よいしょと立ち上がる
すうっと背中がかるくなって
爺ちゃ
婆ちゃがおぶさってくる
よみがえる
あのふわふわ
妻の背には父
ぼくの背中にはだあれ
ゆうぐれの草の道
細くすずしい風が
うなじを優しく
くすぐるものだから
ぼくは黙って
なんどもなんども
頷いてやる
向うから
お迎えのおさななじみ
ちょうちんの灯に
頬を染め
そっと会釈して
すれちがう
よいしょと立ち上がる
すうっと背中がかるくなって
爺ちゃ
婆ちゃがおぶさってくる
よみがえる
あのふわふわ
妻の背には父
ぼくの背中にはだあれ
ゆうぐれの草の道
細くすずしい風が
うなじを優しく
くすぐるものだから
ぼくは黙って
なんどもなんども
頷いてやる
向うから
お迎えのおさななじみ
ちょうちんの灯に
頬を染め
そっと会釈して
すれちがう
霊棚を飾りご先祖を迎えに行く。まだ誰も来ていない静かな墓地。水をやり線香をあげると背中にふわっと風を感じる。「さあ帰ろう」心の奥でつぶやくと、もういちど背中で風がわく。 妻がお供えのおはぎを丸めている。姫たちは線香の煙から逃れて二階の奥で大人しくしている。不思議に蝉の鳴かない盆の入りである。
民族の大移動がはじまった。北へ南へ故郷へ、毎年繰り返される盆と正月の日本の風習。フランスではこの逆の現象が11月に起きる。フランス戦勝記念日(ナチスから自由を勝ち取った11月11日) この日は各地からパリに人々がなだれ込む。パリに向かう鉄路も道路も大混雑。凱旋門からコンコルド広場は軍人のパレードで埋め尽くされ、初冬のパリは熱く燃える。 ところでテロリストたちの計画が実行寸前で発覚し20余名が逮捕されたことは幸運だった。厳戒態勢の今日、約10万人の日本人が海外に出かけた。
干柿の芯に
ホトケサマが透けて見える
提灯の芯に
ホトケサマが揺らめいている
欅の幹に耳を当てると
祈りが聞こえてくる
良いとか悪いとか
そんなことはどうでもいいこと
ホトケサマはどこにでも在して
ひたすら柔らかく微笑んでいる
夕べも夢まくらに
ナミダサマを遣わして
散々ひとを憎んだ
その心を洗い清めてくれた
ナミダサマは
泣きやんだばかりの赤子の瞳にも在し
産卵のウミガメの瞼にも在し
ホトケサマの化身
ナミダサマが顕われた日は
雨上がりの五月のように
総てがまぶしく耀いてくる
今朝は早起きして、隣町まで朝採りの野菜を買いに行く。天気晴朗。刈り倒された草の香が車の中に吹き込んでくる。穂孕み期の青田が一面波打っている。その上をトンボの群れが遊泳している。三文の徳とはこの爽快さかも。開店の時間に合わせたつもりが店の前はすでに人だかり。野菜の山がみるみる内に消えていく。早く買わないと損をしてしまいそうな気分に急かされ、手当たり次第つかみとっては籠に入れる。帰宅してから買ったものを卓上に広げると、やっぱり余計なものがいくつも混じっている。
晩夏には黄色い花がよく似合う。