がじゅまるの樹の下で。

*琉球歴女による、琉球の歴史文化を楽しむブログ*

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テンペスト行脚~ニンブチャー~

2011年09月29日 | ・『テンペスト』行脚

■ニンブチャー■

 

「妾がニンブチャー。葬式女だと?」

ニンブチャーは庶民の壮烈の後ろを歩く念仏屋だ。

常に白い喪服を着、白い頭巾で顔を覆わなければならない。

ニンブチャーの唱える経は頓狂で無教養なものと相場が決まっている。

貧しく無学な庶民がせめて形だけでもお経らしくしようと
ニンブチャーを雇うのだ。

「おい。ニンブチャー。西原で病人が死んだそうだ。
葬儀に行け」

貧しい農民の葬儀は悲惨だ。

泣く余裕もないほど皆が生活に疲れ果てている。

まるで動物の死骸を処理するかのような、
淡々と乾いた葬儀だった。

「これが人の死と呼べるのか?
愚かな奴らじゃ。
こんな葬儀で霊が弔えると思うのか?」

形だけの粗末な葬列が物悲しく連なっていく。

遺体が、使いまわされて痛んだガンに納められ集合墓地に葬られる。

真牛は葬列の最後尾で半鐘を鳴らしながら念仏を唱えた。

他のニンブチャーには決してできない見事な念仏だった。

真牛は頭巾の衣越しに空を見ながら、
ミセゼル(祝詞)を謡っていた。

真牛の謡ったミセゼルは死者の生涯を讃えるものだった。

「この者は農民として生まれ、よく働き、子を育て、
よい織物を納め、王府から感謝された。
どうかあの世では豊かな生活を送れますように。
聞得大君から神にお願い申し上げます」

と。

「テンペスト(下) 326-」 (池上永一著/角川書店)

 

というわけで、写真は県立博物館にあります葬儀文化コーナーより。
(ここは写真撮影OKエリアなのです☆)

真牛が鳴らした、半鐘がコチラ↓

ドラマでは尺の関係で実にあっさりしていましたが、
寧温君の策略で身分を剥奪されての聞得大君の後半戦は実に波乱万丈。

上巻では感じられないような聞得大君の、
むちゃくちゃだけど憎めない、魅力的な人間性が見られる場面も多く
下巻の主人公は聞得大君と言ってもいいくらいです。

ワタシもテンペストの女性キャラでは
真鶴よりも聞得大君や真美那さんのほうが好きかも~
(思戸もなかなか…

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コメント (6)
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