スクリーンから伝わる戦場のざらついた風、焦げついた臭いになぶられる。
目を背けたくなる決断の数々が徐々に感情を麻痺させていく。
御歳84になるクリント・イーストウッドの新作は、イラク戦争の過酷な現実を生きたネイビー・シールズ隊員の物語。
160人を射殺した凄腕の狙撃手として、味方からは「伝説」と賞賛され、敵からは「悪魔」と恐れられた。
その知られざる人物像をイーストウッドが描き出し、また自ら映画化権を獲得したブラッドリー・クーパーが、精神的にも肉体的にも己を限界まで追い込むほどの気迫でこの役を生き抜いている。
だが、本作がクリスの活躍を讃えた英雄物語だと思ったら大間違い。
イーストウッドはその人間の一面のみをクローズアップする手法は採らない。
光を描けば影もまた克明さを増す。
壮絶な戦況で命のやり取りを交わすたび、魂にはくさびが打ち込まれていく。
愛する家族のもとにようやく帰れたかと思うと、今度は抑えていたものが吹き出し、精神的な爪痕が蝕んでいく。
この一連の出口の無さにも、しっかりと主眼が向けられるのだ。
興味深いのは、本作が70年代から現代までに及ぶ主人公の半生を描き出していること。
そうすることでイラク戦争という悪夢を単なる「点」ではなく、一人の人間の生き様の中でじっくりとあぶり出すことが可能となる。
幼少期に培った「他者を守る」という意識。
その信念を貫いたがゆえに、やがて重い犠牲を払うことになる。
これがイーストウッド。
戦争の傷跡はあまりに深い。
どう向き合っていくのだろう。
今この瞬間、自分自身の頭で思考し続けることを求めている。
目を背けたくなる決断の数々が徐々に感情を麻痺させていく。
御歳84になるクリント・イーストウッドの新作は、イラク戦争の過酷な現実を生きたネイビー・シールズ隊員の物語。
160人を射殺した凄腕の狙撃手として、味方からは「伝説」と賞賛され、敵からは「悪魔」と恐れられた。
その知られざる人物像をイーストウッドが描き出し、また自ら映画化権を獲得したブラッドリー・クーパーが、精神的にも肉体的にも己を限界まで追い込むほどの気迫でこの役を生き抜いている。
だが、本作がクリスの活躍を讃えた英雄物語だと思ったら大間違い。
イーストウッドはその人間の一面のみをクローズアップする手法は採らない。
光を描けば影もまた克明さを増す。
壮絶な戦況で命のやり取りを交わすたび、魂にはくさびが打ち込まれていく。
愛する家族のもとにようやく帰れたかと思うと、今度は抑えていたものが吹き出し、精神的な爪痕が蝕んでいく。
この一連の出口の無さにも、しっかりと主眼が向けられるのだ。
興味深いのは、本作が70年代から現代までに及ぶ主人公の半生を描き出していること。
そうすることでイラク戦争という悪夢を単なる「点」ではなく、一人の人間の生き様の中でじっくりとあぶり出すことが可能となる。
幼少期に培った「他者を守る」という意識。
その信念を貫いたがゆえに、やがて重い犠牲を払うことになる。
これがイーストウッド。
戦争の傷跡はあまりに深い。
どう向き合っていくのだろう。
今この瞬間、自分自身の頭で思考し続けることを求めている。