パッション120%

さあさあさあ!!
今日も全開で・・・
パッショネイトにイカねーと♪♪

おやこ

2010-10-23 00:41:44 | 日々を歩む
4人がけの椅子
片脇には少年と母親
もう片脇にはボク

日曜の夜11時をまわっている
母親はヴァイオリンケースを膝に抱え、片手には譜面を持っている
少年は小学4年生ぐらいだろうか
メガネの奥の瞳に輝きはなく無表情である

会話の細かい部分まで理解することはできなかったが、聞こえてきた内容は

「演奏会が近いのに、出来が悪い」
「練習を真面目にやっていない」
「先生に指摘された部分を把握していない」

そんなようなことだった

母親は、できるだけ声のボリュームを抑えているようだが
感情はしっかりまわりに流出してしまっている
知らず知らずのうちに、企業情報が漏洩してしまっているかのように…

少年は母親の言っていることを無視し続け、何も返答はしない
次第に母親の流出する感情の濃度が濃くなっていく

「人前で叩かれたいの」
なんてことも言い出すようになっていった

そうこうするうちに
「ゴン」
という、音が響いた
座席の脇の壁に少年は頭を叩きつけられたようだ
それでも無言の少年
また少しして
「バシッ」
と、叩く音も聞こえた

母親の声だけが止まらずに、誰に話してるのかわからない言葉が発せられている


そのやりとりの横で、どんどん胸が痛くなった
やるせない気持ちが膨らんでいって、その母親の肩をたたいた
しかし、たたいて振り返ってくれたものの
その母親に対して、どんな言葉をかけていいものかわからなかった…

「あまりに痛々しいので」
「関係ないと言ってしまえばそれまでなんですけど…」
「もう少し、仲良くできないんでしょうか…」

母親はそう言われてキョトンとした顔でボクを見ていた

それから母親は話さなくなり、いつもの夜の電車内に戻った
さっきまで何もなかったかのように、いつもの電車内にガラリと変わった
ほどなくして、ボクとその母親の間に青いシャツのオジサンが腰を下ろした


なぜキョトンとされたのだろうか
その母親は、痛々しいことをしているという自覚はなかったのだろう
あれが息子に接する当たり前の姿だったのかもしれない
当たり前のことをしているのにそこを指摘されても、理解することはなかなか難しいだろうから


その少年は、将来どんな大人に育つのだろうか
残念ながら、ヴァイオリニストになることはないだろう
中学生にもなれば、立場が逆転しないとはいえない

その2人からは
輝ける未来を想像することはできなかった…