在イタリア、ソムリエワインノートとイタリア映画評論、他つれづれ appunti di degustazione

ソムリエ 20年、イタリアワインのテイスティングノートと、なぜか突然のイタリア映画評論、日本酒、日本茶、突然アートも

Nuova Cinema Paradiso di G. Tornatore イタリア映画 ニュー・シネマ・パラダイス

2016-03-02 15:16:35 | 何故か突然イタリア映画
Nuovo Cinema Paradiso ニュー・シネマ・パラダイス
監督 ジュゼッペ・トルナトーレ

全てが詰まっている映画



今回のアカデミー賞、日本ではレオナルド・ディカプリオのオスカー獲得が他の話題をさらってしまったのではないかと思うが、イタリアではもう一つ大きな話題がある。
作曲賞で、これまたディカプリオのように何度もノミネートされながら受賞を逃していた大御所作曲家モリコーネ氏が、やっとオスカー獲得を成し遂げたのである。(その数5回、ただし、2007年に名誉賞は獲得している)

エンニオ・モリコーネ氏は音楽家、作曲家、指揮者であるが、映画音楽の世界でよく知られ人気があり、イタリアでは超が3つくらい付く有名人物である。
ずーーっと昔、用事があって2度ほど自宅にお邪魔させていただいたことがあるのだが、電話には本人が出るし、気さくで親しみやすく、ユーモアがあり、個人的に大ファンである。
そのモリコーネ氏は監督のトルナトーレ氏と親しく、幾つかの作品で作曲をしているが、代表作は何と言っても「ニュー・シネマ・パラダイス」。
そこで、作曲賞受賞後のテレビ放送用作品の一つとして、一昨晩テレビで放送された。

1988年の作品というから、25年以上は経っている。そんなに経ったかぁ、と思う。ひえ~
日本でもかなり話題にはなったので見た人も多いとは思うのだが、今の若い人たちにとっては生まれる前に制作された映画であり、そんなの見ていない、という人も多いような気がする。ああ、モッタイナイ。
感動の映画というのは、まあ多々あるが、これも絶対にその1本に入る。

さて、それから、この映画の面白さはもう一つある。
2つのヴァージョン、つまり長いヴァージョンと短いヴァージョンがあるのである。
ただし、短いと言っても2時間を超え、長いヴァージョンは2時間半を超える。
(あとさらに、2000年以降出た、数分短いヴァージョンと、もっと長いヴァージョンもある)
そして、この2つのヴァージョンで、映画の基本的な意味、印象が違ってくる。
これが面白い。
短いヴァージョンでは登場しない主役的人物がいるので、見るならぜひ二つを比べて欲しい。
一般に知られている方は短い方なので、そうなると、私がもしその「短い方には登場しない役者」なら、かなり怒るような気もする。。。

さて、全てが詰まっているというのは、1950年代のシチリアの小さな町を背景にして、少年(トト)と老人(アルフレード)の友情、少年の成長、少年期、思春期、そして30年後の壮年期、貧しさ、対して裕福な家庭、移民で旅立つ家庭、宝くじに当たってしまうような幸運の持ち主とか、町長や神父も一役買い、娼婦もいるし(長いヴァージョンでは結構重要)、当時の唯一の娯楽としての映画、映画館(パラダイス)、火事、火事で盲目になってしまうアルフレード、映画館の再建(ニュー・パラダイス)、映画の衰退、そして、彼女(エレナ)との出会い、ひたすら純粋な恋愛、別れなどなど、全てがコミカルに、またドラマチックに描かれている。
ここまで色々な内容が一つに、実に上手くまとまり、詰まっている作品はそう多くはないような気がする。

短いものと長いものの違いは、短い方には登場しない人物がいるということだが、それは大人になった彼女、エレナである。
短い方では、30年後、大人になったトトとエレナは会うことがなく、つまり、恋愛はすでに過去のものとなり、トトとアルフレードの友情、少年期、思春期のノスタルジーがクローズアップされる。どちらかというと男性向け、確かに一般向けだろう。

長い方では、二人は偶然再会し(実はトトの親友と結婚して町に住んでいたのだが、短い方ではそのストーリーの片鱗もでてこない)何故当時再会ができなかったかを知ってしまい、ちょっと意外な顛末。最後に30年後の二人の再会、というストーリーがクローズアップされて、こちらの方が女性向けだと思う。

なお、一番最初、映画館では長いヴァージョンが放映されたそうだが、何故かシチリアのメッシーナを除いて客の入りが悪く(結構意外)、その後、カットして放映。徐々に火が点いたとのこと。確かに、映画館で3時間は長すぎ、くどすぎだったのかも。また、長い方は恋愛映画的要素が強いので、トトとアルフレードの年齢を隔てた友情が印象的な、短いヴァージョンの方が確かに一般的に受けるような気がする。

脚本は、監督のトルナトーレ氏自身。そして、泣ける音楽がモリコーネ氏の作。私は音楽で泣いてしまうので、ティッシュペーパー1箱用意。(笑)

近年のイタリア映画として、ベニーニの「ライフ・イズ・ビューティフル」も有名、絶対にオススメだが、こちらもオススメ。
もしまだ見ていなければ絶対に見て欲しい、ただし、その際は、ぜひ、両ヴァージョンを見比べて。



こちらは日本で出ている完全版。

ニュー・シネマ・パラダイス 完全オリジナル版 [DVD]
クリエーター情報なし
角川映画