真昼の小田急線。
ドアが閉まる直前に、
その男は駆け込んできた。
ドアに挟まる。
いや、違った。
わざと挟まったのだ。
なんのために?
後から来る女のためにだ。
その女は、
靴の関係で階段を駆け上がることができず、
やや遅れて、
悠然と歩いてきた。
男が支えていたドアが再び開き、
女が乗り込む。
得意げに笑う男。
微笑み返す女。
この行為、カッコいいのか?
そんなことで出発が遅れたせいか、
いつもは駅を出るとすぐ流れる、
「ポイント通過のため揺れますので・・・」
の注意アナウンスが流れなかった。
車掌も焦っていたに違いない。