山里ひぐらしの小径

木曽路の入り口、岐阜県中津川市から
人と自然とのかかわりをテーマに、山里、植物、離島など。

植物の名前~オシャクジデンダ

2007-02-17 | 植物

 

オシャクジデンダというシダがある。私が初めてこのシダを認識したのは、恵那山を飯田側に越えたところの神社の大木でだった。このシダは樹上に着生するものである。樹上とはいってもたいてい斜めになった幹の下側にあるので樹上というのはちょっとそぐわない。雨の日は葉が開いてシダらしくしているが、乾いた日には葉が丸まっている、というのが特徴のシダである。もっともここにあったものを手にとってつぶさに調べたわけではないから、よく似た別のシダでないとも限らないが、でも、多分、オシャクジデンダだと思う。

この名前は図鑑で調べた。一文字ずつたどらなければ読めない、珍妙な名前だった。その後、デンダというのはシダを指すことを知った。オシャクジというのは、ヤマケイの本によれば「このしだが初めて採られた木曽の社貢寺(しゃぐじ)にちなんで名づけられたという」とある。それで、木曽の地図で社貢寺という寺を探してみたが、見つからなかった。私がそのシダを見つけたのは木曽ではないが木曽の裏側である。

大体、植物の名の由来というのは、本当でないことが語られていることも多い。ズダヤクシュというかわいい花を咲かせる草がある。ズダとは木曽地方で喘息をいいその薬種だ、という話が多くの図鑑に書いてある。これは恐らく最初に牧野富太郎が図鑑に書き、それをみんなが子引き孫引きして広まったものだと思う。なぜなら木曽地方のあちこちで「ズダ」って知ってるかと聞いても誰も知っているとは言わないからだ。本当かどうか分からないことが広まると、すぐに真似だとばれてしまう。だからオシャクジなんて寺が木曽にあるかどうかも怪しいもんだと思っていた。

その疑問が昨日氷解した(厳密には氷解していない)。旧加子母村の昔の話を集めた本で知った。加子母には「おしゃもじさん」という祠が昔あった。これは「石神祠」(しゃぐうじ)とか「尺文字」とか書き、太閤検地で使ったものさしをまつったもので、各地にあるという。呼び方も、おしゃごじさん、おしゃぐいさん、などがあるらしい。岐阜県各務原市蘇原には神護司(しゃごじ)神社があるという。オシャグジデンダもきっとそのオシャグジだろう。寺だとばかり思っていたが、神社や祠である。オシャグジというのが木曽の特定の祠を指しているのか、神社などに多くあるからそういわれるのかも分からない。また、木曽にオシャグジという寺がないという確かな証拠もないので、まだまだ油断はできない。

それでもこのシダの名前にこれまでよりもっと親しみがもてそうだ。


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