乱鳥の書きなぐり

遅寝短眠、起床遊喰、趣味没頭、興味津々、一進二退、千鳥前進、見聞散歩、読書妄想、美術芝居、満員御礼、感謝合掌、誤字御免、

思い出の味   京都・岡崎『La Voiture』の “Tarte Tatin”

2009-08-13 | お出かけ


  京都・岡崎『La Voiture』(ラ・ヴァチュール)

        


 8月12日。

 京都市美術館開催の『ルーブル美術館』を楽しんだ後、懐かしの La Voitureにいく。

 この店は大学の頃、美術館の帰りに度々行った店。

  

 今はカウンター席はないが、かって三十年近く前は、私は親父さんのファンでカウンター席ばかりに座っていた。

 親父さんは心地の良い偏屈マスターであった。

 みんなからは普段無口だと聞く親父さんであったが、行く度にとにかくよくしゃべる。

  

「タルトタタンは濃いブラックコーヒーで飲むものだ。」
とか、
「コーヒー二口にタルトタタン一口がベストだ。」
とか、
「タルトタタンは なしかりんごかどちらだと思うか?」
とか、好き放題だが紳士的な口調が魅力だった。

 確かに、かなりこいコーヒーと甘いタルトタタンは口に中で調和し、うまかったものだ。

  
 
 親父さんのタルトタタンの講釈は行く度に深さを増す。

 特別に濃いコーヒー。

 おかげでタルトタタンについてはバッチリかもしれない。

  

 一時はおばさんもお年を召されて、タルトタタンもひとテーブルに一切れといった危機に陥ったことがある。

 そうして時を隔て、次の世代におかしは受け継がれた。

  

 私から伝授した La Voitureのタルトタタン。

 息子は下宿先から自転車に乗り、美術館に行く度にタルトタタンを食べる。

 もちろん飲み物はコーヒーだと、彼は言う。

 息子にとっても、懐かしの味。

  

 友人たちと歩いた道。

 美術館から息子と歩く。

   

 中学の頃から慣れ親しんだ懐かしの京都会館の楽屋の通りをまっすぐに行くと、小さな店は見える。

 ドアを開けると軽快なJAZZ。

 私の思い描く京都の一面。

  
 
 学生の頃はタルトタタンとコーヒーがやっとだったが、今日は加えて くるみのタルトも注文。

 大人になっての、プチ贅沢。

  

 苦みを増したキャラメル。

 ぶちぶちとした刻みクルミのミルクが口に広がる。

 うまい!

  

 あまくて少し香ばしいタルトタタン。

 親父さんの苦みばしった知的な顔とアクセントの効いた話し振りがよみがえるようだ。

 親父さんに指導を受けたように,タルトタタン一口、コーヒー二口で遊ぶ。

 思い出の味。

  

 休みだというのに家で仕事の夫に、タルトタタン一つとくるみのタルト二つを持ち帰る。

 思いきり濃いめのコーヒーをたて、タルトタタン一口、コーヒー二口を伝授する。

 夫は目をしばしばさせて、菓子とコーヒーを楽しんでいた。


        
コメント (2)
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