長きにわたって、我が家の台所にゴローンと転がっていた「ゆべし」。
ゆべしとは、柚子の皮の中の実を取り出して、身代わりにお砂糖を混ぜたお味噌を詰め込んで干した、山里に昔からあるお菓子。お菓子といっても、甘いというより、どちらかというと味噌味が勝つので、好き嫌いは分かれるかもしれない。
2005年の春、訳あって、恵那市の笠置町というゆずの産地でいただいた。
それから食べようと思いつつ、思い入れありすぎて一日延ばしになり、もういい加減に食べられなくなってるかもと思いながらも、思い出あるものなのだしもったいないしと、捨てるには至らず、
あるときは冷蔵庫の中に、あるときは戸棚の中に、そして最近は「捨てないなら早く食べなさい」警報発令によりテーブルの横の籠の中にと、居場所を転々とさせられてきた。
ほんとに家庭の手作りで、売り物でもないので、白い半紙にくるくると包んだだけ。ビニール袋に入れたりもしていない。
ついに先日、「今日こそ絶対に一戦交える」と決意し、それが実行に移されたのでした。
内心、「干からびきって、もう食べられないに違いない」と思っていた。
紙をあけると、真っ黒けのカチカチ。
恐る恐る包丁を入れると、堅いけど、結構きれいに切れる!
で、恐る恐る端っこをかじってみると、なんと! おいしいではないですか!!
おいしくておいしくて、ばくばくと立て続けに3切れぐらい食べてしまい、
もっと食べたいのをガマンしたのでした。
中のお味噌はチーズ化しています。
味付けも相当上手だったのでしょう。柚子のほどよい酸味と、ほどよい甘み。お味噌もきっといいものなのでしょう。
捨てたほうがいいかもなんて思ったことを深く反省しました。
そうなんです、そもそも柚べしは保存食なのでした。
ってことを思い出した。
半紙に包んだだけで、なんともなく8年も保存できてしまうのです。
紙に消費期限なんて書いてないです。そんなもの要りません。
密封もしてないしビニール袋にも入れてない。
昔の人の知恵はスゴイなぁ。改めて思う。
もっとも風味は変わってきていると思うけど、ワインみたいに、あるいはお味噌みたいに
2年物とか、3年物とか、30年ものとか……(?)
いろいろ違いを楽しむのもいいのかもしれない。
ほかに、スライスして真空パックに入った柚べしも戸棚の中に放置されているのだけど
(見た目おつまみのサラミみたい)
保存食なんだから真空パックなんて必要ないんですよ。
でも現代人はそういうことしないと気が済まないんでしょうね。
そういう習慣そろそろ見直しましょう。
日本は熱帯地方と違ってそんなに病原菌うようよってわけでもないのだから。
ビニール袋などなかった時代、それなりにやってきているのだから。
写真/8年物の柚べし・岐阜県恵那市笠置町の特産品
この記事気に入ったらクリックを↓
にほんブログ村へ