のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

1月の読書

2010年01月30日 23時01分41秒 | 読書歴
2010年の読書ライフは、2009年最後に読み始めた
宮部さんの作品とともに始まり、そのまま宮部さん祭りに突入しておりました。
ひたすら宮部さんの作品のみを読み返した1月前半。
宮部さんの作品はやはり好きです。ものすごく好きです。

1.パーフェクト・ブルー/宮部みゆき
■ストーリ
 高校野球界のスーパースターが全身にガソリンをかけられ、焼き殺された。
 俺、元警察犬のマサは、現在の飼い主であり、蓮見探偵事務所の調査員
 でもある加代ちゃんと共に落ちこぼれの少年、諸岡進也を探し当て、
 自宅に連れ帰る途中でその現場に遭遇したんだ。

■感想 ☆☆☆☆*
 宮部さんの長編デビュー作です。1989年の作品。
 ということは21年前の作品ですが、まったく古さを感じさせません。
 「犬の一人称」ということもあって、軽妙な語り口。
 けれど、そのテーマも事件の描写もどれも深刻で悲惨。
 結末もやや救いのない展開ですが、それでも暖かさ、やわらかさを
 失わないのが宮部さんのすごいところだと思うのです。

2.心とろかすような/宮部みゆき
■ストーリ
 パーフェクト・ブルーの続編。連作短編集。
 あの諸岡進也が、こともあろうに俺の糸ちゃんと朝帰りをやらかした!
 いつまでたっても帰らない二人が、あろうことかげっそりした表情で、
 怪しげなホテルから出てきたのである!
 お馴染み用心犬マサの目を通して描く五つの事件。

■感想 ☆☆☆*
 連作短編集ということもあって、前作より更に軽妙なタッチで
 軽く読める作品です。マサと加代ちゃん、糸ちゃんの関係も相変わらず
 暖かく、「家族」が押し付けがましく自然に描かれています。
 だからこそ、表題作「心とろかすような」の薄気味悪さ、後味の悪さは格別。

3.恋愛写真/市川たくじ
■ストーリ
 カメラマン志望の大学生、瀬川誠人(まこと)は、ひょんなきっかけで
 知り合った個性的で謎めいている同級生、里中静流(しずる)と知り合う。
 おくてだった誠人だが、彼女とは自然にうちとける。まことに思いを
 よせる静流。しかし、誠人には好きな人がいて、その思いを受け取れない。
 「恋をすると死んでしまう」という宿命を背負っていた静流は、
 それでも誠人に恋をしてしまい、そして姿を消した。

■感想 ☆☆☆☆
 あらすじだけを読むと、なんのこっちゃ・・・と思われるかもしれませんが。
 ファンタジーです。ファンタジーとして受け止め、その世界に入り込む
 ことができる人でなければ楽しめないのではないかと思います。
 入り込むことさえできれば、市川さんのこのファンタジックな世界観と
 その中で、不器用に生きる登場人物たちがいとしく思える作品です。
 恋をすると死んでしまう。その運命を受け止め、それでも人を好きになることを
 恐れないヒロインがとても魅力的です。自分の運命を知っていても
 好きにならずにはいられない人と出会えたヒロインが少し羨ましい。
 堤幸彦さんが監督を務めた映画「恋愛寫眞」の共作として
 書き下ろされた作品です。映画は確か広末涼子さん主演でした。
 映画のほうも見たいなぁ。
 
4.誰か/宮部みゆき
■ストーリ
 今多コンツェルンの広報室に勤める杉村三郎は、義父であり
 コンツェルンの会長でもある今多義親からある依頼を受けた。
 会長の専属運転手だった梶田信夫の娘たちが、亡くなった父についての本を
 書きたいらしいから、相談にのってほしいという。
 梶田は、石川町のマンション前で自転車に撥ねられて亡くなった。
 犯人はまだ捕まっていない。依頼を受けて、梶田の過去を辿りはじめた
 杉村が知った事実とは・・・。

■感想 ☆☆☆☆*
 亡くなった運転手さんの過去をたどる主人公。
 運転手さんが過去に遭遇した事件がつまびらやかにされるラスト。
 しかし、そこで安心していると、ラストのラストで、更に驚かされる。
 主人公を待ち受ける人間の闇が恐ろしい。
 宮部さんの作品は文章がとても暖かい。しかし、そこに描かれる
 登場人物全員が暖かく、優しいわけではない。理解できない人、
 共感できない人もきちんと描かれている。暖かくやわらかい文章だからこそ、
 人間のくらいところ、汚いところが、しっかりと見えるのだと思う。
 
5.名もなき毒/宮部みゆき
■ストーリ
 今多コンツェルンの広報室では、ひとりのアルバイトを雇った。
 しかし、編集経験があると自称して採用された原田いずみは、
 質の悪いトラブルメーカーだった。解雇された彼女の連絡窓口となった
 杉村三郎は、極端なまでの経歴詐称とクレーマーぶりに振り回される。
 折しも、街では連続無差別毒殺事件が多くの注目を集めていた。

■感想 ☆☆☆☆*
 宮部作品によく出てくる「理解できない人間」「共感できない人間」に
 真正面から取り組んだ作品。「名もなき毒」を持った人間の心を
 しっかりと描いていて圧倒されます。
 宮部作品はその文章のあたたかさから受けるイメージが大きいのですが
 描かれている物語も登場人物も、「穏やか」とか「やさしさ」とか
 そんな言葉だけではあらわせないところが結構、多かったんだよね、
 ということを思い出しました。

6.火車/宮部みゆき
■ストーリ
 休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の
 行方を捜すことになった。自らの意思で失踪し、徹底的に足取りを消して
 いる彰子。なぜ彼女はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか?
 いったい彼女は何者なのか?
 謎を解く鍵は、カード会社の犠牲ともいうべき、自己破産者の凄惨な
 人生に隠されていた。

■感想 ☆☆☆☆☆*
 何度読み返したか分からない大好きな作品。
 人生で生まれて初めて、「どうか、どうか犯人を助けてあげて」と
 心から思った作品。読み返すたびに、何がどうなって、彼女がこんな道を
 歩むことになったのか、誰が悪かったのか、どこが運命の分岐点だったのか、
 いろいろと考えるのですが、何度考えても、避けられようのない
 運命というものがあるのではないか、と思えます。
 「知識」というものの大切さ、「カード社会の恐ろしさ」を
 ひしひしと感じる作品です。

7.あやし/宮部みゆき
■ストーリ
 14歳の銀次は木綿問屋の「大黒屋」に奉公にあがることになる。
 やがて店の跡取りである藤一郎に縁談が起こり、話は順調に
 まとまりそうになるのだが、なんと女中のおはるのお腹に、
 藤一郎との子供がいることが判明する。おはるは、二度と
 藤一郎に近づかないようにと店を出される。しばらくして、銀次は
 藤一郎からおはるのところへ遣いを頼まれるのだが、
 おはるがいるはずの家で銀次が見たものは・・・。
 江戸を舞台とした怪談小説。

■感想 ☆☆☆
 舞台や時代をかえても、宮部作品の真髄は変わりません。
 「怪談小説」ではありますが、そこに描かれているのは人間の闇であり
 人間の怖さです。いるかいないかわからない「おばけ」よりも
 誰もが必ず抱えている「闇」のほうが数倍恐ろしい。そう思える作品です。

8.レベル7/宮部みゆき
■ストーリ
 レベル7まで行ったら戻れない。
 謎の言葉を残して失踪した女子高生。記憶を全て失って目覚めた若い男女。
 かれらの腕に浮かび上がる「Level7」の文字。
 少女の行方を探すカウンセラーと自分たちが何者なのかを調べる二人。
 二つの追跡行はやがて交錯し、思いもかけない凶悪な殺人事件へと導かれる。
 緊迫の四日間を描く長編小説。

■感想 ☆☆☆☆*
 初めて読んだ宮部作品。一気に物語にひきつけられ、のめりこみました。
 この作品をはじめて読んだときのドキドキと、結末を早く知りたい
 とやきもきしたあの感覚は今も忘れられません。出会えて本当によかった。
 何度も読み返しているため、作品のあらすじをほとんど覚えており
 初めて読んだころのあのドキドキはもう味わえませんが
 それでも何度読み返しても、あらすじも結末を知っていても
 それでも面白いと思える作品です。
 「推理小説」という枠組みを超えて好きな作品。

9.加茂川ホルモー/万城目学
■ストーリ
 このごろ都にはやるもの。勧誘、貧乏、一目ぼれ。
 葵祭の帰り道、ふと渡されたビラ一枚に腹を空かせた新入生が
 ノコノコと誘われ、出向いた先で見たものは、世にも華麗な女(鼻)でした。
 このごろ都にはやるもの。協定、合戦、片思い。
 祇園祭の宵山に、待ち構えるは、いざ「ホルモー」。
 「ホルモン」ではない、是れ「ホルモー」。戦いのときは訪れて、
 大路小路にときの声。恋に、戦に、チョンマゲに、若者たちは闊歩して、
 魑魅魍魎は跋扈する。京都の街に巻き起こる疾風怒涛の狂乱絵巻。

■感想 ☆☆☆*
 なんでこんな作品を生み出せるのだろう、と読みながら感嘆しました。
 作者の想像力と発想力を心から尊敬した作品。
 青春小説らしく、「恋愛」と「自意識」に悩む主人公をしっかりと
 描いていますが、「青春小説」などといったカテゴリをすっかり
 忘れさせてくれます。作者の構築する作品世界にすっかり入り込んで
 しまいました。すごい、の一言。彼の想像力に圧倒されました。
 この作品、映画化されています。ぜひ、映画も見てみたいです。

10.フィッシュ・ストーリー/伊坂幸太郎
■ストーリ
 届けよ、誰かに。頼むから。
 売れないロックバンドが最後のレコーディングで叫んだ声が
 時空を越えて奇蹟を起こす。

■感想 ☆☆☆☆☆
 帯文句「届けよ、誰かに。頼むから。」という言葉にひかれて
 購入した作品。もっとも伊坂作品なので、いずれは購入していたと思うのです。
 それでも、この帯文句に期待は更に高まりました。
 その期待がまったく裏切られなかった作品。中短編4編をおさめた作品集
 ですが、やはりなんといっても表題作。
 現在、過去、未来を自由自在に行き来する場面設定。その時代時代で
 起こった出来事が徐々に徐々につながり、そして最後に大きな奇跡へと
 つながる。その過程と結末で、なんともいえない大きな幸せを味わえます。
 どこかで誰かが誰かに影響している。そんな当たり前のことに
 はっきりと気付ける作品。
 この作品だけでもいいからぜひ多くの人に読んでほしい。
 ・・・でも、ほかの作品もお勧めです。面白いです。