公益社団法人 日本河川協会主催の講演会を拝聴してまいりました。テーマは「2011年の大津波による海岸被害と被災を免れた神社」。講師は財団法人土木技術センター常務理事・なぎさ総合研究室長の宇多高明氏でした。
震災直後から岩手から茨城までの海岸線に実地調査に入り被災状況を調査した結果と、被災を免れた神社の存在をリボートしてくれています。
テーマから是非聞きたいと思っていたものですが、実際の内容は期待以上に濃厚で緻密。地道に足で調べた結果に基づく素晴らしい内容になっておりました。
そして被災地に入ると、小高い丘の上に鎮守の森に守られるような形で被害を免れた神社があちこちにあることに気がついたという。
岩手県
①山田湾大沢地区 魚賀波間神社
②大船渡野々田地区 加茂神社
③末崎地区 八大龍神社
宮城県
④菖蒲田海岸 五社神社
⑤磯浜漁港 名称不明の神社
福島県
⑥豊間海岸薄磯地区 薄井神社
⑦小浜海岸 那智神社
茨城県
⑧大津漁港 名称不明
東京湾中等潮位(T.P.)基準でみると津波被害は北に行くほど高い。津波被害を免れた神社の立地も南に下るほど低い立地に建てられていたそうだ。
確認するかぎり神社で津波被害にあったのは少なく、被害にあった神社は比較的新しい時代、大正以降に建てられたものである模様なのだそうだ。
こうした津波被害を免れた神社は建てるときに過去の、伝説的な過去も含めてここならきっと大丈夫だろうといった見地に基づき立地を選ばれている可能性があり、これは伝説・伝承的な意味も含めて場所が決まり建てられたものではないかと宇多氏は推察する。
宗教・信仰というよりも経験則としてというわけだ。
そして万が一の場合にはこの場所に逃げ込めと。多くの神社は無人でおそらくはちょっと不便な場所にありながら、立派な参道を備えていた。
また海岸の砂の質によっても被害の規模が段違いになっており、
極粗粒砂 very coarse sand 2~1mm
粗粒砂 coarse sand 1~1/2mm (1,000~500μm)
中粒砂 medium sand 1/2~1/4mm (500~250μm)
細粒砂 fine sand 1/4~1/8mm (250~125μm)
極細粒砂 very fine sand 1/8~1/16mm (125~62.5μm)
粗砂(2~0.2mm)と細砂(0.2~0.02mm)に分ける場合もある。
粒径が2mm以上のものを礫、1/16mmより小さいものを泥(粘土とシルト)という
粒度が細かい砂で構成されている海岸の砂ほど今回の津波で持っていかれた傾向があり、細かい砂は内陸に運ばれ地層のように広い範囲でばら撒かれた。
一方で粒子の大きな砂で構成された海岸は津波被害の影響がない、或いは復元力があって直後から回復してきている。この違いは後々二次災害的な影響として顕著になってくるだろう。
などという行ってみないとわからない。専門家でない限りそんなことは知りえないというような内容に満ちており、とってもレベルの高い講演となっておりました。
すごく勉強になりました。また宇多氏の話はもっともっと詳しい話を聞きたいと思うようなすてきな内容になっておりました。
すばらしい夜をありがとうございました。
昨日は時間がなかったので書き足らない部分が多々ありました。
まずは宇田氏による、「東日本大震災津波災害状況調査」のサイトは
こちらです。
①山田湾大沢地区 魚賀波間神社
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②大船渡野々田地区 加茂神社
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③末崎地区 八大龍神社
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宮城県
④菖蒲田海岸 五社神社
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⑤磯浜漁港 名称不明の神社
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福島県
⑥豊間海岸薄磯地区 薄井神社
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⑦小浜海岸 那智神社
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茨城県
⑧大津漁港 名称不明(→おそらく津之神社)
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徐々に書き足すことにさせていただきます。
書けるかな。
遡上高と浸水深
破堤被害