今日の「 お気に入り 」は 、今 読み進めている
本の中から 、備忘のため 、抜き書きした 文章 。
物語の主人公 原田甲斐宗輔 が 、騒動の原因が 、
単に伊達兵部少輔宗勝 個人の 仙台藩 簒奪 ( さん
だつ ) の権勢欲に発したものではなく 、真の敵
、黒幕は 、幕府老中 酒井雅楽頭 なのだと気付
いた頃から 、話しは 一段と 重苦しい雰囲気に
なり 、読者は 、物語の悲劇的な結末を予想せ
ざるをえなくなる 。
独眼竜政宗の末子で 、第十子である 伊達兵部
少輔宗勝が 、政権簒奪を企図して策動するので
あれば 、よくある 本家 vs. 分家 の お家騒動の
図式で 、わかりやすいのだが 、話しは そう 単
純ではないらしい 。関が原からまだ百年も経っ
ていない時代の物語 。
引用はじめ 。
「 ―― 松平信綱 。甲斐は筆を止めて 、
眼をあげた 。『 伊豆守信綱 』と彼は
呟いた 。
非常な衝動を受けたもののように 、
甲斐の顔はするどくひき緊り 、双眸は
前方の一点をみつめて動かなかった 。
『 ―― 信綱の遺志だな 、発頭人は信
綱だ 、雅楽頭ではない 』甲斐はそう
呟いた 。
彼は筆を置き 、両手を机に突いて 、
じっと眼をつむった 、そうだ 、と彼
は思った 。問題は自分たちの考えてい
たようなものではないかもしれない 。
涌谷も松山も 、雅楽頭と一ノ関との姻
戚関係をにらんでいた 。すなわち 、
兵部の子の東市正(いちのかみ)の許婚
者が 、雅楽頭の夫人の妹であること 。
そして 、一ノ関の所領がまだ一万石で
あったころ 、雅楽頭が『 僅か一万石の
小大名と縁者になってもつまらない 』
と云ったこと 、そこから六十二万石を
分割して 、三十万石を一ノ関に与え 、
片倉小十郎はじめ誰には何万石をやろ
う 、という相談ができたものと認めて
いた 。だがそうではない 、と甲斐は
心のなかで自分に云った 。雅楽頭とも
ある人物が 、そんな卑小な理由で 、
伊達家ほどの大藩に手をつけるわけは
ない 。理由はほかにある 。もっと根
づよく 、大きい 、政治的な理由が 。
そうだ 、と甲斐は頷いた 。
『 ―― 信綱の遺志だ 、雅楽頭はそ
の遺志を継いでいるにすぎないし 、
おそらく老中の人びとも承知している
ことだろう 』
甲斐は眼をみひらいた 。机に突いて
いた手を膝に戻し 、坐り直して 、自
分の思案を吟味するかのように 、彼
はかなりながいこと 、息をひそめて
いた 。 」
( ´_ゝ`)
「 ―― いかなる真実も 、人の口に伝われば必ず
歪められてしまう 。
甲斐はつねにそれを戒めて来た 。大藩取潰し
の策は 、亡き松平信綱から酒井忠清が受け継い
だものと甲斐はみている 。だが策謀が忠清ひと
りの胸にあるのか 、または閣老ぜんたいが承認
しているものか 、という点はまったく推察がつ
かない 。したがってこの事情がもれた場合 内外
にどんな騒ぎが起こるかもわからないし 、その
騒ぎがどういうかたちであらわれるにせよ 、そ
の結果が幕府を利することは明らかであった 。」
引用おわり 。
( ´_ゝ`)
( ついでながらの
筆者註:「 松平 信綱( まつだいら のぶつな )は 、
江戸時代前期の大名で武蔵国忍藩主 、同
川越藩藩主 。老中 。官職名入りの 松平
伊豆守信綱 の呼称で知られる 。」
以上ウィキ情報 。
時代小説の読み過ぎか 、時代劇の見過ぎか 、
筆者には 、松平伊豆守信綱 よりは「 知恵伊豆 」
の俗称のほうが馴染みがある 。
老中職を務める徳川幕府の譜代の大名が 、忍 と
か 、川越 とか 、関宿 とか 、関東地方の 街道筋
の要所要所を 所領に持つ、どちらかというと小
大名だったというのが 面白い 。)
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