在イタリア、ソムリエワインノートとイタリア映画評論、他つれづれ appunti di degustazione

ソムリエ 20年、イタリアワインのテイスティングノートと、なぜか突然のイタリア映画評論、日本酒、日本茶、突然アートも

Dolcetto d'Alba Piano delli Perdoni 2014 Mossio ドルチェット 2014 モシオ

2016-03-18 09:15:50 | Piemonte ピエモンテ
Dolcetto d’Alba Piano delli Perdoni 2014 Mossio
ドルチェット・ダルバ ピアーノ・デッリ・ペルドーニ 2014 モシオ



ルカの主宰する試飲会は、試飲するワインの前にパラメーターとなるワインを出すことが多い。

これは、完全ブラインドのワインの順番をクジで決めるので、一番最初に当たったワインはたいてい部が悪い、と思っていることからある。
確かに、試飲会では一般に(ブラインドではない)、最初は軽いワイン、つまりたいていの場合安いワインでもあり(その後のに比べての意味)、品質の劣る(同じくその後より)ワインであることが多いので、そういったイメージも自然と働くのだと思う。
ただし、2本のワインをブラインドで試飲させると、1本目の方が美味しいという人が多いという逆の心理も働く。。。

だから、あってもなくても、とは私の個人的見解だが、ともかく、その試飲会のベースとなるワインを最初に出すというのが彼のやり方。
今回は、完全なブラインドで、24から32ユーロという、彼の試飲会にしては高級なワインが出るという趣向だったので(別ページを参照)それをいきなりではなく、とにかくいつもの価格帯10ユーロ程度のものを1本飲んでから、ということだった。

選んだのは、彼が年間数ケース買って自宅消費用にしているドルチェット。
(なお、これだけはブラインドではない)
ドルチェットは、昔、好きで飲んでいたのだが、ワインの勉強を始め、嫌いだったベルベーラを好きになったころから、好きだったドルチェットが好きではなくなった。そこで、今はどちらかというと避け、進んで飲むことはしないのだが、このドルチェットはドルチェットらしからぬところが美味しい。

実はこのワインは、今回はブラインドではなかったが、以前、ルカにブラインドで出され、ドルチェットだとは思わなかったドルチェットである。

チェリーがきれいで、そこにステンレス風、やや、血を思わせる香りが混じるところがドルチェットらしくない。香りがだいぶスッキリしている。しばらくして、ドルチェットらしいふくよかな感じが出てくるが、ぼってっとしてた重たさがない。そして、ほろ苦さが上がってくる。
酸がきれいに出ているのもドルチェットのイメージとは違う。重たくなく、持続性も程よく、最後にほろ苦さが残る。
いたってシンプルだが、心地よく、飲んでいて飽きないワイン。
合わせられる食事も、肉系、野菜系の料理なら大抵のものに大丈夫、というタイプ。

なお、試飲会で出たブラインドの7ワインについてはこれから。。。。

La felicità è un sistema complesso di Gianni Zanasi イタリア映画 幸せとは複雑なもの

2016-03-17 14:27:08 | 何故か突然イタリア映画
La felicità è un sistema complesso 幸せとは複雑なもの
監督 ジャンニ・ザナージ



評価は結構高い。ストーリーも、奇想天外とはいかないが普通でないところが多く面白い。
でも、個人的には、ちょっとダメだった。
こういう、わざとストーリーを作り上げた、最後はみんな幸せ、お涙頂戴ものに拒否反応を示すからだと思う。

オンラインで、「この映画をみる5つの理由」という記事も目に付いていたのだが、これを見て、あー、面白かった、と素直に言える人は幸せなんだと思う。
だから、上映後の監督のインタヴュー時、3回見たのよ、とか、面白かった!と言っている人が(全員ではない、映画の途中で立った人もいる)羨ましかった。

北イタリアの、5000人ほどの社員を抱えている会社の社長夫妻が揃って事故死。
残されたのは18歳の息子と13歳の娘。
その「お目付役」に選ばれたのがエンリコ。
最初は残された経営陣の方についていたのだが、経営陣と対立して、自分が会社を見ていくと決心した息子の信頼を勝ち取るうちに、息子の心情についていくようになる。

と、ここまではいいのだが、そこにエンリコの年の離れた弟が、自分の彼女(イスラエル人)をお兄さんに「預けて」しまうところ、「預かった」弟の婚約者を、仕方ないとはいえ今回の仕事場(北イタリア、自宅はローマの設定)に連れて行ってしまうところなど、かなりウソくさい。
最後は、エンリコと弟の「婚約者」は、お互いなんとなく惹かれ合う、と。。。予測できてしまうストーリー。

弟の婚約者は外国人で行くところがない、と言っても、追い出さないのも不自然、出て行かない方も不自然、北イタリアまで仕事なのに連れて行ってしまう、ついていくのも不自然。
エンリコは、テニスもでき、自転車も速く、ラグビーをさせれば才能を見せる。。。出来過ぎ。
両親を突然事故で失った子供たちが泣かない。途中で「3日前に両親を亡くしたの。。。」のセリフに、えー、まだ3日しか経ってないの???3日で、こんなに行動が起こせるわけがない。などなど。

でも、深く考えずに、こうもなるよねと納得しながら観れば、非常に面白いし、楽しい場面も多く、いい映画だったね~となる。

監督曰く、ある時、モード系の雑誌を見ていたところ、若い青年が、似つかわしくないきちんとした背広を着て、経営者業を背伸びしながらもやっている写真を見たのがヒントになり、この映画を思いついたとのこと。
それを、青年の視点から見るのではなく、保護役のエンリコという中間的存在の人物を主役に持ってきて、経営陣x社長の息子、黒か白かをなんとなくグレーにした、と。

イスラエル人の「弟の婚約者」は演技がうまいが、なぜイスラエル人?という当然の質問に、最初は南イタリア人など考えたがしっくりいかず、外国人として設定した。数年前、彼女が主役として出たイスラエル映画の演技が印象に残って、コンタクトし、実現したというもの。

ドラマティックでもあり、コメディでもあり、正義派、ちょっと悪い役、仲の良い兄妹、ラブストーリーではないがその予感、ちょっとお涙頂戴など、豊富な内容に、ストーリーが展開される北イタリアの山と丘陵地隊、湖の景色がとてもきれい。


Verdicchio di Matelica Vigneti B 2014 Belisario ヴェルディッキオ 2014 ベリサリオ

2016-03-16 00:40:03 | Marche, Umbriaマルケ、ウンブリア
Verdicchio di Matelica Vigneti B 2014 Belisario
ヴェルディッキオ・ディ・マテリカ ヴィニェーティB 2014 ベリサリオ



こちらがデルトーナに続いて、別の友人が開けたもう1本。
がらっと変わってヴェルディッキオ。
ヴェルディッキオはマルケ州のお家芸、これまた大好きな品種。(ワインを選ぶとき、選択に困ったら結構ヴェルディッキオを選ぶ。。)

さて、ラベルがとてもいい。ヴィニェートBのBはビオのBだそうだ。
ラベルは、全くなんの説明もなくて普通だが、それでも何かしらの説明があるとわかりやすい、手に取りやすい、印象に残りやすい。
逆に、バックラベルにくだくだと説明書きがあるワインがあるが、わかりやすくて嬉しい反面、長すぎてしつこかったり、また、字があまりに小さく読みにくかったりいろいろ。
このワインは、フロントラベルに実にシンプルでわかりやすく、そして印象的な説明書き。

  ヴェルディッキオのスタイル。個性ある偉大なる白ワイン。ビオは栽培の方法、ビオは畑の間を縫って歩く人たちの哲学。そこには、野ウサギやキジ、昆虫やちょうが飛び交っている。つまり、それがB(ビオ)の畑。

いいね~

色が2014年なのにかなり濃いめ。
そこで、どんと重たい感じを想像してしまうが、意外なことに酸味が綺麗で、しかし、尖った酸味ではなく、色からイメージしていた重たさもない。
ほんのりフルーツの香り、柑橘の香りが、最後、ほろ苦さと一緒になって、みかんの香りに感じた。
ヴェルディッキオは食事を引き立てるワインだと思うが、これは繊細さも持ち合わせていて、主張しすぎず、日本食にも合いそうな予感。

Timorasso Derthona 2013 Vigneti Massa ティモラッソ デルトーナ2013ヴィニェーティ・マッサ

2016-03-16 00:15:43 | Piemonte ピエモンテ
Timorasso Derthona 2013 Vigneti Massa
ティモラッソ デルトーナ 2013 ヴィネーティ・マッサ



先日飲んだ2本のワインの1本。
ワインは職業柄というわけではないが、しょっちゅう飲む。
その昔はちゃんとメモを取り。。。とやっていたが、今は残りの人生、楽しく飲みたいときは楽しく飲むという方針でいっている。
ちゃんとした試飲会なら別だが、友人と飲む時、いちいちメモを取っていたら興ざめである。
そこで、このブログもなんだかワイン記事よりは映画の記事の方が増えているような。。。
もう少しワイン記事を書かねば。。。

いつものワインバーに行ったら友人がちょうどデルトーナを開けるところだった。
ここは、棚に並んでいる、また、巨大な冷蔵庫に入っているワインは、どれを頼んでもいい。いつものワイン、も多数あり、最近は黒板も出現して、それを見て頼んでもいいが、いつも通っている連中はテキトウに選ぶ。

これを開けたのであれば頼まない手はない。
と、僕も私も、ということで、1本がすぐに空き、おかわりも含めて2本が多分すぐに空になったと思う。

ティモラッソはかなり人気の品種の一つ。
それは私の周りの友人だけということはないだろう。
「出現」(突然かなりの話題になったということ)したのはもう10年以上前になると思うが、その時、こんな品種があったんだぁ、と開眼した。
以来の大ファン。

生産地域は、赤が優勢のピエモンテの、バローロなどで有名なランゲ地方の「お隣」あたりのトルトーナの丘陵地帯、ピエモンテ州の一番南東の端の方に位置する。その地域ではもっとも栽培されている土着品種である。
DOCの名称はCollina Tortonesi(トルトーナの丘陵地帯)。

ティモラッソはフィロキセラと他のもっと栽培の容易な品種に負け、一時絶滅したしたということだが、復活させたのがワルター・マッサ氏。
現在23社がティモラッソのワインを造っているなか、好き好きはあれど、ヴィニェート・マッサが一番有名。

ティモラッソは、ステンレスタンクだけのものと樽を使ったものとがあるが、個人的にはステンレスのものが好き。(そして、当然その方が値段も安くて嬉しい)

ステンレスタンクのだけでも色は濃い目、ミネラルが豊富な中にしっかりしたフルーツの香りがある。
ボディもよく、酸ががきついわけでもなく、まろやかさがあり、バランスがとても良く取れている。
白ワインにありがちな苦味がなく、余韻が長い。

別な友人曰く、2013年なんてまだ子供、今は2010年がいい~と言うのだが、絶対に残らない。
隠しておくか、どこかに置き忘れでもしない限り、すぐになくなってしまうワインなのである。
どうも、個人所有の別なワイナリーの2010年のティモラッソのマグナムを、巨大冷蔵庫の奥の方に隠しておいたらしいが(ここはそういうこともできる)探したら消えていた。
隠しておいても消えてしまうのがティモラッソ。



Estate romana di Matteo Garrone イタリア映画の紹介 ローマの夏

2016-03-15 15:37:11 | 何故か突然イタリア映画
Estate romana ローマの夏
監督 マッテオ・ガッローネ

好きか嫌いか、はっきり分かれそう



タイトルから、ローマの夏~きれいな風景~ をイメージするかもしれないが、監督がガッローネだとそうじゃない、ということがすぐに想像できる。
全然違う。

ガッローネ氏は、今では「ゴモラ」(2008年作。書いてます。別ページを参照)で超有名になった、現在のイタリアでおそらく5本指に入る映画監督。

昨年のインタヴューで見た時、びっくりするくらい気さくで、感じが良く、人柄が個人的に好きなのであるが、その時に、いつも同じようなものを作っていては面白くないでしょ、と言っていた。
確かに、どの作品も個性の出し方が違う。
特に、最新作「童話の中の童話」(2015年、これも書いてます~)は、ガラガラっと変わって、ドレスがなんとまあ美しい。。。。(ため息)

さて、「ローマの夏」は、ガッローネ氏の3作目で2000年の作品。つまり、「ゴモラ」よりずーーっと前に作られた作品である。
すでに素晴らしい才能を表していたというのがわかる。うまい。
しかし、個人的に好きだし、面白かったのだが、見ていてちょっと疲れた。

ストーリーは、70年代に前衛的演劇でちょっとは活躍した女優ロセッラ、その後田舎に引きこもっていたのが、再び演劇活動を復帰するためローマに突然戻ってくることから始まる。
2000年の聖なる年(今年も「特別聖年」です~)の前のローマで、あらまあ、あちらこちら工事だらけ。確かに2000年の聖なる年は盛大だったが、その前、こんなに工事していたっけ? 画面は工事中の建物だらけ。(笑)
テルミニ駅近くの彼女の持ち家は、演劇の背景製作をしているサルヴァトーレにずっと貸していた。突然やってきて、しばらく滞在することになるが、アパートには製作アシスタントのモニカとその一人娘も同居人として暮らしていた。

アパート内でサルヴァトーレが製作中の、舞台用の大きな地球儀が印象的。
いざ、運び出す段階になって、サイズが多すぎて持ち出せない。ドアを通らない。やっとこさ持ち出した頃には結構ボロボロ。。。。
ロセッラは、あちこち昔の知り合いに電話をかけて、また仕事をしたいの、と言うが、バカンス中でいない人も多く、いても、今頃戻ってきてもね~と軽くあしらわれる。
モニカは離婚して、2つの仕事を掛け持ちで頑張っているが、姑とかなり仲が悪い。物事をはっきり言うサバサバした性格。

こういう映画を見ていていつも思うのは、どうしてここまで「美しくない」女優俳優を使うのだろう。(ごめんなさい。。。)
アメリカ映画など、台詞の中で「あんた本当にブスよね」とあっても、えー、うそー、セリフだけー、結構かわいいじゃん、と思うことが多い。本物はどうかともかく、画面ではかなり可愛く作っているのがわかる。
が、イタリアのこの手の映画は逆で、実は本物は可愛いのに、全く可愛くない雰囲気をたぶんわざと作っている。確かに世の中、かわいいとかかっこいい人だけではないので、かなりリアルである。
ロセッラが、かなり疲れた雰囲気の女優でお世辞にも綺麗とは言えないし、モニカも目だけがぎょろぎょろで、もう少し可愛く作ってもいいのに、と思う。でも、だからこそ、かなりリアル。
役の名前は実際の俳優の名前を使っているところもよりリアル感を与える。

ちょっと疲れたのは、映像と音。
カメラを手で持って写している場面が多いのか、ぶれるのではないが、その動き、あらゆる角度からのアップが多く、客観的に映画の画像を見ているというより、インタヴューを見ているような、本当の映像が目の前で展開されているような感じにもなり、見ていて結構緊張しているのを感じる。
そして、ローマの夏の暑さが、見ている方にもなんかじわじわと。。。

そして、音。
普通の映画は、背景の音を消して(または小さくして)、役者の声が大きく聞こえるように作っているのだろうが(と、改めて認識)かなりの場面で、ガチャガチャした背景の音が入っている。わざとなのだと思うが、台詞が聞きづらいのではなく(台詞はちゃんと聞こえる)無意識で雑音と人間の声を分けているのだと思う。

でも、その映像と音も魅力の一つなので、若干疲れたところはあったが、オススメ。

La grande bellezza di Paolo Sorrentino 偉大なる美(邦題 追憶のローマ)

2016-03-14 09:43:46 | 何故か突然イタリア映画
La grande bellezza 偉大なる美(邦題 グレート・ビューティー/追憶のローマ)
監督 パオロ・ソレンティーノ

グロテスクでもあり、美しくもある作品



オンラインで何気なく見ていたところ「偉大なる美」がどんなに素晴らしい映画であるかについて語る必要がある、というページが出てきた。
ジャーナリストでもあり作家でもあるロベルト・コントロネオという人の文章である。
読んでいて気になったので、数回(断片的にが多い)見た映画であるが、改めて見てみた。

アカデミー賞で、外国語映画賞のオスカーも獲得した、現在イタリアを代表する監督の一人であるパオロ・ソレンティーノ氏の2013年の作品で、140分の長編。

コントロネオ氏曰く、イタリアの知識層が夕食の席やアペリティフの際、この作品がいかに醜いかとか失敗作であるかとか過大評価されているとかの話になるだろう、と言うのだが、実はまさにこの経験を少し前にしている。

親しい友人に、世界でも最も珍しい本「コーデックス・セラフィニアヌス」の作者、業界ではかなり知られている芸術家ルイジ・セラfフィーニがいるが、彼と一緒に3人で、ミラノのいつもの場所に食事に行った時のこと。そこはテレビが何台か置いてあるとても気さくなところで、入ったらたまたまテレビで放映してたのに出くわした。
「この映画は何度か見たけれど、あまり好きではない。いいと思ったことはない」と言うルイジに、その時は私も賛同した。
しかし、好きではないと言ったものの、かなりチラチラと画面を見ている。それは私も、もう一人の友人も同じで、気になるのである。そして、いつの間にか3人とも画面に見入っていた。(もちろん食事が終わったら退散したが)

ルイジのような超知識人でも嫌いと言う。
しかし、嫌い、醜いと言いながら、人を惹きつける魅力がこの映画にはあると思う。
何故か素直に好きと言えない、いや、嫌いと言いながらも気になってしまう、見ていてなんだか身震いしてしまうような作品だと。
また、この作品のすごいところは、好きでも嫌いでも、パッと見ただけで、あ、あれ、とわかってしまうことである。
なにこれ?なんの映画~?ということが多い中、よく考えてみるとこれはかなりすごいことだと思う。
この時も、間髪入れず、ルイジが「偉大なる美」だ、と言ったが、一瞬でわかってしまうほどインパクトがある作品ということである。

さて、ローマの映画で最も魅力的なのは「ローマの休日」だと思うが、ローマの名所をストーリーの中に実に上手く入れて紹介し、何度見ても飽きない。
しかし、映像という点でみると、「偉大なる美」は「ローマの休日」を完全に上回り、ローマ各地の美しさを実に見事に表現していると思う。
コロッセオやサン・ピエトロはもちろんだが、サン・ピエトロ・イン・モントリオ、そしてエンドロールで映し出されるテヴェレ川から見たローマの景色などは圧巻、素晴らしい映像だと思う。

そして、この映画の魅力は、ローマの風景を単に取り入れただけではなく、コントロネオ氏の言葉を借りるなら、宗教、死、性、無などを移し出したものであり、逆にそういったものを表現できる都市は、ローマ時代から現代まで歴史の重なっているローマしかない、と。

ジェップ・ガンバルデッラ(トーニ・セルヴィッロの抜群の演技)は、1冊しか本を書いていないが、モード、演劇の評論、ジャーナリストで、派手な生活を送っている。26歳でローマに来て65歳の誕生日を迎え、人生を回顧するのであるが、いろいろなストーリーの色付けが素晴らしい。
台本は、ソレンティーノ氏とウンベルト・コンタレッロ氏(友人の友人でもある)で、各場面でのセリフにも印象に残るものが多数ある。

たぶん、最初はグロテスクな部分が目について好きになれないかもしれないが、これがフェリーニ亡き後の「フェリーニ的」いや、これこそ「ソレンティーノ的」作品だと思って、ぜひ一度は見てほしい。
なお、コーラスを効果的に使った音楽も実に見事に雰囲気を醸し出している。必見。




さすがに有名なので日本でも出ています。
興味がある方はぜひどうぞ。

グレート・ビューティー 追憶のローマ [DVD]
クリエーター情報なし
オデッサ・エンタテインメント

オブジェとしての時計

2016-03-13 10:16:23 | もろもろ、つれづれ
イタリアの街中の時計



イタリアのオンラインの新聞に、街の中の時計で、止まっている、時間がずれているものの写真を皆さまから募集します、とあった。
街中の時計の時間が違っていると、不便だし、困ったことになることもありますよね、と。
いったいどれだけの投稿が集まるだろうか。いや、逆に正しい時計の方が少ないような気がするので、大して関心がないとか。(後者に1票)

昨今、街中にもデジタルの時計が増えたので、デジタルの場合はまずまず正確だろうし、携帯を見れば1分と狂いない時間がわかるようになったが、その昔は、腕時計を忘れて家を出たら冷や汗モノだったのを懐かしく思い出す。
そういえばその頃は、頻繁に、今何時ですか?と赤の他人に聞かれたものだ。

イタリアは本当になあなあな国である。
良くも悪くも、1分や2分、5分や10分の差を気にしない。
それで人生の一体何が変わるのか、がイタリア国民の持論のような気がする。
日本では、電車が3分遅れただけで大変なことになるような気がするが、そして、なるのだろうが、イタリアでは大抵問題にもならない。

だから、ということもあるが、街中の時計が多少どころではなく狂っていようが、止まっていようが、あまり気にしないのである。
そして、それは、夏時間と冬時間の1年に2回時間が変わることもあると思う。
今は本当に便利になった。家の壁の時計は別だが、携帯など、何もしなくても勝手に変わってくれるようになり、夢のよう。
昔は、前日、家中の時計を全部変更してから寝たものだ。懐かしい。。。。

夏時間と冬時間、時間が変更になった直後は、街中の時計が1時間ずれているのはあたりまえで、1ヶ月たって直していなくても普通である。(多分2ヶ月たっても。。。)
そうやって気にしなくなると、時間がだんだんずれてきていようが、電池が切れて止まっていようが全く気にしなくなる。
そうなると、時計の役目を果たさない。
じゃあ、いらないじゃないか、と思うだろう。なくてもいいじゃないか、と。

いやいや、同じ疑問を持った、まだ来たばかりの若かりし頃、人に言われた。

  イタリアの時計はオブジェです。

そう、何かしらの時間を指している、ただのオブジェなのである。
オブジェなら、街中にあってもそれなりに可愛い。


最近見たちょっとびっくり ソレントにて

2016-03-12 11:14:38 | もろもろ、つれづれ
ぶったまげさせてくれた看板



以前に比べたらオンラインの自動翻訳機は格段に良くなっているような気がする。
特に日本語と英語では。
しかし、日本語とイタリア語はまだ遅れているというか、嬉しいことに笑わせてくれる。

ソレントで見つけた看板。
ジェラート屋さん、つまりアイスクリーム屋さんであることはわかる。
見て、ぶははははははははーーーー。
冷静に考え、おそらく最近はやりのグルテンフリーと言いたいのではないかと思うのだが。。。?マークである。
残念ながら時間がなく、ジェラートを食べる天候でもなく、これは一体どういう味?と聞きたかったが、できなかった。
次に行ったら、おそらくこの味を選択することはないと思うが、少なくとも、これは一体何なのかは聞いてみたい。

今時、自動翻訳機での翻訳がどんなに「キケン」なものかわかっていてもいいのに、と思ったり。
いや~これは逆に、客引きの狙い目だったりして。。。。意外に宣伝効果ありそう。。。

この看板を見て思い出したのが、ずーーーっと前、さるローマのタクシー会社が各国語でパンフを作ったのを見たとき。
ローマから空港まで、一律料金化されて作ったパンフだった。
値段は40ユーロ。(ちなみに今は48ユーロ。参考まで)

読んで いて最初から最後まで爆笑だったのだが、一瞬わからなかったのが、ドーンと大きく書いてある

40欧州

。。。。40ユーロ、のことだった。
そうかぁ、自動翻訳だとこうなるのかぁ、と、なんだか逆に「学んだ」気分になった。


最近見たちょっとびっくり カプリにて

2016-03-11 17:44:56 | もろもろ、つれづれ
最近見たちょっとびっくり。

先日仕事でカプリ島に行った。
このところ天気が全国的に悪く、当然青の洞窟には入れない。
となると、上のカプリ町まで行きフリータイムにするか、洞窟の入り口だけを見に行くかの選択となる。(添乗員が最終的には決める)

天気が雨なら理解できる。
でも、雨が降っていないと、たとえ曇りでも、とても風が強くない限り、何故洞窟に入れてもらえないのか、なかなか理解できない。
夏場、天気がとても良かったりすると特に、このいい天気でどうして入れないの~???となる。
青の洞窟は、天気ではなく、風が少しでも強いと波が高くなり入れないのである。
中はある程度広いが、入り口は幅2メートル、高さ1メートルで、これでも少しは広げてあるとのこと。

そこで、風が強くて出ないことはあるが、出ているなら、洞窟入り口まで行くボートに乗って、とにかく入り口を見に行くというグループは多い。
そこまですれば、何故入り口に入れないのか理解していただけるということと、とにかくその場まで行った、ということで満足していただける方もいらっしゃるということだと思う。

その、40人くらいが乗れる中型ボートに乗る乗り口がカプリ島の波止場にある。
昔からその大きさで広げてはいないので、確かに、団体グループが殺到すると危なくないとは言えない。
しかし、今は冬場で観光客が少ない中、ボートに乗って洞窟を見に行こうというグループは一つだけだった。(私たちは行かない方を選択)

私たちがちょうどその辺りにいた時、突然、ドッボーーーーーン。
ひえ~アレ~、誰か海に落ちた。
音からするに足から落ちたのだと思う。
ふっと見ると、お年を召した女性が救い上げられているいるのがチラッと見えたが、冬場でロングのダウンを着て、メガネもかけて、当然バッグなども持っていたわけで、その後がとても気になった。
ホテル(多分ナポリ)に帰って着替えることもできず。。。。

今まで、波をかなりかぶったとか、水でカメラが壊れたとか、乗った船の船底が濡れていてズボンがびしょ濡れになったとか、あれー落ちそう、という場面は多数あったが、本当に海に落ちたのを見たのは初めて。
それも、この空いている季節、ほとんど誰もいない波止場で。。。。
行かれる方は決して油断しないでくださいね~

Dobbiamo parlare di Sergio Rubini イタリア映画 話がある

2016-03-11 09:04:58 | 何故か突然イタリア映画
Dobbiamo parlare 話がある
監督 セルジョ・ルビーニ

劇場的、2カップルの痴話喧嘩コメディ



上映後にある監督のインタヴューが、都合でたまにない時がある。
今回がそうで、現在制作中の作品の撮影の天気の都合(このところ雨続き)で、急遽どうしても来れなくなった、ということである。
仕方がないが、魅力が半減するのは避けられない。
普通は映画館やテレビで見て終わり、なので、インタヴューがあると魅力が倍増、というのも道理ではないのではあるが、やはり監督自身から生の声で作品についての話が聞けると魅力は増える。

劇場向け。
実際に劇場で上演されているようだが、まさに劇場向け。
たまたまこういうアイデアになったのか、それとものちの劇場上演を意識して制作したのか。
まず、とても広い2階建、最上階、テラス付きのアパートであるが、撮影はその中だけ。一瞬、アパートの玄関先と階段部分が映るが、それだけ。
登場人物もほんの一瞬映るアパートの管理人、そして、やってきてはすぐに帰ってしまう友人4人を除いて、2組のカップルだけ。
たった一晩の出来事なので、着ている洋服も最初から最後までほぼ同じ。
つまり、4人、優秀な俳優がいれば芝居になってしまう。
映画ではなく、演劇を見て帰ってきたような印象を受けた。

笑わせる場面がたくさんあり面白かったのであるが、先が読めてしまう映画でもあった。
つまり、しばらくすると、これはどうもこのアパート内だけで、外の撮影はないような気がする、とか、これは他の登場人物はいなくて4人だけかも、とか。
そして、ストーリーも若干。

ヴァンニは小説家(あまり売れているようには見えないのだが)で、ローマ市のど真ん中、アパートなのに2階建という大きなアパートを借りて、リンダ(実は彼のゴーストライター)と同棲している。
10年目の記念日、友人たちとアートの展覧会に行き、その後夕食という予定にしていたのだが、そこへ、リンダの一番の親友、コスタンツァがやってきて、「夫の浮気が発覚したのよ」。なんとか追い返すのに成功するのだが、と思ったら、今度は夫のアルフレードがやってきた。
展覧会と夕食の予定は諦め、親友夫婦の仲裁に入ることにする。
その後は演劇的パターン。

大雨になって、窓から水がしみこんでくる。→バケツを持って大騒ぎ。
動物嫌いのリンダが、入ってきた猫に悲鳴をあげる。→難なく捕まえ追い出す。
掃除機をかけようと思ったら停電。→ロウソクをつける。
一緒に展覧会に行くはずだった友人4人がやってくる。→雰囲気を見てすぐに帰る。
事件はこれくらい。

最初はコスタンツァとアルフレードが喧嘩。妻は、別れるわと言いながら実は別れなくない。夫も、ごめんなさい、許してね。
そのうち喧嘩が飛び火して、最初は優しくおとなし~いリンダが、今度は不満を爆発。矛先は、親友のコスタンツァ、そして、同棲中のヴァンニ。
その頃には、最初のカップルの喧嘩は落ち着いている。
最後、仲直りしたように見えたヴァンニとリンダだが、それでもやはりリンダが家を出ていってしまう。ここだけ、一瞬、へ~、ほ~、だったが、この雰囲気では3日で家に帰るか、帰ってきてくれ~と迎えに行くか。。。

会話がポンポンと飛び交い、リズム良く、アパート内の撮影だけとはいえ、よくアングルを捉えている感じで、退屈はしない。
笑いを誘う会話、場面など多数あり、コメディとしては非常によくできていると思った。
映画館(ここは映画館ではないのだが)ではなく、劇場に演劇を観に行った感じ。
なんだかむしゃくしゃしている時に見るといいかも。

Assolo di Laura Morante イタリア映画 独奏

2016-03-03 20:26:43 | 何故か突然イタリア映画
Assolo 独奏
監督 ラウラ・モランテ

熟女にオススメ



監督は映画の主役でもある女性、ラウラ・モランテ。100本近い作品に出演しているという有名女優でもあるが、監督としては2012年の作品に続いて2作目。
コメディでもあり、ドラマティカルな一面もある作品は、本人は「giocoso (おどけた、滑稽な、愉快)なドラマ」と称した。

主人公は50代の女性フラヴィア。
2度結婚し、2度離婚、それぞれの夫との間に一人ずつ、二人の息子がいて、現在は独身。二人の夫の心変わりが原因で離婚しているが、二人の夫はそれぞれ再婚し、フラヴィアはその再婚相手の女性たちともなんとなく友達の仲。年が年なだけに、同じように離婚した友人などもいる。
もともとの、白黒つけたがる生真面目すぎる性格もあるが、50代になって、未だにシングルで、何か空虚なものを感じている。
それにつけ込んで手を出してくる同僚もいないわけではないが、彼女自身が素敵と思う男性からは相手にされない。
社交ダンスクラブに入ってみても、男性の方が圧倒的に少ないので、踊る場面はほとんどなく待ちぼうけ。
精神科医に相談に行っても、話すのは人のことばかりで自分のことは話すことがない。今まで、どれだけ人に左右されてきたか、自分自身というものがなく生きてきたか。
惚れやすく、優しく、上の部屋に住んでいる若いカップルに放って置かれている犬を引き取って可愛がったりするのであるが、車の運転にトラウマがあることが象徴するように、人生の変化に対応していけない、自分に自信がない弱い性格をどっぷり背負っている。

通っている精神科医(老齢の女医)との治療を含めた会話とモノローグが中心になってストーリーが進んで行く。
最後は、古臭い髪型を変え、赤いスポーツカーを乗り回すまでに「成長」するフラヴィアが、もしかしたらいよいよ素敵な男性と出会うかも、で終わる。

中年の、いや、熟年の、同じような問題を抱えている女性には結構受ける作品だと思う。
更年期とか、人生の終わりが見えてきてどこか空虚なものが見えてきているとか、夫はいても生活がマンネリ化しているとか。。。
精神科の女医の語りは、いたって平凡ではあるが、この手の問題を抱えている人に対しては、とても上等、有効。
あちらこちら笑える場面があって、キラッと光る女医のアドバイスをふむふむと聞くだけでも悪くはないと思う。

ただ、全体の深みには欠ける。
若い時から片鱗は見えていたにしても、50代になって突然大きな問題になってしまう理由とか、社交ダンスを始める勇気があれば、こうはならないような気もしたり、「成長」したフラヴィアが最後ほとんど突然登場して、その間の変化をすっ飛ばしたり。
でも、それを深く考えない方が良い作品なのだろう。

上映後のインタヴューの時間は長かった。タイムリミットがあるわけではないので、なんとなくノルと長くなり、そうでないと20分程度で終わる。
意外に控えめな雰囲気をもち、壇上に上がった時、みんな一瞬、あれ~フラヴィアみたい、と思ったと思う。
一番最初の質問、自伝ですか?に、みんな爆笑。(モランテ自身も2度離婚し、今の夫が3人目、子供も二人いる)
違いますよ~私は免許を持ってるし~、と笑って答える。また爆笑。
ただ、もちろん見本になる人は数人いて、特におばさんがフラヴィアのような性格なのだそう。
でも、誰か特定の人を描いたものでも、大げさにある種の女性を社会的に見たものを描きたかったわけでもなく、これは一つのストーリーにすぎない、と。
登場人物は、最後は浮気される2番目の夫も含め、男女みんな、完璧ではなく、どこか何か抜けている。それでいいのよ~

今回の作品に関しての質問もたくさんあったが、なにせ女優としてイタリアとフランスで成功している人なので、そういった話も多く出た。
最初は舞台役者として始めたそうだが、その時は、役者の数より観客の数の方が少ないことも多く、ちなみにその頃は、観客の数の方が役者の数より少ない場合は上演を中止しても良いという(変わった)規則があったのだそうだ。
いろいろな役に挑戦するのは好きで、楽しくこなしているというのだが、フラヴィアのような、なんとなく自信なさげな細身のイメージが付きまとっているらしい。そんなところがかもしれないが、大御所女優にもかかわらず非常に好感の持てる人物あった。
映画も結構面白かったが、インタヴューもとても良かった。

Nuova Cinema Paradiso di G. Tornatore イタリア映画 ニュー・シネマ・パラダイス

2016-03-02 15:16:35 | 何故か突然イタリア映画
Nuovo Cinema Paradiso ニュー・シネマ・パラダイス
監督 ジュゼッペ・トルナトーレ

全てが詰まっている映画



今回のアカデミー賞、日本ではレオナルド・ディカプリオのオスカー獲得が他の話題をさらってしまったのではないかと思うが、イタリアではもう一つ大きな話題がある。
作曲賞で、これまたディカプリオのように何度もノミネートされながら受賞を逃していた大御所作曲家モリコーネ氏が、やっとオスカー獲得を成し遂げたのである。(その数5回、ただし、2007年に名誉賞は獲得している)

エンニオ・モリコーネ氏は音楽家、作曲家、指揮者であるが、映画音楽の世界でよく知られ人気があり、イタリアでは超が3つくらい付く有名人物である。
ずーーっと昔、用事があって2度ほど自宅にお邪魔させていただいたことがあるのだが、電話には本人が出るし、気さくで親しみやすく、ユーモアがあり、個人的に大ファンである。
そのモリコーネ氏は監督のトルナトーレ氏と親しく、幾つかの作品で作曲をしているが、代表作は何と言っても「ニュー・シネマ・パラダイス」。
そこで、作曲賞受賞後のテレビ放送用作品の一つとして、一昨晩テレビで放送された。

1988年の作品というから、25年以上は経っている。そんなに経ったかぁ、と思う。ひえ~
日本でもかなり話題にはなったので見た人も多いとは思うのだが、今の若い人たちにとっては生まれる前に制作された映画であり、そんなの見ていない、という人も多いような気がする。ああ、モッタイナイ。
感動の映画というのは、まあ多々あるが、これも絶対にその1本に入る。

さて、それから、この映画の面白さはもう一つある。
2つのヴァージョン、つまり長いヴァージョンと短いヴァージョンがあるのである。
ただし、短いと言っても2時間を超え、長いヴァージョンは2時間半を超える。
(あとさらに、2000年以降出た、数分短いヴァージョンと、もっと長いヴァージョンもある)
そして、この2つのヴァージョンで、映画の基本的な意味、印象が違ってくる。
これが面白い。
短いヴァージョンでは登場しない主役的人物がいるので、見るならぜひ二つを比べて欲しい。
一般に知られている方は短い方なので、そうなると、私がもしその「短い方には登場しない役者」なら、かなり怒るような気もする。。。

さて、全てが詰まっているというのは、1950年代のシチリアの小さな町を背景にして、少年(トト)と老人(アルフレード)の友情、少年の成長、少年期、思春期、そして30年後の壮年期、貧しさ、対して裕福な家庭、移民で旅立つ家庭、宝くじに当たってしまうような幸運の持ち主とか、町長や神父も一役買い、娼婦もいるし(長いヴァージョンでは結構重要)、当時の唯一の娯楽としての映画、映画館(パラダイス)、火事、火事で盲目になってしまうアルフレード、映画館の再建(ニュー・パラダイス)、映画の衰退、そして、彼女(エレナ)との出会い、ひたすら純粋な恋愛、別れなどなど、全てがコミカルに、またドラマチックに描かれている。
ここまで色々な内容が一つに、実に上手くまとまり、詰まっている作品はそう多くはないような気がする。

短いものと長いものの違いは、短い方には登場しない人物がいるということだが、それは大人になった彼女、エレナである。
短い方では、30年後、大人になったトトとエレナは会うことがなく、つまり、恋愛はすでに過去のものとなり、トトとアルフレードの友情、少年期、思春期のノスタルジーがクローズアップされる。どちらかというと男性向け、確かに一般向けだろう。

長い方では、二人は偶然再会し(実はトトの親友と結婚して町に住んでいたのだが、短い方ではそのストーリーの片鱗もでてこない)何故当時再会ができなかったかを知ってしまい、ちょっと意外な顛末。最後に30年後の二人の再会、というストーリーがクローズアップされて、こちらの方が女性向けだと思う。

なお、一番最初、映画館では長いヴァージョンが放映されたそうだが、何故かシチリアのメッシーナを除いて客の入りが悪く(結構意外)、その後、カットして放映。徐々に火が点いたとのこと。確かに、映画館で3時間は長すぎ、くどすぎだったのかも。また、長い方は恋愛映画的要素が強いので、トトとアルフレードの年齢を隔てた友情が印象的な、短いヴァージョンの方が確かに一般的に受けるような気がする。

脚本は、監督のトルナトーレ氏自身。そして、泣ける音楽がモリコーネ氏の作。私は音楽で泣いてしまうので、ティッシュペーパー1箱用意。(笑)

近年のイタリア映画として、ベニーニの「ライフ・イズ・ビューティフル」も有名、絶対にオススメだが、こちらもオススメ。
もしまだ見ていなければ絶対に見て欲しい、ただし、その際は、ぜひ、両ヴァージョンを見比べて。



こちらは日本で出ている完全版。

ニュー・シネマ・パラダイス 完全オリジナル版 [DVD]
クリエーター情報なし
角川映画

Il Sake incontra l'Italia 日本酒とシチリアチーズ

2016-03-01 09:12:22 | 日本酒、日本茶
Il Sake incontra l'Italia 日本酒試飲会



友人の一人ルカ(いっぱいいるルカのうちの一人)が日本酒の小さな試飲会を企画した。
たまにやる企画のようだが、日本酒とチーズを組み合わせての試飲。私は初めて参加してみた。

ちなみにルカはサケ・ソムリエのタイトルを持っている。
私は日本のSSIというかFBOの利き酒師の資格を取ったが、ヨーロッパでは、ロンドンに本拠地のあるSSAサケ・ソムリエ協会が講習を各地で行っている。イタリアでも今月ミラノであったばかりで、ローマでも行う予定にはなっている。(予定は延びて、秋頃らしい)
ただ、もちろんそう頻繁に一都市でやるわけではないので、急いでいるなら旅費をかけてどこかの講習に参加しないと。しかし、一般的な(上級クラスではない)サケ・ソムリエのタイトルなら2日から3日の講習で取れるようなので、そう負担にはならないかもしれない。
友人のルカが持っているのはこちらのタイトルの方である。
そして、さらに日本酒を飲む会 ベーレジャポネーゼBereGiapponese という会を主催し、日本酒の促進活動を積極的に行っている。
今回の小さな試飲会は 日本酒がイタリアと出会うIl Sake incontra l’Italia という企画で、今回はシチリア編。

場所はローマの、サン・ジョバンニから少し行ったところにある市場(メルカート)の一角。
以前は広場にずらっと並んで立っている露店だったが、本当に久しぶりに行ってみたら、一応屋根が付いてかなり綺麗になっていた。
50店舗くらいは入っていると思うが、その中にかなり質の良いチーズ専門店があり、そことタイアップしているようだった。



今回のアビナメント(組み合わせ)は山形県の酒2種とシチリアのチーズ4種、石臼で挽いた小麦粉使用のパン2種。
特別純米 東北泉 高橋酒造
生酛純米酒 初孫 東北銘醸

東北泉はすっきりタイプで、するっと飲め、シチリアのフレッシュなチーズにぴったり。
初孫は生酛らしく、旨味をたっぷり含んだタイプで、ハードタイプのチーズに合う。

なるほど、和食系のつまみだけではなく、チーズに日本酒もかなりいける。
市場なので昼間の企画、無料ではないが、これでお昼の代わりになった。