれだけはそうあって
  はならない 、おれには男として人間らしい
  生きかたをするまえに 、侍としてはたすべ
  き責任 、飛騨守(ひだのかみ)の殿がそう思
  い立たれたように 、侍としてなすべきこと
  をしなければならない 、そしてこれは 、
  おれ自身の選んだ道だ 』」

  「 『 人はさまざまだな 』と主水正は独り
  で呟いた 、『 妻のつるは自意識が強い 、
  なにごとも自分を主体にして考えたり行
  動したりする 、ななえは理屈なしに自
  分を男に捧げるだけだ 、そして千代は 、
  千代の中には男のはいってゆけないなに
  かがある 、柔軟で控えめでいながら 、
  どこかにこちんとしたものがあり 、ど
  んな男でもそこへはいってゆくことはで
  きない 、お千代にはもっとも心を許し
  てはならない 』  」  ( 混ぜるな 、危険 ! )

  引用おわり 。

 

 

  

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