久しぶりに読書感想を。
好きな作家の一人、米澤穂信の『さよなら妖精』。
さよなら妖精 (創元推理文庫) | |
米澤 穂信 | |
東京創元社 |
米澤穂信作品はだいぶ読み込んでいますが、なかなか手が伸びなかった一冊。
というのも主人公が高校生ということもあって、以前読んだ『古典部シリーズ』(感想はアップしていませんが)の延長線なのかな、と勝手に思い込んでて後回しにしたせいです(実際本作は古典部シリーズとして発表される予定だったらしいのですが、出版社との都合で全面改稿になったそうです)。
では、なぜ今更読もうと思ったかというと、『さよなら妖精』の登場人物 大刀洗万智が登場する『王とサーカス』が昨年の「このミステリーがすごい!」「週刊文春」「ミステリが読みたい」の3冠達成したので、では『王とサーカス』を読む前に『さよなら妖精』を読んでおかねば、と思った次第です。
王とサーカス | |
米澤 穂信 | |
東京創元社 |
満願 | |
米澤 穂信 | |
新潮社 |
さて、『さよなら妖精』に話を戻します。
本作の舞台は1991年 日本の地方都市 藤柴市。
主人公は大刀洗万智の友人の守屋路行。
彼と大刀洗が学校の帰り道に出会ったのはユーゴスラビアから来たマーヤという少女。
行き先がないマーヤにおせっかいをやくことになった彼らを含む4人の高校生と、マーヤの交流を描いたものです。
マーヤが不思議だと感じる日本での生活の謎解きと、マーヤが帰国した足取りを追っていくところがミステリー要素になります。
守屋や大刀洗は当時の私と同じくらいの年齢で、それだけで私にはより身近に感じました。
ユーゴスラビア紛争について、当時の私には単語として聞いたことがあるだけで、関心事ではありませんでした。
当時の記憶を呼び戻しつつ、新たに知識を仕入れることになりました。
マーヤは、6つの共和国で成り立つユーゴスラビアの共和国それぞれの文化・歴史を踏まえつつも、新たな7つ目の文化・歴史を作っていくのは自分たちである、との使命感を持っている。
そしてそのようなマーヤに対して、守屋はある種の憧れを見出す。
同じ年代でありながら、守屋にはマーヤのように熱く感じるものをもっていなかった。
それゆえ、今や戦地となったユーゴスラビアへ自分も行きたいと申し出るが、マーヤに断られてしまう。
その後、守屋は彼なりに熟慮を重ね、あらためてユーゴスラビアへ向かうべく、そしてマーヤと会うべく、彼女の足取りをたどっていく・・・。
ミステリーとしての側面よりも、若者の焦燥感や見えない世界へのあこがれといった側面が強く、とても共感できる部分があります。
そして『王とサーカス』で主人公となる大刀洗が、なぜ大刀洗たるのか理解する上で、本作は必要だと思います。
『王とサーカス』のあとがきで、米澤穂信本人は『さよなら妖精』と『王とサーカス』の間にストーリーの内容に連続性はないから支障ない旨語っていますが、読んだ私からすると読んでおいたほうが、『王とサーカス』の大刀洗の行動をより理解できると思います。
もうほぼほぼ『王とサーカス』を読み終えつつありますが、これも面白いです。
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