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ペーパーボーイ

2013-08-06 09:21:04 | 映画
こんなにもニコール・キッドマンがビッチ女優であったとは。
では、他の普段の素行が「ワル」なタレントにこの役が務まるかといえば、その娘たちは自意識と品行に問題があるだけで、女優の域には到達していない。
まさに女優の真髄。
キッドマンは文句なしに女優である。
頭と身体がよく動き、だらしない肉食獣を演じることが光る。
「誘う女」や「イノセント・ガーデン」を見た方なら、きっと......
ビッチのキッドマンに外れなし、と。
そんな彼女のビッチ歴に強力な作品がもう1本加わった。
「ペーパーボーイ 真夏の引力」。
舞台は1969年のフロリダ州。
沼地のもたらす高温多湿の空気に包まれ、ねっとりとした生臭い話が展開されていく。
何かウォン・カーウェイとは違う湿気を感じる。
キッドマンが演じる女性は、全体の糸口となる女だ。
彼女は、保安官殺しの嫌疑をかけられた死刑囚の無実を、地元出身の新聞記者に訴える。
記者の弟は、無職で童貞のジャック。
彼らは行動をともにして、事件の真相を探りにかかる。
しかし、謎解きは映画の前線にとどまりつづけない。
監督は、むしろ、腐った男女の腐った言動が招く腐った話に眼を凝らす。
これを描き出すほうが、ずっと面白いではないか。
なかでも「顔をしかめたく」なるのは、女性の腐り方。
図太くて、柄が悪くて、さほど腹黒いわけではないのに、平然と男たちを振りまわす。
その存在が原動力となって、映画は終始、血と肉の臭いにまみれる。
自分の指で股間のパンティストッキングを裂く場面も、クラゲに刺されたジャックにまたがって放尿する場面も、キッドマンは余裕でこなしている。
あの無自覚やあのだらしなさを形にするには、相当の技が要るはず。
彼女は、ずいぶん前からその技を身につけていたのかも。